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和平に向けた緊張緩和が後退 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は東京時間昼過ぎ、日銀総裁と岸田首相が会談
すると報じられ121円31銭近辺まで急落。その後の
海外市場ではドルがやや持ち直したものの122円台前半
で上値が抑えられる。
◆ユーロドルは続伸。ドイツの3月のCPIが予想を大きく
上回ったことで1.1171までユーロ高が進行。
◆株式市場は反落。停戦期待が後退したことから3指数が
揃って下落。
◆債券は小幅ながら続伸。長期金利は2.34%へと低下。
◆金と原油は反発。

◆3月ADP雇用者数        →  45.5万人
◆10-12月GDP(確定値)   →  6.9%

本日の注目イベント

◆日   2月鉱工業生産
◆豪   豪2月住宅建設許可件数
◆日  3月東京都区部消費者物価指数
◆中   3月中国製造業PMI
◆中   3月中国サービス業PMI
◆欧   「OPECプラス」閣僚級会合
◆独   独3月雇用統計
◆欧   ユーロ圏2月失業率
◆英   英10-12月期GDP(改定値)
◆英   英10-12月期経常収支
◆米   新規失業保険申請件数
◆米   2月個人所得
◆米   2月個人支出
◆米 2月PCEデフレータ   
◆米   2月PCEコアデフレータ
◆米   3月シカゴ購買部協会景気指数
◆米   ウィリアムズ・NY連銀総裁、会議で開会の挨拶

ドル円の「本確的な調整」が始まっています。
昨日の東京時間昼過ぎ、ドル円は121円90銭近辺を割り込むと一気に
121円台前半まで売られ、121円31銭前後まで急落しました。
黒田日銀総裁と岸田首相が会談するとの報道に、「足元の円安を巡る協議
か?」との観測が広がり、ドル売りが強まったのが背景でした。
その後の日銀総裁の話では、「為替は経済情勢を反映して安定することが
望ましいと申し上げた」と述べるに留まり、為替の水準についての話はな
かったようです。

ドル円は今週28日に125円10銭まで急騰した後、急速な下げに転じ
、利益確定の売りや、達成感がドルを押し下げてきました。
121円台前半まで下げたことで、短期的な動きを示す「1時間足」など
のチャートはドル売りサインを点灯させ、やや上値の重い展開が続きそう
です。今回の上昇を、3月7日の114円77銭を起点に始まったと考え
れば、この間の上昇幅は「10円33銭」となり、これにフィボナッチ・
リトレースメントを当てはめると、「38.2%」戻しは「121円16
銭」という数値が導き出され、昨日のドルの底値に近い値になります。
また「4時間足」の雲の上限も121円14銭近辺にあり、ほぼ合致しま
す。さらにこの先ドルが下げた場合、フィボナッチの「半値戻し」は「1
19円94銭」と計算されますので、ドル売りがさらに進んだ場合、12
0円前後が相当重要な水準ということになります。
「半値戻しは、全値戻し」という言葉がありますが、ここまでドルが下げ
ると、今回のドル上昇局面も一旦終了したと考えることも出来そうです。

ただ、ドル円を取り巻く環境は全く変わっていません。FRBは今後も粛
々と利上げを実施していくとみられ、日銀は大規模な金融緩和策の継続を
維持しており、「連続指し値オペ」でも確認されたように、長期金利の0
.25%超えは許容しない姿勢を見せています。
ただ、これまで国内から発せられる情報や政策についてはほぼ「無風」だ
ったことから、市場はほとんど関心を示してこなかったものの、昨日の様
にちょっとした報道から円が買い戻される事態になっています。
円が短期間で急速に売られたことで、市場参加者が水準を含め警戒感を持
ち始めたという証左であると思われます。
引き続きドル上昇トレンドに戻るとしても、今度はこれまでのような「ス
ピード違反」は見られないかもしれません。

ロシアがキエフなどでの軍事活動を縮小すると表明したことで、一旦緊張
が緩和されましたが、米国を始めウクライナもその行動には懐疑的な姿勢
を崩していません。
バイデン大統領は、「ロシアの実際の行動や、今後の停戦交渉でどのよう
な提案を行うかを見守りたい」と述べ、NATO加盟国も同様に懐疑的で
す。実際キエフ周辺では戦闘が続いていると伝えられています。
チェルニヒウの市長は「むしろ攻撃は激しさを増しており、市中心部に甚
大な被害が出た」とCNNテレビのインタビューで答えています。
一方バイデン大統領はウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談で5
億ドルの支援を申し出ています。
ロシアのラブロフ外相は中国を訪れ、中国の王毅外相と会談して、両国の
緊密な関係を再確認しています。ロシアがウクライナ侵攻を始めて以来、
両国の高官が直接会談するのはこれが初めてのこととなります。

3月のADP雇用者数は「45.5万人」と市場予想とほぼ一致し、広範
囲で労働市場の拡大が続いており、人材獲得競争は激しい状況が続いてい
るという米金融当局の見解と整合的です。
今回の数字では特に、専門職、ビジネスサービス、ヘルスケアなどで大き
く伸びており、2月の同指標も上方修正されています。
明日の雇用統計本番でも良好な内容が期待されており、FRBの利上げに
向けた姿勢を妨げる要因にはなりそうもありません。

FOMCメンバーからは引き続きタカ派寄りの発言が発せられています。
リッチモンド連銀のバーキン総裁は5月の会合での0.5ポイント利上げ
にオープンな姿勢を示し、「5月の会合でわれわれは決定を下すわけだが
、問題となるのは、利上げへの対応能力と高インフレの根強さという面で
、米経済がどの程度の力強さを備えているかということだろう。私はそれ
らの両方の面に注目しており、5月に判断が下される」と述べています。
またカンザスシティー連銀のジョージ総裁はNYでの講演で、「緩和解除
が必須なのは明白だ。ただ解除の度合いや、どの程度積極的にすべきかに
ついては不透明な部分がずっと大きい」と語っており、中立的な姿勢を示
しました。
5月の会合までまだ1カ月もありますが、すでにここで0.5ポイント利
上げすることは織り込まれています。
焦点は、その後の利上げペースと利上げ幅をどの程度の間隔で進めていく
のかといった点です。

本日のドル円は121円60銭~122円80銭程度とします。


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ドル円急落。一時122円を割り込む 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆荒っぽい動きが続いているドル円はロシアとウクライナの
和平交渉進展の報道に122円を割り込み、121円98銭まで
下落。利益確定の円買いが優勢に。
◆ドルが売られたことでユーロドルも大きく上昇。
約2週間ぶりに1.1137まで買われた。
◆株式市場は3指数が大幅に上昇。停戦に向けた期待から
ダウは338ドル高。S&P500は1月以来となる
4600ポイント台を回復。
◆債券は続伸。緊張が緩和されたことによる巻き戻しの流れ
から、長期金利は2.4%割れの水準まで低下。
◆ロシアとウクライナとの緊張がやや後退し、金と原油は
ともに続落。

◆1月ケース・シラ-住宅価格指数(年率)    →  19.10%
◆1月FHFA住宅価格指数           →  1.6%
◆3月コンファレンスボード消費者信頼感指数   →  107.2

本日の注目イベント

◆独   独3月消費者物価指数(速報値)
◆欧   ユーロ圏3月景況感指数
◆欧   ユーロ圏3月消費者信頼感(確定値)
◆米   3月ADP雇用者数
◆米   10-12月GDP(確定値)
◆米   バーキン・リッチモンド連銀総裁、会議で開会の挨拶
◆米   ジョージ・カンザスシティー連銀総裁講演(オンライン)


ドル円は荒っぽく、神経質な動きが続き、今週に入ってはその動きがさらに加速
しています。日銀の「連続指し値オペ」がきっかけとなり、28日の夕方5時ご
ろには円安が一気に進み、125円10銭までドルが買われましたが、そのおよ
そ30時間後には122円を割り込み、121円98銭まで巻き戻しが入るなど、
シーソーの様な相場展開となっています。
125円を付けたことによる「達成感」と、一旦利益を確定する動きがドル下落に
つながりましたが、昨日はそれに加えロシアとウクライナの交渉での進展を巡り、
楽観的な見方が広がり、さらに利益確定のドル売りを誘発する格好になりました。
ドル円だけではなく、金と原油も売られ、さらに債券にも買い戻しが入るなど、こ
れまでの流れが急速に逆流しています。

ウクライナとロシアの代表団は29日、トルコのイスタンブールで4回目の対面交
渉を行いました。
停戦合意には至っていませんが、ロシア側は首都キエフと北部のチェルニヒウでの
軍事活動を減らす決定を行い、ウクライナ側は分離主義勢力が実行支配するドンバ
ス地方とクリミアを除く領土について安全保障の国際的な確約を求めるとし、ロシ
ア側に歩み寄る姿勢を見せました。
ただ戦闘は依然として続いており、今後の交渉日程などはまだ決まっていません。
バイデン大統領はロシアの実際の行動や、今後の停戦交渉でどのような提案を行う
かを見守りたいと述べ、ブリンケン国務長官もロシアの主張に懐疑的な見方を示し
、「ロシアが言うことと行うことは別だ。米国は後者に注目している」とし、戦争
の収拾に向けてロシアが「本気で真剣になっていることを示す兆候は見られていな
い」と説明しています。(ブルームバーグ)
今回の対面交渉により、停戦に向けた第一歩は踏み出したとみられますが、全ては
プーチン氏の考え一つであることから、停戦には「ゼレンスキー・プーチン会談」
が不可欠であると思います。今回の進展がこのまま終わるようであれば、結局ロシ
アの「時間稼ぎ」であったとの非難をあびることになります。

フィラデルフィア連銀のハーカー総裁は講演で、「大規模な財政支援策とサプライ
チェーンの混乱、緩和的な金融政策を背景に、インフレ率は私や同僚が懸念せずに
いられる水準を大きく超えて上昇している」と指摘し、「インフレ期待が抑制でき
なくなるリスクを懸念している」と述べました。
さらに「われわれが直面している経済の不確実性の度合いを踏まえれば、次回会合
で0.5ポイントという選択肢を排除しない。ただ現時点では断言しない」と発言
しています。
昨日の米債券市場では10年債利回りが低下する一方で2年債利回りが上昇し、1
0年債と2年債が逆転する、いわゆる「逆イールド」が発生しています。
通常金利は、短いものより長いものの方が「リスクプレミアム」を含むことから高いの
が普通です。これを「順イールド」と言いますが、昨日は短い2年債の利回りが長い
10年債のそれを上回りました。これは2019年8月以来ということになり、「
景気後退の前兆」と受け止められています。この現象が実際に景気減速につながる
のか、今後の経済データを注視したいと思います。

本日のADP雇用者数の発表を皮切りに、週末には雇用統計が発表されます。
労働市場の改善が続いているような結果が示されれば、再び利上げペースが早まる
との観測が高まり、長期金利の上昇が見込まれ、ドルが再び上昇基調を強める可能
性があります。荒っぽい動きが続くと予想し、慎重な対応が求められます。

本日のドル円は122円20銭~123円50銭程度を予想します。


米長期金利2.5%に上昇 

ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場


  • ドル円は東京時間の午後に急落し、121円18銭まで下げる場面があったが、その後欧州にかけて反発し、NYでは122円台を回復。122円25銭までドル高が進む。米長期金利の上昇が支えに。

  • ユーロドルは小幅に下落。1.0981まで売られたが、底堅い動きが続く。

  • 株式市場はまちまち。ダウとS&P500は上昇したが、金利高にナスダックは22ポイントの下落。

  • 債券は大幅に続落し、長期金利は2.5%まで続伸。

  • 金は反落し、原油は反発。

本日の注目イベント

  • 英 ベイリー・BOE総裁講演
  • 米 予算教書

「プーチン氏は、権力の座に留まることはできない」バイデン大統領は26日、欧州歴訪の締めくくりとなるポーランドの首都ワルシャワでプーチン氏のことを強い口調でこのように非難しました。バイデン氏は演説に先立ち、ワルシャワにあるウクライナ避難民の関連施設を訪問した際にも、プーチン氏を「虐殺者」と批判していました。これに対してロシアのペスコフ大統領補佐官は、「プーチン大統領の将来は『バイデン』が決めることではなく、ロシアの大統領はロシア国民によって選ばれた」とロイター通信にコメントしました。敢えて「大統領」という敬称を付けずに「バイデン」と呼び捨てにしたように、双方の口撃はエスカレートしてきました。昨日のNHKニュース番組でも、ロシア専門家の教授は「バイデン氏の発言は内政干渉にあたる」とコメントしていましたが、賛否両論があるようです。

ロシアの侵攻から1カ月が経過しましたが、ウクライナの港湾都市マリウポリの一部はロシア軍に掌握されたと報道されています。ウクライナ側も長引く戦闘から武器が枯渇してきたのか、ゼレンスキー大統領は米国など西側諸国に武器の提供を訴えています。今朝の情報ではウクライナ代表団のメンバーが、ウクライナとロシアの代表団が28-30日にトルコで会談すると、ネットに投稿しています。ロシア側は29-30日に対面協議で会談することを発表していまが、開催予定地については特定していません。戦争は長期化の様相を見せており、プーチン氏は追い詰められているようで、生物、化学兵器使用の可能性も取り沙汰されています。バイデン大統領は、「ロシアが化学兵器を使用する明確な兆候がある」と述べています。

先週末の東京市場では朝方122円43銭前後まで上昇したドル円が、午後には121円18銭まで急落する場面がありました。これは、債券市場で円の金利が0.24%まで上昇したにもかかわらず、日銀が午前の定例金融調節で「指し値オペ」を見送り、午後にも動かなかったことが円買いを強めました。現在日銀の長期金利誘導目標は「ゼロ±0.25%」で、先週末はこの上限に近づいてきたことで「指し値オペ」への期待もあったようです。この日の円急騰は、オペ実施を前提として円安を見込んでいた筋の円の買い戻しと見られています。東京時間でドルが高値から1円以上も下落したことは、今回の上昇局面では初めての事になりますが、25日には鈴木財務大臣が、「急激な円相場の変化は好ましくない」と、やや「口先介入」を思わせるような発言もあったようです。

東京で121円台前半まで下げたドル円はほどなく122円台を回復しましたが、米金利の上昇が大きく影響しています。米長期金利は先週末に2019年4月30日以来となる2.5%台まで上昇しました。ドル円はここ最近、米長期金利の上昇に引っ張られる形で122円台まで買われて来ましたが、この先、米長期金利の上昇にさらに拍車がかかるようだと、市場が最も関心を寄せ、注目している「125円」も視野に入ってくるかもしれません。NY連銀のウイリアムズ総裁は25日のパネル討論で、「FOMCの1回の会合で50ベーシスポイント利上げをすることが適切なら、そうすべきだ。どちらかを選択しない理由はない。経済に起きていることに基づいた正しい決定が必要だということだ」と述べ、データによって正当化されるなら0.5ポイントの利上げを検討すべきだとの認識を示し、この発言が長期金利とドル円の上昇につながったと思われます。(ブルームバーグ)ウイリアムズ総裁は地区連銀総裁の中でも「別格」で、FOMCでの投票権を常に有しており、会合の際には副議長を務めます。それだけに同総裁の発言は注目され、影響力も大きいとみられています。FOMCメンバーが急速にタカ派寄りにシフトしてきたことはこの欄でも何度か触れていますが、市場の見方はさらにタカ派的になっています。シティーグループのエコノミストは、年内の利上げ予想を修正しています。高インフレが根強く続く中、年内に合計2.75ポイント利上げするとしました。これには4回連続で0.5ポイントの利上げが含まれるとしており、筆者が知る限り、現時点で最もタカ派的な予想だと思います。

本日のドル円は121円50銭~122円50銭程度を予想します。

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明日の「アナリストレポート」は都合によりお休みとさせて頂きます。
ご愛読者の方々にはご不便をおかけいたしますが、ご理解の程よろしくお願い申し上げます。


ドル円さらに上昇し、122円台半ばに 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は一段と上昇し、NYでは122円41銭と、
約6年ぶりのドル高を示現。米利上げペースの加速化に加え、
失業保険申請件数の減少など、良好な米景気もドル買いに
つながる。
◆ユーロドルは前日とほぼ同水準で推移。
◆株式市場は3指数が揃って反発し、ともに1%を超える
上昇。アップルなど大型ハイテク株の上昇が目立った。
◆債券は売られ、長期金利は2.37%台まで上昇。
◆金は続伸し、原油は反落。

◆3月マークイット製造業PMI(速報値)       →  58.5
◆3月マークイットサービス業PMI(速報値)     →  58.9
◆3月マークイットコンポジットPMI(速報値)    →  58.5
◆ 経常収支(10-12月)              →  -217.9b
◆2月耐久財受注                   →  -2.2%
◆新規失業保険申請件数                →  18.7万件


本日の注目イベント

◆日  3月東京都区部消費者物価指数
◆独   独3月ifo景況感指数
◆英   英2月小売売上高
◆米   2月中古住宅販売成約件数
◆米   3月ミシガン大学消費者マインド(確定値)
◆米   ウィリアムズ・NY連銀総裁、講演(オンライン)
◆米   ウォーラーFRB理事、講演(オンライン)

連日上昇を続け「大台替え」を見せているドル円は、122円台半ばまで
続伸してきました。FOMCメンバーによるタカ派発言が原動力になって
いますが、昨日は新規失業保険申請件数が「18.7万件」と、1969
年以来の低水準まで減少したことで、米景気の底堅さが意識されたことも
ドル買いを促したようです。
個人的にには、それ以上に市場参加者が「ドル高センチメント」に傾いて
いることが大きな要因とみていますが、正確には「円売りセンチメント」
と言った方が正しいのかもしれません。

円は全面安で、クロス円でも軒並み大きく円安が進んでいます。
ユーロ円は134円台半ばまで上昇し、2018年2月以来となる高水準
です。
ドル円ではドル高円安が急速に進む一方、ユーロドルでは前日の水準をほ
とんど変わっていません。ドル円が上昇した分、ユーロ円も押し上げられ
たといったところです。
ドル円はここまで来ると、2015年6月に記録した125円86銭がター
ゲットになります。この水準は「黒田シーリング」とも言われ、黒田日銀
総裁が国会で、「円がこれ以上安くなることはない」と言ったレベルです。
焦点は、ここに達する前に、財務省などから「円は売られすぎ」といった
「口先介入」があるかどうかです。
ドル買いを進めている投資家も、ここからは「こわごわ」ドル買いを進め
ることになるのでしょうが、「口先介入」がないとわかれば、一気に上記
水準を突破する可能性があるかもしれません。

ベルギーのブリュッセルでNATO首脳会談とG7が行われバイデン大統
領も参加し、
会見では、ロシアは「G20」から排除されるべきだと述べ、米国は最大
10万人のウクラナ難民を受け入れる用意があると会見で語っています。
ロシアのウクライナ侵攻の結果、「世界は食料不足に見舞われるだろう」
と述べ、増産がG7の議題の一つであるとも述べています。
バイデン氏は「食料不足が現実化するだろう」と述べ、「制裁の代償はロ
シアだけに科されているわけではなく、欧州諸国や米国を含む極めて多く
の国も科されている」と指摘しています。(ブルームバーグ)

NATOはウクラナへの武器の提供を増やすことを決め、中国に対してロ
シアへの経済および軍事支援を提供しないよう強く求めています。
バイデン大統領も、先日の習近平主席との電話会談で、中国がロシアへ武
器等の支援を行えば、代償を科すと警告していました。
今朝の報道では、中国の泰剛駐米大使が23日、香港のフェニクステレビ
に対し、「中国とロシアの協力関係にタブーはないが、許容できる最低限
度はある」とし、「この限度は国連憲章の教義、原則、および国際法や国
際関係の広く認められた規範だ」と述べています。
これは、先の北京オリンピックの際にプーチン氏と習氏が「両国の友好関
係に制限はない」と宣言したことを「修正」する形の発言です。

FOMCメンバーによる講演が相次いでいますが、ここにきてタカ派的な
発言が一気に増えてきた印象です。
前日のサンフランシスコ連銀のデーリー総裁に続いて、ハト派と見られて
いるシカゴ連銀のエバンス総裁はデトロイトでの講演で、「毎回の会合で
0.25ポイント引き上げることに違和感はない」と述べ、「そう遠くな
い将来に中立水準に到達したい。0.5ポイントの利上げがそのとき役立
つかもしれない。私はそれにはオープンだ」と語っています。
パウエル議長は今週月曜日の講演後の質疑応答で、5月FOMC(5月3
~4日)会合での0.5ポイント利上げを妨げる要素はあるのかとの質問
に対し、「妨げるものなどあるだろうか。何もない」とした上で、「決定
はなされてないが、最新のデータで正当化されれば可性はある」との認識
を示し、「同僚と私は、より迅速に行動する必要があるとの結論に達する
可能性が十分あり、その場合はそう行動するだろう」と語り、ドル一段上
昇のトリガーになりました。
この「同僚と私は」という発言を受け、筆者はどのメンバーがパウエル氏
と同様な考えを持っているのかに注意を払ってきましたが、今週これまで
の講演で述べられた発言では、やはりほぼ全ての「同僚」がパウエル氏と
同じ認識だという印象を受けました。(参照:What’s going on )

今日は金曜日です。
来週にかけてウクライナ情勢や金融市場にどのような動きがあるのか、非
常に不透明です。
本日のドル円は121円80銭~122円80銭程度を予想します。


プーチン氏の大誤算 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は朝方、株価の大幅下落を受け120円60銭まで
売られたが、その後はFOMCメンバーによる相次ぐタカ派発言で
121円16銭まで反発。
◆ユーロドルは水準を切り下げ、1.0964まで下落。
◆株式市場は大幅に反落。ダウは448ドル下げ、他の主要指数も
下落。FOMCメンバーによるタカ派発言が重しに。
◆債券は反発。長期金利は2.29%台に低下。
◆金と原油はともに反発。

◆2月新築住宅販売件数  →  77.2万件  


本日の注目イベント

◆欧   ユーロ圏3月製造業PMI(速報値)
◆欧   ユーロ圏3月サービス業PMI(速報値)
◆欧   ユーロ圏3月総合PMI(速報値)
◆欧   ECB経済報告
◆欧   EU首脳会(ブリュッセル、25日まで)
◆欧   NATO緊急首脳会議(ブリュッセル)
◆欧   G7首脳会議(議長国ドイツ、ブリュッセル)
◆英   英3月製造業PMI(速報値)
◆英   英3月サービス業PMI(速報値)
◆英   英3月コンポジットPMI(速報値)
◆米   3月マークイット製造業PMI(速報値)
◆米   3月マークイットサービス業PMI(速報値)
◆米   3月マークイットコンポジットPMI(速報値)
◆米   3月フィラデルフィア連銀景況指数
◆米  経常収支(10-12月)
◆米   2月耐久財受注
◆米   新規失業保険申請件数
◆米   ボスティック・アトランタ連銀総裁、オンライン討論会に参加
◆米   ウォーラーFRB理事、講演(オンライン)
◆米   エバンス・シカゴ連銀総裁講演
◆米   カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁講演

2月24日にロシアがウクライナへ侵攻を開始してから今日で1カ月が経ちました。
首都キエフを陥落させる計画でしたが、ウクライナの予想を超える強い抵抗に、プ―
チン氏は焦りを感じており、マスコミは「プーチンの誤算」と書きたてています。
焦ったプーチン氏は「核」をちらつかせ、欧米西側諸国に揺さぶりをかけていますが、
ロシア軍の士気もかなり低下してきており、戦争は消耗戦の様相になってきました。
昨日は、プーチン氏が「友好的でない」と見なす国に輸出する天然ガスについては代
金の支払いを「ルーブル建て」で求める方針を示しました。
現時点では詳細は明らかになっていませんが、大きく下落したルーブルの相場を押し
上げる目的と、代金をドルで受け取っても制裁により口座が凍結されているため、自
由に動かすことができない状況があるからとみられます。
これに対してドイツは「契約違反だ」と反発し、イタリアはルーブルで支払う意志は
ないと言明しています。

侵攻から1カ月でウクライナでの民間人死亡者数は953人(国連)と発表されてい
ますが、実際にはこれをはるかに上回る数字になるとみられます。一方ロシア側の被
害についてブルームバーグは、少なくともロシア兵は7000人以上死亡し、最大で
1万5000人の可能性もあると、NATO高官の情報として伝えています。
ロシアではプーチン政権に対する批判の声も上がっており、批判の声をあげた多くの
市民が拘束されていますが、ロシア中銀のナビウリナ総裁はプーチン氏がウクライナ
侵攻を命じた後に辞任しようとしたが、プーチン氏に引き留められたと、関係者の話
として報じています。
また、ロシアで気候問題の大統領特使を務めるチュバイス氏が辞任し、同国を去った
ことも報じられています。

ウクライナのゼレンスキー大統領は昨日の夕方6時からオンラインで日本の国会向け
に演説を行いました。
演説では、アジアで唯一ロシアへの制裁に加わったことに感謝すると共に、さらなる
制裁継続を求めていました。
日本がリーダーシップを発揮することに期待し、ロシアとの貿易を禁止することも求
めていました。最後に日本語で「ありがとう」と述べ、演説を終えましたが、岸田首
相を始め日本の政治家はこの演説を聞いて何を思い、何をしようと思ったのでしょう。
「胸が痛んだ」と語るだけでは何の意味もありません。
今すぐどのような行動を起こすのか、見ていきたいと思います。

ドル円はほぼ一本調子で上昇を続け、昨日の東京市場では121円41銭までドルが
買われる場面がありました。その後NYにかけて120円台半ばまで下押しする場面
がありましたが、NY時間では相次ぐタカ派的な発言がFOMCメンバーから発せら
れたことで再び121円台に戻っています。
積極的にタカ派発言を繰り返しているセントルイス連銀のブラード総裁は、米金融当
局がインフレ率を2%目標に戻すには「長い道のり」があると述べ、「これは当局が
慣れているペースより速く動くことを意味する。FF金利誘導目標を300ベーシス
ポイント引き上げた1994年―95年の引き締めサイクルが手本にすべき戦略だ」
と指摘しました。
クリーブランド連銀のメスター総裁も、「何回かの50ベーシスポイントの利上げが
必要になる。ここから7月までの全会合を前提にするつもりはないが、後ではなく、
より早い時期にもっと積極的になる必要があると考える」と年内に複数回の0.5%
の利上げを支持する考えを示しました。
またハト派として知られるサンフランシスコ連銀のデーリー総裁も「物価安定を確保
するために必要なあらゆる措置を講じる用意がある。現時点で物価が安定していると
誰も考えていないことは明白だ」として、「0.5ポイントの行動が必要なら、われ
われはそれを実行するだろう」と発言しています。
インフレ率は鈍化に向うとして、急激な利上げには慎重な姿勢を見せていたデーリー
総裁までも50ベーシスポイントの利上げを支持する考えを示したことで、5月のF
OMCでの大幅利上げの可能性が一気に高まったと思います。

現時点では、FRBが今年残り6回全ての会合で利上げを実施し、そのうち少なくと
も1回は50ベーシスポイントの利上げ行う公算が高まってきました。
為替は必ずしも金利だけで動くものではないものの、一方で「金利が為替水準を決め
る上で最も重要なファクターの一つ」であることも事実です。
一旦121円台半ばまで上昇したドル円はなかなか下押ししにくくなって来たとも言
えそうです。

本日のドル円は120円60銭~121円70銭程度を予想します。


ドル円欧州市場で121円台に乗せる 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は一段と上昇基調を強め、120円台に乗せた後、
欧州市場では121円03銭まで上昇。日米金利差や中銀の
金融政策の違いなどが改めて材料に。
◆ドル高が進んでいることからユーロドルは小幅に下落。
1.10まで売られたが下げは限定的、円の下落がより大きく、
ユーロ円は133円32銭まで上昇。
◆株式市場は3指数が揃って反発。ダウは254ドル上昇し、
ナスダックも270ポイント買われる。
◆債券は続落。長期金利は一時2.39%台まで上昇し、
この日の高値圏で引ける。
◆金と原油は下落。

◆3月リッチモンド連銀製造業景況指数  →  13

本日の注目イベント

◆トルコ  トルコ2月消費者物価指数
◆欧   ユーロ圏3月消費者信頼感指数(速報値)
◆英   英2月消費者物価指数
◆米   2月新築住宅販売件数
◆米   デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、ブルームバーグ主催のイベントに参加
◆米   ブラード・セントルイス連銀総裁、討論会に参加

ドル円の上昇が止まりません。
昨日の朝方には119円台半ばで推移していたドル円は120円台に乗せ、
その後も上昇を続け、欧州市場ではついに121円03銭までドル高円安が
進行しました。余りの上昇の早さに、筆者のレンジ予想も大きく外れていま
す。ドルが買われていますが、それ以上に「円が売られている」状況かと思
います。

ドル買いの背景は米金利の上昇ですが、そのきっかけは21日のパウエル議
長のタカ派的発言が大きく影響しています。先週のFOMC後の会見ではそ
れほど目立った発言はなかったものの、21日の全米企業エコノミスト協会
での講演では、「FF金利誘導目標を1会合ないし複数の会合で0.25ポ
イント引き上げる、より積極的な行動が適切だとの結論に至った場合は、そ
うするだろう」と述べ、さらに議長は講演後の質疑応答では、5月FOMC
(5月3~4日)会合での0.5ポイント利上げを妨げる要素はあるのかと
の質問に対し、「妨げるものなどあるだろうか。何もない」と発言し、金利
上昇とドル高のきっかけを与えました。
さらに先週末の日銀金融政策決定会合では、これまでの大規模な金融緩和政
策の維持を決め、黒田総裁は「日本経済全体では円安はプラス」との認識を
示したことも、円売りにつながったように思います。
これらが改めて意識され、昨日の市場では「円全面安」の展開に大きく振れ
たものと見られます。

ドル円は2016年2月以来の水準に達しましたが、今朝の経済紙は当時の
状況と足元の状況を比較しています。
当時「29.9ドル」だった原油価格は「112.1ドル」に上昇し、「1
.77%」だった米長期金利は足元では「2.12%」に。さらに「242
8億円の貿易黒字」は、「6683億円の貿易赤字」に転落しており、全て
が「ドル買い・円売り」要因となります。
特に原油価格の大幅な上昇はほぼ全量を輸入に頼っている日本にとって、そ
れだけドル需要が増すことになり、「実需のドル買い」に基づいた円安と言
えないこともありません。
このまま原油価格が100ドル台で定着するようだと、貿易赤字も定着し、
折からの新型コロナウイルスによる影響からインバウンド効果も、最早見る
影もないほど低下しており、ひょっとすると長期にわたって円安が定着する
可能性も頭をよぎります。

ただ足元では急激にドル高へとバイアスがかかっており、市場では「121
円は単なる通過点」といった声まで出始めています。「調整らしい調整」も
見られないまま121円台まで来ましたが、昨日の欧州市場で121円03
銭まで上昇した後、NY市場の朝方にかけて120円38銭前後まで下押し
された場面が唯一の「小幅な調整」でした。
120円~125円の間のどこかでは「円安を牽制する」発言が出るとみて
いますが、ここからドルを買うのは怖いし、かといって売ってもなかなか機
能しづらい面もあり、難しい動きになってきました。ただ明確な根拠がある
わけではありませんが、市場全体が一気にドル高へシフトしてきた状況に、
筆者は警戒感を覚えます。「人の行く、裏に道あり、花の山」といった心境
でしょうか。

FOMCメンバーによる発言も多くありました。
タカ派の重鎮であるセントルイス連銀のブラード総裁はブルームバーグとの
インタビューで、「インフレ抑制のため金融当局は積極的に動く必要がある
」と指摘し、金融当局がどの程度の速さで動くべきかといった質問に対して
は、「速いほどよい」と答えています。
またクリーブランド連銀のメスター総裁は、「経済の基調的な強さと現在の
極めて低水準のFF金利を考えると、必要な利上げの一部をプロセスの後半
ではなく早期に前倒しすることが好ましいと思う。経済が予測と異なる展開
となった場合に政策を調整しやすくできるからだ」と述べ、年末までに2.
5%程度への金利引き上げを支持する考えを示しました。昨日の発言で最も
ハト派とみられるサンフランシスコ連銀のデーリー総裁は、「インフレ期待
は十分抑制されているようであり、物価上昇はなお鈍化する見込みだ」と発
言しています。

ロシアによるウクライナへの攻撃は止まず、消耗戦の様相を呈してきました
。前米国防長官のエスパー氏は、ロシア軍の装備が整っておらず、士気の低
さが影響していることは明らかだと述べ、「戦争がロシア人とロシア軍にと
って壊滅的な影響をこれまでに及ぼしている」と指摘しています。
明日からバイデン大統領はベルギーのブリュッセルへ行き、NATO首脳と
の会談やポーランドへの訪問も予定されており、局面が変わるかもしれませ
ん。今夜6時からはウクライナのゼレンスキー大統領がオンラインで日本の
国会で演説を行います。日本のより積極的なサポートを要請してくるのでし
ょう。

本日のドル円は120円60銭~121円80銭程度を予想しますが、あま
り参考にはならないかもしれません。


NYドル円119円50銭まで続伸 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は小幅ながら続伸し、119円50銭を記録。
米長期金利が一段と上昇したことで、ドル買いが膨らんだ。
◆ユーロドルはやや水準を切り下げたものの、1.10台で
推移。
◆株式市場は3指数が揃って反落。ダウは6日ぶりに下げ、
201ドル安。ナスダックとS&P500は5日ぶりに下落。
◆パウエル議長が「0.5%」の利上げの可能性を排除しない
ことに言及したことから債券は大幅下落。長期金利は2.29%台
まで上昇
◆金はほぼ横ばい。原油は欧州が制裁によりロシア産の原油の輸入禁止を
呼びかけたことで大幅高に。

本日の注目イベント

◆欧   ユーロ圏1月経常収支
◆米   3月リッチモンド連銀製造業景況指数
◆米   メスター・クリーブランド連銀総裁講演
◆米   デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、オンライン討論会に参加

昨日のNYではドル円が119円50銭まで上昇してきました。米長期金利が
2.29%台まで上昇したことを考えと、当然ということになりますが、筆者
の「120円前後で一旦は調整がある」とする予想も、ややその可能性が低下
した感はありますが、まだその予想を堅持したいと思います。
米債券が大きく売られ、長期金利が上昇したことでドル高に振れましたが、そ
のきっかけはパウエル議長の発言でした。

議長は21日、全米企業エコノミスト協会で講演を行い、「FF金利誘導目標
を1会合ないし複数の会合で0.25ポイント引き上げる、より積極的な行動
が適切だとの結論に至った場合は、そうするだろう」と述べました。
議長は講演後の質疑応答では、5月FOMC(5月3~4日)会合での0.5
ポイント利上げを妨げる要素はあるのかとの質問に対し、「妨げるものなどあ
るだろうか。何もない」とした上で、「決定はなされてないが、最新のデータ
で正当化されれば可性はある」との認識を示し、「同僚と私は、より迅速に行
動する必要があるとの結論に達する可能性が十分あり、その場合はそう行動す
るだろう」と続けました。
議長はまた、「インフレが既に高すぎる状況で、ロシアのウクライナ侵攻が食
品やエネルギー、他の商品の価格を押し上げ、インフレ圧力を悪化させている
。中央銀行は通常なら、イベントが引き起こした商品価格ショックをそのまま
受け止めないが、今回は必ずしも典型的なケースとは言えない」とも述べてい
ました。(ブルームバーグ)
アトランタ連銀のポスティック総裁は講演で、「2022年に6回、23年に2
回の利上げを予想する」と発言し、「同僚たちに比べ私の予想が低い軌道にあ
ることは承知だが、目の前の不確実性が高まっていることに留意し、極めて積
極的な金利軌道が今や適切なのか確信が弱まった」と説明しています。
ウクライナ情勢の不確実性が大きく、戦争の激化や長期化が景気を悪化させる
可能性にも注意が必要との認識を示しました。
米長期金利は今月に入ってすでに0.465%も急騰しており、ドル円はその
金利上昇に沿った形で上昇しています。

ロシアはウクライナに対して南東部の港湾都市マウリポリでウクライナ軍が武
器を捨て、降伏するよう要求しましたが、ゼレンスキー大統領はこれを拒否し
ています。
最終通告の期限は21日早朝でしたが、ウクライナ側はこれを拒否したことで
、同市への攻撃は続いています。ロシア軍の攻撃は避難場所の劇場や病院、子
供の施設までも攻撃しており、国連は2月24日の侵攻から3月19日までに
、ウクライナで子供75人を含む902人の民間人が死亡し、1459人が負
傷したと発表しましたが、「実際の数字はさらに多い」とのコメントも付け加
えていました。
マウリポリはロシアとクリミアを結ぶ陸路開通を阻む最後の砦としての位置に
あり、ロシアは2014年に併合したクリミアへの陸路を確保する目的で同市
を掌握したいものと見られています。
テレビでの映像を見ると、かなり多くの建物がロシア軍の攻撃によりにより崩
壊している様子が確認されます。ゼレンスキー大統領はマウリポリへの攻撃を
「数世紀にわたって伝え継がれる戦争犯罪だ」と非難しています。
また同時に、ゼレンスキー氏は停戦には「プーチン氏と直接話し合あうしか方
法はない」と繰り返し述べており、対話の門戸を開いています。

ドル円は早朝にもドルが買われており、119円63銭までドル高が進んでい
ます。
本日にも120円をテストする可能性もあるかもしれませんが、投機筋はドル
ロングが貯まりつつあります。引き続き注意は必要です。

本日のドル円は119円10銭~120円程度と予想します。


FOMC、0.25%利上げを決定 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は大幅に続伸し119円台に乗せる。米長期金利の
上昇に119円12銭までドル高が進む。
◆ユーロドルも続伸。1.10台を回復し、1.10台
半ばまで買われる。ユーロは対円でも131円台に届く。
◆株式市場は大幅に続伸。売られ過ぎた銘柄を買う動きに
加え、パウエル議長が米経済に対し楽観的な見通しを示した
ことが材料に。
◆債券は続落し、長期金利は一時2.24%台まで上昇。
◆金は4日続落。ドルが買われたことで1900ドルを割り込む
場面も。原油も続落。

◆2月小売売上高          →  0.3%
◆2月輸入物価指数         →  1.4%
◆3月NAHB住宅市場指数     →  79

本日の注目イベント

◆豪   豪2月雇用統計
◆トルコ  トルコ中銀政策金利発表
◆欧   ユーロ圏2月消費者信頼感(改定値)
◆欧  ラガルド・ECB総裁講演
◆英   BOE金融政策発表
◆英   BOE議事録
◆米   新規失業保険申請件数
◆米   2月住宅着工件数
◆米   2月建設許可件数
◆米   3月フィラデルフィア連銀景況指数
◆米   2月鉱工業生産
◆米   2月設備稼働率

今朝方発表されたFOMCでは、多くの市場関係者が「決定的」とみていた政策
金利の引き上げを「0.25%」とすることを決めました。声明文では、「経済
活動や雇用の指標は引き続き強さを増した。雇用はこの数カ月、力強く伸びてお
り、失業率は大幅に低下した。インフレは高止まりし、それはパンデミックとエ
ネルギー価格の上昇、より広範な価格圧力に関連した需給の不均衡を反映してい
る。ロロシアによるウクライナ侵攻は人的・経済的に甚大な苦難を引き起こしつ
つある。この問題が米経済に及ぼす意味合いは極めて不確実だが、侵攻とその関
連の事柄は短期的にインフレを一段と押し上げる圧力を生み、経済活動への重し
となる公算が大きい」と記されています。(ブルームバーグ)

パウエル議長は会見で「米経済は極めて好調だ。近いうちに経済が下降する兆し
はほとんどない。向こう1年間のリセッションの確率は特に高くない」と述べま
した。
政策金利の「0.25%」引き上げは賛成8、反対1で決まりましたが、反対票
を投じたのは「タカ派の代表格」であるセントルイス連銀総裁のブラード氏でし
た。ブラード氏は「0.5%」の利上げを主張しました。「言行一致」です。

パウエル議長の発言を受け、市場ではリスクオンが強まり、株価は昨日に続き3
指数とも大幅高で取引を終えました。ダウはこの2日間で1118ドルの上昇と
なっています。安全資産の債券は売られ、長期金利は2.24%前後まで上昇。
ドル円は米金利の上昇を背景に119円12銭まで買われました。
それにしてもドル円の上昇スピーは極めて速いです。わずか4日間で3円以上の
円安が進み、日足チャートでは「8営業日連続の陽線」を示現し、2018年3
月以来の上昇となっています。
特に116円66銭を上抜けしてからは上昇の勢いを一段と強めており、いわば
相場のセオリー通りの動きと言えます。ここまで来ると、120円を付けるまで
は「達成感」も出ないでしょう。120円という大台を前に、一次攻撃だけでは
突破できない可能性がありますが、何度かテストすれば抜けるとみています。も
っとも、足元の米長期金利の上昇スピードも速すぎる印象ですが、大台達成には
少なくとも同金利が2%台を維持していることが必要でしょう。
昨日は豪ドル円や、ユーロ円など、クロス円も軒並み上昇しており、「円の独歩
安」の展開でした。この傾向がどこまで続くのかという点も、ドル円を見る上で
重要です。

ウクライナのゼレンスキー大統領は米連邦議会でオンライン形式の演説を行い、
ロシア軍撃退に向け一段の支援を訴えました。
バイデン大統領はその数時間後、ウクライナに無人機や対空システムなど追加軍
事支援を行うと約束するとともに、ロシアのプーチン氏を「戦争犯罪人」と呼ん
でいます。一方で、ロシアとウクライナの停戦協議では交渉が前進している兆し
もあり、ロシア大統領府のペスコフ報道官は、ウクライナが自国の軍隊を保持す
る中立国になるという提案は「ある種の妥協点と見なすことができる」と述べて
おり、一方ウクライナ側はいかなる結果になろうと、確実な安全の保証が必要だ
としています。

FOMCを通過し、市場の関心はウクライナ情勢の進展と、インフレ圧力の動向
に集約されそうです。
上述のように、停戦交渉にやや明るさも出て来そうな状況ですが、強硬姿勢を崩
していないプーチン氏がそう簡単に振り上げた刀を下すとも思えません。
最悪の事態になると、第三次世界大戦にまで行きかねない今回のロシアによるウ
クライナ侵攻は、バイデン大統領とプーチン氏の「肝試し」(武者リサーチ)と
の見方もあります。
「リスク回避の円買い」、「有事の円買い」がこれまでほど機能しにくくなった
足元では、やはり中銀の金融政策の方向性の違いが非常に大きな要素になってい
ます。急速に進んだ円安を考えると、明日の日銀金融政策決定会合後の黒田総裁
のコメントにも耳を傾ける必要があるかもしれません。

本日のドル円は118円40銭~119円30銭程度を予想します。


米長期金利、一時2.16%台まで続伸 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は東京時間に118円45銭まで買われた。欧州市場の
朝方には117円70銭まで下押しされたが、NYでは118円39銭
まで上昇。直近高値に接近したことで神経質な展開に。
◆ユーロドルは前日と同じ展開で、1.09台前半から1.10前後
で推移。
◆株式市場は3指数が揃って大幅に上昇。経済指標の下振れにFRBは
積極的な利上げを正当化できないとの観測が支えに。ダウは600
ドルに迫る上昇で引ける。
◆債券は続落し、長期金利は一時2.16%台まで上昇。
◆金は大きく続落。原油も続落し、一時は93ドル台まで売られる。

◆3月NY連銀製造景況業指数    → -11.8
◆2月生産者物価指数        →  0.8%

本日の注目イベント

◆日   2月貿易統計
◆日   1月鉱工業生産
◆欧   ウクライナ大統領、米議会でオンライン演説
◆欧   NATO、臨時国防相会合
◆米   2月小売売上高
◆米 2月輸入物価指数
◆米   3月NAHB住宅市場指数
◆米   FOMC 政策金利発表
◆米   パウエル議長記者会見

上昇基調を強めているドル円は昨日の東京時間朝方に118円45銭近辺まで
買われ、2016年12月に記録した118円66銭の、直近ドル高値を窺う
気配を見せました。
先週末から上昇の勢いを増し、それ以降「押し目」らしい「押し目」もないま
ま上昇しています。
短期的な動きを示す「30分足」を見ると、先週末から右肩上がりの軌道を描
き、「転換線」がサポートしながら下値を切り上げているのが確認できます。
上昇基調を続けている「転換線」の下方を、「基準線」、「先行スパン」、さ
らには「遅行スパン」が揃って見事に上昇しています。
ただ昨日の夕方、欧州市場が参入した頃、ドル円は118円を割り込み、11
7円70銭
まで下落する場面があり、このところとしては目立った調整局面になりました
が、それでも「30分足」では、雲の下限でしっかりサポートされ、結局NY
では再び118円台を回復して、118円39銭までドル高が進みました。

NYではリスクオンに近い動きでした。
株価は3指数が大きく買われ、債券が売られています。商品市場では荒っぽい
動きが続き、WTI原油価格は前日に続き大きく売られ、100ドルの大台を
割りこみ一時は93ドル台まで下げる場面もありました。利益確定の売りに加
え、中国では新型コロナウイルスの感染拡大が続き、ロックダウン措置が導入
されていることから、原油需要が減少するといった見方も売りに拍車をかけた
ようです。これで130ドル台の高値から1週間たらずで28%以上下落した
ことになります。金価格も同じような状況です。直近高値は2078ドル台ま
で買われましたが、こちらも高値から150ドル程下げて
います。足の速い資金が市場に徘徊していることが窺えます。

ロシアによるウクライナ侵攻は3週目に入りました。
ロシア軍はキエフ近郊まで迫り、攻撃を継続していますが、ウクライナの徹底
抗戦に手を焼いているようで、ロシア軍幹部も軍事進行の遅れを認めています。
首都キエフではロシア軍の市街地への攻撃が激しくなるとの予想から、「15
日夜からの35時間の外出禁止令」を敷くことを決められています。
そんな中、ウクライナが西側諸国から供与された大量の最新式対戦車ミサイル
がロシア軍の市街地進行を阻む一因となり、ロシアに戦術の変更を迫る可能性
があると、ブルームバーグが軍事アナリストの分析結果を伝えています。

記事によると、過去数週間でウクライナに送り込まれた最新式対戦車ミサイル
の量は驚異的であり、英国は次世代軽対戦車(NLAW)ミサイル3615基
をウクライナに送ったと発表。ドイツは1000基、ノルウェーは2000基
、スウェーデンは5000基の対戦車兵器をそれぞれ供与するとのことです。
米国も数量こそ発表していないものの、携行式対戦車ミサイル「ジャベリン」
をウクライナに提供します。他の国も同様の兵器を送っており、その多くは最
新技術ではないものの、ロシア軍にとっては相当な脅威となり、プーチン氏が
始めたウクライナ侵攻が当初の想定通り進んでいない要因の一つになっている
とのことです。
プーチン氏は昨日、EUのミシェル大統領と電話で会談し、ウクライナ停戦交
渉で「相互に受け入れ可能な解決策を見いだそうという真剣な姿勢を見せてい
ない」と批判したことをロシア大統領府が発表しています。
また昨日の本欄でも触れたように、バイデン大統領は来週ベルギーのブリュッ
セルを訪問し、NATO緊急首脳会議に出席するとホワイトハウスが正式に発
表しました。

米2月のPPIは年率で「10.0%」でした。
CPIに続きインフレ圧力が続いているということで、明日朝のFOMCの結
果にも影響を与えそうですが、「0.25%の利上げ」は動かないところでし
ょう。焦点はパウエル議長の発言内容です。
ウクライナ情勢の不確実性をどのように政策に落とし込んでいくのか。ロシア
の攻撃がさらに激化し残酷化するようなら、一旦鎮静化してきた資源価格が再
度高騰するリスクもあり、パウエル議長も今後の大幅利上げを正当化できない
可能性があります。
ポイントは、今後の会合で「0.5%」といった大幅な利上げを採用する可能
性があるのかどうかについての言及です。
インフレは収まる兆しが見られず、さらにインフレが高進するようだと、パウ
エル議長、あるいはFRBそのものの信用失墜につながり、ひいてはバイデン
政権の支持率低下にも影響します。その結果、11月の中間選挙で与党民主党
が敗北し、再び「ねじれ議会」の様相を呈すことになりかねません。
パウエル議長にとっても非常に厳しい判断を迫られていると言えます。

本日のドル円は117円80銭~118円70銭程度を予想します。


ドル円続伸し、NYでは118円21銭まで上昇 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は続伸。欧州市場で118円台に乗せ、NYでは
118円21銭までドル高が進行。米長期金利が大きく
上昇し、2.1%台に乗せたことも支援材料に。
◆ドル高が進む中、ユーロドルにも売り圧力が強まり
終始1.09台で推移。
◆株式市場はまちまち。ダウは大きく上昇する場面が
あったが、引け値ではほぼ横ばい。一方ナスダックは金利上昇が
嫌気され262ポイントの下げに。
◆債券は大幅に続落。長期金利は2.13%台まで上昇。
◆金は続落。原油も大きく売られ、一時は100ドルを割り込んだが
103ドル台まで戻して取引を終える。

本日の注目イベント

◆中   中国2月小売売上高
◆中   中国2月鉱工業生産
◆独   独3月ZEW景気期待指数
◆欧   ユーロ圏1月鉱工業生産
◆欧   OPEC月報
◆英   英2月失業率
◆米   3月NY連銀製造景況業指数
◆米   2月生産者物価指数
◆加   カナダ2月住宅着工件数

ドル円は連日上値を切り上げ、ついに118円台までドル高が進みました。
投資家のセンチメントがドル高に大きく傾く中、昨日は米長期金利が2.13%
台まで上昇したことがドル高を後押し、NYでは118円21銭と、2017年
1月以来5年2カ月ぶりの水準を付けました。米長期金利が2.13%台まで上
昇したのは、2019年7月以来ということになります。
FOMCが本日から開催されることもあり、投資家は再び日米中銀の金融政策の
違いに着目し始めています。


明日の会合最終日にFRBは「0.25%の利上げ」を決めるものと思われます
。FRBはコロナウイルスのパンデミックを受け、2020年3月にゼロ金利政
策を採用し、金融緩和を始めましたが、これで超低金利時代は終焉を迎え、「金
融引き締めへの第一歩」を踏み出すことになります。
現時点の金利先物市場から推計すると、FRBは年内の会合全てで利上げを「実
施することが示唆されています。
市場もこの辺りに再度目を向け、日米金利差がさらに拡大するとの見方から「円
売り」姿勢を強めているものと思われます。
ロシアによるウクライナ攻撃でも、思ったほど円買いが進まなかったことも、ド
ルの買い方に安心感を与えています。ただ、それにしてもドルの上昇スピードは
速すぎると思われます。
これで目先のドルの高値のメドは2016年12月に記録した118円66銭と
いうことになりますが、118円台まで円安が進んだことで、自動車など輸出企
業はかなり余裕を持って市場と対峙できます。慌ててドル売注文を持ち込む必要
が無くなったとみられます。
一方石油など輸入業者はドルを早めに手当しておかないと、といった焦りも出て
きます。
加えて、原油価格が100ドルを大きく超えており、ドルに対する需要は拡大の
一途です。こう考えると、足元のドル高は投機的な動きに加えて「実需に基づく
ドル高」と言えなくもありません。
上記118円66銭を明確に上抜けするようだと、「次は120円」といった声
も出てきそうです。

ウクライナ情勢を巡り、サリバン米大統領補佐官と中国の楊共産党政治局員がロ
ーマで会談しました。会談は約6時間続き、両者はロシアによる戦争に関し、「
実質的な議論」を行ったとの声明をホワイトハウスが発表しています。
サリバン氏は、ロシアとウクライナの戦争だけではなく「米中関係における広範
囲な問題を取り上げた」と述べ、「米中間で開かれた連絡ラインを維持する重要
性も強調した」と語っています。
一方楊氏は、中国がウクライナ和平協議の促進にコミットしており、中国の立ち
位置を歪曲したり中傷したりする不正確な情報の発信には反対すると述べていま
す。(ブルームバーグ)
ウクライナとロシアの停戦交渉は、双方が状況を見極めるため15日まで一時中
断となりました。ウクライナのゼレンスキー大統領は16日に米議会向けに演説
を行うことを発表し、国連のグテレス事務総長は、ウクライナ国内や国外に避難
した人の数は約500万人以上になると指摘しています。またブルームバーグは
、ホワイトハウスがバイデン大統領の訪欧計画を協議していると報じています。
NBCニュースもバイデン大統領の訪問はベルギーのブリュッセルになる可能性
があると報じています。ブリュッセルにはNATOの本部が置かれています。

ドル円は「日足」では6営業日連続で「陽線」を示現しています。
これは昨年12月以来ということになりますが、その時と比べ値幅が圧倒的に異
なります。今回は既に6営業日で3円50銭以上も上昇しており、仮に118円
66銭を超えたとしても120円到達前には「スピード調整」が見られると予想
します。
ロシアの攻撃によりウクライナの民間人の被害も拡大しています。首都キエフ制
圧に向けた総攻撃がいつあってもおかしくない情勢下では、まだまだ不確実性が
多いと感じます。本日のドル円は117円80銭から118円70銭程度を予想
しています。


ドル円5年2カ月ぶりに117円台前半まで上昇 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は大幅に続伸。東京時間にドルの直近高値であった
116円35銭を上抜け、NYでは117円35銭まで買われる。
◆ドル高の流れが加速し、ユーロドルは1.0902まで下落。
◆株式市場は3指数が揃って下落。バイデン政権がロシアの最恵国待遇を
取り消したことなどが材料に。ダウは229ドル下落。
◆債券は横ばい。長期金利は1.99%台で推移。
◆金は反落し、原油は反発。

◆3月ミシガン大学消費者マインド(速報値)  → 59.7  


本日の注目イベント

◆欧   ユーロ圏1月鉱工業生産

ドル円は一気に117円台前半まで急伸しました。
116円台半ばから117円にかけてはもう少しもみ合うだろうと予想していま
したが、金曜日の東京時間で、これまでのドルの直近高値であった116円35
銭を抜くと、ストップロスらしきドル買いも巻き込み116円台半ばを超え、N
Yでは117円35銭までドル高が進みました。
これまでユーロドルに比べ動きが緩慢でしたが、それを取り戻すかのように、ド
ル高円安が進んでいます。この水準で思い出すのは、2016年11月の米大統
領選で大方の予想に反して、トランプ氏が事前調査では有利だったクリントン女
史に勝利に、その影響からドル円が100円を割り込み、急激な円高が進行しま
した。その後1月の大統領就任演説を経て、市場の評価はトランプ氏が予想され
た以上に大統領職を遂行できるといった見方に変わり、ドル高が一気に進んだ水
準です。この時はわずか2カ月余りで18円以上も急激なドル高が進みました。
その後のトランプ氏の言動はご存知の通りです。

ウクライナ情勢は相変わらず予断を許さず、ロシアによる攻撃が続いています。
ロシア軍は首都キエフに15キロほどまで迫り、この週末にも一気に総攻撃を仕
掛ける可能性も取りざたされていましたが、首都制圧には至っていません。
それでもウクライナ西部、ポーランドとの国境に近いリビウにあるウクライナ軍
の施設に、ロシア軍からミサイルが撃ち込まれ、数十人が死亡しています。空爆
は西側へとさらに侵攻しているようで、キエフ周囲の標的に対する攻撃も続き、
戦闘の激化が報告されています。黒海に面したミコライフへの空爆では民間人9
人が死亡したとみられています。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアとの交渉はこれまでより中身のある
内容になってきた兆候があるとし、かつての「最後通告から変わりつつある」と
述べています。
また、ウクライナの大統領府顧問は、ロシアとの間で「継続的な」ビデオ交渉が
行われていることを明らかにしています。
ウクライナからの避難民は250万人を超え、その多くはポーランドに逃れたよ
うです。
避難民の数は今後数日で400万人に達する可能性があると、ブルームバーグは
伝えています。

ロシアのシルアノフ財務相は13日、国営テレビのインタビューで、「ロシアの
外貨準備高は約6400億ドル(約74兆7000億円)で、そのうちの約30
00億ドルは現在使うことができない状況にある」と述べました。
さらに、人民元建て準備資産へのアクセスを制限しようと「西側諸国が中国にど
のような圧力をかけているのかわれわれは見守っている」と説明し、「しかし、
ロシアと中国の協力関係は同準備資産を守るだけでなく、拡大させると考える」
と続けています。
ロシアに対する経済制裁の効果はまだ顕著には出ていない様ですが、金融の分野
ではその影響はより早期に出て来そうです。すでにロシアからの業務の撤退を決
めたJPモルガンやゴールドマンに続き、欧州の有力金融機関であるドイツ銀行
はロシアでの業務の縮小を決定しました。フランスのBNPパリバやソシエテも
追随する見込みです。

ドル円の上昇スピードはやや早過ぎると感じますが、この先は118円台まで目
立ったレジスタンスは見当たりません。
2016年12月から翌年1月にかけて記録した118円60銭台が一応の目安
になりますが、仮にその水準を抜ければ、市場は「120円」という数字を意識
し始めることになります。今週は明日からFOMCが開催され、16日には政策
金利の発表があります。
政策金利は「0.25%の利上げ」で動かないものと思いますが、その後のパウ
エル議長の発言には注目が集まります。
議長がウクライナ情勢のリスクをどのように捉え、米景気への影響をどのように
考えるのか。また、原油価格の高騰からインフレ圧力はさらに高まると見られま
すが、その対応策として、その後の会合で「0.5%の利上げ」の可能性がある
のかどうかもポイントになります。
「次回以降の会合で、0.5%の利上げの可能性を排除しない」といった表現に
なれば、ドル円はもう一段上昇する公算が高いと考えますが、その際に株価がど
こまで下げるのかにも注意です。

ドル円はオセアニア市場ですでにNYの高値を大きく上回り、117円60銭ま
で買われています。
ドル円の上昇に勢いが付いて来ましたが、本日の予想レンジは117円10銭~
118円10銭といったところでしょうか。思いのほかドルの上昇圧力は強いよ
うにみられますが、市場参加者のセンチメントもドル高方向に大きくシフトして
いるようです。上昇スピードの速さには一応注意が必要です。


ウクライナ、ロシア外相会談成果なし 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は堅調に推移。長期金利の上昇を受けドルが
買われたが、東京時間に付けた116円20銭前後は抜けず。
◆ユーロドルはECBのQE縮小を受け上昇したものの、続かず。
◆株式市場は反落。ウクライナとロシアによる外相会談では
特段進展もなかったことから、3指数とも揃って下落。
◆債券は4日続落。CPIの高い伸びを受け、長期金利は一時
2%を超えたが、引けでは1.98%台まで低下して取引を終える。
◆金は反発。原油は続落し106ドル台に。原油は当面の頂点を付けた
との声も。

◆2月消費者物価指数         →  0.8%
◆ 新規失業保険申請件数        →  22.7万件
◆米2月財政収支           →  -216.6b
◆10-12月家計純資産変化     →  5297b

本日の注目イベント

◆独   独2月消費者物価指数(改定値)
◆英   英1月鉱工業生産
◆英   英1月貿易収支
◆米   3月ミシガン大学消費者マインド(速報値)
◆加   カナダ2月就業者数
◆加   カナダ2月失業率

ドル円は昨日の東京時間朝方に116円台に乗せ、午後には116円20銭
近辺まで上昇する場面がありました。この欄でも何度か指摘したように、1
15円台後半から116円30銭近辺までが上値の「抵抗帯」であり、ここ
を抜け切れるかどうかが焦点です。
ドル円はNYでも底堅い動きは見せたものの、やはりこのゾーンが意識され
たのか、ドルの高値は東京時間のそれと同水準で上昇を抑えられています。
ただ、今回の動きはこれまでの動きとはやや異なり、今朝も116円台で推
移しており、「ドルは上に行きたがっている」様に思えます。
これまでとは異なり、116円前後での「滞空時間」も長いことから、11
6円台半ばテストも、やや期待が持てそうな雰囲気です。米長期金利の上昇
が支援材料になっています。

トルコのアンタルヤで行われたウクライナのクレバ外相とロシアのラブロフ
外相との会談は、結局目立った成果はありませんでした。
会談はトルコの仲介で1時間半にわたって行われましたが、会談後クレバ外
相は、「ロシアのラブロフ外相が通告してきたのは大まかに言って、ロシア
は要求が満たされるまで攻撃を継続するということで、その要求とは控えめ
なところで降伏だ」と語っています。
一方ラブロフ外相は、両国の大統領による真剣な対話にロシアはオープンだ
としつつ、「そのような対話には付加価値がなければならない」(ブルーム
バーグ)とし、ウクライナの非武装化など、相手国の大幅な譲歩がなければ
ならないことを主張しているようで、ウクライナのゼレンスキー大統領が言
うように、「解決には双方大統領の直接対話が必要」ではあるものの、実現
にはほど遠いようです。
この会談後にEUは首脳会議を開催しており、初期の声明案では「ウクライ
ナはわれわれ欧州の家族の一員だ」と書かれていますが、加盟国では一致し
ていないようです。
またロシアの経済発展省は、外国人持ち分が25%を超える撤退企業を管理
下に置く方針を明らかにしました。
ロシアからの全面撤退や事業縮小を決めた企業は多くありますが、同条件に
合致する企業は、5日以内に営業を再開するか、株式売却など他の選択肢を
決めなければならないようです。

注目されていた米2月の消費者物価指数が発表されました。
前年同月比では「7.9%」と、市場予想通りでしたが、1月の「7.5%
」を大きく上回り、40年ぶりの高水準でした。
変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIも、前年同月比「6.4%
」(1月は6.0%)と高く、足元の原油価格の高騰から3月はさらに上昇
するとの見方が優勢です。項目別ではガソリン価格と住宅関連のコスト上昇
が大きく影響しています。

ガソリン価格は全米平均価格が1ガロン(約4リットル)あたり4.173
ドル(約480円)と、14年ぶりに最高値を更新しており、カリフォルニ
ア州では7ドルに迫る価格も出て来たとの報告もあります。
また住宅関連では家賃が1987年以来の高水準です。
ロシアのウクライナ侵攻以来高騰している原油価格の大部分は今回の数字に
は含まれていません。物価は今後さらに上昇する可能性がある一方、戦争に
よる不確実性をどのように織り込んで政策運営を行っていくのか、FRBは
厳しい選択を迫られます。
経済成長を優先させるのか、あるいはインフレ阻止が最優先となるのか、来
週のFOMC後のパウエル議長の会見が注目されます。

ECBは10日の理事会で金融緩和の縮小を加速させる方針を決めました。
5月から段階的に資産購入を減らし、7~9月には終了する見込みですが、
これは今後のデータ次第ということです。
ラガルド総裁は会見で、「政策委員会はインフレ率が中期的に2%の目標で
安定する可能性が強まっているとみている。ウクライナでの戦争は特にエネ
ルギー価格への相当な上振れリスクだ」と説明しましたが、今後も物価上昇
圧力はさらに強まると予想される中、市場はやや想定外と受け止めています。

引き続きウクライナ情勢を睨みながらの展開となります。
ロシア軍が首都キエフに迫っていることも気になります。キエフの人口の半
分はすでに首都からの避難を終えたようですが、この週末にかけてロシア軍
が総攻撃を開始する可能性もないとは言えません。
首都キエフが制圧されれば、リスクオフが再び強まることも考えられます。

本日のドル円は115円60銭~116円50銭程度を予想します。


金融・商品市場、巻き戻しの動き拡大 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は小動きの中、欧州市場で115円95銭まで買われ、
NYでも底堅く推移。
◆ユーロドルは買い戻しが入り、1.1095まで上昇。
◆株式市場は急反発し、3指数とも大幅に上昇。S&P500は
2.6%上昇し、ナスダックは3.6%買われた。
◆債券は続落。長期金利は1.95%台まで上昇し、再び2%に迫る。
◆金は55ドルを超える下げで、2000ドル台を割りこむ。
原油も増産観測から15ドル下げ、108ドル台に。

本日の注目イベント

◆欧   ECB政策金利発表
◆欧 ラガルド・ECB総裁記者会見
◆欧   EU首脳会議(非公式、ベルサイユ。11日まで)
◆米   2月消費者物価指数
◆米   新規失業保険申請件数
◆米 2月財政収支
◆米   10-12月家計純資産変化

本日もウクライナ、ロシア情報が満載です。

ロシアのプーチン氏がウクライナでの戦争を始めてから今日で2週間
になります。首都キエフの制圧に想定していたよりも時間がかかり、
プーチン氏は焦っている、あるいは追い詰められているといった見方
もあります。
メディアは「達成可能な最終目標がない泥沼の様相を呈し始めつつあ
る」と報じています。

ロシア軍は南東部マリウポリの中心部まで迫り、首都キエフにも近い
ことから、近々大規模な攻撃を仕掛けるとの見方もあり、米シンクタ
ンクは「ロシア軍が96時間以内に総攻撃を仕掛ける可能性がある」
(米、戦争研究所)と指摘しています。
ウクライナのゼレンスキー大統領はドイツのメディアとのインタビュ
ーで、一定の譲歩をする用意はあるとし、ロシア側にも妥協を呼び掛
けています。
ゼレンスキー氏は、ロシアのプーチン氏と直接の連絡はとっていない
ことを明らかにし、「戦争を終わらせることができるのは、大統領同
士の直接対話だけだ」との認識を示しました。
また大統領の側近の、イーホル・ジョフクワ外交政策担当補佐官はブ
ルームバーグとのインタビューで、ウクライナは安全保障の確約が得
られれば、政治的な中立性をロシアと議論することにオープンだと述
べています。ただ同時に、「自国領土は1インチも明け渡すつもりは
ない」とも述べています。同氏はロシアのプーチン氏と交渉する前提
条件として、戦闘行為の停止と軍の撤退を挙げていますが、プーチン
氏がこの条件を飲むとも思えず、交渉の実現の可能性は低いと見られ
ます。

バイデン大統領は、ロシアの国営原子力企業ロスアトムへの制裁措置
を検討しているようです。詳細は明らかになっていませんが、同社は
世界中の発電所に核燃料や技術を提供しており、ホワイトハウスは制
裁で予想される潜在的な影響について原発業界と協議をしている模様
です。
WHOのテドロス事務局長はジュネーブで会見し、ウクライナの複数
の医療施設が攻撃され、これまでに少なくとも10人が死亡、16人
が負傷したことを明らかにしています。
また、ゼレンスキー大統領も、マリウポリの産科病院がロシアの空爆
を受けたとツイッターで報告しています。

リスク回避の流れが続いていた金融・商品市場では昨日大きく巻き戻
しが入り、相場は大きく反転しています。
WTI原油価格は、アラブ首長国連邦(UAE)が「OPECプラス
」諸国に対し、増産のペースを加速するよう呼び掛けたことが材料と
なり、一時は前日比16%安の103ドル台まで急落しました。同じ
ように、金価格も55ドルを超える下げとなり、一気に2000ドル
の大台を割り込みました。いずれも利益確定のトリガーになったよう
です。株式市場でも、ダウは一時800ドル程上昇し、大きく売られ
てきたナスダックは3.8%程上昇する場面がありました。いずれも
その後上げ幅を縮小しましたが、久しぶりの3指数揃っての大幅高で
す。

ドル円には大きな動きは見られませんが、欧州時間に1カ月ぶりとな
る115円95銭までドル高が進む場面がありました。
米長期金利が1.95%台まで上昇し、ドル円をサポートする格好に
なっています。
本日はさすがの日本株も大きく上昇すると見られますが、この流れが
今夜のNY市場まで継続されれば、「リスク回避の後退」から116
円台も十分あり得ると予想します。
ただ、昨日の動きは「単なる一時的な反発」と思われ、ウクライナ情
勢がこれで終わるとは到底思えません。今後も何度も「リスク回避」
の流れが起きることは容易に想像できます。
ただ、長い目で見れば、「あの時がリスク回避終焉の第一歩だった」
と振り返ることになるのかもしれません。
本日はウクライナとロシアによる第4回目の停戦交渉がある予定です。
期待はしていませんが、わずかながらの希望は持っています。
全ては「クレムリン」からの指示に従うのみなのでしょうか・・・・。

本日のドル円は115円50銭~116円30銭程度を予想します。


米、ロシア産エネルギーの輸入を禁止 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は堅調に推移し、米金利の上昇を手がかりに
115円79銭まで買われた。
◆ユーロドルは反発。EUが債券の共同発行を計画しているとの
報道に、1.0958まで上昇。
◆株式市場はウクライナのゼレンスキー大統領の発言で
3指数が大きく上昇する場面があったが、結局続かずに
続落。
◆債券は続落。長期金利は1.84%台へと上昇。
◆金と原油は一段と上昇。原油は米国がロシア産のエネルギーの
輸入を禁止したことから一時129ドル台まで上昇。

本日の注目イベント

◆豪   豪3月ウエストパック消費者信頼感指数
◆日   10-12月GDP(改定値)
◆韓   韓国大統領選
◆中   中国2月消費者物価指数
◆中   中国2月生産者物価指数

本レポートの出だしは、連日「ウクライナ情勢」が定着してきました。
「今日のロシア・ウクライナ情報」といった感がありますが、いた仕方
ありません。
この地での情勢が世界の金融・商品市場に大きな影響を及ぼし、今やこ
の戦争がいつまで続くのかが最大の焦点となり、「オミクロン株」の感
染状況などはもはや、圏外になった印象です。

今朝も、その「今日のロシア・ウクライナ情報」から行きます。

バイデン大統領は8日、ロシア産の原油や液化天然ガス(LNG)、石
炭など化石燃料の輸入を禁止すると発表しました。また、英国もロシア
産原油の輸入を年末まで停止することを発表しています。バイデン氏は
ホワイトハウスで、「ロシア経済最大の動脈を標的にする」と表明し、
「プーチンの戦争にわれわれは加担しない」と述べました。
さらに、「プーチンはどんな犠牲があろうと自身が決めた残虐な道を進
み続ける決意のようだ。ロシアはこれからもおぞましい犠牲を強いなが
ら進軍を続けるかもしれないが、これだけははっきりしている。ウクラ
イナは決してプーチンの勝利にならない」とし、「プーチンは都市を陥
落させたとしても、国家を手に入れることは断じてない」と強い口調で
続けました。(ブルームバーグ)
またバイデン氏は、石油、天然ガス業界に、過度な値上げを行わないよ
う、警告もしています。
米国がロシアからのエネルギーの禁輸を決めたことで、昨日のWTI原
油価格は129ドル台まで急伸し、北海ブレントも一時132ドルを超
えています。
これに対してロシア側も、西側諸国の制裁に対抗するため一部の物品や
原材料の貿易を禁止・制限する命令を出したようですが、具体的な対象
については明らかになっていません。

ヘインズ米国家情報長官は8日、下院で開かれた世界の脅威に関する年
次公聴会で、「ロシアがウクライナの領土を占領、支配し、持続可能な
親ロシア派の政権をキエフに樹立するのは極めて難しいだろうと判断し
ている」と証言しました。また今後の展開については、「プーチン氏が
、対ウクライナ戦争の展開を見誤ったロシアは、粘り強く重大な抵抗に
遭う公算が大きい。それでもプーチン氏は引かず、勝利の定義を変えよ
うとするかもしれないと予想している」と述べています。
ロシア軍はキエフへの攻撃を継続している模様ですが、戦闘が悪化して
いる地域からの民間人の避難用に、ハリコフなど計5都市からの「人道
回廊」の提案を示していましたが、その一つである「スムイ」からの避
難がようやく始まったようです。
依然としてウクライナは厳しい状況下にありますが、10日に予定され
ている第4回目の停戦交渉も進展の見通しは立たず、ロシア情勢に詳し
い小泉悠氏は「時間稼ぎをしている可能性がある」と分析しています。


昨日のNY市場では前日と同じ様に、リスク資産は売られ、安全資産が
買われましたが、やや変化も出てきました。
株式市場では、ウクライナのゼレンスキー大統領がABCニュースとの
インタビューで行った発言で、一時大きく上昇する場面もありました。
ゼレンスキー氏が、「ロシアを考慮し、ウクライナはNATO加盟をも
はや主張しない」としていると言った内容が明らかになると株価が大き
く反発しましたが、この発言は、「NATOは門戸を開放する方針だと
表明しているが、ウクライナの加盟には大きな障害が残っており、直ぐ
には実現しない」というのが、ゼレンスキー氏の本意のようです。

ロシアで事業を見直す動きが加速しており、日米欧の主要企業が「撤退
・縮小」を決めた数が200社を超えたと日経新聞が報じています。
今朝もイギリスのシェルがロシアからの「完全撤退」を決めたと報じら
れており、経済制裁に加えて、今後は市民の日常生活にも大きな支障が
出て来るものと見られます。一方コカ・コーラなど一部の企業はロシア
事業を継続する意向を示していますが、「ロシア事業を続ける企業の取
締役会は、ガバナンスのまずさや想像力の欠如からリスクを抱えている
。一部企業はロシアに残るウィンウィンの解決方法を模索しているが、
そのようなものは存在しない」といった専門家の意見を紹介しています。

米長期金利が戻り基調になってきたことから、ドル円は再び115円台
後半まで値を戻してきました。
この水準から116円台にかけてのゾーンが、なかなか突破できない状
況になっていますが、方向的には「ドル高円安」との見方を筆者は維持
しています。
目先は10日の第4回目の停戦交渉と、10日発表の米2月のCPI、
さらには来週のFOMCといったイベントが注目されます。
もっとも、FOMCでは「0.25%の利上げ」は確定的と思われ、パ
ウエル議長の会見が注目材料となりそうです。

本日のドル円は115円40銭~116円20銭程度を予想します。


ウクライナとロシア3回目の協議も進展なし 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は小幅に上昇。 米長期金利が上昇したこともあり、
115円47銭までドル高が進む。
◆ユーロドルはアジア時間に1.0821近辺まで下げたが、その後
反発。NYでは1.0933まで買い戻されるなど、荒っぽい値動きに。
◆株式市場は3指数が揃って大幅続落。S&P500は2.9%下げ
2020年10月以来の大幅安。ダウは800ドルに迫る下げで、
3万3000ドルの大台を割り込む。
◆債券は3日ぶりに反落。長期金利は1.77%台へ上昇。
◆金と原油は大幅続伸。金は一時2000ドルの大台を突破し、
2007ドル台まで上昇したが、その後反落。
原油も130ドル台まで買われたのち反落し、119ドル台で取引を終える。

◆1月消費者信用残高   →  6.838b

本日の注目イベント

◆豪   豪2月NAB企業景況感指数
◆日   1月貿易収支
◆日   1月国際収支
◆日  2月景気ウオッチャー調査
◆日  1月景気先行指数(CI)(速報値)
◆独   独1月貿易収支
◆独   独1月鉱工業生産
◆欧   ユーロ圏10-12月期GDP(確定値)
◆米  1月貿易収支
◆加   カナダ1月貿易収支

ウクライナとロシアの政府代表は第3回目の停戦交渉を行いましたが、昨日本欄
でも触れたように、今回も進展はありませんでした。ただ両者とも交渉は継続す
る姿勢を示しており、「人道回廊」は8日に機能し始めるとロシア側は見込んで
いるとインタファクス通信が伝えています。
第4回目の交渉も近く行われる見通しですが、10日にはトルコで、ロシアのラ
ブロフ外相とウクライナのクレバ外相、それにトルコのチャブシオール外相によ
る3者協議が行われる模様です。
一方米国防総省の分析では、ロシア軍はウクライナ国境付近に集結させた戦力の
95%をウクライナ国内に投入し、その数は16万人以上とみられています。
さらに報道によると、ロシア軍はキエフを含む主要都市を一気に制圧するのでは
なく、都市を包囲すると同時にミサイル攻撃などを活発化させ、ウクライナ軍の
「戦意」をそぐ戦略に転換したとみられる(日経新聞)ようです。
プーチン氏も、「ウクライナがロシア側の要求を受け入れて抵抗をやめるまで戦
争は続く」と、改めて述べています。


ウクライナでの地上戦による死傷者は日に日に増えており、ウクライナ側は子供
27人を含む400人以上の民間人が犠牲になったことを発表しています。
今朝の報道では中国が「仲介役」を、買って出る可能性を報じていましたが、中
国の王外相は「必要な時に国際社会とともに必要な仲介をしたい」と述べるに留
め、具体的な方法などについては言及していません。またロシアのウクライナ侵
攻を批判せず、依然として「ロシア寄り」の姿勢を維持しています。
実際問題、ロシアの攻撃を止めさせる具体的で即効性のある方法はなく、ロシア
国内の反対勢力と世論の台頭を待つか、上記中国による仲介が考えられる程度で
す。


日増しに悪化するウクライナ情勢に伴い、金融・商品市場での混乱も拡大してい
ます。金と原油は大きく買われ、金は2020年8月以来となる2000ドル台
に乗せ、WTI原油価格も130ドル台まで上昇する場面がありました。
原油価格は、先月末が91ドル台であったことを考えると、原油の供給不足が想
定されるとは言え、わずか1週間でこの上昇です。非常に投機的な動きと言う他
ありません。債券市場では、2月15日に2.04%まで上昇した米長期金利が
、その後の「Flight to quality」(質への逃避)の流れから、1.6%台まで
急低下し、来週のFOMCでの「0.5%利上げ」の可能性を打ち消す動きを見
せています。

その一方でリスク資産は大きく売られています。
代表格の「株式」は昨日のNYでも大きく売られ、ダウは先週末比797ドル安
で引けています。1月4日には最高値を更新し、3万6799ドルの高値を付け
ました。わずか2カ月で約4000ドルも下げたことになります。
為替では地政学的リスクの高いユーロの下落が目立っており、ドル円は114円
台半ばから116円のレンジを上にも下にも抜け切れない展開です。ユーロ程決
定的な売り材料があるわけではなく、「米国の利上げによる円売りと、リスク回
避の円買い」が拮抗している状況です。
資源価格の急騰は原油だけではなく、多くの資源とあらゆるものの価格が上昇し
ています。
欧米でのインフレの加速はもちろんですが、インフレとは無縁の日本でもさすが
に「インフレの足音」は聞こえているはずです。専門家の予想では4月のCPI
が2%に達する可能性があるとの指摘もあります。
景気が後退する中で物価が上昇する「スタグフレーション」が世界的に広がる懸
念もあり、30年近く続いてきた日本のデフレの終焉も近いのではないかと思い
ます。

本日のドル円は114円80銭~115円70銭程度を予想します。


ユーロドル1.08台後半まで急落 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は115円台半ばから大きく下落。ウクライナの
原子力発電所が制圧されたとの報道にリスク回避の動きが強まり、
ドル円は114円65銭まで売られる。
◆ユーロドルは大きく下落。ロシアのウクライナ攻撃が止まらず、
地政学的リスクがさらに高まったことでユーロドルは1.10を
大きく割り込み、1.0886まで下落。2020年5月18日
以来となるユーロ安に。ユーロは対円でも125円09銭近辺まで下げる。
◆リスク回避の流れが止まらず、主要3指数は揃って続落。
◆債券は続伸し、長期金利は1.73%台まで低下。
◆金は大幅に続伸し1966ドル台に。原油も大きく買われ、引け値で
115ドル台に乗せる。

◆2月失業率          →  3.8%
◆2月非農業部門雇用者数   →  67.8万人
◆2月平均時給 (前月比)   →  0.0%
◆2月平均時給 (前年比)   →  5.1%
◆2月労働参加率        →  62.3%

本日の注目イベント

◆中   中国2月貿易収支
◆中   中国2月外貨準備高
◆独   独1月製造業新規受注
◆米   1月消費者信用残高

「ロシアがウクライナ南部にある欧州最大の原子力発電所を制圧」との報道に、
ウクライナ情勢がさらに緊迫の度合いを増し、地理的にも近いユーロは大きく売
られました。
下落基調の続くユーロドルでしたが、先週木曜日時点では「1.10」という節
目が意識され、1.10手前で踏み留まりましたが、さすがにロシアによる「原
子力発電所の制圧」に大きく売りこまれ、一時は1.0886までユーロ安が進
んでいます。
ドルが大きく買われたわけですが、一方でドル円を見ると円も買われており、結
局ユーロ円が最も大きく売られています。

2月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が市場予想を大きく上回る「67.
8万人」でした。1月分もわずかですが上方修正され、その前に発表されたAD
P雇用者数とともに、労働市場は極めて安定的に推移していると見られます。
新型コロナウイルスの感染拡大がピークを越え、行動制限が解除されたことで職
を求める人が増えているようです。
失業率も予想の「4.0%」よりも大きく改善し「3.8%」でした。
ただ、その雇用統計も今回については「ロシアの暴挙」の前に、影響は半減され
た格好です。本来なら良好な雇用統計を受け、株式市場では株価が上昇し、利上
げ観測のさらなる高まりから債券が売られ、ドル円が上昇するパターンでしたが
、結果はその真逆でした。

ウクライナのゼレンスキー大統領は北東部のハリコフや北部のチェルニヒフの住
宅地域に対するロシア軍の砲撃が続いていることを明らかにしました。南部のマ
リウポリからの住民避難は2日連続で停止となりました。ゼンレンスキー大統領
は、ロシア側が停戦合意を再び破ったと主張しています。また同大統領は、NA
TOが同国の飛行禁止区域設定を拒否したことについて「弱腰だ」と非難してい
ます。

ロシアがウクライナへの侵攻を開始してから12日目に入ります。ロシアの最大
の目的である「首都キエフの制圧」は近郊まで軍が迫っていますが、ウクライナ
の予想外の抵抗に苦戦しており、プーチン氏にも焦りが見えるといった報道もあ
ります。
ロシアとウクライナの第3回目の協議は、本日7日にも行われる見込みですが、
プーチン氏は、戦闘を終わらせるにはウクライナ政府がロシアの要求に応じなけ
ればならないとしており、事態進展の可能性は低いと見られています。

シカゴ連銀のエバンス総裁は良好だった2月の雇用統計を受けた後のCNBCと
のインタビューで、「毎会合で25ベーシスポイントの引き上げは、私が必須と
考える利上げを超える可能性はあるが、実際にそれを実施した場合、レンジは年
末に1.75-2%になる」と指摘し、その上で、「それは中立金利に十分近く
、必要に応じてわれわれが迅速な行動を取り得る水準だ。状況に応じて政策を現
状で維持したり、以前の状態に戻すこともあり得る」と述べています(ブルーム
バーグ)

予想されていたこととは言え、ユーロの下落が勢いを増してきました。
高インフレに悩むユーロ圏にとって、ユーロ安は消費者物価の上昇圧力となり、
避けたいところです。ドイツなど貿易黒字のユーロ圏にとっては悩ましいところ
です。
今後景気の悪化が急速に進めば、年内の利上げ観測がさらに遠のき、ユーロ安を
加速させる可能性もあります。
ユーロドルでユーロが売られると、ドル円でも円売りに波及する可能性がありま
すが、やはりユーロ円の下落につながることが予想されます。
ユーロ円の下落を狙った取引が活発化すればドル円の上値を抑える可能性も出て
来ます。

本日のドル円は114円40銭~115円30銭程度を予想します。


WTI原油価格116ドル台まで続伸後下落 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は欧州市場で115円81銭近辺まで買われたが、
NYではじり安の展開。115円39銭まで売られ、115円台
で一進一退の動きが続く。
◆ユーロドルは下値を切り下げる展開が続き、この日は1.1033
までユーロ安が進む。
◆株式市場は反落。ウクライナ情勢を睨みながら上げ下げを
繰り返す展開が続く。ダウは96ドル下げ、ナスダックは214
ポイント下落。
◆債券は反発。長期金利は1.83%台へと低下。
◆金は反発。荒っぽい動きが続く原油価格は一時116ドル台まで
上昇した後反落。引け値は107ドル台と、投機的な動きも膨らむ。


◆2月マークイットサービス業PMI(改定値)     →  56.5
◆2月マークイットコンポジットPMI(改定値)    →  55.9
◆ 新規失業保険申請件数                →  21.5万件
◆2月ISM非製造業景況指数             →  56.5
◆1月製造業受注                   →  1.4%

本日の注目イベント

◆日   1月失業率
◆独   独1月貿易収支
◆独   独1経常収支
◆欧   ユーロ圏1月小売売上高
◆米   2月雇用統計
◆加   カナダ1月住宅建設許可件数

ロシアとウクライナの第2回目の停戦交渉は、ウクライナの民間人が
国外へ脱出する間は攻撃を停止するとの合意があったようです。引
き続き第3回目の交渉も来週行うことで合意したと報道もあります。
ウクライナ大統領府は3時間余りにわたったロシア側との交渉後に、
「残念ながら、望んでいた成果は得られなかった」と語り、同国のゼ
レンスキー大統領は「自分はプーチン氏と話をしなければならない、
世界がプーチン氏と話をしなければならない。他に戦争を止める方法
がないからだ」と話し、プーチン氏に会談を呼びかけています。
一方ロシア軍の攻撃は続き、ウクライナ南部のヘルソンを制圧し、港
湾都市オデッサの付近に艦隊が向かっていると伝えられています。北
部の進軍は停滞しているが、防御の難しい南部の海外沿いから侵攻を
速めている様子が鮮明になりつつあります。
ブルームバーグは、「軍事力に優れるロシアに対して、ウクライナの
組織的な抵抗は今の
ところ効果を発揮している。これが持続できるのかどうか、ロシアが
より攻撃的な兵器の投入と都市中心部への空爆を軸足に移す中で、楽
観はしぼみつつある」と分析しています。

ロシアの孤立化は金融の世界でも一段と深まっています。
格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは3日、ロシア
の長期外貨建て格付けを「Baa3」から、投機的格付けの「B3」
に引き下げたことを発表しました。
また英国の格付け会社フィッチ・レーディングスもロシアの格付けを
一気に6段階引き下げ、投機的格付けにしました。
事実上、資本市場から締め出されことになり、今後の市場からの資金
調達は非常に困難になるか、調達できたとしも、そのコストは桁違い
に高いものになろうかと思います。
さらにMSCIは、国際的な機関投資家が、ロシア株式市場に現時点
で投資できない状態であることから、同社が算出するロシア指数を新
興市場からスタンドアローン市場のステータスに再分類することを発
表しています。
MSCI指数は、モルガンスタンレー・キャピタル・インターナショ
ナルが算出し、公表する先進国、新興国などの代表的な指数であり、
多くの機関投資家のベンチマークになっています。
これでロシアは為替市場、株式市場、さらには債券市場での参入が阻
まれたことになります。

パウエル議長は前日の下院に続き昨日は上院で証言を行い、「ウクラ
イナへの侵攻が始まる前に想定した計画に沿って今後も政策を進めて
いくのが適切になると考えている。つまり、3月会合で利上げし、今
年を通じてその姿勢を続けるということだ」と述べ、その上で「現在
は極めて微妙は時期にあり、米金融当局として慎重に政策を実施して
いくことが適切だ。情勢は極めて不確実であり、その不確実性をさら
に強めることをわれわれは望んでいない」と語っています。
連日の証言で3月会合では「0.25%の利上げ」は確定的となり、
最早、材料にはなりません。議長の言う「現在は極めて微妙な時期」
というのは、ウクライナへの侵攻があり、戦争が続いている中では「
0.5%の利上げ」には踏み切れないことを意味していると、個人的
には受け止めています。今後ウクライナ情勢が鎮静化すれば原油価格
も大きく下げると見られますが、それでも多くの資源価格は高止まり
するでしょう。米国のインフレはそう簡単に低下せず、次回あるいは
その次にも「0.5%の利上げ」の議論は続くと考えています。

米NY株式市場は日替わりで上昇と下落を繰り返しています。
ドル円もその動きに沿って狭いレンジながら上下しています。
昨日の東京時間でのドル円は底堅く推移し、その後は海外市場で11
5円80銭近辺まで買われましたが、今回も116円台には届いてい
ません。FRBによる利上げと、リスク回避の円買いとの「綱引き」
はまだ続きそうです。

本日のドル円は115円10銭~115円90銭程度を予想します。


WTI原油価格11年ぶりに112ドル台まで続伸 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は反発。115円台前半から上昇し、リスク回避の流れが
後退したことで115円69銭まで上昇。ウクライナ情勢に伴う
債券と株式の動きに連動する展開が続く。
◆ユーロドルは1.1058まで売られ、直近安値を更新後
1.11台半ばまで反発。
◆連日大きく上げ下げを繰り返している株式市場は大きく上昇。
パウエル議長の議会証言が想定内であったことや、ウクライナとロシア
との第2回目の停戦交渉が行われるとの報道に3指数は揃って大幅高。
◆債券相場は大幅に下落。長期金利は急騰し、1.87%台まで上昇。
◆金は3日ぶりに下げる。原油は大幅に続伸し、一時は112ドル台と、
11年ぶりの高値を付け、110ドル台で引ける。

◆2月ADP雇用者数   →  47.5万人

本日の注目イベント

◆豪   豪1月住宅建設許可件数
◆豪   豪1月貿易収支
◆中   2月財新サービス業PMI
◆中   2月財新コンポジットPMI
◆トルコ トルコ2月消費者物価指数
◆独   独8月サービス業PMI(改定値)
◆欧   ユーロ圏1月小売売上高
◆欧   ユーロ圏1月失業率
◆欧   ユーロ圏1月生産者物価指数
◆欧   ユーロ圏2月サービス業PMI(改定値)
◆欧   ユーロ圏2月総合PMI(改定値)
◆欧   ECB議事要旨(2月会合分)
◆英   英2月サービス業PMI(改定値)
◆米   2月マークイットサービス業PMI(改定値)
◆米   2月マークイットコンポジットPMI(改定値)
◆米   新規失業保険申請件数
◆米   2月ISM非製造業景況指数
◆米   1月製造業受注
◆米   FRB議長、上院銀行委員会で議会証言
◆米   ウィリアムズ・NY連銀総裁講演
◆米   バーキン・リッチモンド連銀総裁講演

ロシアの軍事進攻は止まりません。
ウクライナ第2の都市ハリコフでは激しい戦闘が続いており、ロシアの
インタファクス通信は、ロシア軍はウクライナ南部の港湾都市ヘルソン
を掌握したと報道しました。ウクライナ政府は戦争開始から1週間で民
間人2000人以上が死亡したと発表し、ウクライナから国外に83万
6000人が逃れ、その半数余りをポーランドが受け入れています。
一方ロシア国防総省も、軍兵士498人が死亡し、1597人が負傷し
たと発表しています。
このまま戦闘が長引けばさらに両国の死傷者は増え、多くの民間人がそ
の犠牲になることが予想されます。
本日にもウクライナとロシアの第2回目の停戦交渉があるようですが、
停戦合意への可能性は低いものの、これ以上民間人の被害者で出ないこ
とを望みたいものです。

そんな中、昨日の日本時間昼前にバイデン大統領の一般教書演説が行わ
れました。バイデン氏は冒頭からロシアのウクライナ侵攻を批判し、プ
ーチン大統領を「大統領」という敬称も付けずに、「独裁者プーチン」
(Dictator Putin)と名指し、強い口調で「侵略の代償を払わせる」と
ウクライナ侵攻を糾弾し、「ウクライナ侵攻は大誤算だった」と演説を
行いました。演説会場では与党民主党も野党共和党も、この時ばかりは
「一体」となっていた印象でした。

パウエル議長は下院金融委員会で議会証言を行い、3月の会合では、「
25ベーシスポイントの利上げを提案し、支持する方向に傾いている」
と述べました。
また、「インフレ率が2%を大きく上回り、労働市場は強い中、FF金
利誘導目標レンジを今月の政策会合で引き上げることが適切になると考
えている」とし、より大幅な利上げの可能性を閉ざさないとも、質疑応
答で答えています。
一方で、「ウクライナ侵攻とその後に続いている戦争、経済制裁や今後
のイベントが米経済に及ぼす短期的な影響は、依然として不確実性が高
い」と警告し、「これから出て来るデータや見通しの変化に応じて、機
敏に対応する必要があるだろう」と述べています。(ブルームバーグ)

一部市場で懸念されていた「タカ派的な見通し」は陰を潜め、ほぼ想定
内通りの内容だったことで市場は落ち着きを取り戻し、「2回目の停戦
交渉の予定」といった報道がさらに支援材料となり、「リスク回避」が
急速に後退しました。

株式市場では前日の大幅な下げをほぼ埋める上昇を見せ、前日急落した
米長期金利は14bpも上昇し、1.87%台を回復しました。
ドル円は両市場に比べると、迫力に欠けましたが、再び115円台後半
までドルの買戻しが進みました。
何度も繰り返し述べてきましたが、ドル円は、大きくは113円台半ば
から116円台半ばのレンジ相場が続いており、コアレンジは115円
前後から116円前後に絞られてきました。
足元の動きを「レンジ相場」と割り切れば比較的利益の取りやすい展開
ですが、これも繰り返しになりますが、上も下も「レンジブレイク」し
た時の対応は、機敏に行う必要があります。

2月のADP雇用者数は「47.5万人の増加」と、市場予想を大きく
上回る内容でした。
さらに「マイナス30万1000人」だった1月の同指数も、「50.
9万人」に大幅に上方修正されました。
新型コロナウイルスの感染者減少や制限措置の緩和が雇用増につながっ
たと見られますが、
1月分が好い例でしたが、明日の雇用統計本番とは真逆の結果になるケ
ースも多く、明日の雇用統計に上方バイアスを掛けることには注意が必
要です。ただ、米雇用に関してはウクライナ情勢の影響はないはずで、
コロナが最大の変動要因かと思います。

本日のドル円は115円20銭~116円程度と予想します。


WTI原油価格一時106ドル台に急騰 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆リスク回避の流れからドル円は114円70銭まで下落。
米長期金利が急低下したことでドル売りが膨らんだが、
対ドルで欧州通貨が売られたことでドル円の下げは限定的だった。
◆ウクライナ情勢の一段の悪化から、地理的に近いユーロは続落。
1.11を割り込み、2020年5月以来となる1.1090まで
ユーロ安が進む。
◆ロシアによるウクライナへの攻撃がさらに激化したことを受け、
リスク回避の流れが一段と高まるなか、株価は3指数とも大幅下落。
ダウは一時800ドルに迫る下げを見せたが、597ドル安で引ける。
◆債券には一段と買いが入り、長期金利は一時1.6%台まで低下。
◆リスク回避の流れから金と原油が大幅高。原油価格は一時
106.78ドルまで上昇し、2014年以来の高水準を記録。

◆2月ISM製造業景況指数          →  58.6
◆2月自動車販売台数             →  1407万台
◆2月マークイット製造業PMI(改定値)   →  57.3

本日の注目イベント

◆豪   豪10-12月期GDP
◆独   独2月雇用統計
◆欧   ユーロ圏1月生産者物価指数
◆欧   ユーロ圏2月消費者物価指数(速報値)
◆米   2月ADP雇用者数
◆米   ベージュブック(地区連銀経済報告)
◆米   FRB議長、下院金融委員会で議会証言
◆米   エバンス・シカゴ連銀総裁講演
◆米   ブラード・セントルイス連銀総裁講演(オンライン)
◆米   ポンペオ前国務長官、訪台(5日まで)
◆加   カナダ中銀政策金利発表


ウクライナ情勢が一段と厳しい状況になってきました。
ロシアはウクライナ第2の都市ハリコフでは住宅街を攻撃し、さらに首都
キエフでもロシアの大規模部隊が進軍し、テレビ塔が被弾しています。
ロシアのインタファクスによると、ロシア軍はウクライナ保安庁が管轄す
るキエフの通信施設の一部を攻撃する計画だと発表しています。
ロシアがウクライナに侵攻してから今日で1週間になります。
当初、プーチン大統領は比較的短期間でウクライナを陥落できると考えて
いた節もあり、「もし、ロシアがウクライナに侵攻したら72時間以内に
ウクライナは陥落する」といった見方もメディアで紹介されています。
しかし実際には、ウクライナの想定以上の抵抗に「短期決戦」には失敗し
、焦ったプーチン氏は「完全に理性を失っている」ようで、「核」を持ち
出す始末です。
第1回目のウクライナとロシアとの停戦協議は失敗に終わりましたが、報
道では本日2日にも第2回目の協議が行われる予定ですが、停戦合意への
道は簡単ではなさそうです。プーチン大統領の「独断的な愚行」に対する
批判の声はロシア国内でも高まっており、解決の一つの手段として、ロシ
ア国内からのウクライナ攻撃への大きな批判の嵐が起きることが必要かと
思います。

また今回の事態のなかでも、ロシアを支持すると声明を出した中国が「停
戦仲介」の役割を果たしてくれることも、解決の手段の一つとして期待し
たいところです。余り期待はできないかもしれませんが、その兆しはあり
ます。
中国の王外相はウクライナのクレバ外相と電話会談を行い、王外相はウク
ライナの民間人に危害が及んでいる事態を「極めて憂慮している」と述べ
ています。中国外務省は会談後の声明で、「ウクライナとロシアの間で起
きた紛争を批判する」とウェブサイトに掲載しました。
ブルームバーグは、中国がウクライナの民間人の保護を訴えたことで、対
ロシアへの姿勢に変化が出て来た可能性を指摘していますが、中国共産党
機関紙・人民日報系の環球時報は2月28日、「この紛争に対する中国の
立場は中立だ」と報じています。

ロシアのウクライナへの攻撃がさら激化したことでG7各国は追加の経済
制裁を考えています。
米アップルはロシアでの製品の販売中止を決め、クレジットカード大手の
マスターカードとビザはロシアを決済網から排除することを決め、日本の
JCBも排除を決める模様です。
このように「ロシア包囲網」が急速に構築されてきましたが、金融市場の
「包囲網」はさらに進んでおり、ロシアはすでに「金融危機」に陥ってい
るとの見方もあります。
ロシアは「SWIFT」から排除されたことで、ドル、ユーロ、円などの
外貨準備をコントロールすることが出来ません。
国際金融協会(IFF)によると、制裁措置でロシアが準備資産の40-
50%にアクセスできなくなった可能性があると報告し、2月半ば時点で
6432億ドル(約74兆円)あったロシアの外貨準備は、少なくともそ
の半分が週末の制裁措置合意によって失われたと見られます。ロシア中銀
のナビウリナ総裁も、通貨ルーブルの急落を阻止できず、西側諸国の同中
銀に対する制裁措置が意味するところを認めています。(ブルームバーグ)
今後紛争がさらに長引けば、ロシア経済に与える影響は甚大で、場合によ
っては国内で、「暴動」や政権に対するこれまでにない強い批判も出て来
る可能性がありそうです。

金融・商品市場は大荒れです。
ドル円は114円70銭まで売られ、リスク回避の円買いが見られました
が、ユーロドルで大きく「ドル高ユーロ安」が進んだ影響もあり、下値は
限定的でした。
一方WTI原油価格は昨日の取引きで、ウクライナ情勢の激化で原油の供
給量が減るとの見立てから、2014年以来となる106ドル台後半まで
買われました。
IEA(国際エネルギー機関)は、世界各国の石油備蓄から計6000万
バレルの放出を決めましたが、現時点でそれほど効果はありません。
原油価格の上昇は米国を始め、各国のインフレを一段と高めるリスクがあ
ります。
その意味では3月のFOMC会合では「0.5%の引き上げ」が支持を集
めそうですが、一方で紛争が景気に与える影響も少なくはないと見られま
す。

米長期金利は昨日の債券市場では一段と低下し、一時は1.6%台まで下
げる場面もありました。
景気の減速懸念と安全資産への逃避から債券が改めて見直された格好です
が、この観点からすれば、次回の会合での「0.5%引き上げ」の可能性
は大きく後退します。本日はパウエル議長の議会証言がありますが、ウク
ライナ情勢をどのように政策変更に織り込むのか、非常に難しい判断を迫
られます。

本日のドル円は114円40銭~115円20銭程度でしょうか。


米長期金利1.82%台へと急低下 

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場

◆ドル円は115円台半ばから下落。ロシアへの制裁が強化された
ことで米長期金利が急低下。米金利との相関が強いドル円は114円
87銭まで下落。
◆ユーロドルは1.11台半ばから反発。1.1247まで上昇するも
ウクライナ情勢から上値は重い印象。
◆株式市場はウクライナとロシアの停戦交渉が軟調なことから
大きく下げたが、その後下げ渋る。ダウとS&P500はマイナス
だったが、ナスダックは56ポイント高。
◆債券は急騰。リスク回避の流れから債券が買われ、長期金利は
一気に1.82%台へと低下。
◆金と原油は大きく反発。

本日の注目イベント

◆豪   豪10-12月期経常収支
◆豪   RBA、キャッシュターゲット
◆中   2月中国製造業PMI
◆中   2月中国サービス業PMI
◆中   2月財新製造業PMI
◆独   独2月消費者物価指数(速報値)
◆英   英1月消費者信用残高
◆欧   マークイットユーロ圏2月製造業PMI(改定値)
◆米   2月ISM製造業景況指数
◆米   2月自動車販売台数
◆米   2月マークイット製造業PMI(改定値)
◆米   バイデン大統領、一般教書演説
◆米   ボスティック・アトランタ連銀総裁、オンライン討論会に参加
◆加   カナダ10-12月期GDP

日本時間昨日の夕方から行われたウクライナとロシアの停戦交渉は双方の主
張に隔たりがあり、合意には至りませんでしたが、ウクライナ側は双方が再
協議の可能性を検討することで合意したとしています。
一方ロシア側は、ロシアとウクライナは協議を継続し、数日中に次回の交渉
ラウンドを行うことで合意した。次回の交渉はポーランドとウクライナの国
境で行うと、インタファクス通信が伝えています。

ただ、こうした中でもロシアは攻撃を続けており、ウクライナ第2の都市ハ
リコフでロシア軍による住宅地への攻撃から複数の民間人が死傷したと伝え
られています。
昨日夜のNHKの番組では、ロシア軍の攻撃を受けた女の子が、病院に運ば
れ懸命の措置を受けましたが、結局亡くなった映像が流れていました。この
女の子はまだ6歳でした。人が人を一人殺せば「殺人罪」で、死刑の可能性
もありますが、戦争という名の下では、何千人を殺しても「罪」に問われま
せん。これが戦争です・・・。

ロシアへの制裁が世界的に強まってきました。
今朝の報道では独ダイムラーや英BPなどがロシア事業から撤退するほか、
スウェーデンのボルボはロシアへの車の出荷を停止することを発表しました
。またクレジットカード大手の「ビザ」に対して、カード決済網からロシア
を排除するようウクライナ中銀総裁が求めていることも判明しています。
さらにバイデン政権は、米国民および米企業がロシア銀行(中央銀行)やロ
シア財務省、同国政府系ファンドである国民福祉基金との取引を行うことを
禁止することを発表し、ロシア中銀への制裁も強めています。
すでにロシアを国際決済機関である「SWIFT」からの排除を決め、ロシ
アは金融孤立化に追い込まれています。
日銀にある4~5兆円規模の円資金の凍結も発表され、昨日岸田首相は、ロ
シアのウクライナ侵攻を支援しているとしてベラルーシへの制裁も発表しま
した。

このような相次ぐ制裁発令に対してプーチン大統領も報復措置を発表してい
ます。
全ての国内居住者を対象に、国外への外貨送金を禁止し、「融資契約に関連
した」外国人への外貨支払を3月1日以降、禁じる。同国中銀によると、既
存債務の履行には適用されず、新規借り入れが対象になる。ロシアはこのほ
か、36カ国を対象に航空会社によるロシア領空への飛行を禁止する。日本
や米国は含まれない、などの規制を発表しています。(ブルームバーグ)
金融市場ではルーブルが30%程下落し、通貨防衛のためロシア中銀は政策
金利を9.5%から20%に引き上げましたが、今のところ効果は限定的で
す。ロシアへの制裁が一段と強まったことで事態の収束にはほど遠く、プー
チン大統領はさらに反発姿勢を強めていることからリスク回避の流れがメイ
ンとなり、金は反発し、WTI原油価格は4ドルを超える上昇を見せていま
す。安全資産の米国債が急騰し、長期金利は一気に13ベーシスポイント以
上も低下しました。
ドル円は米金利低下を手掛かりに115円を割り込みましたが、大きな動き
にはつながっていません。

アトランタ連銀のポスティック総裁は28日バーチャル討論会で、3月のF
OMC会合では25ベーシスポイントの利上げを支持する考えを示しました
が、月間のインフレ統計で高水準からの低下が見られなければ、さらに大幅
な50bpの利上げを検討する可能性もあると語っています。
ポスティック総裁は、「特に注視しているデータポイントの一つがインフレ
の月間の変化だ。
それが低下トレンドに入り始める限り、25bpの動きにかなり満足するだろ
う。インフレが根強く高止まりしている場合、あるいはさらに上振れるよう
な場合、3月の会合では50bpの利上げを真剣に考える必要があるだろう」
と述べています。(ブルームバーグ)
2月のCPIは来週10日(木)に発表されることになっていますが、FOM
C会合はその後の15-16日に開催されることから、この数値が極めて重
要になってきます。
CPIだけではなく、PPIやPCEデータの全てで上振れしており、さら
に原油価格など資源価格の上昇も止まっていません。
これらを考慮すると再び50bpの利上げ幅が浮上してきますが、ウクライナ
情勢の影響をどこまで織り込むのか、明日のパウエル議長の議会証言がます
ます注目されます。

ドル円はウクライナ情勢と米利上げ観測に振られる展開が続いています。
116円が近い割には、115円台後半では押し戻される動きになっていま
す。昨日は米長期金利が急低下したものの、その割にはドル円の下値は限定
的でした。
注意は必要ですが、依然としてレンジ内での動きと考えれば、利益も取りや
すい展開です。すでに荒っぽい値動きは見られますが、今週はさらに神経質
で大きな値動きの可能性もあります。

本日のドル円は114円60銭~115円40銭程度を予想します。


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決済取引の手続きが始まりますので、実際の損失はロスカット水準より大きくなる場合が考えられます。
また、ルール通りにロスカット取引が行われた場合であっても、相場の状況によってはお客様より
お預かりした証拠金以上の損失の額が生じることがあります。お取引の開始あたり、
契約締結前交付書面を熟読の上、十分に仕組みやリスクをご理解いただき、ご自身の判断にて
開始していただくようお願いいたします。