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ドル円続伸し、137円を付ける 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場


◆東京時間では上値の重かったドル円は、欧州市場から
上昇に転じ、NYでは朝方に137円までドル高が進む。
パウエル議長の発言が材料に。
◆ユーロドルは続落。1.05を大きく割り込み、
2週間ぶりとなる1.0435まで売られる。
◆株式市場はまちまち。ダウは反発したものの、ナスダックと
S&P500は小幅に続落。
◆債券価格は上昇。長期金利は3.08%台まで低下。
◆金は3日続落し、原油は3日ぶりに反落。

◆1-3月GDP(確定値)   →  -1.6%

本日の注目イベント

◆日   5月鉱工業生産
◆中   6月製造業PMI
◆中   6月サービス業PMI
◆独   独6月雇用統計
◆欧   ユーロ圏5月失業率
◆英   英1-3月期経常収支
◆英   英1-3月期GDP(改定値)
◆米   5月個人所得
◆米   5月個人支出
◆米 5月PCEデフレータ   
◆米   5月PCEコアデフレータ
◆米   新規失業保険申請件数
◆米   6月シカゴ購買部協会景気指数

ドル円が再び「大台替え」を見せ、NY時間朝方には137円ちょうどを記録
しました。1998年9月以来となる円安水準で、多くの投資家にとって未体
験のゾーンに入っています。東京時間ではドルの上値が重く、136円台前半
からじりじりと売られ、135円77銭近辺まで下げましたが、ここからはい
つもの様に、ドル買いが優勢となり、欧州の昼からNYの朝方にかけて137
円ちょうどまでドル高が進みました。この日は相関性に高い米長期金利は低下
しており、やや相関性が薄れています。
スイスの予想外の利上げや、FRB高官のタカ派へのシフトが鮮明なことなど
が、円売りにつながっている模様ですが、昨日はパウエル議長の「よりタカ派
的」な発言が材料になりました。

パウエル議長はECBがポルトガルのシントラで開いた年次フォーラムで、金
融引き締めについて、「成長を落とし、供給が追いつけるようにすることが目
的だ」とし、家計と企業の財務状況も力強い状況にあり、「米経済全般が金融
引き締めに十分耐えられる状態だ」と述べ、今後も金利を引き上げる強い意志
を示しました。また、FRBの金融政策が行き過ぎるリスクはあるかという質
問に対して、「イエス」と答え、「それよりも大きなリスクはインフレを鎮静
化するための行動が足りないことだ」(ブルームバーグ)と述べ、高インフレ
が続くことが米経済にとって最大のリスクであるとの認識を示しました。

7月のFOMCでの利上げは既定路線となっており、市場の関心はその引き上
げ幅に移っています。本日発表されるPCEデフレータや、7月13日発表予
定の6月のCPIなど、インフレ指標が大きな判断材料になるとみられますが
、個人的には今月の0.75ポイントの利上げに続き、7月も0.75ポイン
トの利上げに踏み切るものと予想しています。
クリーブランド連銀のメスター総裁はCNBCの番組で、「インフレ抑制のた
めの利上げは開始したばかりだ」と述べ、「政策金利を年内に3-3.5%へ
引き上げ、来年は4%を若干上回る水準が望ましい」との見方を示し、「リセ
ッションリスクはある」と指摘した上で、「金融政策を引き締めていく」と言
明しました。
NY連銀のウイリアムズ総裁も「次回の会合に関しては、50から75bpが
議論されるのは明らかだ」とし、「政策金利を引き上げなければならないとい
うのが私の見解で、さらに言えば、利上げは迅速に行う必要がある」と語って
います。

NATOは今後10年の指針となる「戦略概念」を採択するとともに、首脳宣
言を発表しています。
「戦略概念」では、これまで「戦略的パートナーシップ」との位置づけであっ
たロシアを「最も重要で直接の脅威」と定義しました。また、これまで触れて
こなかった中国にも言及し、「中国は体制上の挑戦」と定義し、NATOのス
トルテンベルグ事務総長は、「中国の威圧的な政策は、われわれの利益、安全
、価値に挑んでいる」と述べています。
さらに、スウェーデンとノルウェーのNATO加盟については、トルコが一転
両国の加盟を支持することで合意したことから来年までには加盟することにな
りました。これに関しても同事務総長は、「加盟で両国はより安全になり、N
ATOはより強くなる」と語っています。
一方ロシアは加盟に反発しており、「拡大はNATO自らの安全保障の強化を
もたらさず、事態を不安定化する」と述べています。(日経新聞)

137円まで上昇したドル円は、引き続き「1歩後退、2歩前進」する動きを
継続しています。特にNY市場ではドル円を動かす材料が多いこともあります
が、日米金利差や金融政策の差に対する「感応度」が高いように思えます。
ここまで来たら140円前後まで行くしかないようにも思えますが、上でも述
べたように、多くの投資家にとって未体験の水準です。警戒感を持ちながら慎
重に取引を行っていくことが肝要です。
方向感に自信がないようなら、「見るも相場」に徹するのも、ありかと考えま
す。

本日のドル円は135円70銭~137円20銭程度を予想します。


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米長期金利3.2%に上昇 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は再び135円台半ばまで上昇。米長期金利の
上昇に引き寄せられ、135円55銭までドル高に。
◆ユーロドルは反発。1.0615近辺まで買われ、
約2週間ぶりの高値を付ける。
◆株式市場は先週末の水準を挟みもみ合い。
プラス圏とマイナス圏を行き来し、結局3指数は
揃って小幅安で引ける。
◆債券は続落。長期金利は3.20%台に上昇。
◆金は下落。原油は続伸し109ドル台に。

◆5月耐久財受注        →  0.7%
◆5月中古住宅販売成約件数   →  0.7%

本日の注目イベント

◆独   独7月GFK消費者信頼感
◆米   4月FHFA住宅価格指数
◆米   4月ケース・シラ-住宅価格指数
◆米   6月コンファレンスボード消費者信頼感指数
◆米   6月リッチモンド連銀製造業景況指数
◆米   米中間選挙予備選(コロラド、イリノイ、NY,オクラハマ、ユタ州)
     予備選決選投票(ミシシッピ、サウスカロライナ州)

ドル円は一進一退を繰り返しながらもなかなか大きく下げません。
昨日の東京時間ではドルの上値は重く、135円台前半からジリジリと売られ、
134円50銭近辺まで下げる局面もありましたが、その後持ち直し、NYでは
そこから1円程ドル高の135円55銭まで上昇しました。
5月の耐久財受注が市場予想を上回ったことで、FRBは積極的な利上げを実施
しやすくなるとの見立てです。引き続き、「好材料」は債券市場と株式市場にと
っては「悪材料」で、金利上昇、株安につながる構図は変わりません。
米長期金利が一時3.21%台まで上昇したことにドル円が引っ張られた形です。


ロシアの外貨建て国債の利払いが26日、支払猶予期間の最終日を迎えましたが、
投資家への支払いが出来ておらず、事実上デフォルトに陥ったとみられます。
米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、ロシア国債の保有者
が30日間の猶予期間内に支払いを受けなかったという事実は、ロシア当局によ
るデフォルトに相当するとの見解を示しました。
今回の支払いは1億ドル相当分の利払いですが、ロシアの外貨建て国債は750
0万ドル以上の不払いが起きると、他のロシア国債もデフォルトとみなされる「
クロスデフォルト条項」があるため、ロシア政府のすべての対外債務がデフォル
トになる可能性がありそうです。(日経新聞)
今後ロシアはますます資本市場からの資金調達が困難となり、孤立化が進むとみ
られます。

ドイツのエルマウで開催されているG7首脳会議はロシア産石油の上限価格を設
ける制裁の導入で合意しました。具体的な制度設計は今後詰める模様ですが、こ
の方針はG7サミットの最終日である28日に発表される見込みです。
今回の制裁は、ロシアの収入を減らし、ウクライナに侵攻した同国の戦費調達を
遮断する狙いがあります。すでに原油や天然ガス、さらには金についてもロシア
からの輸入禁止を決めており、裏を返せば今回の合意は、G7各国は戦争が長期
化することを念頭に置いていることの証左かもしれません。
ウクライナのゼレンスキー大統領はG7にキーウからビデオリンク方式で参加し
、今年末までに戦争が終わるようG7各国に支援を求めています。
ロシアはウクラナへの攻撃をさらに強めており、首都キーウのショッピングモー
ルへのミサイル攻撃では少なくとも10人が死亡したと、ウクライナの国防省は
発表しており、現場には当時1000人余りの民間人がいたとゼレンスキー氏は
述べています。一方NATOは即応部隊を30万人以上に増強する野心的な計画
を発表しました。

サマーズ元財務長官はブルームバーグ・テレビジョンの番組で、「今後2年以内
に米国がリセッション入りする確率は70-80%であり、リセッション入りは
ほぼ不可避だ」と述べ、「実際にはその到来が早まるリスクもある」と語ってい
ます。
さらに「仮に痛みを伴う時期を経験するのであれば、インフレの怪物の息の根を
確実に止めるまで手を緩めないようにするのが極めて重要だ」と述べ、その失敗
例として1970年代の経済政策を挙げていました。
FOMCで大幅な利上げに踏み切って以来、米国ではリセッション巡る議論が盛
んで、本当にリセッション入りするのか、その時期や長さを巡って多くのエコノ
ミストが持論を展開しています。来年にはリセッション入りするとの見方がコン
センサスに近いように思えますが、まだリセッションは避けられるとする意見も
みられます。

135円台半ばまで上昇してきたドル円は、再び136円台に乗せることが出来
るかどうかが一つのポイントになりそうです。

本日のドル円は134円50銭~136円30銭程度を予想します。


S&P500、3%を超える上昇 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は朝方、米経済指標の下振れに134円72銭まで
売られたがその後反発。株価の大幅上昇や長期金利の上昇を
受け135円40銭までドルが買われた。
◆ユーロドルは1.05台でもみ合う。1.0571までユーロは
上昇したが買いは続かず反落。
◆株式市場はセントルイス連銀のブラード総裁の発言などを好感し
3指数が大幅に上昇。ダウは823ドル上げ、ナスダックは3%を
超える上昇。
◆債券は反落。長期金利は3.13%台へ上昇。
◆金はこの日も横ばい。原油は大幅に反発し107ドル台を回復。


◆6月ミシガン大学消費者マインド(確定値)   →  50.0
◆5月新築住宅販売件数             →  69.6万件

本日の注目イベント

◆日   日銀金融政策決定会合における主な意見(6月16、17日分)
◆日  2月景気先行指数(CI)
◆日  4月景気一致指数
◆中   中国5月工業利益
◆独   G7首脳会議(26-28日、ドイツ、エルマウ)
◆米   5月耐久財受注
◆米   5月中古住宅販売成約件数

NY株式市場で3指数が揃って大きく上昇しました。
先々週に年初来安値を記録したばかりのNYダウは、先週1週間で1600
ドル以上も上昇し、これまで大きく売られていたこともあり、水準を意識し
た買いも入り始めたようです。ハイテク銘柄の多いナスダック指数はさらに
大幅な上昇を見せています。
タカ派で知られているセントルイス連銀のブラード総裁の発言を好感した格
好です。ブラード総裁はUBS主催の講演で、「利上げを前倒しで進めること
は良い考えだ。可能ならば、インフレが経済に定着する前にその芽を摘み取
り、インフレを2%の方向に戻したいためだ。インフレを反転させ、制御す
るために、われわれは直ちに、かつ積極的に行動しなければならない。そう
しなければ、高水準かつ不安定なインフレは10年間続くかもしれない」と
述べた上で、「米経済は驚異的な回復力を示しており、リセッション入りの
確率について議論するのは時期尚早だ」との考えを示しました。
また「金利上昇は経済を減速させるだろうが、トレンドを下回る水準ではな
く、よりトレンドに近い成長ペースになるだろう。これを大きな減速とは私
は捉えていない。経済の緩やかな減速だと思う」と語り、リセッションの可
能性は低いとの認識を示しています。(ブルームバーグ)
ただ、まだNY株式市場は底を打ったとは思えません。FRBは少なくとも
年内は粛々と利上げを続けていく構えで、先ずはインフレがピークを打った
という兆候が確認できることが望まれます。
NY時間の朝方には売られたドル円も、株価の大幅な上昇に、円売りが優勢
となり135円40銭まで上昇しています。

昨日からドイツのエルマウで始まったG7首脳会議の声明草案が明らかにな
りました。
G7首脳はウクライナに対し、ロシアの侵攻に対する防衛で無期限の支援を
提供すると約束し、「われわれは資金や人道面、軍事および外交での支援を
継続し、必要なだけウクライナを支援する」と記されるようです。
またロシアに対する制裁の一環として、ロシアからの金の輸入を禁止する模
様です。
ロシアの金輸出額はエネルギーに次ぐ輸出品で、「ロシアを孤立させ、世界
経済から切り離す」ことを狙った措置とみられています。
さらにバイデン大統領はG7の席で、米国が中国の巨大経済圏構想「一対一
路」に対抗するために「新たに打ち出した枠組み」に対して、各国に支援を
要請しています。
一方でウクライナでは依然としてロシアの激しい攻撃が続いており、報道で
は首都キーウの中心部がミサイル攻撃され、死者も出ているようです。

ドル円は神経質な動きを見せながらも、依然として底堅い動きが続いていま
す。長期金利との相関が続いており、金利が低下し売られる場面もありまし
たが、そこからの
戻しも速く、基本は「大きく下げたところを拾う」というスタンスかと思い
ます。ブラード・セントルイス総裁は、米国はリセッション入りする可能性
は低いと述べましたが、米景気の先行きは依然として不透明です。
米景気のリセッション入りはドル売り材料と捉えられると思われ、利上げが
どこまで米景気を下押しするのかが焦点です。

本日は日本株も大きく買われると思われ、ドル円は底堅く推移すると予想し
ます。
レンジは転換線のある134円20銭前後を下値とし、上値は135円80
銭程度としたいと思います。


米経済指標の悪化にドル円134円台前半に 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は大きく売られ、NYでは134円27銭まで下落。
PMIなど、経済指標の悪化から米景気のリセッション入り
観測が強まり、円が買われた。
◆ユーロドルも小幅に売られ、ユーロ安ドル高が進む。
1.05を割り込み、1.0491辺りまで下落。
◆株式市場は3指数が揃って反発。ダウは194ドル高。
S&P500は35ポイント上昇。
◆債券は続伸。長期金利は一時3.0%台まで低下しドル売りに
つながる。
◆金は4日続落。原油も続落し、およそ1カ月半ぶりに104ドル台に。
米景気の鈍化が原油需要の低下につながるとの見立て。


◆6月S&Pグローバル製造業PMI(速報値)      →  52.4
◆6月S&Pグローバルサービス業PMI(速報値)    →  51.6
◆6月S&PグローバルコンポジットPMI(速報値)   →  51.2
◆米 経常収支(1-3月)                →  -291.4b
◆米新規失業保険申請件数                →  22.9万件

本日の注目イベント

◆日  5月消費者物価指数
◆独   独6月ifo景況感指数
◆米   6月ミシガン大学消費者マインド(確定値)
◆米   5月新築住宅販売件数
◆米   デーリー・サンフランシスコ連銀総裁講演
◆米   ブラード・セントルイス連銀総裁講演

昨日の朝方には136円台前半で推移していたドル円は、昨日1日だけで
約2円の下落を見せるなど、依然として値幅の大きい荒っぽい動きです。
NYでは、経済指標の下振れから、米景気のリセッション入りが速まって
いるのではないかとの見方もあり、米長期金利が低下。久しぶりに「安全
通貨としての円が見直された」格好になりました。

ただ昨日の日中にもドル円下落の予兆はありました。
ドル円は昨日の昼前、135円台後半から135円13銭近辺まで急落す
る場面がありました。元財務官の中尾武彦氏がブルームバーグとのインタ
ビューで「為替介入の可能性は排除できない」と述べ、そのヘッドライン
にAIが反応しドル売りが進んだようです。
ただ中尾氏は、協調介入の可能性については「難しい」と語っています。
ドル円はその後135円80銭台まで戻しましたが、NYでは再び大きく
売られました。
6月のPMIが製造業、サービス業、さらにコンポジットも全て速報値か
ら下方修正され特に、製造業は速報値の「57.0」から「52.4」と
、大きく下方修正されています。同指数は「50」が景気の拡大か縮小の
分かれ目であることから、かろうじて拡大を維持したといった状況です。
また失業保険申請件数も「22.9万件」と、2月下旬以来の高水準でし
た。
景気の下振れを示す数字が相次ぎ発表される中、労働市場については「極
めて良好」と見られていますが、ここにもやや変化の兆しが見え始めたと
いうことかもしれません。この状況が続けば、FRBが急激な利上げを実
施する必要性が低下し、インフレの
ピークアウトにつながる可能性があります。そのため、米長期金利が低下
し、それを好感してナスダック指数など、株価の上昇につながった面があ
ります。もっとも、景気の減速は株式市場にとっても「マイナス要因」で
はありますが、足元の最大の関心が「インフレの抑制」にあることから、
「プラス」と受け止められています。ドル円ロングの投資家にとっては悲
しい結果でしたが、パウエル議長にとっては喜ばしい結果だったことでし
ょう。

ただこれでFOMCでの急激な利上げモードが鎮静化するわけでもありま
せん。FRBのボウマン理事はマサチューセッツ州での講演で、「現在の
インフレ指標を踏まえると、次の会合では75ベーシスポイントの利上げ
が、その後の会合では少なくとも50bpの利上げが適切になると見込ん
でいる。それは今後入手できるデータの裏付けがある限りだ」と述べてい
ます。
これまでFRB執行部の中ではウォラー理事が最も「タカ派的」な発言を
行ってきましたが、ボウマン理事は、条件付きとはいえ7月の会合で75
ベーシスポイントの利上げを実施しても、その次の9月会合でも50bp
の利上げに言及しています。仮に7月会合で75ベーシスポイント引き上
げたとしても、9月ではそれまでの急激な利上げの効果を検証するとの見
方を超えていました。FRB執行部の「タカ派化」が目立ってきています。
パウエル議長は前日に続き、この日は下院金融委員会で証言を行いました。
議長は、「労働市場はある意味、持続可能なほど熱気を帯びており、今の
状況は米金融当局のインフレ目標からかけ離れている」と説明し、「物価
安定を取り戻すこと、インフレ率を目標の2%に戻すことが真に求められ
ている。それがなければ、最大限の雇用を持続的に一定期間達成すること
はできないからだ」と述べ、インフレ抑制への決意を述べたに留まってい
ます。
ただ、上でも述べたように、労働市場については極めて楽観的なスタンス
であることは変わっていません。

FRBによる急激な利上げ観測は変わらないものの、今週に入ってNY株
式市場はやや落ち着きを取り戻し、長期金利も低下傾向を見せています。
引き続き経済指標の数字と、インフレ指標に注視しながらの展開です。
日本の5月のCPIは「2.1%」と、2カ月連続で2%を超えていまし
た。
予想通り、日本でもジワジワとインフレが進行しており、どこかの時点で
日銀に政策の修正を催促することになろうかと考えます。

本日のドル円は134円から135円80銭程度を予想します。


米経済のソフトランディングは、非常に困難? 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場


◆135円台で取り引きが始まったドル円は徐々に買いが
優勢となり136円30銭まで上昇。135円台を固める
動きとの観測も。
◆ユーロドルは続伸。1週間ぶりに1.0606近辺まで
ユーロ高に。
◆株式市場は3指数が揃って小幅に反落。パウエル議長が議会証言で
米国のリセッション入りする可能性を認めたことでプラス圏から下落。
◆債券は反発。10年債利回りは3.15%台へと低下。
◆金は横ばい。原油は3ドルを超える下落。米国のリセッション入りの
可能性が高まり、需要が減速するとの見方から大幅下落。

本日の注目イベント

◆トルコ トルコ中銀、政策金利発表
◆独   独6月製造業PMI(速報値)
◆独   独6月サービス業PMI(速報値)
◆欧   ユーロ圏6月製造業PMI(速報値)
◆欧   ユーロ圏6月サービス業PMI(速報値)
◆欧   ユーロ圏6月総合PMI(速報値)
◆欧   ECB経済報告
◆欧   EU首脳会議
◆英   英6月製造業PMI(速報値)
◆英   英6月サービス業PMI(速報値)
◆米   6月S&Pグローバル製造業PMI(速報値)
◆米   6月S&Pグローバルサービス業PMI(速報値)
◆米   6月S&PグローバルコンポジットPMI(速報値)
◆米  経常収支(1-3月)
◆米   新規失業保険申請件数
◆米   パウエル・FRB議長、下院金融委員会で証言

「(リセッションの)可能性があるのは間違いない。われわれが意図する結果で
は全くない」パウエル議長は半年に1回行われる議会の公聴会でこの様に述べ、
米経済がリセッションに陥る可能性があることを、これまでで最も認めた発言を
行いました。
また経済のソフトランディングについても「非常に困難だ」とも述べています。

冒頭証言では、高インフレを抑制するため「継続的な利上げが適切になるとわれ
われは想定している。過去1年間インフレが上向きのサプライズとなっているの
は明白であり、一段のサプライズが待ち受けている可能性もある。よって、われ
われは入手するデータと変化する見通しに機敏に対応していく必要がある」と述
べ、今後インフレがさらに高まる可能性があることにも言及しました。
その後の質疑応答では、「別のリスクは、われわれが物価安定を取り戻すことが
できず、経済に高インフレを根付かせてしまうことだ」と答えています。(ブル
ームバーグ)
パウエル議長は、高インフレを早期に抑制することをコミットしており、そのた
めには
口には出さなかったものの、株価の下落など、ある程度の犠牲はやむを得ないと
の考えを持っていると思われます。今月の会合で0.75ポイントという、19
94年以来となる大幅な利上げを決めましたが、7月の会合でも同様に大幅な利
上げを行う可能性が強まったと考えます。

この日は多くのFOMCメンバーの講演もありました。
フィラデルフィア連銀のハーカー総裁は、金融当局が利上げをバランスシート縮
小と同時に進めることの効果を踏まえると、政策金利の誘導目標が3%に達した
後はそれほど高い追加利上げは不要かもしれないと、ややハト派寄りの見解を示
しています。
一方、シカゴ連銀のエバンス総裁は7月のFOMCで、「利上げ幅75ベーシス
ポイントは会合で議論する上で非常に適切だと考える」との見方を示し、「今後
のデータ次第では50bpの利上げでも差支えないということもあるだろう」と
述べ、ややタカ派的な発言を行っています。7月会合は来月の26-27日に開
催されます。
それまでには、来週30日にPCEデフレータなどのデータが発表され、さらに
7月13日には6月の消費者物価指数(CPI)も確認できます。
米国では昨年3月あたりから物価上昇(前年同月比2.6%)が顕著となり、F
RBが目標とする2%を超えてきました。
新型コロナウイルスからの脱却で需要が大きく伸び、さらにその後に起きたサプ
ライチェーンの混乱が拍車をかけ、極め付きは今年2月のロシアのウクライナ侵
攻に伴う資源価格の大幅上昇でした。
いわば想定外の出来事が物価急上昇の引き金を引いたわけで、金融政策だけで急
速に進むインフレを抑えきれないことは、パウエル議長自身が一番感じているこ
とかもしれません。

フォンデアライエン欧州委員長は、ウクライナがEUの規則や規範、基準の70
%を導入したと発言し、「ウクライナの民主主義が成し遂げた、とてつもない前
進だ」とウクライナを称賛し、EUへの加盟について前向きな姿勢を見せました
。同委員長は、「それは彼らがEUへの加盟を望んでいるという単純な理由だか
らだ」と語っています。

昨日ドル円は136円台後半まで上昇したことで、市場関係者の見方は140円
により近づいて来たように思います。
さらなる利上げに向うFRBと、動かないBOJの対比がより強調されており、
警戒感はあるものの、方向的には140円に向っているのでしょう。

本日のドル円は135円20銭~137円程度を予想します。

**********************

昨日の本欄で、「ドル円は朝方には136円83銭まで買われ、NYの高値を抜
いています」とのコメントを書きましたが、正しくは136円71銭でした。
筆者は24時間リアルタイムで取引されているブルームバーグの取引画面からそ
の日の高値、安値を拾い出していますが、同社の画面に何らかの誤差があった模
様です。訂正してお詫びいたします。


ドル円続伸し136円台後半に 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場


◆連休明けのNYではドル円がさらに上昇し136円台に乗せる。
136円71銭まで買われ、先週末の日銀会合での政策据え置きが
蒸し返される。
◆ユーロドルは1.05台で推移し、ユーロ高が進んだものの
大きな変化はなし。ユーロ円は144円に迫る水準まで上昇。
◆株式市場は大幅に反発。短期的な買い戻しとの声もある中、
ダウは一時700ドルを超える上昇。ナスダックは2%を超えて
取引を終えた。
◆債券は続落。長期金利は3.27%台に上昇。
◆金は小幅に続落し、原油は反発。

◆5月中古住宅販売件数  →  541万戸

本日の注目イベント

◆欧   ユーロ圏6月消費者信頼感指数(速報値)
◆英   英5月消費者物価指数
◆米   パウエル・FRB議長、上院銀行委員会で証言
◆米   エバンス・シカゴ連銀総裁講演
◆米   ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁講演
◆米   バーキン・リッチモンド連銀総裁講演
◆加   カナダ5月消費者物価指数


連休明けのNY市場ではドル円が再び買われ、136円71銭まで上昇
しました。先週末に行われた日銀の金融政策決定会合で、一部の市場予
想に反して政策据え置きを決定したことが蒸し返された格好です。
日米金利差がさらに拡大するとの見方からドル買い円売りが加速し、さ
らに円はその他の主要通貨に対しても売られています。
上昇を続けていたドル円は先週、135円台を付けた後131円台半ば
まで押し戻され、135円台が「一旦は壁」になった節もありましたが、
昨日はその水準を大きく超えたことで、再びあらたな局面入りした可能
性が高いと思われます。
まだ断定はできませんが、あらたなレンジである、135-140円に
入ったのかもしれません。

昨日のNYでの動きは、リッチモンド連銀のバーキン総裁の発言も作用
したと見られます。
バーキン総裁は、当局は金融市場や経済に過度の悪影響をもたらすこと
なく、「可能なかぎり早いペースで利上げすべきだ」との見解を示しま
した。
総裁は全米企業エコノミスト協会(NABE)主催のオンラインイベン
トで、「現在はインフレが高く、広範にわたり、根強い、そして政策金
利は正常な水準を大きく下回っているという状況にある」と指摘し、「
どこにも打撃を与えずに、望ましいと考える水準へと可能な限り速いペ
ースで戻すことが重要だ」と語っています。
また7月会合で0.75ポイントの利上げを支持するかどうかについて
は発言を控えましたが、パウエル議長が先に示した利上げ見通しについ
ては「異存はない」と答えています。
(ブルームバーグ)
パウエル議長は今月の会合の後の記者会見では「次回会合では0.5か
0.75ポイントの利上げが選択肢になる」との言葉を残しています。

NYでは債券は小幅に売られましたが、株式市場は大きく買われていま
す。ダウは641ドル上昇しナスダックも270ポイント買われるなど
、久しぶりに3指数が揃って大幅な上昇をみせました。
ただ、多くの株式専門家の声は「短期的な買い戻しの域を出ない」とい
うだけではなく、昨日は「3764ポイント」で取り引きを終えたS&
P500が「3500」まで下げる余地があるといった声もありました。
またドル円についても、米金融当局の利上げを背景に、最大でさらに5
%上昇する余地がある(スタンダードチャータード)との指摘もありま
した。ここから5%の上昇は143円台半ばを意味し、無いとは言えま
せんが、まさに多くの投資家にとっては「未知の世界」ということにな
ります。
ただ一方で昨日の中古住宅販売件数のように、多くの米経済指標は下振
れを示しています。
特に住宅市場については、住宅ローン金利が大幅に上昇しており、若い
世代を中心に金利負担の増大が重しとなり住宅購入を躊躇させています。
日本でもそうですが、金利上昇局面では預金金利はなかなか上がりませ
んが、借り入れ金利は直ぐに上がります。先週この欄でも紹介した「米
エコサプライズ指数」は昨日時点で「マイナス0.282」と、わずか
な改善を見せましたが、依然記録的な低水準です。
今後、どこかの時点で米経済の弱さに着目したドル安局面もあると考え
ていますが、その前に米インフレのピークアウトを示す兆候がどこで出
るかが焦点です。

先週末の決定会合でも示されたように、日銀は引き続き大規模な金融緩
和を維持していますが、その「ひずみ」が恒常的に見られるようです。
10年債を中心に購入することで、同債券の利回りの上限は辛うじて「
0.25%」に抑えられていますが、他の年限の利回りは上昇していま
す。そのため、残存8年と9年の利回りが「0.25%」を超えるとい
ったいびつな状態になっています。
さらに今月の日銀による国債の買い入れ額は際立っており、まだ6月は

わっていないのに、すでにこれまでの月より25%余り多いようです。
また日銀が保有する国債の残高は、今週にも発行残高の50%を超え、
日銀は「ルビコン川を渡る」とみられています。
日銀が金融引き締めに政策を変えれば一気に金利が上昇し、日銀は「債
務超過」に陥ると指摘されており、これが日銀が依然として大規模な金
融緩和政策に固執する理由の一つだといった「うがった見方」もあるよ
うです。

ドル円は朝方には136円83銭まで買われ、NYの高値を抜いていま
す。「3歩前進、1歩後退」の動きが続いています。

本日のドル円は135円30銭~137円30銭程度を予想しますが、
1日に動く値幅が大きく、余り参考にはなりません。


仏マクロン政権、議会で過半数を失う。 

ひと目で分かる昨晩の動き 

欧州市場

◆NY市場が休場のためドル円は小動き。
134円台後半から135円台前半で推移。
◆ユーロドルは1.05を挟み、もみ合う。
◆欧州株は独CAC、英FTなど堅調に推移。

本日の注目イベント

◆豪   RBA議事録
◆欧   ユーロ圏4月経常収支
◆米   5月中古住宅販売件数
◆米   メスター・クリーブランド連銀総裁講演
◆米   バーキン・リッチモンド連銀総裁講演
◆米   中間選挙予備選(バージニア、ワシントンDC)
      予備選決選投票(アラバマ、アーカンソー、ジョージア州)
◆加   カナダ4月小売売上高

NYが休場だったことで為替市場は「開店休業」状態でした。
連日大きく動いていた市場にとって、ちょっとした息抜きになったかもし
れません。

フランス国民議会選挙では与党連合の獲得議席が245議席にとどまり、
マクロン氏はフランス大統領として数十年ぶりに議会での絶対多数を確保
できませんでした。
今後マクロン政権にとって、法案の通過などが困難となり、さらに強い逆
風にさらされることになりそうです。フランスでもインフレの勢いは収ま
らず、5月のCPIは前年同月比で5.2%と、高水準でした。
フランス国民は、物価高を抑えることが出来ないマクロン政権に「ノン」
を突き付けた形になり、世界的に未曾有の高インフレが蔓延していること
から、「インフレ」が選挙の行方にも影響を与えるケースが増えてきそう
です。

日本でも、参議院選挙が明日公示され、7月10日が投票日になるようで
すが、欧米ほどではないものの、物価高は確実に進んでいます。併せて今
月支給された公的年金が「減額」されたこともあり、岸田政権にとっては
厳しい選挙になるかもしれません。
さらに米国では高インフレにより、バイデン政権への風当たりは強くなっ
ています。
11月の中間選挙、あるいは2024年の大統領選挙にまで影響を及ぼす
可能性もあり、バイデン氏は何としても足下のインフレを止めなければな
りません。その分、パウエル議長には強いプレッシャーがかかっており、
先週のFOMCで0.75ポイントの利上げに踏み切った理由の一つにも
なっていると考えます。
バイデン大統領は20日、元財務長官のサマーズ氏と電話会談を行いまし
た。サマーズ氏はこれまで、米国がリセッション入りする可能性は高いと
主張して来ましたが、大統領は、「サマーズ氏と今朝話をした。リセッシ
ョンについて不可避なことはない」と述べています。
そのサマーズ氏は20日ロンドンでの講演で、「インフレを抑えるには、
5%を超える失業率が5年間続く必要がある。言い換えれば7.5%の失
業率が2年間、6%が5年間、または10%が1年間必要だ」と指摘し、
「FRBの見方に比べ著しく落胆させられる数字だ」と語っています。
サマーズ氏の指摘は、政策金利を急速に引き上げ、その結果景気が大幅に
減速し、生産活動の停滞が雇用環境を大きく悪化させる状況が必要だとの
認識を示しているようです。米国の失業率は現在「3.6%」で、これは
ほぼ「完全雇用の状況」だと言われています。
仮にサマーズ氏の指摘するような状況になれば、それはまさしくリセッシ
ョン入りしたことを意味し、バイデン大統領の観測はあくまでも「希望」
だったことになります。
サマーズ氏の指摘はやや極端な意見かと思われますが、このような発言は
当然パウエル議長の耳にも届いています。
議長もそのような厳しい状況を回避するため、タカ派姿勢を強める可能性
もありそうです。
FRBは「物価の安定と雇用の最大化」というデュアル・マンデートが使
命だからです。

一方でセントルイス連銀のブラード総裁は雇用については楽観的な見方を
示しています。
ブラード総裁は「米労働市場は引き続き堅調で、生産は2022年を通じ
て拡大を続ける見通しだ」と述べていますが、また「米国における現時点
でのマクロ経済動向は、米金融当局のインフレ目標に関する信任を損ねて
いる」と指摘し、「実際のインフレ数値とインフレ連動債(TIPS)に
基づくインフレ期待との差は解消される必要があり、それがインフレ期待
のさらなる上昇を招いている可能性がある」と述べています。
(ブルームバーグ)

連休明けのNYでは引き続き、株式と債券がどこまで売られるのかが注目
されます。昨日の欧州市場では株価が堅調だったこともあり、NY株式先
物は上昇しているようです。

本日のドル円は134円~136円といったところでしょうか。


ドル円『往って来い』の展開。135円台を回復 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は前日の131円台から急騰。日銀決定会合では
政策の変更や修正もなく、今後も大規模な金融緩和を続けて
行くとのメッセージから円が売られた。NYで135円42銭
までドルが反発し、元の水準を回復。
◆ユーロドルもやや買い戻され、下値を切り上げる。
◆株式市場ではナスダックとS&P500が反発したものの、
ダウは続落。ダウは38ドル下げ年初来安値を更新。
◆債券は反落。長期金利は3.22%台に上昇。
◆金は反落。原油は前日比8ドルを超える(6.8%)下げとなり、
約1カ月ぶりの水準に。世界的な金融引き締から、原油の需要が
減少するとの見通しが影響。


◆5月鉱工業生産       →  0.2%
◆5月設備稼働率       →  79.0
◆5月景気先行総合指数    →  -0.4%

本日の注目イベント

◆独   独5月生産者物価指数
◆米 NY休場(ジューンティーンスの振替休日)
◆米   ブラード・セントルイス連銀総裁講演

前日のNYでは131円49銭まで売られたドル円は、わずか1日で135円
42銭まで反発するなど、いずれも想定を超える動きでした。元の水準を回復
し、結局「往って来い」の相場展開でしたが、日米金融当局の金融政策に変更
がないとの見方が大きく作用したものと見られます。
市場の一部には今回の会合では日銀の政策に変更か修正、あるいは黒田総裁の
発言にも何か変化があるのではないかとの見方がありましたが、昼前に変更な
しとの結果が伝わるとドル円は一気に134円台半ばまで上昇。その後は13
3円台前半まで押し戻されましたが、黒田総裁の記者会見を境に再び円売りが
活発になりました。
黒田総裁は、自身の発言の変化について記者から質問を受けましたが、「為替
の水準を決めて金融政策をやっているわけではない」と答え、質問には真正面
から答えていないような印象を受けました。
結局、日銀の声明文では「為替を注視する」と、あらたな文言が加わりました
が、大きな変化はなかったようです。先週はFOMCで「0.75%」の追加
利上げが決定され、さらに予想外のスイス中銀利上げと、BOEの5会合連続
の追加利上げもあり、それらの動きとは全く異なる日銀の政策が余計に目立つ
結果になりました。

FRBの主要メンバーの中ではかなり「タカ派的」とみられるウォラー理事は
講演で、経済指標が、自身が想定する通りの内容なら、追加の75bpの利上
げを7月のFOMCでも支持する姿勢を明らかにしました。
ウォラー理事は「インフレの原因は何でもいい。高すぎるので、低下させるの
が私の使命だ。金利引け上げと利上げ軌道はあらゆるセクターで需要下押し圧
力を与えるだろう」と述べ、リセッションについては、「トレンド成長率を6
カ月から1年間下回るかもしれない。4-4.25%になると私は思う。今年
は40年ぶり高水準のインフレ率で、これが懸念すべき最も重要なポイントだ
」と強調しました。
またイエレン財務長官もABCの番組で、「インフレは今年これまで高い状態
が続いており、残りの期間も高インフレが続くのは確実だ」と語り、「ただ、
新型コロナのパンデミックを背景に国民の貯蓄が積み上がっているほか、労働
市場は極めて力強い。リセッションは全く不可避というわけではない」と言明
しました。(ブルームバーグ)
このような発言が続くと、現時点では次回7月会合でも「0.5ポイントでは
なく、0.75ポイントの利上げ」が実施されそうな印象です。
6月の雇用統計やPCEデフレータ、あるいは6月のCPIの結果が極めて重
要になってきます。

バイデン大統領は「近く」、中国の習近平国家主席と電話かオンラインで会談
する可能性があることを発表しました。国内の高インフレを抑制する意味もあ
り、中国からの約3000億ドル(約40兆円)相当の輸入品を対象にトラン
プ前政権が課した制裁関税の緩和を提案する可能性が高く、一方でウクライ情
勢での中国の役割を期待するメッセージを伝える可能性もあります。
ただ具体的な日程はまだ決まっていないようで、バイデン氏は「彼と会談する
つもりだ」とだけ話しています。

再び135円台を回復してきたドル円は、今週も上値を試す可能性が高いとみ
ています。
日銀の政策に変更がないことが確認され、米国では上述のように7月会合でも
75bpの利上げの可能性が高まっている状況では、円売りの勢いは止まらな
いと予想されます。ただ、このところのドル円の動きは非常に早く、下げる場
合でも値幅も大きく、想定を超える可能性があるため注意が必要です。

本日のドルは円134円~136円程度を予想します。


ドル円131円台半ばまで急落 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場


◆ドル円は大幅に続落。スイスと英国が利上げを行い、
両通貨が対ドルで上昇したことから円も買われた。
長期金利の低下も円買いにつながり、ドル円は131円49銭
まで下落。
◆ユーロドルも大きく動く。欧州では1.03台で推移して
いたが、ドル安の流れから1.06前後まで急反発。
◆株式市場は大幅に反落。スイスと英国が利上げを実施したことも
あり、リスク資産を手放す動きに。ダウは741ドル下げ3万ドルの
大台を割り込む。ナスダックは4%を超える下落。
◆債券は続伸し、長期金利は3.2%を割り込む。
◆ドルが売られたことで、金と原油は大幅高。


◆5月住宅着工件数            →  154.9万件
◆5月建設許可件数            →  169.5万件
◆6月フィラデルフィア連銀景況指数    →  -3.3
◆新規失業保険申請件数          →  22.9万件

本日の注目イベント

◆日   日銀金融政策決定会合
◆日   黒田日銀総裁記者会見
◆欧   ユーロ圏5月消費者物価指数(改定値)
◆英   英5月小売売上高
◆米   5月鉱工業生産
◆米   5月設備稼働率
◆米   5月景気先行総合指数

FOMCで0.75ポイントという大幅な利上げが行われましたが、その後のパウエル
議長の柔軟な発言でひとまず落ち着きを取り戻したかに見えた金融市場でしたが、前日
と一転して投資家心理が再び大きく悪化し、為替、株、債券などが大きな値動きを伴っ
て動揺しています。
スイス中銀が予想外の利上げを行い、イングランド銀行(BOE)も利上げを発表。B
OEはこれで5会合連続の利上げとなり、ややサプライズの利上げを行ったスイス中銀
はさらなる利上げも否定できないとのメッセージを残しています。

この影響もあり、前日の朝方には135円59銭まで上昇したドル円は、NYでは13
1円49銭まで急落しました。スイスフランやポンドが対ドルで上昇したことが、ドル
円でも円を買う動きに波及し、さらに米長期金利の低下も円買いを後押しした模様です。
また、本日行われる日銀の金融政策決定会合で、「何らかの動きがあるのではないか」
といった観測が高まっていることもドル売り円買いにつながっています。
ドル円はまる一日で4円11銭(3%)の下げを記録し、130円台に乗せてからは調
整らしい調整が見られませんでしたが、ようやく今回の下げで適度な調整局面が見られ
たことになります。130円台を維持しているのであれば、まだドル高トレンドは変わ
っていないと考えますが、130円を大きく割り込むような事態になると、市場参加の
相場観にも変化が出ると思われます。
FRBは今後も、インフレのピークアウトが確認されるまでは粛々と利上げを実施して
いくと思われます。現時点では、政策金利が年末には3.5%近辺まで上昇すると予想
されていることから、少なくとも年内残りの4回のFOMCで1.75%ほど利上げを
行う必要があります。市場がこの辺りをどのように織り込むのか、今後のインフレ指標
がますます重要になってきます。

昨日のNYではドル円だけではなく、多くの通貨が荒っぽい動きを見せました。1.0
3台半ばまで売られたユーロドルは1.06辺りまで反発し、スイスフランとポンドは
利上げを好感して大きく上昇しています。
金も大きく買われ、原油も2ドルを超える上昇でした。
本日も日経平均株価は大幅な下げが予想されます。
これまでのドル高局面ではほとんど見られなかった「リスク回避の円買い」も、ひょっ
としたら「復活」するかもしれません。
注目は日銀会合です。
今週、10年債の利回りが上限の0.25%を超える場面があり、イールドカーブコン
トロール(YCC)の修正があるのではとの観測も台頭しています。
黒田日銀総裁もこれまで「円安は日本経済全体でみればプラス」と述べており、「今後
も粘り強く大規模な金融緩和策を続けていく」と、何度も繰り返していましたが、今週
、「急激な円安は好ましくない」と、口調を変えています。「家計の値上げ許容度は高
まっている」との発言で厳しい批判を浴びたことから、微妙に変化しているのでしょう
か。

今年3月に金融緩和策から引き締めに舵を切り直したFRBは、3月の会合で25bp
の利上げを行い、5月には50bp、そして今週は75bpの利上げを決め、引き締め
の速度を強めています。パウエル議長は7月の会合でも「50bpか75bpの選択肢
になる」とのメッセージを残しています。
現時点ではFRBの積極的な引き締めスタンスは続くとみていますが、焦点は日銀の動
きです。
今朝のブルームバーグの報道では、仮に日銀が市場の圧力に屈して、政策転換によって
YCC全体が100bp上振れした場合、日銀は29兆円の「含み損」を抱えることに
なると試算を伝えています。
個人的には対象にしている10年債のオペの年限を7年など、短縮する方向で検討して
いるのではないかと予想しています。

本日のドル円は131円30銭~133円30銭程度を予想します。


米FOMC0.75%の利上げを決定 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場


◆注目されたFOMCでは0.75%の大幅利上げを決めたものの、
その後のパウエル議長の発言に株価は上昇。金利が低下したことで
ドル円は下落。利益確定の売りが優勢となり133円51銭までドルは反落。
◆ユーロドルは続落し、1.0359まで売られる。ユーロ安が
進んだことで、ユーロ円も139円台半ばまで下落。
◆株式市場は3指数が揃って反発。ダウは6日ぶりに303ドル上げ、
ナスダックは続伸。
◆債券相場は急反発。長期金利は前日の3.7%台から3.28%台まで
急低下。
◆金は反発し、原油は続落。


********************(何もない時は空欄のままにします)

◆5月小売売上高           →  -0.3%
◆5月輸入物価指数          →  0.6%
◆6月NY連銀製造業景況指数     →  -1.2%
◆6月NAHB住宅市場指数      →  67

本日の注目イベント

◆日   5月貿易統計
◆豪   豪5月雇用統計
◆英   BOE金融政策発表
◆英   BOE議事録
◆米   5月住宅着工件数
◆米   5月建設許可件数
◆米   6月フィラデルフィア連銀景況指数
◆米   新規失業保険申請件数


注目されていたFOMCでは、予想通り「0.75%」の利上げを決定しました。
今回の利上げにより、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は1.5―1.
75%となります。今回の大幅な利上げは1994年以来のこととなり、足元で続
く高インフレを早急に鎮静化させるというFRBの強い意志を示したものと受け止
められます。発表直後ドル円は上昇。株価は下げ、金利も上昇しましたが、その後
のパウエル議長の会見を受け、落ち着きを取り戻した格好でした。

声明文では、「委員会はより長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレを達成
することを目指す。これらの目標実現のため、委員会はフェデラルファンド金利誘
導目標のレンジを1.5-1.75%に引き上げることを決めたほか、誘導目標レ
ンジの継続的な引き上げが適切になると見込む」としており、「委員会はインフレ
率の目標を2%に戻すことに強くコミットしている」とも述べています。
今回の決定に対し投票権を有する多くのメンバーは賛成しましたが、カンザスシテ
ィー連銀のジョージ総裁は0.5ポイントの引き上げを主張して反対票を投じてい
ます。

パウエル議長はその後の会見で「今回の75bpの引き上げが異例に大きな幅であ
ることは明らかであり、この幅が普通になるとは見込んでいない」と説明しました
。この発言を受け市場は、極めて大幅な利上げが立て続けに実施される可能性が選
択肢から排除されたことを意味するとして好感し、金融市場全般が落ち着きを取り
戻した形になりました。パウエル議長はまた、米経済の先行きについて、「ソフト
ランディングは容易ではないだろう」としながらも、「そこに至る道筋はある」と
して、「それが可能かどうか決める上で重要な役割を果たすものの、われわれがコ
ントロールできない多くの要素が存在する」と付け加えています。
(ブルームバーグ)

今回の利上げは、高水準で推移するインフレ率を鑑みた場合やむを得ない決定であ
ったと思います。インフレ阻止を最重要課題に掲げているバイデン政権にとっても
、0.5ポイント幅の利上げの選択肢はなかったと思われ、大幅利上げを支持する
ものと思います。
パウエル議長はその後の大幅利上げの影響を最小限に抑えるため、「この幅が普通
になるとは見込んでいない」という言葉を使ったのではないかと思います。
投資家の利上げに対する極端な警戒感を和らげたことで、株式市場は反発し、大き
く売られていた債券も買われ、金利が低下したことでドル円も前日の135円台半
ばから2円以上もの下落を見せました。
今後は、引き続きインフレ指標の動向と、それに伴い7月の会合での利上げ幅に関
心が移ります。
この日発表されたNY連銀製造業景況感指数や小売売上高の数字では明らかに減速
傾向が見られ、住宅価格の上昇にもブレイキがかかってきた兆候があります。
今後米経済成長が鈍化すれば、いずれインフレもピークアウトの兆しを見せる可能
性が高いと思われますが、パウエル議長も「われわれがコントロールできない多く
の要素が存在する」と述べていたように、ウクライナ情勢など依然として「不透明
」な要素も多くあります。FRBの闘いはまだ終わりが見えません。

バイデン大統領はウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談を行い、ウクライナ
の安全保障支援に10億ドル(約1340億円)を追加提供すると約束しました。
ゼレンスキー大統領の強い要請に答える形で、「追加的なミサイル発射装置とその
弾薬、海岸防衛用の兵器、ウクライナがドンバス地方の防衛作戦で必要とする高度
ロケットシステムなど、安全保障の支援を米国がさらに10億ドル提供すると、ゼ
レンスキー大統領に伝えた」と述べました。(ブルームバーグ)
また欧州では、独仏伊3カ国の首脳が本日ゼンレンスキー大統領を訪問し、会談を
行うことを発表しています。
一方中国の習主席は、ロシアのプーチン氏と電話会談を行い、「中国は主権や安全
保障、主な懸念事項に関連する問題について引き続きロシアと相互に支持すること
に前向きだ」と語っています。

FOMCを終え一旦落ち着きを取り戻した金融市場ですが、相変らず値動きは荒っ
ぽく、高ボラティリティーが続いています。ドル高傾向もこれで終わったわけでは
なく、米国のインフレのピークアウトの兆候が表れるまでは「Buy on dip」のスタ
ンスは変わらないと思われます。

本日のドル円は133円30銭~134円80銭程度予想します。


ドル円NYで135円48銭まで上昇 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場


◆ドル円は再び上昇し、NYでは135円48銭まで買われ、
1998年10月以来となるドル高を記録。5月のPPIが
高水準だったことや、米長期金利が一段高となったことに
反応。
◆ユーロドルは下値を試す動きが続いたが、前日同様1.04
近辺で下げ止まる。
◆株式市場はまちまち。ダウとS&P500は続落したが、
ナスダックには買いが入り、小幅高で引ける。
◆債券は大幅続落。長期金利は3.49%台まで上昇し、
3.47%台で取引を終える。
◆金と原油は売られる。

◆5月生産者物価指数    →  0.8%

本日の注目イベント

◆豪   豪6月ウエストパック消費者信頼感指数
◆中   中国5月小売売上高
◆中   中国5月鉱工業生産
◆独   独4月貿易収支
◆欧   ユーロ圏4月鉱工業生産
◆欧  ラガルド・ECB総裁講演
◆米   5月小売売上高
◆米 5月輸入物価指数
◆米   6月NY連銀製造業景況指数
◆米   6月NAHB住宅市場指数
◆米   FOMC 政策金利発表
◆米   パウエル議長記者会見
◆米   米下院特別委員会、議事堂襲撃事件公聴会


米長期金利が連日10ベーシスポイントから20ベーシスポイント上昇し、
昨日は一時3.49%まで上昇しています。昨年末の水準が1.51%だっ
たことを考えると、すでに倍以上になったことになります。
インフレが加速し、FRBは大幅利上げを余儀なくされるとの見方から、手
持ちの米国債を売る動きが止まらないことが背景です。
5月の生産者物価指数(PPI)は前月比で「0.8%」と、市場予想と一
致していましたが、依然として高水準です。

昨日からFOMCが開催され、明日の朝方には政策金利が発表されますが、
「0.5ポイントの利上げ」の可能性は低下し、「0.75%」が有力かと
考えています。
ウォール街の一角では、「FOMCでは40年ぶりの高いインフレを制御し
ようと、極端な政策に打って出る可能性があるとの見方も浮上しており、一
部では1ポイントの利上げが議題に上るとの見方もささやかれている」、「
FOMCでは後手に回っているという印象を払拭しようとするだろう。6カ
月前、50というのは大きくて切りのいい数字だった。一方で75は非常に
中途半端な引き上げに見える。従ってFOMCでは『コミットメントを示し
たいなら、思い切って100にしようじゃないか』といった話し合いになる
かもしれない」とブルームバーグは、チャータードバンクのグローバル責任
者の談話を紹介しています。
明日朝方の発表で、1ポイントの利上げであれば「サプライズ」として受け
止められ、株安、金利高、ドル高が一段と進む可能性があると予想します。
一方、0.5ポイントの利上げでは期待外れからドルが売られ、株価は上昇
するかもしれませんが、難しいのは予想通り0.75ポイントの利上げだっ
た場合です。
想定通りだったとして、利益確定の売りに押される可能性もないとは言えま
せん。その場合は、30分後に行われるパウエル議長の会見がカギになりそ
うです。FRBとしてはインフレ阻止に向けた強い意志を示さなければなら
ない一方、ここまで株価が下がると個人消費に大きな影響が出る可能性もあ
り、その辺りをどのようにコントロールするのか、なかなか「さじ加減」が
難しい局面です。
パウエル議長は、これまでに見せたことのない程の強い姿勢を示すのではな
いか予想していますが、議長の腕の見せ所です。

ドル円は米長期金利の上昇に呼応する形でNYでは135円48銭まで上昇
し、24年ぶりの高値を示現し、今朝は135円60銭まで続伸しています。
1998年10月には136円90銭前後まで上昇し、その前の9月には1
39円90銭辺りもありました。ただこの時はその前の年に147円台まで
ドルが買われ、天井を付けた後の下落局面でした。足元の状況とは異なって
います。
因みに1998年10月の米長期金利の水準は4.4~4.5%程度で、足
元の金利よりも1.0ポイント程高かったことになります。

バイデン大統領は14日、フィラデルフィアで開かれた会合で、リセッショ
ン入りを示すシグナルの中でも米経済の見通しは力強いと述べています。
バイデン氏は、「米経済の新たな基盤を築くことでわれわれは異例の進展を
遂げていると確信しており、世界的にインフレが後退し始めればそれが明ら
かになる。私は今ほど米国に関して楽観的になったことはない。それは確か
だ」と語っています。
高インフレが続く中、聴衆を不安にさせないためのポーズとも受け止められ
ますが、今後中間選挙に向け、このような演説が増えてくるのでしょう。

ロシア軍は依然として攻撃の手を緩めることなく、ウクライナ東部セベロド
ネツクで激しい攻撃を続けています。
ゼレンスキー大統領は、同盟諸国が先進兵器の供給を加速させなければ戦争
は膠着状態に陥る恐れがあると危機感を示し、東部の戦闘は「極めて熾烈だ
」と述べ、早急な武器の提供を訴えています。ロシアは兵士と兵器を全国土
から集めているとみられ、極東を拠点とする旧型戦車まで引っ張り出して来
ているとの報道もあります。ロシアがウクライナ侵攻を開始して間もなく4
カ月になろうとしています。為替が大きく動いていることもありますが、ウ
クライナ戦争に関する情報は、以前に比べ減っているように思えます。

FOMCの政策発表は明日の朝方3時に予定されています。結果次第で相場
は大きく上下することが予想されますので、本日のドル円は134円~13
6円程と、ワイドです。


NYダウは4日続落し、下げ幅は2600ドルを超える 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場


◆ドル円は東京時間の午後に135円19銭まで上昇したが、
その後黒田日銀総裁の円安懸念発言から134円台半ばに。
NYでは朝方133円台半ばまで売られたが、米金利の上昇も
あり再び134円台半ばまで反発。
◆ユーロドルではさらに「ドル高ユーロ安」が進み、
1.0400まで売られる。
◆株式市場は大幅に続落。3指数は揃って年初来安値を更新。
ダウの4日間の下げ幅は2600ドルを超える。
◆債券は大幅に続落。長期金利は一時3.43%台まで上昇し、
約10年ぶりの高水準を記録。
◆金は大幅に反落。原油は小幅に上昇。

本日の注目イベント

◆豪   豪第1四半期住宅価格指数
◆豪   豪5月NAB企業景況感指数
◆日   4月鉱工業生産(確定値)
◆独   独5月消費者物価指数(改定値)
◆独   独6月ZEW景気期待指数
◆欧   ユーロ圏4月鉱工業生産
◆英   英5月失業率
◆米   5月生産者物価指数
◆米   中間選挙予備選(メーン、ノースダコタ、ネバダ州など)

米国のインフレ加速が止まらず、市場参加者の多くが、FRBの積極的な
利上げに対する懸念を強めています。
昨日のNYでは、先週金曜日に発表されたCPIの上振れに対して対応し
切れなかったせいか、株安がさらに進み、債券も大幅安。長期金利は一時
3.43%まで急騰し、約10年ぶりの高水準を付けました。やや想定外
だったのはドル円の動きでした。

ドル円は昨日の東京時間の午前中には135円を付けましたが、一気に上
昇は出来ず、午後に入って135円19銭までドル高が進みました。ただ
その後黒田総裁が国会で、「最近の急激な円安は経済にマイナス。望まし
くない」と発言したことが伝わり、ドル円は134円台半ばまで押し戻さ
れました。NYが参入するとドル円の売りがさらに進み、133円台半ば
までドル安に振れましたが、その後株安、金利高に引っ張られ再び134
円台半ばを回復しています。
ユーロドルでも先週後半から「ドル高・ユーロ安」が加速してきたことを
考えると、昨日の黒田発言がなかったら136円程度まで円安が進んでい
たかもしれません。
黒田発言で、水準が切り下げられていたことで134円台に留まっていた
可能性があります。また「135円」という節目までドル高が進んだこと
で、一旦「達成感」も出てきた可能性もあります。

さらに言えば、この日の日本の債券市場では長期金利が、日銀が死守する
「0.25%」を超え、「0.255%」を付けたことも挙げられます。
「無制限の指し値オペ」を実施することで「0.25%」を超える金利上
昇を許容しない日銀の強い姿勢にもかかわらず上限金利を超えたことで、
「金融政策の変更」あるいは「金利水準の修正」など、日銀の動きに変化
が出たのではないかといった観測もあったようです。日銀の指し値オペを
使わないで、それよりも安い価格で債券を売ったということは、損を覚悟
で売ったことになり、経済合理性には合いませんが、「日銀の本気度を試
した」とか、「指し値オペのひずみ」といった様々な憶測も出たようです。
黒田総裁も今回の発言はこれまでとは異なっており、135円に到達した
ことが「急激な円安」と言えるかどうかやや疑問です。
先週8日(水)のNYでは134円48銭を付け、9日(木)の東京でも
134円56銭を記録しており、そこからわずか60銭程度円安に振れた
にすぎません。ただ、135円という水準を意識した発言だったのかもし
れませんが・・・・。
共同通信は13日に行った世論調査で、黒田総裁は不適任との回答が「5
8.5%」だったと発表しました。
黒田総裁が撤回した「家計の値上げ許容度も高まってきている」との発言
を、「77.3%」が「適切だとは思わない」と回答したと調査結果は示
しています。

本日からFOMCが開催され、15日には政策金利が発表されます。
昨日のコメントで0.75ポイントの利上げ観測も浮上したことに触れ、
さすがにFRBは「そこまでの急激な利上げは回避するのではないか」と
述べましたが、昨日は何と1.00ポイントの利上げ説まで出てきました。
株価の大幅な下げと長期金利の上昇が「その異例な利上げ幅を如実に反映
している」とも言えそうで、筆者も個人的は「0.75%の利上げもあり
得る」との見方に変更しています。
連日大きく下げている株価への配慮もあるだろうと予想していましたが、
現時点ではFRBの尻には火がついている状況です。一気に大幅な利上げ
を行い「断固インフレを阻止する」という強い意志を見せる必要がありま
す。
今回は引き上げ幅と同時にパウエル議長の発言も大いに注目されます。
ここでも強い決意が示されるのではないかと予想しています。
本日も日本株の大幅下落は避けられないようです。
ブルームバーグは、「ドル以外は全て売れ」との言葉が、トレーディング
デスクでは合言葉になっているとの記事を掲載しています。

本日のドル円は133円50銭~135円程度を予想します。


米5月CPI、8.6%に上昇 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は株価の大幅安に伴うリスク回避の円買いと、
CPIの上振れによる金利高が錯綜。133円52銭まで
売られた後、134円台半ばまで値を戻す。
◆ユーロドルは大幅に値を下げ、1.0506まで下落。
◆株式市場は大幅続落。5月のCPIが予想を上回ったことから、
FRBによる大幅な利上げ観測がさらに高まり、ダウは800
ドル安。
◆債券は大幅に続落。長期金利は3.17%台まで上昇。
◆金は買われ、原油は続落。

◆5月消費者物価指数              →  1.0%
◆6月ミシガン大学消費者マインド(速報値)   →  50.2
◆5月財政収支                 →  -66.2b

本日の注目イベント

◆英   英4月鉱工業生産
◆英   英4月貿易収支
◆米   米下院特別委員会、議事堂襲撃事件公聴会


米国のインフレの高進はまだ続きそうです。
5月の消費者物価指数(CPI)は市場予想の「8.2%」だけではなく、
4月の「8.3%」を超える「8.6%」でした。また変動の大きい食品と
エネルギーを除くコアCPIも4月の「6.2%」を下回ったものの、市場
予想の「5.9%」を上回る「6.2%」でした。(いずれも前年同月比)

今回のCPIに関して市場は、「インフレがピークに達して落ち着き始めて
いるのでは」といった期待もあっただけに、インパクトがありました。
欧州時間には133円台半ば近辺で推移していたドル円は再び134円台半
ばまで押し上げられました。それ以上に動きの激しかったのがユーロドルで
した。ユーロドルではドル高が進み、ユーロは2週間ぶりに1.05台前半
まで売られました。
株式市場ではさらに金利上昇を懸念する動きが加速し、ダウは880ドル下
げ、ナスダックは3%を大きく超える下落でした。ダウの下落幅はここ2日
間で1500ドルを超える大幅な下げになっています。
債券は当然売られ、長期金利は1カ月ぶりに3.17%台まで上昇しました
が、ドル円の上昇は限定的でした。
もっとも、本レポート執筆時の朝の早い時間には134円73銭近辺まで上
昇し、直近のドルの高値を更新しています。

予想以上に高進するインフレに、市場は一段と警戒色を強めています。
今週のFOMCと7月のFOMCでの0.5ポイントの利上げは既に「確定
的」だと思われますが、今回の結果を受け9月会合でも0.5ポイントの利
上げ幅を予想する声も高まってきました。さらに今週のFOMCでは0.5
ポイントではなく、「0.75%引き上げる」との見方も浮上しています。
サマーズ元財務長官はCNNの番組で、「インフレが現状ほど高く、失業率
が今と同じほど低いと、必ずといっていいほど2年以内にリセッション入り
する」と指摘し、インフレに関しては「FRBの予測はあまりに楽観的な傾
向があり、問題の重大さを十分理解するよう期待している」と述べています。
また、独アリアンツの首席顧問を務めるモハメド・エラリアン氏は「インフ
レ率はまだこれから悪化するだろうと私は懸念している。今のペースでいけ
ば、9%になる可能性もある」と語っています。(ブルームバーグ)

CPIに加え、この日は6月のミシガン大学消費者マインドも発表されまし
たが、こちらもややサプライズでした。
前月の「58.4」から急低下し「50.2」と、過去最低水準に落ち込ん
でいました。
速報値であるため今後上方修正される可能性はありますが、インフレの高進
が家計への打撃となっていることがうかがえます。
実際、米国でのガソリンの平均小売価格は初めて「1ガロンあたり5ドル」
を突破しています。
車が日常生活の「足」となっている米国では、すでに夏のドライブシーズン
に入っており、ガソリン価格の上昇は直接家計に大きな影響を与えていると
報告されています。
中間選挙まで半年余りを残すのみとなっており、インフレ阻止を「最優先課
題」として掲げているバイデン大統領とパウエル議長への圧力はますます高
まるとみられます。

本日は日本株も大きく売られそうです。リスク回避の円買いも若干見られる
かもしれませんが、FRBによる大幅な利上げ観測がより材料視される可能
性が高いと予想します。

本日の予想レンジは134円~135円50銭程度とみます。


ECB、7月に0.25%の利上げを決定 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は東京時間に134円56銭を付けたが、その後は売りが
先行し欧州では133円19銭まで下落。NYでは長期金利が上昇
したことで再び134円台半ばへ。
◆ECBは定例理事会で7月に0.25%の利上げを行う
ことを決定。ユーロドルは1.0774まで買われたが、その後
は景気減速に対する懸念から1.06台前半まで売られる。
◆株式市場は大幅に続落。ECBの利上げ決定や米長期金利が
上昇したことで3指数が揃って下落。ダウは638ドル下げ、S&Pも
97ポイントの下落。
◆債券は続落。長期金利は3.04%台まで上昇。
◆金と原油は下落。

◆新規失業保険申請件数    →  22.9万件

本日の注目イベント

◆中   中国5月消費者物価指数
◆中   中国5月生産者物価指数
◆米   5月消費者物価指数
◆米   6月ミシガン大学消費者マインド(速報値)
◆米 5月財政収支

予想通りECBは昨日開いた理事会で、7月1日に量的緩和を止め、同月
の理事会で「0. 25%」の利上げに踏み切ることを発表しまし
た。ECBの利上げは2011年以来11年ぶりとなりますが、これで主
要国の中で日銀だけがかたくなに「大規模な金融緩和政策」を維持してい
ることとなり、円が売られる最大の要因になっています。

声明文では、「中期的なインフレ見通しが現状維持または悪化する場合、
9月会合でより大幅な利上げが適切になるだろう」とした上で、「現在の
判断に基づいて、漸進的だが持続的な追加利上げが妥当になると委員会は
予想している」としていました。
今回の決定に関しては一部には0.5ポイントの利上げも予想されていま
したが、ここは初の利上げということもあり、FRB同様、利上げ後の影
響も見極めたいとするスタンスを採ると、個人的にも予想していました。
このことについてはラガルド総裁も、「漸進的な利上げで開始するのは世
界の大半の中銀が採用することの多い手法で、優れた慣行だ」と述べ、「
この日の決定は7月単月だけではなく、行程全体を念頭に置いたものだ」
と述べ、声明文と同様に9月の追加利上げも示唆していました。
ユーロ圏の5月のCPIは「8.1%」と高水準で、今後米国を上回る可
能性もあると指摘されています。
ドイツ連銀総裁などを中心に、理事会メンバーの中には0.5ポイントの
利上げを主張する声も多く、ECBは今後のインフレの動向次第では大幅
利上げに追い込まれる可能性もあります。
ただ、ECBにとってロシア・ウクライナ戦争という不確実な要因が大き
く、簡単には大幅利上げには踏み切れない状況にもあります。この点がF
RBとは大きく異なる部分で、ラガルド総裁も頭を痛める部分でしょう。

米国ではウォラー理事に続き、ブレイナード副議長も0.5ポイントの利
上げに前向きな姿勢を見せていますが、今度は元FRB副議長のブライン
ダー氏も大幅利上げが必要だとの見解を示しました。ブラインダー氏は、
「現時点におけるわれわれの想定とほぼ同じ状況が続けば、0.5ポイン
トの利上げが6月と7月の2回よりも多く必要となる。3回か4回の会合
で0.5ポイントが必要になるかもしれない」と、現役メンバーではない
ものの、さらにタカ派的な認識を示しています。
また米国がリセッションに陥る可能性は「50%をやや上回る確率だ」と
も語っています。
同氏はグリーンスパン元議長の下で副議長を務め、現在プリンストン大学
の教授の立場にあります。

ドル円は、東京時間に134円56銭近辺までドルが買われ、前日のNY
市場の高値を若干上回る場面もありましたが、その後はドルの上値が重く
なり、欧州市場ではドル売りが先行しました。
欧州では133円19銭辺りまで売られ、やや天井感が出たかと思いまし
たが、NY市場では再び134円台半ばまで反発するなど、荒っぽい動き
です。
結局1円以上もの下落を繰り返しながらも「往って来い」の相場展開で、
1円以上も下げても再び戻って来るところに「今のドルの強さ」というか
、「円の弱さ」が表れています。上でも触れましたが、G7の国で日本だ
けが金融緩和を続け、今朝の日経新聞にもありましたが、日銀がイールド
カーブコントロール(YCC)を行っているため、2年、5年債では日本
だけがマイナス金利で推移しています。
因みに、イタリアの5年債は2.5%を超え、米国も5年債でも3%を超
えています。

最後に、「日銀が政策やコミュニケーションの調整に動くドル円の水準」
について、3-8日にブルームバーグがエコノミスト45人に行った調査
結果が興味深いと思います。調査では「140円では動く」との見方が多
いとの結果が出ています。

本日のドル円は5月の米CPIもあることから、133円~135円程度
を予想します。


ドル円一段と上昇し134円台半ばへ 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は上昇の勢いが止まらず、NYでは134円48銭まで
上昇。金融緩和を続ける日銀と他の主要中銀との政策の差が
あらためて意識されたが、動きがやや投機的との声も。
◆ユーロドルは小幅に反発。1.0748まで買われ、対ユーロでも
円売りが加速し、144円25銭までユーロ高が進行。
◆株式市場は3指数が揃って反落。先週から急速に回復した
株価も、金利上昇に買い戻しも一服。
◆債券は反落し、長期金利は3.02%台に上昇。
◆金と原油は続伸。原油価格は一時約3カ月ぶりに123ドル台
を付ける。

本日の注目イベント

◆中   中国 5月貿易収支
◆欧   ECB政策金利発表
◆欧  ラガルド・ECB総裁講演
◆米   新規失業保険申請件数

円売りの勢いが止まりません。
昨日のNYでは米長期金利が上昇したことで再び「大台替え」を見せ、ドル円は1
34円48銭まで上昇。135円が現実的になってきました。米長期金利が再び3
%台に乗せたことで円売りが加速したようですが、この所の円売りの勢いは米金利
の上昇だけでは説明ができない程加速しています。ドル円が132円に急騰した6
日(月)の米長期金利は3.04%台でしたが、昨日は3.02%です。
クロス円でも軒並み記録的な円安が進んでおり、ユーロ円は144円25銭まで上
昇しています。「家計の値上げ許容度は高まっている」と発言した黒田日銀総裁の
言葉が、「国民感情を逆なでした」と連日話題になっていますが総裁は昨日、英フ
ィナンシャルタイムズ(FT)主催のイベントで、「他の主要中銀と同様に、日銀
は為替レートを金融政策の目標にしていない」と発言したことも、この日の円売り
に油を注いだとの指摘もあります。
「モノ言えば唇寒し・・・・」といった状況でしょうか。

米国の5月の消費者物価指数は明日10日に発表されますが、現時点での予想は総
合CPIが「8.2%」と、4月の「8.3%」より若干鈍化しているとみられて
いますが、高インフレが続いていると予想されています。
ノーベル経済学賞受賞者であるエール大学のロバート・シラー教授は、米国がリセ
ッション入りする可能性は十分あると警告しています。全米主要20都市の住宅価
格である「ケースシラー住宅価格指数」の創設者の一人でもある同教授は、「イン
フレ加速やその抑制を目指す米金融当局の取り組み強化を背景に、景気後退の可能
性を巡る懸念が最近高まっている。多くの企業経営者が米経済への警戒感を表明し、
株価も下落。米国ではまた、経済が間違った方向に進んでいるとみる消費者も増え
ている。これらは全て、消費者と企業が慎重姿勢を一段と強め、景気低迷の種をま
くという結果につながり得る」とし、「リセッション入りの可能性は十分ある」と
述べています。(ブルームバーグ)

ロシアのラブロフ外相はトルコを訪問し、ウクライナ産穀物の海上輸送封鎖解除に
ついて協議しましたが、合意に向けた進展の兆しは見られていません。ドイツのメ
ルケル前首相はロシアのプーチン氏について、「ウクライ侵攻により大きな過ちを
犯した」と指摘しながらも、ロシアを孤立化させることは長期に渡り「不可能」だ
との見方を示しました。いまだに出口の見えないロシア・ウクライナ戦争はあと数
週間で4カ月目に入ります。

ドル円はここまで来たら135円を見ない訳には行かないのかもしれません。
もし2002年2月に記録した135円16銭を抜けるような状況になれば、
1998年2月の140円近辺が次のメドとなります。
それにしても125円近辺では財務大臣辺りから「悪い円安」といった「口先介入
」とも取れるけん制の声が聞かれましたが、130円を大きく超えた今は出ていま
せん。「言っても効果がない」ということが分かったのか、あるいは米国に

の気がないことを理解したのか分かりませんが、やや不気味な感じもします。
明日の米CPIを前にドル円の動きは一段と活発になりそうです。

本日のドル円は133円50銭~135円程度を予想します。


ドル円一時133円まで続伸 

ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場


  • 東京時間の午後3時過ぎに133円まで円売りが進んだが、NYでは一服。米長期金利が低下したこともあり、132円33銭までドルが売られる。

  • ユーロドルは小幅に下落。1.0653辺りまで売られたが、ユーロ円は142円台まで上昇。

  • 株式市場は、朝方は下落で始まったものの、長期金利の上昇が一服だったことで上昇に転じる。3指数は揃って続伸。

  • 前日大きく売られた債券は反発。長期金利は2.97%台へと低下。

  • 金と原油は揃って反発。

本日の注目イベント

  • 日 4月貿易収支
  • 日 4月国際収支
  • 日 5月景気ウオッチャー調査
  • 日 1-3月GDP
  • 独 4月鉱工業生産
  • 欧 ロ圏1-3月期GDP(確定値)
  • 欧 ロシア外相、トルコ訪問(8日まで)

ドル円は昨日の午後3時すぎ、ついに133円まで上昇し、連日1円以上の上昇幅を記録しています。前日の黒田総裁の発言がかなり意識されたようで、昨日朝にはワイドショーでもその発言を巡り喧喧囂囂の議論が見られました。主要国が次々と利上げ実施を発表する中、日銀だけがその流れに逆行する動きを見せていることで、一気に円売りが加速しています。昨日133円台まで上昇した後の、専門家のコメントはほぼ全員「円売りがさらに進む」、「140円を目指す」といったもので、中には「円安の流れは2023年も続く」といったコメントもありました。

今朝の日経新聞でも、「円キャリー取引復活の兆し」と題して、FX勢に円売り余力があることを伝えています。株式市場でもそうですが、日経新聞がその話題を取り上げたら、「そこが天井であり、底値である」といったアノマリーがあります。ドル円は上昇傾向を維持するとの相場観は持っていますが、ここまで「円安がさらに加速するといった見方一色」に傾くと、やや警戒感を抱かざるを得ません。昨日のNY市場では円売りの勢いはやや一服でした。米長期金利が前日の3%台から低下したことでドル上昇の勢いにブレイキがかかったようですが、NYオープン前にすでに大きく上昇していたことを考えると、当然と言えます。ただ、主要通貨間での円安トレンドは変わっていません。

オーストラリア準備銀行(RBA)は予想通り政策金利の引き上げを決定しました。キャッシュ・レート誘導目標を0.5ポイント引き上げ0.85%にしました。豪ドル円は96円台まで買われ、2015年6月以来7年ぶりの高水準を付けています。「ドル円が20年ぶりの安値」、「ユーロ円は7年5カ月ぶりの高値」といった状況ですから、特段驚きはありませんが、極端な円安が続き、輸入物価は今後さらに上昇する公算が高いと思われます。この円安を止めるには、米国のインフレがピークを付け鈍化する兆候を見せるか、あるいは、日銀が大規模な金融緩和政策から舵を切り直し、引き締めに転換するしかないように思います。ただ無制限の指し値オペを修正すれば、長期金利が急上昇する可能性が高く財政を圧迫することになります。その先にあるのは、今度は日本の財政の悪化に耳目が集まり、それが円売り材料と見なされるといったリスクです。もっとも、その時は単に「円売り」ということではなく、「日本売り」といった事態になるかもしれません。

世界銀行は7日、今年の世界経済成長予想をさらに引き下げ、平均以上のインフレと平均以下の成長が数年続き、低中所得国・地域を不安定化させるリスクがあると警告しています。世銀は今年の成長率を「2.9%」と予想しました。4月時点では「3.2%」、1月時点では「4.1%」と見込んでいましたが、予想の引き下げが続いています。マルパス総裁は、「世界経済は再び危険な状態にある」と指摘し、「高インフレと低成長に同時に見舞われている。世界的なリセッションが回避できたとしても、大幅な供給増加が始まらなければスタグフレーションの痛みは数年続く可能性がある」との見通しを発表しています。(ブルームバーグ)

イエレン財務長官は7日、上院財政委員会の公聴会で、インフレは高い状態が続く可能性が高いと述べ、2021年に高インフレは長期化しないと予想したのは、自分もパウエル議長も間違っていたとあらためて認めています。長官は、「おそらく私たちはいずれも、『一過性』より良い表現を使えたはずだ」と話し、「強いインフレ圧力があることに疑いの余地はなく、インフレが現時点で最大の経済問題であること、それに対処することが極めて重要であることは間違いない」と述べています。また、「インフレは高い状態が続くと想定しているが、低下に向うことを強く願っている」とも述べていました。

ロシアのショイグ国防相は、ウクライナ東部ドンバス地方にある二つの州のうちルガンスク州の97%をロシア軍が掌握したと主張しています。一方ゼレンスキー大統領は、ウクライナ軍によるロシア占領地の解放は武器と人的資源の不足で鈍っていると、フィナンシャル・タイムズ(FT)とのインタビューで語っています。反転攻勢に出るため、さらに武器の支援を欧米に要請しており、「ロシア
軍を侵攻開始前の位置まで押し戻したとしても、一時的な勝利に過ぎず、ウクライナは領土の全てを取り戻さなければならない」と語っています。ただ、一方ではロシアのプーチン氏とは交渉の可能性は捨てていないとの立場を示しています。

上でも述べたように、ドル円はこの先一段と上昇するのか、あるいは日経新聞のアノマリーが見られるのか、ここからの動きに注目です。本日のドル円は132円~133円50銭程度を予想します。


ドル円20年ぶりに132円台に 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場


◆ドル円は一段高となり、NYでは132円にワンタッチ。
米長期金利が再び3%台に乗せたことで、ドル買いが強まり
直近高値の131円35銭近辺を抜けると急上昇。ストップも
巻き込み132円01銭を付ける。
◆ドル高の流れの中、ユーロドルでもユーロが売られたが
限定的。1.0684までユーロ安が進んだが、円に比べ
下落幅は少なく、その結果、ユーロ円は141円台に上昇。
◆株式市場は反発。米金利が上昇したにもかかわらず、この日の
株式市場は買いが優勢に。3指数は小幅ながら揃って上昇。
◆債券は続落。長期金利は再び3%台に乗せ、3.04%台に上昇。
◆金と原油は下落。


本日の注目イベント

◆豪   RBA、キャッシュターゲット
◆日  4月景気先行指数(CI)(速報値)
◆中   中国5月外貨準備高
◆独   独4月製造業新規受注
◆米  4月貿易収支
◆米   4月消費者信用残高
◆米   米中間選挙予備選(カリフォルニア州、アイオワ州など)
◆米   世銀、世界経済見通し
◆加   カナダ4月貿易収支

ドル円の上昇に勢いが付いてきました。
投資家は再び日米金利差に着目し、「ドル買い円売り」を加速させ、昨日のNY
では5月9日に記録した直近高値の131円35銭を抜き、一気に132円台ま
でドル高が進みました。2002年4月以来、20年2カ月ぶりの水準です。
131円35銭近辺を超えるとストップロスのドル買い注文をこなしながらドル
が上げ足を早めたとみられ、やはりそれまでの高値、安値を超えた水準にはスト
ップの注文が入り易いことが確認された格好でした。
先週末のNYでは131円手前までドル高が進みましたが、昨日の東京時間では
ドルの上値が重く、小動きの中130円台半ばまで押し戻される展開でした。し
かし海外では動きが異なり、NY市場ではこの日だけで1円30銭以上もドルが
買われたことになります。1年で10円以下の値幅しか動かなかった数年前と大
きく状況が変わっています。

FOMCメンバーにタカ派的な見方が増えてきたことがあり、米債券には売り圧
力が強まってきました。
昨日の債券市場では債券が売られ、長期金利が再び3%台に乗せてきたことがド
ル買を促しました。「3%台で130円台」といった相関を、前回のドル高局面
では述べましたが、今回は「3%で132円台」を示現しています。
円売りの圧力がそれほど強まってきた証左かと思われます。
FRBの積極的な利上げ観測に加え、先週にはカナダ中銀が2カ月連続の利上げ
を決め、それも0.5ポイントの大幅利上げでした。
ECBも7月と9月の利上げが見込まれ、状況次第では大幅利上げの可能性もわ
ずかながら残しています。
オーストラリア準備銀行(RBA)も、本日の会合で利上げに踏み切る可能性が
あります。日本だけが蚊帳の外といった状況下で、円が売られるのも納得できま
す。

このような状況の中、黒田日銀総裁は昨日、共同通信社主催のイベントで講演を
行いました。
これまでの判で押したような発言を繰り返し、「金融引きめを行う状況には全く
ない」とし、「急激な変動ではなく安定的な円安方向の動きであれば、経済全体
にプラスに作用する可能性が高い」と強調しています。また、「現在のイールド
カーブコントロールを柱とする強力な金融緩和を粘り強く続けていくことで、経
済活動をしっかりサポートすることが最優先課題だ」とも述べていました。
日本でもCPIが日銀の目標である2%を超え、4月には2.1%まで上昇して
きましたが、日銀はこの上昇は「コストプッシュ型であり、持続的・安定的では
ない」ことを、金融緩和を粘り強く続けていく理由に挙げています。
黒田総裁のこの発言も、海外勢には材料視されたようです。
ただ総裁は、「企業、家計ともに物価観やインフレ予想に変化が見られ始めてい
る」とし、「企業の価格設定スタンスが積極化している中、日本の家計の値上げ
許容度も高まってきているのは、持続的な物価上昇の実現を目指す観点からは重
要な変化と捉えることができる」との認識を示したことについて、ブルームバー
グは「発言に微妙な変化が見られている」と論じています。

トルコのエルドアン大統領は6日アンカラでの閣議後、「現政府が利上げするこ
とはない。引き続き利下げしていく」と言明しました。この発言を受けトルコリ
ラは対ドルで売られています。また、英国では党首ジョンソン首相に対する信任
投票で、賛成211、反対148の賛成多数で続投が決まり、党首続投が決まり
ました。ポンドはこの結果を受け買われています。

今朝のドル円はNYでのドル高を受け、132円30銭まで買われています。
先週の月曜日が126円台だったことを考えると、上昇するにしてもスピードが
速すぎる感は否めません。

本日のドル円は131円50銭~132円80銭程度を予想します。


米5月NFPは39万人の増加 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は大きく続伸。米5月の雇用統計でNFPが
市場予想を超えたことで、長期金利が上昇しドル高に。
ドル円は130円98銭まで買われ、約1カ月ぶりの高値を付ける。
◆ユーロドルは小幅に上昇し、1.07台で推移。ユーロ円は
140円37銭まで上昇し、約7年ぶりの高値を記録。
◆雇用統計の上振れに株価は3指数が揃って反落。ダウは
348ドル下げ、S&P500も68ポイントの下落。
◆債券は続落し、長期金利は2.93%台に上昇。
◆金は反落。原油は続伸し、一時は120ドル台に乗せる。

◆5月失業率                        →  3.6%
◆5月非農業部門雇用者数                 →  39.0万人 
◆5月平均時給 (前月比)                 →  0.3%
◆5月平均時給 (前年比)                 →  5.2%
◆5月労働参加率                      →  62.3%
◆5月ISM非製造業景況指数                →  55.9
◆5月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値)      →  53.4 
◆5月S&PグローバルコンポジットPMI(改定値)     →  53.6 

本日の注目イベント

◆日   黒田日銀総裁講演
◆中   5月財新サービス業PMI

分かりやすい相場展開でした。
前日のADP雇用者の発表直後とは正反対の動きでした。
ADP雇用者数が市場予想を下回ったことと反対に、雇用統計では非農業部門雇用者数
(NFP)が市場予想を上回ったことで、FRBが積極的な利上げ姿勢を維持するとの
見方から株価は大きく下げ、債券が売られました。金利上昇に伴いドル円は買われ、1
30円98銭までドル高が進み、5月9日に131円35銭という直近高値を記録した
水準に迫りました。円は全面安の展開で、ユーロ円は140円37銭まで上昇。4月2
1日に付けた140円を抜き、2015年6月22日以来実に、7年ぶりとなるユーロ
高を記録しました。また豪ドル円も94円台半ばを付けるなど「円独歩安」です。
ECBが7月の会合で利上げを実施することはほぼ確実と見られ、RBAも追加利上げ
の可能性が高いとみられており、ドル円でドルが買われたことと同じように、「金利差
」に着目した「円売り」がさらに強まっています。

5月のNFPは市場予想の「31.8万人」に対して、「39.0万人」と大幅に増加
しており、4月分も速報値の「42.8万人」から、「43.6万人」に上方修正され
ました。
賃金が幾分低下していることと併せ、企業は人手不足をやや解消しつつある状況が浮か
び上がります。これでFRBにとって「雇用」というハードルを意識する必要がなくな
り、インフレ阻止に全力を投入できるということになります。
「良いニュースは、悪いニュース」といった言葉がNY株式市場では囁かれているよう
ですが、良好な経済指標は、今回のように株式市場には逆風としてたちはだかります。
先週は株式市場でも買い戻しが大きく進み、底値を確認した可能性もやや浮上しました
が、FRBの今後のスタンスを考えると、まだ試練は続きそうです。
今回の雇用統計の結果を見て、あらためてADP雇用者数とは連動しないことが確認さ
れた格好でした。

5月の雇用統計の結果を受けてクリーブランド連銀のメスター総裁は、「雇用者数が前
月より若干低いのは、良いことだと考えている。しかし、それがわれわれの見通しを変
える、もしくは政策に対する私の見通しを変えるかどうか判断するのはまだ早すぎる」
と述べながらも、「9月会合の時期に説得力ある証拠が確認できない場合、その会合で
も50ベーシスポイント引き上げることは容易に支持し得る」と、CNBCとのインタ
ビューで述べています。同総裁はまた「その決定を今下すべき理由はないが、50ベー
シスであろうがなかろうが必要な行動を起こすというのが現時点での立場だ」と話して
います。(ブルームバーグ)

メスター総裁は今年のFOMCでの投票権を持っており、6月、7月の会合での0.5
ポイントの利上げを支持していますが、これで、セントルイス連銀のブラード総裁、F
RBのウォラー理事についで、9月会合での大幅利上げを支持する「タカ派」が3人目
となりました。
現時点では、すでに「9月会合での利上げ見送り」の可能性は消えたと考えます。
従ってドル円はいずれ上記直近高値を再度テストすると思われますが、ただ9月会合は
20-21日に開催されます。それまで雇用統計の発表はまだ3回あります。
市場は常に先読みし、過熱し、オーバーシュートする「習性」があることを考えると、
今の状況を考慮してもドル円がこのまま135円を目指すかどうかは不明です。
何回かの雇用統計やその他の重要な経済指標の結果を受け、再び「オーバーキル」が浮
上し、ドル円が停滞することもないとは言えません。

レモンド商務長官は5日CNNとのインタビューで、40年ぶりの高いインフレを抑え
る方法として、一部の財に対する関税を撤廃することは「理にかなっているかもしれな
い」と述べています。
長官は、「バイデン米大統領はこれを検討している」とし、「大統領は米国の家庭を助
けると考えられる名案には、先入観を抱かず実行を検討する」と述べ、中国からの輸入
品約3000億ドル(約39兆2640億円)に対する関税もその検討対象に入ってい
る模様です。

本日のドル円は130円~131円30銭程度を予想します。


5月のADP予想を大きく下回る 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は前日のNYでの上昇を受け、130円24銭近辺まで
上昇したものの買いは続かずその後下落。NYでは金利低下にドル
売りが勝り129円52銭まで下落。
◆ユーロドルはECBによる利上げが意識され反発。1.0750まで
ユーロ高が進み、対円でも139円台半ばまで続伸。
◆株式市場は3指数が揃って大幅に反発。ADP雇用者数が予想を
大きく下回り、積極的な利上げが回避できるとの観測が高まる。
◆債券はほぼ横ばい。長期金利は2.90%台で推移。
◆金は大幅に続伸。原油価格も続伸し116ドル台に。

◆ 新規失業保険申請件数      →  20万件
◆5月ADP雇用者数       →  12.8万人
◆4月製造業受注         →  0.3%
  

本日の注目イベント

◆独   独4月貿易収支
◆トルコ  トルコ5月消費者物価指数
◆独   独5月サービス業PMI(改定値)
◆欧   ユーロ圏5月サービス業PMI(改定値)
◆欧   ユーロ圏4月小売売上高
◆英   ロンドン市場休場(プラチナ・ジュビリー・バンクホリデー)
◆米   5月雇用統計
◆米   5月ISM非製造業景況指数
◆米   5月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値)
◆米   5月S&PグローバルコンポジットPMI(改定値)
◆米   ブレイナード・副議長講演

5月のADP雇用者数は、市場予想の「30万人」を大きく下回る「12.8万人」
でした。昨日も述べたように、現時点では好調な経済指標が発表されると、景気減速
を意図してFRBが大幅な利上げを実施し易いといった連想が働き、「株安、債券安
、金利高、ドル高」に動くことが予想されます。従って予想を下回る結果が発表され
ると、その反対の動きが見られる可能性が高く、昨日のADP発表後は、「教科書通り
」でした。5月の結果が市場予想を下回ったばかりではなく、4月分も下方修正され
ました。
今回の結果は、労働力が限られる中で企業が引き続き人材確保に苦戦していることを
示唆していると受け止められます。ただインフレ高進と貯蓄率の低下が重なり、今後
数カ月で労働者の雇用市場復帰が増える可能性もありそうです。
そうなれば、米金融当局にとって朗報となります。当局は労働参加の拡大が労働力需
要を冷やし、ひいては賃金の伸びの鈍化とインフレ減速につながる可能性があるとみ
ているからです。
ブルームバーグは、今回のADP雇用者数の結果を「ほくそ笑むパウエル議長、片落
とす労働者」というタイトルを付し、なかなか絶妙な言い回しで報じています。

ADP雇用者数の結果を受け、株式市場は大きく反発しました。特にナスダックは2
.6%を超える大幅高でした。ユーロドルでユーロが買い戻されたことからドル円も
129円52銭まで「ドル安」が見られました。ドル安が進んだことで代替品の金が
買われ、金価格は22ドル高です。複雑な動きを見せたのがWTI原油価格です。
OPECと非加盟国の主要産油国で構成する「OPECプラス」は、昨日の閣僚級会
合で、石油供給を現行ペースに比べて50%拡大することで合意しました。
ここ数カ月は日量43万2000バレルだったものを、7月と8月にはそれぞれ64
万8000バレルに拡大することで一致しました。
原油供給量が増えることで価格は下落すると考えるのが一般的ですが、WTI原油価
格は前日比1ドル61セント上昇し、116ドル台後半で取引を終えています。
市場は、米エネルギー情報局の「週間在庫統計」で原油在庫が減少していたことが示
され、これにより強く反応したものと思われます。

FRB副議長に就任したばかりのブレイナード氏はCNBCとのインタビューで、「
現時点でのデータに基づいて市場が6月と7月の50ベーシスポイント利上げを織り
込んでいることは、妥当な道筋のようだというのが今の私の見方だ」と述べ、「休止
するという可能性は、現時点では非常に低いと思われる。インフレを当局目標の2%
に戻すためにやるべき仕事がまだ多く残っている」と語っています。
市場はすでに6、7月の0.5ポイントの利上げは織り込んでいるため、この発言は
特に気にする必要はありませんが、われわれが最も知りたい9月の会合での対応につ
いてブレイナード氏は、「9月になった時点で当局はどうすべきかを判断するのは難
しくなっている」といった発言に留めていました。

激しい戦闘が続くウクライナに対して米国は高度兵器供与の第一弾として、射程80キ
ロの高機動ロケット砲「ハイマース」を提供すると発表しましたが、ゼレンスキー大
統領はウクライナでは兵士が1日で100人も亡くなっていると述べるなど混迷が続
いています。
そんな中、フィンランドとスウェーデンがNATOに加盟申請したことに続き、デン
マークも国民投票でEUの共通安全保障・防衛政策に参加する方針を固めました。
地理的にはロシアに近いものの、長い間軍事的中立を維持してきた北欧3カ国は、ロ
シアの脅威に対する結束で欧州の傘下に入る動きを強めています。
ロシアは今回のウクライナ侵攻で「寝ていた子を3人も起こした」ことになります。

今夜の雇用統計が予想を上回るかどうかで、ドル円の値位置も大きく変わります。
本日のドル円は、129円~130円60銭程度を予想します。


ドル円続伸、130円台を回復 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円はさらに続伸。NYでは好調な経済指標と
長期金利の上昇を材料に130円19銭まで上昇。
◆ユーロドルは前日より若干水準を切り下げたが
堅調に推移。ユーロ円は4月26日以来の138円
台後半まで上昇。
◆株式市場は3指数が揃って続落。高インフレが
続くとの見方が再び強まり、ダウは176ドル下げる。
◆債券は大幅続落。長期金利は一時2.95%台まで
上昇し、2.90%台で取引を終える。
◆金と原油はともに小幅上昇。


◆5月S&Pグローバル製造業PMI(改定値)   →  57.0
◆5月ISM製造業景況指数            →  56.1
◆5月自動車販売台数               →  1268万台

本日の注目イベント

◆豪   豪4月貿易収支
◆日    5月マネタリーベース
◆欧   ユーロ圏4月生産者物価指数
◆英   ロンドン市場休場(バンクホリデー)
◆米   新規失業保険申請件数
◆米   5月ADP雇用者数
◆米   4月製造業受注
◆米   メスター・クリーブランド連銀総裁講演

ドル円は想定以上に戻りが速く、昨日のNYでは130円台を回復し、130円
19銭まで続伸しました。今週に入って市場のセンチメントは激変です。
今週月曜日の午前には126円86銭まで売られたドル円は、連日「大台替え」
を演じ、わずか3日で3円30銭強の上昇です。1日に1円以上上昇した計算と
なります。
インフレ懸念が再び強まり、FRBは今後も強力な利上げを行う公算が高いとの
観測が台頭しています。前日、バイデン大統領とパウエル議長の会談でも、言葉
では発せられなかったものの、インフレ阻止に対する「目に見えぬプレッシャー
」があったと理解できます。前日に続き円はほぼ全面安となり、ユーロ円は4月
26日以来となる138円85銭まで円安が進みました。

この欄でも何度か、「ドル円が130円台を回復し、再び131円台を目指すに
は、9月のFOMCでの『利上げは見送り』といった見方が消える必要がある」
と述べて来ましたが、FRBのウォラー理事は、「数回の会合でさらに50ベー
シスポイントの引き締めを支持する」と述べ、「具体的にはインフレ率が当局の
目標である2%に近づくまで沈静化しない限り、50bpの利上げを選択肢から
排除しない」との考えを示していました。それに加え昨日はタカ派の代表格であ
るセントルイス連銀のブラード総裁がメンフィスでの経済講演で、約40年ぶり
の高水準となっているインフレを減速させるため、政策金利を年内に3.5%ま
で引き上げるよう主張し、その上で、来年後半か2024年にはそうした利上げ
の一部を巻き戻すことができるとの見通しを示しています。
さらに、記者団に「データが予想通りであれば、9月に0.5ポイントの追加利
上げが行われると、現時点で予想している」とも述べています。
「利上げ見送り」どころか、0.25ポイントではなく「0.5ポイントの利上
げ」に言及しました。これでは株と債券が売られ、ドル円が130円台を回復す
るのも「むべなるかな」といった状況です。

昨日はこれに加え、5月のISM製造業景況指数が発表され、市場予想の「54
.5」を上回り、さらに前月の「55.4」をも上回る「56.1」だったこと
も、ドル円を押し上げる効果がありました。インフレを阻止するためには、景気
を減速させる必要があり、そのため「良好な経済指標」は「さらに強力な利上げ
をしなければならない」との発想から、皮肉にも株価が下げ、債券も売られ、ド
ルが上昇する要因と考えられます。
昨日はこの他にもFOMCメンバーの発言がありました。サンフランシスコ連銀
のデーリー総裁はCNBCとのインタビューで、「われわれが必要とする水準へ
とインフレを傾向的に引き下げるために必要な措置を講じることに、私は全く違
和感はない」と発言し、「米金融当局がしなければならないのは、緩和策を取り
除くことだ。ただデータに対してはオープンな姿勢、データ次第の姿勢である必
要がある」(ブルームバーグ)と述べ、これまでのハト派姿勢を若干修正してき
たと思えるような発言を行っています。また、6月、7月の両会合で0.5ポイ
ントずつ利上げを実施することを支持すると語ったものの、その先の政策を予測
することは控えていました。ここは、やはり「ハト派」です。
またリッチモンド連銀のバーキン総裁は中立の立場から、「金利とバランスシー
トの両面で正常化する時だと考えられる。インフレがこれほど高まり景気がなお
これほど力強い状況にあっては、そうすることが完全に理にかなっている」と語
っています。

最後に、ホワイトハウスでバイデン大統領とパウエル議長が会談した際に同席し
たイエレン財務長官について、その後会見した内容が届きました。
イエレン氏は「インフレ進行の筋道について私は間違っていた」と述べ、昨年後
半からの自身のインフレに対する見通しが間違っていたことを素直に認めていま
す。イエレン氏は昨年10月24日には「米国がインフレに対するコントロール
を失いつつあるとは考えていない。このところ経験しているようなインフレは米
国では長い間みられなかった。しかし、正常に戻る中で、これも終わると予想す
る」と、足元でジリジリと上昇し始めた物価上昇をこのように捉えていました。
さらにイエレン氏は今年1月14日の発言でも、「今回のインフレの要因は新型
コロナウイルスだと認識することが重要だ。インフレ率を引き下げたいのであれ
ば、われわれが出来る最も重要なことはコロナ対策で進展し続けることだと考え
る」と述べ、その上でインフレがどこまで続くかについては、「労働供給や需要
パターンが正常化すれば、インフレ率が2022年後半までに鈍化し、物価は正
常に戻ると考える」と語っていました。
このような発言をしたイエレン氏が、自身の見通しや認識が誤っていたと率直に
認める姿勢は評価できると思います。その後のロシアのウクライナ侵攻は誰も予
想できなかったからです。

130円台まで一気に回復したドル円は、ここから上は「常識的には」重く、前
回の高値131円35銭を抜くには時間がかかると考えますが、その「常識」も
通じないほど、動きが速く値幅も大きいことから、注意は必要です。

本日のドル円は129円10銭~130円60銭程度を予想します。


ドル円は128円台後半まで続伸 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場


◆米長期金利が上昇し、ドル円は再び128円台を回復。
128円88銭まで買われ、クロス円でも円全面安の展開。
◆ドル高の流れが強まる中、ユーロドルは小幅下落。5月の
CPIが過去最高を記録したことで、大幅な利上げ観測も。
◆株式市場は反落。ダウは7日ぶりに下落。インフレ懸念が再び
強まり、3指数とも軟調な動きに。
◆債券は大幅に下落。長期金利は2.84%台まで上昇。
◆金は反落。原油は大幅に買われ、119ドル台を付けたが
その後急落。「OPECプラス」が原油生産計画を従来通りで維持する
可能性が高まったことで、取り引き終盤に売られた。

◆3月FHFA住宅価格指数           →  1.5%
◆3月ケース・シラ-住宅価格指数        →  21.17%
◆5月シカゴ購買部協会景気指数         →  60.3
◆5月コンファレンスボード消費者信頼感指数   →  106.4

本日の注目イベント

◆豪   豪1-3月期GDP
◆中   5月財新製造業PMI
◆独   独8月サービス業PMI(改定値)
◆欧   ユーロ圏5月製造業PMI(改定値)
◆欧   ユーロ圏4月失業率
◆米   5月S&Pグローバル製造業PMI(改定値)
◆米   5月ISM製造業景況指数
◆米   5月自動車販売台数
◆米   ベージュブック(地区連銀経済報告)
◆加   カナダ中銀政策金利発表
◆米   FRBはバランスシート縮小開始
◆米   ウィリアムズ・NY連銀総裁、イベントで挨拶
◆米   ブラード・セントルイス連銀総裁講演


昨日のコメントで「相場のセンチメントが一夜にして変わったとは言いま
せんが、再びインフレ懸念が台頭してきた」と書きましたが、連休明けの
NY市場ではまさにその流れが加速し、為替も株も、そして債券もほぼ予
想通りの展開でした。高インフレは続くとの見方から、株価は3指数が揃
って売られ、債券も大幅安。
長期金利は前日の営業日から10ベーシスポイント以上も上昇し、ドル円
は月曜日の朝方の水準からちょうど2円も円安が進みました。昨日は、ユ
ーロ圏で5月のCPIが発表になり、こちらも前年同月比で「8.1%」
の上昇。過去最高を記録したことで、政策金利の大幅引き上げ観測も台頭
し、ドル高の流れの中ユーロドルは比較的堅調に推移しました。その結果
ユーロ円は約5週間ぶりに138円台前半までユーロ高が進んでいます。

結局、主要通貨の中で円の金利だけが上昇しないことから、円全面安の展
開となり、市場のセンチメントは4月中旬から下旬にかけて円が大きく売
られた状況に戻って来たような雰囲気に変わってきました。
前日FRBのウォラー理事が、「数回の会合でさらに50ベーシスポイン
トの引き締めを支持する」と述べ、「具体的にはインフレ率が当局の目標
である2%に近づくまで沈静化しない限り、50bpの利上げを選択肢か
ら排除しない」との考えを示したことに加え、WTI原油価格も110ド
ル台を大きく超えて上昇し、米国のインフレはそう簡単には収まらないと
いった見方が台頭してきたことが背景です。
ただ現時点で、このままドル円が再び130円台を回復し、131円台を
目指すのかどうかは不透明です。
焦点は今後の米インフレ指標の動向と、それに対するFRBの利上げペー
スです。その意味では、昨日のバイデン大統領とパウエル議長、さらには
イエレン財務長官も参加しての3者会談は興味深いものでした。

バイデン大統領は昨日、ホワイトハウスにパウエル議長を迎えて異例の会
談に臨みました。
バイデン氏はFRBの独立性を尊重すると宣言すると同時に、11月の中
間選挙を控えて問題化している数十年ぶりの高インフレについて、その責
任をFRBに転嫁したと、ブルームバーグは報じています。
バイデン氏は、「インフレに対応するのが私の計画だ。そのためにはまず
単純な提案をしたい。FRBを尊重し、FRBの独立を尊重するというこ
とだ。私これまでそうしてきたし、これからもそう続ける」と述べました。
今回の会談では、FRBの独立性を強調することにポイントが置かれた印
象で、「インフレを阻止するため、最大限の努力を行って欲しい」といっ
た、具体的な要請はなかった模様です。それでもブルームバーグは「その
責任をFRBに転嫁した」と論じているのは、会談に先立ち、バイデン氏
は30日のウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙に寄稿しており
、その中で「FRBはインフレを抑制するという第一の責務がある」と指
摘していることが挙げられます。また同時に、「前大統領はFRBの品位
を傷つけた。高インフレの時期におけるFRBの決定に影響力を行使しよ
うと、不適切な干渉を試みた大統領も過去にいた。私はそのようなことは
しない」と述べ、トランプ氏との違いを強調しています。
いずれにしても、バイデン氏が大統領に就任して3度目となった今回の会
談は、パウエル議長にプレッシャーを与えたことは事実のようです。FR
Bとしては出来るだけ早い時期にインフレがピークを打った兆候を引き出
す必要があり、今後のパウエル議長の発言にも注目したいところです。

ユーロ圏の5月のCPIは過去最高の「8.1%」でした。
この発表を受け、ECBメンバーの中でも「タカ派」のドイツやオランダ
中銀総裁などは0.5ポイントの利上げを主張するとみられていますが、
ラガルドECB総裁は先週、7月と9月の会合でいずれも0.25ポイン
トの利上げを決定する可能性が高いことを示唆していました。ECB内部
でも、今後のインフレに対する見方が分かれているようです。

再び円が売られ易い状況になってきましたが、ここからドルがジリジリと
上昇できるのかどうか。それには9月の会合で少なくとも「利上げ見送り
」と言った観測が消えることが必要です。

本日のドル円は128円~129円30銭程度を予想します。


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