ユーロ円144円台半ばまで上昇
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
- ドル円は小動き。135円台後半まで売られる場面があったものの、ほぼ136円台前半で推移。
- ユーロドルは反発。1.06台を回復し、1.0620まで上昇。ユーロ円も約2カ月ぶりに144円台半ばまで続伸。
- 株式市場は3指数が揃って小幅に反発。FRBによる利上げ観測が、継続される中、値ごろ感から買いも出たようで、ダウは72ドル高。
- 債券は反発。長期金利は3.91%台に低下。
- 金は6日ぶりに反発。原油は続落。
本日の注目イベント
- 豪 10-12月期経常収支
- 豪 1月小売売上高
- 日 1月鉱工業生産
- 日 日銀副総裁候補の内田、氷見野両氏への所信聴取と質疑(10:00参議院)
- 米 12月ケース・シラ-住宅価格指数
- 米 12月FHFA住宅価格指数
- 米 2月シカゴ購買部協会景気指数
- 米 2月リッチモンド連銀製造業景況指数
- 米 2月コンファレンスボード消費者信頼感指数
- 加 10-12月期GDP
昨日の東京時間でもドル円は堅調に推移し、終始136円でした。NYでは136円を割り込む場面もありましたが、136円台に戻して帰ってきました。ただ、136円台半ばから上方がやや意識されている印象もあります。昨日の「今週のレンジ予想」(ウイークリー・レポート)でも触れましたが、昨年10月に記録したドルの高値151円94銭から今年1月のドルの安値までの「下落幅」をフィボナッチ・リトレースメントで見ると、「38.2%戻し」に当たる値位置は136円66銭前後になります。この水準が意識されている可能性があるかもしれません。因みにこの水準を抜けば次の「50%戻し」は139円58銭前後となります。目先は、「38.2%戻し」を明確に上抜けできるかどうかです。NYではややドル安で推移し、ユーロドルは1.0620辺りまで買われましたが、ドル円の下げは限定的でした。その結果、ユーロ円は144円54銭近辺までユーロ高が進み、昨年12月20日以来の高水準まで上昇しています。円が主要通貨に対して売られている状況です。次期総裁候補の植田氏の発言も作用していると考えられます。
植田氏は先週に続き27日も参院で所信聴取に臨み、現在のYCCのメリットは良好な金融緩和を持続できること、デメリットは市場機能に影響が出る点とした上で、現在は「メリットが副作用を上回っている」と指摘しました。また、「現状はYCCの一部運用見直しによる市場機能へのプラスの影響が出るかどうか見守っている状況だ」と述べていました。さらに「アベノミクスをどう評価しているのか」との質問には、「着実な成果があがっている」と、一定の評価をしていました。日経新聞は「自民党最大派閥の安倍派やリフレ派に一定の配慮を示した」と論じていました。市場の反応としては、「当初言われていた雨宮副総裁なら分からなくもないが、外部から招聘した経済学者の植田氏としては、やや斬新さがみられない」といった声もあるようです。
イエレン財務長官は27日、ウクライナを予告なしに訪問しました。バイデン大統領の訪問から1週間後のイエレン長官の訪問は、ウクライナに対する米国の関与を世界に強くアピールする狙いがあるのではと、ブルームバーグは報じています。イエレン長官はキーウ入りした後、ゼレンスキー大統領とシュミハリ首相と面会し、米政権が表明した合計100億ドル(約1兆3600億円)の支援のうち新たな経済支援として12億5000万ドルの供与を発表しています。イエレン長官はバイデン大統領の訪問時と同様に、極秘裏に列車でキーウに到着したようです。ロシアのウクライナ侵攻1年を契機に、米国はバイデン氏を始め主要閣僚がウクライナを訪問しています。これは、ロシアの総攻撃も予想される中、米国もここが重要なタイミングと考え、一段と関与を強めてきたものと見られます。
イエレン財務長官はこれに先立ちブルームバーグとのインタビューで、パウエル議長率いる金融当局によるインフレ抑制の取り組みは「今までのところ順調」との認識を示し、「インフレ率は依然として高すぎるが、全般的にはこの1年間に鈍化している」と指摘し、「米金融当局はインフレ率をより正常な水準に押し下げることに取り組んでおり、成功すると信じている」と述べています。またFRBのジェファーソン理事も講演で、2%の物価目標の引き上げに関して、「それを変更すれば、しっかり抑制されているインフレ期待が不安定化する恐れがある」と述べて、インフレ目標の引き上げには否定的な考えを示しています。
ドル円はやや上値を重くしてきた印象ですが、本日も上記「38.2%戻し」の水準を上抜けできるかどうかが焦点です。レンジ予想は135円~137円といったところでしょうか。
- [2023/02/28 09:52]
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ドル円2カ月ぶりに136円台半ばに
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆ドル円は続伸。個人消費支出(PCE)価格指数が予想を
上回る伸びとなったことでドル買いが広がり、一時136円
52銭と、昨年12月20日以来となるドル高水準を付ける。
◆ユーロドルもドル高に押され1.0536まで売られる。
ユーロは対円では144円まで上昇。
◆株式市場は3指数が揃って大幅下落。インフレデータが上振れした
ことでハイテク株を中心に大きく売られる。ダウは336ドル下げ、
ナスダックは195ポイントの下落。
◆債券は反落。長期金利は3.94%台に上昇。
◆ドル高が続き金は5日続落。原油は続伸。
◆1月個人所得 → 0.6%
◆1月個人支出 → 1.8%
◆1月PCEデフレータ(前月比) → 0.6%
◆1月PCEデフレータ(前年比) → 5.4%
◆1月PCEコアデフレータ(前月比) → 0.6%
◆1月PCEコアデフレータ(前年比) → 4.7%
◆1月新築住宅販売件数 → 67万件
◆2月ミシガン大学消費者マインド(確定値) → 67.0
本日の注目イベント
◆日 12月景気先行指数(CI)(改定値)
◆日 日銀総裁候補の植田氏への所信聴取と質疑(13:10参議院)
◆欧 ユーロ圏2月消費者信頼感(確定値)
◆欧 ユーロ圏2月景況感指数
◆米 1月耐久財受注
◆米 1月中古住宅販売成約件数
◆加 カナダ10-12月期経常収支
ドル円は続伸し、NYでは約2カ月ぶりとなる136円52銭までドル高
が進みました。1月の個人消費支出(PCE)か価格指数が予想を上回っ
たことや、先週末の国会で、植田次期日銀総裁候補が金融緩和を継続する
姿勢を見せたことで円売りが加速しました。
1月のPCE価格指数は、総合で「5.4%」と、市場予想の「5.0%
」を大きく上回り、コア指数でも「4.7%」と、予想の「4.3%」を
上回りました。(いずれも前年同月比)これらの数字は持続的な高インフ
レリスクを浮き彫りにしており、先に発表された1月の消費者物価指数(
CPI)とも整合しています。FRBはPCE価格指数をより重視してい
ると言われており、同指数の上振れで、FRBが3月会合以降も利上げを
継続せざるを得ないといった見方が広がり、ドル買いにつながっています。
また先週末の衆院議員運営委員会で植田氏は、「物価2%の持続的、安定
的な実現が見通せる状況になれば、現在採用しているさまざまな強い緩和
措置を平時に戻していく」としながらも、「足元の金融政策運営は現在の
政策継続が望ましい」との考えを示しています。
インフレ率については、上昇率は4%(1月のCPIは4.2%でした)
と目標の2%を上回っているが、「輸入物価上昇によるコストプッシュが
主因で、来年度半ばにかけて2%を下回る水準に低下していく」との認識
を示しています。
予想されたように、植田氏の発言は「中庸」で、現行の政策を維持し、そ
の副作用を検証した上で、必要であれば政策を変更していくというものでし
た。
1月のPCE価格指数の結果を受けて、クリーブランド連銀のメスター総
裁は、「こうしたインフ関連の数値は依然としてわれわれが欲する水準に
はない」と述べ、「インフレ率押し下げに向け、金融当局は政策金利を巡
りもう少し行動する必要があるという事実と合致するものだ」と語ってい
ます。
また、ジェファーソンFRB理事はNYでの会合で、「労働需給の不均衡
が続いていることに、労働コストの大部分がサービスセクターであるとい
うことが相まって、高インフレ率は緩やかなペースでしか低下しない可能
性が示唆されている」と指摘しています。
同理事の発言は、シカゴ大学ブース経営大学院がNYで開いた「金融政策
フォーラム」に参加した際に述べられたものですが、同フォーラムに参加
したブランダイス大学のチェケッテイ教授ら5人のエコノミストは「軽度
のリセッションを起さずに経済をソフトランディングに導き、その過程で
インフレを2025年末までに2%目標に戻す能力が、FOMCにあるの
か疑わしいというのがわれわれの分析だ」(ブルームバーグ)と手厳しい
批判を行っています。
ドル円は136円台半ばまで上昇したことで、日足ではついに雲抜けを達
成しています。
日足チャートでローソク足が雲の上に出るのは、昨年11月10日以来の
こととなります。
「相場の基本は日足にある」という言葉があるように、ドル円は日足で雲
抜けしたことで、目先は底堅く推移する可能性が高まったようです。
米インフレが再び上昇に転じるのか、また、「植田日銀」が今後どのタイ
ミングでYCCの修正に踏み切るのか注意は必要ですが、いましばらくド
ルが上昇する可能性はあろうかと思います。
日本の10年国債は売り圧力を受けながら、上限の0.5%を超えてきて
います。この動きにも目配りが必要です。
本日のドル円は135円30銭~137円30銭程度を予想します。
- [2023/02/27 09:39]
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ドル円、小幅に高値更新後下落
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆ドル円は年初来高値である135円36銭を付けた後下落。
米長期金利が低下したことで134円48銭前後まで売られる。
◆ユーロドルはやや水準を切り下げ、1.0578まで下落。
◆株式市場は3指数が上昇。ハイテク株を中心に買いが入り、
ナスダックは83ポイント上昇。
◆債券は売られ、長期金利は3.87%台に低下
◆金は4日続落。原油は買われ75ドル台に。
◆新規失業保険申請件数 → 19.2万件
◆10-12月GDP(改定値) → 2.7%
本日の注目イベント
◆日 1月全国消費者物価指数
◆日 日銀総裁候補の植田氏への所信聴取と質疑(9:30衆議院)
◆日 日銀副総裁候補の内田、氷見野両氏への所信聴取と質疑(13:00衆議院)
◆独 独10-12月期GDP(改定値)
◆独 独3月GFK消費者信頼調査
◆欧 ロシアによるウクライ侵攻から1年
◆米 1月個人所得
◆米 1月個人支出
◆米 1月PCEデフレータ(前月比)
◆米 1月PCEデフレータ(前年比)
◆米 1月PCEコアデフレータ(前月比)
◆米 1月PCEコアデフレータ(前年比)
◆米 1月新築住宅販売件数
◆米 2月ミシガン大学消費者マインド(確定値)
◆米 ブラード・セントルイス連銀総裁講演
◆米 ジェファーソン、ウォラー両理事、クリーブランド連銀、ボストン連銀
両総裁がフォーラムに参加。
ドル円はNYの朝方に135円36銭まで買われ、ここ数日はわずかではありますが、
年初来高値を更新する動きが続いています。この動きを、「ドルは底堅く、140円を
目指す」と見るのか、あるいは「わずかに高値を更新はするものの、勢いはなく上値は
重い」と判断するのか、迷うところです。ドル高が続く背景は、今月に入って雇用統計
を始め、想定を上回る経済指標が相次ぎ発表され、FRBのインフレ阻止に思わぬ逆風
が吹き始めたことが挙げられます。そのため、FOMCメンバーの中でもタカ派の筆頭
であるセントルイス連銀のブラード総裁は、「3月会合での0.5ポイントの利上げの
可能性を排除しない」と発言するなど、利上げ継続観測が浮上してきたことが主因です。
ゴールドマンや、バークレーズなどは、3月会合に続き、5月と6月会合でも
0.25ポイントの利上げがあると、従来からの予想をタカ派寄りに修正しています。
1月31日から2月1日に行われたFOMC会合の議事録が公表されました。
この会合では、0.25ポイントの利上げを決め、会見ではパウエル議長が
ハト派寄りの発言を行ったことでドルが売られましたが、議事録ではタカ派的な議論が
あったことも明らかになりました。
参加者の中で、クリーブランド連銀のメスター総裁とセントルイス連銀のブラード総裁
の2名だと思われるメンバーが、0.5ポイントの利上げを支持していました。上述の
ように、その後に発表されたデータはいずれも米景気が底堅いものであることを示唆し
、ブラード総裁の読みは正鵠を射ていたことになります。
ただ現時点では、3月会合での0.5ポイントの利上げはまだコンセンサスになってお
らず、今後のデータ次第というところはあります。
日銀の次期総裁に就任する予定である植田氏の所信聴取と質疑が本日9時半から衆院議
院運営委員会で行われます。
発言の内容次第ではドル高へもドル安へも動く可能性があり、注意が必要です。
当然市場の混乱を避ける意味合いからも「慎重な物言い」になるとは思いますが、
議員からの厳しい質問に対してどのように答えるのか。
また、10年間続いて来た異次元緩和の副作用に対する政策などにも質問が集中する可
能性もあります。
「これまでの政策の検証を慎重に行い、将来緩やかに正常化へと政策を転換する」とい
った、「中庸」な発言を予想していますが、どうでしょうか。
午後には副総裁候補2名の所信聴取と質疑もあります。
インドのベンガルールで行われたG7で、黒田総裁は「現在のインフレは輸入物価が主
導しており、近くピークを付ける見通しだ」と述べ、「日本のインフレは、2023年
度半ばには2%未満に低下する可能性が高い。賃金上昇ペースが加速しなければ24年
度は2%を下回った状態が続く」と指摘していました。
(ブルームバーグ)
ロシアがウクライナへ侵攻を開始して1年が経過しました。戦争終結へのメドは全くた
っていないどころか、昨日のプーチン氏の発言を聞くと、さらにエスカレートし、核兵
器開発の強化にも言及しています。
米国は国内には慎重な意見もある中、いまさら手を引くことは出来ないとした姿勢を見
せ、武器供与にも前向きです。慎重だったドイツも、高性能戦車「レオパルト2」の供
与を決めています。また中国もロシア陣営へ肩入れする姿勢を見せるなど、ロシアVS
ウクライナの戦いから、その戦いに組み込まれる国々が徐々に増えている状況です。
この戦争が永久に続くことはないとしても、停戦へのきっかっけに何があるのか思いつ
きません。やはり、中国がそのカギを握っている可能性が高いとは思っていますが、
侵攻開始2年目にあたる2024年2月24日には終わっていて欲しいと願っています。
本日のドル円は133円~136円程度と、ワイドレンジを予想します。
- [2023/02/24 09:55]
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ドル円再び135円台に
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆ドル円は再び135円台に乗せ、135円23銭まで上昇。
1月のPMIを受け、米株式と債券が大きく売られ、長期金利が
上昇したことでドルが買われた。ドル円は先週末に付けた
年初来高値を更新。
◆ユーロドルは売られたが、依然として底堅い動き。
対円では144円16銭近辺までユーロ高が進む。
◆株式市場は大幅に下落。ダウは700ドルに迫る下げを見せ、
S&P500も81ポイント下げ、4000の大台を割り込む。
◆債券は反落。長期金利は大きく上昇し、3.95%台で引ける。
◆金と原油は揃って続落。
◆2月S&Pグローバル製造業PMI(速報値) → 47.8
◆2月S&Pグローバルサービス業PMI(速報値) → 50.5
◆2月S&PグローバルコンポジットPMI(速報値) → 50.2
◆1月中古住宅販売件数 → 400.0万件
本日の注目イベント
◆独 独1月消費者物価指数(改定値)
◆独 独2月ifo景況感指数
◆米 FOMC議事録(1月31日-2月1日分)
◆米 ウィリアムズ・NY連銀総裁講演
昨日は一時134円台を割り込んだドル円は再び135円台に乗せ、135円23銭
までドル高が進みました。
先週記録した年初来高値である135円12銭をわずかですが上回るドル高です。好
調な経済指標を徐々に織り込む形で、ウォール街では米金融当局のインフレとの闘い
は終了からほど遠いといった見方が強まり、楽観的だった株式投資家もここにきてさ
すがに売りを強めています。NYダウは700ドルに迫る下げを記録し、株式市場は
ほぼ全面安です。昨日発表された1月のPMIは「製造業、サービス業、コンポジッ
ト」の全てで予想を上回っていました。
このためFRBは、3月会合だけでなく、5月と6月の会合でも0.25ポイントの
利上げを行うと予想する声が徐々に増えてきたことから債券も売られています。
長期金利は一時3.95%台まで上昇し、昨年10月以来約4カ月ぶりの高水準を付
けています。これが、米金利との相関が強いドル円が上昇する一因になっています。
ウクライナへの侵攻で米ロ関係が一段と冷え込み、さらに気球撃墜問題で米中
関係も悪化し、世界の「民主主義と覇権主義」の対立は、かつて見られなかった程高
まっています。
加えて、北朝鮮は米韓軍事演習への反発からか、昨年からミサイルの発射を続け、日
米韓をけん制しており、第二次大戦以降、最も緊張が高まっているように感じます。
ポーランドを訪問中のバイデン大統領は首都ワルシャワで講演を行い、「ウクライナ
がロシアの勝利になることは決してない」と強調し、「プーチン大統領がこの戦争に
勝利することは断じてない」と断言しました。
また米国と同盟国が今週、新たな対ロ制裁を発表するとも述べましたが、具体的な内
容には言及していません。
原油など、多くのエネルギーを国内で賄えるロシアでは、昨年春から始まった
欧米による「経済制裁」にも、それほど追い詰められた状況は見られないようです。
そのような状況もあり、ロシアのプーチン氏は昨日の年次教書演説でも
終始強気の言葉を発していました。
プーチン氏はロシア議会で演説を行い、「ロシアは歴史的な土地のため、ウクライナ
で戦っている」と述べ、「戦争を始めたのは西側諸国で、ロシアはそれを止めるため
に武力を行使している」と話し、戦争を正当化することに必死でした。
「ロシアが戦場で敗北することはあり得ない」と述べ、ロシアと米国の新戦略兵器削
減条約(新START)についても、「米国とNATO諸国がロシアを戦略的に敗北
させ、新STARTに基づき査察を要求することでロシアの核施設に潜り込もうとし
ている。こうした要求はばかげている」と一蹴し、(新STATについて)「参加を
停止する」と述べ、戦争を継続する意志を表明しました。
一方今朝の報道では、習近平中国国家主席は数カ月以内にモスクワを訪問し、プーチ
ン氏と会談する準備を進めているとウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が伝
えています。ロシアへの新たな武器供与を巡る会談なのか、あるいは和平交渉を働き
かける会談になるのか、現時点では分かっていません。(ブルームバーグ)
次期日銀総裁候補として政府が示した植田元審議委員への「所信聴取」と質疑は27
日(月)午後に行われるようです。また副総裁候補の内田、氷見野両氏についても翌
28日(火)に行われる予定です。
植田氏についてはすでに多くのテレビ、新聞等でその人となりが報道されています。
やれ酒豪だとか銀座が好きだとありますが、政策では、市場の混乱を避けることを優
先すると思われ、市場との丁寧な対話を繰り返しながら徐々に政策修正を行う、「バ
ランスの取れた政策運営を行うだろう」というのが、市場のコンセンサスです。他の
国の中銀総裁経験者との人脈も豊富とのことから、今後はFRBやECBなど、主要
中銀の政策の影響も受けやすくなるのではないかと思われます。
その意味では、再び利上げが継続されるとの観測が強まっているFRBが、今後も3
会合連続で利上げをするようだと、日銀が利上げを行うタイミングも早まる可能性が
あるかもしれません。
本日のドル円は134円~136円程度を予想します。
- [2023/02/22 09:47]
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バイデン大統領キーウを電撃訪問
ひと目で分かる昨晩の動き
欧州市場
- 「プレジデンツデー」によりNY市場が休場のためドル円は小動き。134円を割り込む場面があったが、値動きはほぼ134円台前半にとどまる。
- ユーロドルはやや値を戻したものの1.07前後で推移。
- 欧州株は、ロンドンFTは上昇したものの、ドイツDAXとフランスCACは下落。
本日の注目イベント
- 豪 RBA議事録
- 独 2月ZEW景気期待指数
- 独 2月サービス業PMI(速報値)
- 独 2月総合PMI(速報値)
- 欧 ユーロ圏2月製造業PMI(速報値)
- 欧 ユーロ圏2月サービス業PMI(速報値)
- 欧 ユーロ圏2月総合PMI(速報値)
- 欧 バイデン大統領、ポーランド大統領と会談(ワルシャワ)
- 英 2月製造業PMI(速報値)
- 英 2月サービス業PMI(速報値)
- 米 2月S&Pグローバル製造業PMI(速報値)
- 米 2月S&Pグローバルサービス業PMI(速報値)
- 米 2月S&PグローバルコンポジットPMI(速報値)
- 米 1月中古住宅販売件数
- 加 12月小売売上高
- 加 1月消費者物価指数
バイデン大統領はウクライナの首都キーウを電撃訪問し、ゼレンスキー大統領夫妻の歓迎を受けました。20日からポーランドを訪問することは公表されていましたが、ウクライナ訪問は安全確保の意味から極秘裏に計画されていたようです。ロシアの侵攻から間もなく1年が経過するこのタイミングでの訪問を決めたようです。バイデン大統領はゼレンスキー大統領と会談を行い演説で、「キーウは存続し、ウクライナは存続し、そして民主主義は存続した」と述べ、「米国はウクライナとともにいる」と、ウクライナに対する「揺るぎない支持」を表明しました。また、20日か21日には、ウクライナ向けにさらに5億ドル(約670億円)を支援すると表明しています。火砲弾薬や対戦車システム、対空監視レーダーなどが含まれるようです。さらに、「週内には、制裁を回避してロシアの戦争遂行を支援しようとする個人や企業を対象とした制裁を発表する」ことも表明しています。米大統領のウクライナ訪問は15年ぶりだとして、ゼレンスキー大統領は「歴史的であり、時宜を得た勇敢な訪問だ」と称賛しています。
EUの行政執行機関である欧州委員会のボレル副委員長(外交安全保障上級代表)は、中国の外交トップである王毅共産党政治局員と週末にミュンヘンで会談を行っています。ボレル氏は、中国がロシアに武器を供給することをEUは「強く懸念」しており、兵器供給は「レッドライン」だと王氏に伝えたと、報道されています。王氏はこの後、ロシアを訪問する予定で、プーチン氏との会談の可能性もあるようです。一方バイデン大統領はポーランドを訪問し、同国大統領との会談を予定しています。ウクライナ侵攻開始1年を前に、戦争は新たな段階に入るとの見方もあり、さらに長期戦になるのか、いまだに出口は見えません。
昨日、バークレーズ証券主催の「転換点に立つ日米金融政策」と題するセミナーに参加してきました。同社では、FRBは3月、5月、6月の会合で、それぞれ0.25ポイントの利上げを行い、ターミナルレートを5.25%~5.50%と予想し、2023年12月には利下げに転換すると見ていました。個人的には米国の利下げは2024年にずれ込むと予想していますが、同社は「CPI上昇率は、中長期的には+2%強へと収束する」と、FRBの目標値に限りなく近づくことをその根拠にしています。また、日本の金融政策については、①YCCの修正、②マイナス金利政策の解消、③段階的利上げ、といった「3段階アプローチ」を経て、調整が行われるとしていました。為替については時間を割いていませんでしたが、2023年第4四半期には125円程度の緩やかなドル安を想定しています。
米国のインフレ基調の鈍化傾向が変わらず、一方日本では大規模金融緩和の副作用も検証され、金融正常化へと進むのだとしたら、やはり円が買われる可能性が高いということのようです。米インフレの「粘着性」がどこまで強いのか、しっかりと見ていかなければならないと感じました。
本日のドル円は133円30~135円30銭程度を予想します。
- [2023/02/21 09:48]
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ドル円欧州で一時135円台に乗せる
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆ドル高の流れが続き、ドル円はNYオープン前に約
2カ月ぶりとなる135円12銭まで上昇。NYでは長期金利の
低下もあり、じり安の展開に。
◆ユーロドルは小じっかり。ドル高の流れからユーロは
売られたが、1.06台前半はキープ。
◆株式市場では上値の重い展開が続く。ダウは小幅に上昇した
ものの、ナスダックとS&P500は続落。
◆債券は反発し、長期金利は3.81%台に低下。
◆金は反落。原油は4日続落し76ドル台に。
◆1月輸入物価指数 → -0.2%
◆1月輸出物価指数 → 0.8%
◆1月景気先行指標総合指数 → -0.3%
本日の注目イベント
◆欧 ユーロ圏2月消費者信頼感指数
◆米 NY休場(プレジデンツデー)
◆米 バイデン大統領、ポーランド訪問(22日まで)
ドル円は欧州時間に、1月6日に記録した今年のドルの最高値である134円78銭
を抜け135円12銭近辺まで上昇しました。1月の雇用統計に始まり、1月のCP
I、その後の小売売上高など、米経済の底堅さを示す指標が相次ぎ、さらにその後の
FOMCメンバーによる「タカ派発言」も加わり、ドルを買い戻す動きが強まりまし
た。
とりわけ、昨年からその発言に影響力を増しているセントルイス連銀のブラード総裁
が「3月会合での0.5ポイントの利上げの可能性も排除しない」と述べたことが大
きかったと思います。市場では3月会合での0.25ポイントの利上げは織り込んで
いるものの、さすがに0.5ポイント幅は想定外です。
昨年は0.75ポイントの利上げを4会合連続で行った後、12月会合では0.5ポ
イントに引き上げ幅を縮小し、さら今年1月会合では0.25ポイントまで利上げ幅
を縮小してきました。そのため、3月会合で0.25ポイントの利上げを行い、その
後はその累積的な利上げ幅の効果を検証するとの見方が、いわば市場のコンセンサス
でした。
そこに0.5ポイント発言が飛び出し、FRBが再び大幅利上げに方針を変える可能
性が出て来たという観測が浮上した格好です。
実際には、まだ0.5ポイント利上げのハードルは高いと思われます。ブラード総裁
はあくまでも可能性の話しをしたと思われ、「今後も強い経済データが続けば・・・
・」といったニュアンスかと思います。
ドイツで行われた「ミュンヘン安全保障会議」で、米中外交トップ会談が行われるの
かどうか不明でしたが、18日に実施されました。
ブリンケン国務長官は気球問題について、「受け入れられない米国の主権や国際法の
侵害だ」と述べ、「米国はいかなる主権侵害も容認しない」とし、同様な事案があれ
ば飛行物体を撃墜する姿勢を見せました。
これに対して中国の王毅氏は「中国を中傷する資格はない」と反発する姿勢を見せ、
両国の緊張緩和にはつながっていません。
さらにウクライナ問題を巡って、ブリンケン氏は中国に「ロシアに物的支援を行わな
いよう」要請した模様で、会談後にCBSとのインタビューで、「中国が甚大な被害
をもたらし得る物的支援を検討しているとの情報がある。中国側に、そのようなこと
があれば米国と米中関係にとって深刻な問題となり得ると非常に明確に伝えた」と語
っていました。
ロシアがウクライナ侵攻を開始してまもなく1年が経過し、ロシア側は武器や弾薬が
不足しているとみられ、中国に対してこれらの支援を要請しているようです。
一方ウクライナのゼレンスキー大統領は欧米に戦闘機などの供与を強く求めており、
EU加盟国はウクライナ支援に向けた弾薬の共同購入で3月にも合意する可能性があ
るとブルームバーグは報じています。
ウクライナへの一段の支援についてはドイツが慎重な姿勢を見せており、今月末にも
ロシアの大規模な攻撃が予想される中、バイデン大統領が本日ポーランドを訪問する
のも、このような状況に対応するため欧米の支援体制を確認する意味合いもありそう
です。
今週は24日に、個人消費支出(PEC)価格指数が発表されます。
FRBはCPIよりもこちらの指標により注目しているとされており、
上記0.5ポイント利上げの可能性にも影響を与えるかもしれません。
引き続き、これら経済指標の結果とFOMCメンバーの発言に、ドル円は上下するこ
とになります。
135円台まで戻ったことがひとまず「達成感」となり、反落していくのか注目して
行きたいと思います。
米長期金利も一時3.3%台まで低下しましたが、先週は3.92%台まで
上昇しています。ドル円の動きにも直結するこちらの動向にも、目配りが必要です。
本日のドル円は133円50銭~135円程度を予想します。
- [2023/02/20 09:43]
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3月会合でも0.5ポイントの利上げ観測浮上
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆ドル円は朝方134円46銭まで買われる場面があったものの、
その後じり安の展開。株式と債券が大きく売られ、金利は上昇
したものの、利益確定の売りが優勢と見られた。
◆ユーロドルは上値を重くしながらも、1.06台半ばがサポートに。
◆株式市場は3指数が大きく下落。ブラード・セントルイス連銀総裁の
コメントが伝わり、引けにかけて大きく売られる。
◆債券も続落。長期金利は3.86%台と、一段と上昇。
◆金は反発し、原油はほぼ横ばい。
◆1月住宅着工件数 → 130.9万件
◆1月建設許可件数 → 133.9万件
◆2月フィラデルフィア連銀景況指数 → -24.3
◆1月生産者物価指数 → 0.7%
◆ 新規失業保険申請件数 → 19.4万件
本日の注目イベント
◆欧 ユーロ12月経常収支
◆欧 ミュンヘン安全保障会議(19日まで)
◆英 英1月小売売上高
◆米 1月輸入物価指数
◆米 1月輸出物価指数
◆米 1月景気先行指標総合指数
◆米 バーキン・リッチモンド連銀総裁講演
◆米 ブレイナード・副議長、討論に参加
「雇用統計ショック」、「CPIショック」に続き、小売売上高の上振れなど、
米景気の底堅さを示唆する指標が相次いだことで、債券が売られ、金利が上昇し
たことでドル円は134円台まで反発したのが、今週の動きでした。
ただそんな中でもNY株式市場は底堅い動きを見せており、やや違和感を覚えて
いましたが、やっぱりと言うか、当然と言ったらいいのか、昨日のNY株式市場
では株価が大きく売られています。
きっかけは、やはりこの人でした。
セントルイス連銀のブラード総裁が、「3月会合での0.5ポイントの利上げの
可能性も排除しない」と発言したことで株式と債券が大きく売られています。
ブラード総裁は、「インフレとの闘いは長期戦になるというのが、私の大まかな
判断だ。2023年を通じてインフレと闘う決意を示し続ける必要があるだろう
。政策金利を出来るだけ早期に5.375%に引き上げるのが望ましい」と述べ
、今月のFOMC会合で0.5ポイントの利上げを支持したことも明らかにし、
「金融政策の前倒しを私は一貫して主張している。前回会合でもそれを続けられ
たと思う」と話しています。
また、クリーブランド連銀のメスター総裁も16日のイベントで、「現時点にお
いて、入手するデータを受けての私の見解は変っていない。フェデラルファンド
(FF)金利を5%超に引き上げ、その水準でしばらく維持する必要がある」と
指摘し、「2週間前の会合で、金融市場参加者の期待とは関係なく、私としては
50ベーシスポイント引き上げる説得力ある経済的論拠を見出していた。
50bpの利上げであれば、FF金利誘導目標レンジの上限は5%となっていた
」とブラード総裁に近い発言を行いました。
前回会合では市場予想通り、0.25ポイントの利上げ幅を決め、パウエル議長
は記者会見で、「われわれは大きく進展したと考えている」としながらも、「そ
れでも、さらなる仕事が残されている」と述べ、物価圧力に関する最新の指標は
心強い内容だとしながらも、「勝利宣言するのは極めて時期尚早だ」と述べてい
ました。政策決定後ドル円は「ハト派的」だったとして128円台半ばまで売ら
れました。
筆者は、1月の雇用統計発表後に、3月会合での0.5ポイントの利上げ観測も
浮上すると予想しましたが、ただ現実には3月会合までには2月の雇用統計をは
じめ、CPIやその他の主要経済指標も多く確認できることから同利上げ幅のハ
ードルは相当高いとみています。
同時に、これまで順調に低下してきた米国のインフレが再び上昇に転じるかどう
かの「踊り場」に差しかかってきた可能性が高いとみています。
この日発表された1月の生産者物価指数(PPI)も市場予想を上回る0.7%
前年同月比では6.0%)と、根強いインフレ圧力があることを浮き彫りにして
おり、今後さらに米インフレ指標からは目が離せない状況です。
本日ドイツでは「ミュンヘン安全保障会議」が開かれます。ここでブリンケン国
務長官が中国の外交トップの王毅氏と会談するのかどうかは、現時点でも未定の
ようです。中国からの気球撃墜問題を巡る両国の主張が壁になっています。
そんな中、バイデン大統領は同問題を巡る中国との緊張の緩和を目指し、習近平
主席と会談する意向を示しています。
バイデン氏はホワイトハウスで、中国の気球以外に3つの飛行物体が外国による
偵察用のものであることを示す兆候はないものの、米領空の安全確保に向け新た
な基準を設けることを明言しています。そして「われわれは新たな冷戦を招くつ
もりはないが、私は謝罪をしない。われわれは競争するつもりだ」と述べていま
す。習氏との会談の日程などについては明らかになっていません。(ブルームバ
ーグ)
ドル円は米金利が一段と上昇しましたが、利益確定の売りに押された格好で下げ
ました。
日足では一目均衡表の雲に入り、雲は「抵抗帯」であることから売りが出易いレ
ベルに入っています。また年初来のドル高水準にも接近しています。さらにこの
上方には昨年10月の高値からの下落幅の「38.2%戻し」(136円67銭
)や200日移動平均線(136円90銭)も控えており、テクニカル的には一
旦下押しされてもおかしくはない水準です。ただ米長期金利の上昇傾向がドル円
を下支えすることにはなります。上値では抵抗されますが、底堅い動きになりそ
うです。
予想レンジは133円~135円といったところでしょうか。
- [2023/02/17 09:51]
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ドル円続伸し連日の大台替え
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆ドル円は東京時間朝方には132円台半ばまで押し戻される
展開だったが、欧州では133円台を回復し、NYでは
134円台に。小売売上高などの経済指標が上振れし、
134円36銭前後までドルが続伸。
◆ドル高の流れが加速し、ユーロドルは1.0661まで下げる。
◆株式市場は3指数が揃って上昇。ナスダックは1万2000、
S&P500は4100ポイントの大台をそれぞれ回復。
◆債券は続落。長期金利は3.80%台へと上昇。
◆金は反落し、原油は続落。
◆1月小売売上高 → 3.0%
◆2月NY連銀製造業景況指数 → -5.8
◆1月鉱工業生産 → 0.0%
◆1月設備稼働率 → 78.3%
◆2月NAHB住宅市場指数 → 42
本日の注目イベント
◆豪 豪1月雇用統計
◆日 1月貿易統計
◆欧 ECB経済報告
◆米 1月住宅着工件数
◆米 1月建設許可件数
◆米 2月フィラデルフィア連銀景況指数
◆米 1月生産者物価指数
◆米 新規失業保険申請件数
◆米 メスター・クリーブランド連銀総裁講演
◆米 ブラード・セントルイス連銀総裁講演
◆米 クック・FRB理事、ブルッキングス研究所主催のイベントで挨拶
昨日のコメントの最後の方で、「これで目先のレジスタゾーンであった
132円90銭~133円を上抜けしたわけです。短期的にはドルが底
堅く推移し、場合によっては135円テストもないとは言えない状況に
なったとみるのが順当でしょう」と記述しましたが、ドル円はNYで1
34円36銭近辺まで買われ、先月記録した年初来のドル高水準に迫っ
てきました。
無理もありません。昨日発表された米経済指標はいずれも力強い結果が
示され、突出して強い「労働市場」に歩調を合わせるものでした。
1月の小売売上高はほぼ2年ぶりの大幅増となり、個人消費の底堅さを
示唆しています。2月の米住宅市場指数は2020年半ば以来の大幅な
伸びとなり、
ここ数カ月で住宅ローン金利の上昇が緩和し、過去1年にわたり落ち込
んでいた住宅市場を支えていることが示唆されています。また製造業の
生産は1月にほぼ1年ぶりの大きな伸びとなっています。
「この分野はなお厳しい環境にあるものの、サプライチェーンの改善と
需要増加が生産の押し上げに寄与している」(ブルームバーグ)とみら
れています。
米債券が売られ、長期金利は先月3日以来約1カ月半ぶりに3.82%
まで上昇しています。ただ分からないのが株価の動きでした。
朝方は売られていた株式は引けに向けて大きく買われ、結局主要3指数
は揃ってプラスで引けています。
「雇用統計ショック」と「CPIショック」を受け、今後もFRBは粛
々と利上げを続けざるを得ないと予想される状況の中、比較的底堅い動
きを見せています。
恐怖指数と呼ばれる「VIX指数」も、「18.23」まで低下し、投
資家の恐怖感が後退していることを示しています。
ブリンケン国務長官は、今週ドイツで行われる「ミュンヘン安全保障会
議」で中国の外交トップの王毅氏と会談する予定にはなっていますが、
気球撃墜問題では両国の緊張が直ぐに緩和する気配はないようです。
中国外務省の汪報道官は北京で15日に開いた会見で、米軍が今月サウ
スカロライナ州沖の上空で撃墜した中国の気球は気象用で単にコースを
外れ、米国の領空に入っただけだと、中国側のこれまでの主張を繰り
返していました。
その上で、バイデン政権が撃墜したことを非難し、「中国は強く抗議す
る。主権と正当な権利と利益を断固として守るため、われわれの主張と
安全を損ねた米国の関係機関に対して対抗措置を取る」と語っています。
また中国側は、米国の気球が昨年5月以降10回程度、中国領空を侵犯
したと主張しており米中外交トップの会談も実現するのかどうか、現時
点では不透明です。
ドル円が134円台前半まで買われたことで、日足の一目均衡表では「
雲の下限」に接近してきました。言うまでもなく、ここからが「抵抗帯
」の始まりで、教科書的に言えば、利益確定の売りも出易く、新規のド
ル売り注文も集まり易いとみられます。
従って、ドル円がさらに上昇するには「ここからが本番」とみることが
できます。この「雲」は厚さもかなりあり、抜けるには139円台半ば
を上回る必要があります。もっとも、「雲」は右下方に下がってきてお
り、上記クリアしなければならない値位置も下がっていることから、こ
のままドル円が横ばいであっても、大きく下げなければいずれ「雲の中
」に入る可能性もあります。「雲」の概念は、過去に取引された「未決
済部分」とも解釈できることから、当然このレベルに差しかかると「売
り」も出て来るのは頷けます。
ユーロ円も昨日のNYで143円44銭前後まで上昇したことで、14
3円手前のレジスタンスを抜け、こちらは一足先に「雲抜け」を完成さ
せています。
ユーロドルが底堅い動きを見せていると同時に、ドル円では円安が大き
く進んでいることが影響しています。
目先のターゲットは、昨年12月に記録した145円台後半ということ
になります。
短期的にはドル高傾向が加速していますが、ここで中長期の相場観を修
正するかどうかは慎重さが必要です。雇用統計を筆頭に、1月の経済指
標は思いのほか好調です。この傾向が今後も続くのか、慎重に見ていか
なければなりません。
また多くのエコノミストが植田新総裁の下でも、いずれ金融政策の変更
は避けられないと予想していることから、YCCを含め、日銀の出口に
向けた一歩にも注意が必要です。
本日のドル円は132円80銭~134円80銭程度を予想します。
- [2023/02/16 09:35]
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米1月CPI、ドル円押し上げる
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆米1月のCPIを受けてドル円は続伸。一時は133円30銭まで
ドル高が進み、1月6日以来約6週間ぶりのドル高を付ける。
◆ユーロドルは朝方に約10日ぶりとなる1.08台に乗せたが、
その後反落。
◆株式市場はまちまち。ナスダックはプラスで取引を終えたものの、
ダウは156ドル安。S&P500はほぼ横ばい。
◆債券は反落。長期金利は3.74%台に上昇。
◆金は小反発し、原油は反落。
◆1月消費者物価指数 → 6.4%(前年同月比)
本日の注目イベント
◆欧 ユーロ圏12月貿易収支
◆欧 ユーロ圏12月鉱工業生産
◆欧 ラガルド・ECB総裁講演
◆英 英1月消費者物価指数
◆米 1月小売売上高
◆米 2月NY連銀製造業景況指数
◆米 1月鉱工業生産
◆米 1月設備稼働率
◆米 2月NAHB住宅市場指数
◆加 カナダ1月住宅建設許可件数
注目された米1月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比で「6.4%」と
発表され、昨年12月の「6.5%」からは鈍化してはいたものの、市場予想の
「6.2%」を上回り、今後一段の利上げ観測を強める結果でした。
瞬間風速として位置付けられる前月比では「0.5%」と、市場予想と一致して
いました。また、変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数では前同月比で
「5.6%」と、こちらも市場予想の「5.5%」を上回り、前月比では予想通
りでした。
項目別に見ると、医療費や航空運賃などが大きく下がったものの、光熱費や被服
費などが大きく上昇しています。米消費者の支出傾向をより的確に反映させるた
め、1月の統計から新たな加重方法が採用され、住居関連は全体のCPIに占め
る割合が一段と大きくなった一方、中古車の比率が下がっています。居住費はサ
ービス分野で最大の寄与度となっており、総合CPIの3分の1を占めています
。今回のCPIで、前年同月比では総合、コアともに市場予想を上回ったことで
、これまで順調に低下傾向を示してきた米国のインフレの鈍化傾向も「踊り場」
に差しかかってきた可能性があります。
1月のCPIの結果を受けFOMCメンバーの発言も予想通りタカ派寄りのもの
が多くみられましたが、一部にはモデレートな発言もありました。
リッチモンド連銀のバーキン総裁は、「インフレは正常化しつつあるが、鈍化の
ペースは緩慢だ」と述べ、「根強いインフレが続いた場合、一段の利上げを選択
するかもしれないが、そうしない可能性もある。状況を見守る必要がある」と語
りながらも、「インフレが当局目標を大きく上回る水準が続いた場合は、さらな
る行動が必要になるかもしれない」と説明しています。
またダラス連銀のローガン総裁は政策金利について、「インフレ率を確実に低下
させるために、金融当局の従来予想よりも高い水準に引き上げる必要があるかも
しれない」と述べています。
さらにNY連銀のウイリアムズ総裁も、「労働市場の強さを考えると、インフレ
が予想よりも長くより高い水準にとどまるリスクがあることは明らかであり、そ
れより高く金利を引き上げる必要があるかもしれない」と話しています。一方、
よりモデレートで中立的な発言を行ったのはフィラデルフィア連銀の
ハーカー総裁です。ハーカー総裁は、「私の考えでは、まだ終わっていないが、
もう一息と思われる」と述べ、「年内のある時点で政策金利は十分に景気抑制的
になると見込んでいる。そうなれば金利を据え置いて金融政策それ自体に仕事を
任せることになる」と指摘していました。(ブルームバーグ)
CPIの結果を受け、ドル円は直後に乱高下しましたが、今後もFRBは利上げ
を継続せざるを得ないとの見方から、ドル円は133円30銭まで上昇していま
す。今週に入って、「発表されるインフレ率は低下するが、下がり方が緩慢にな
るのでは」といった見方が広がり、ドル円は129円台から132円台に乗せま
したが、結局その見方が正鵠を射ていたことになります。
金利スワップ市場では、3月と5月のFOMCで0.25ポイントずつ政策金利
を引き上げた場合、6月会合でも0.25ポイントの利上げがある確率を「五分
五分」と織り込んできました。
昨日のレポートでも述べましたが、これで目先のレジスタゾーンであった132
円90銭~133円を上抜けしたわけです。短期的にはドルが底堅く推移し、場
合によっては135円テストもないとは言えない状況になったとみるのが順当で
しょう。
ただそれでもこの短期トレンドは、一つの経済データや一つの発言で簡単に変化
します。決め打ちは避けて、引き続き柔軟な対応が求められます。
言えることは、まだ当分市場の最大のテーマは「米国のインフレ動向」であるこ
とは間違いないところでしょう。
本日のドル円は132円~134円程度を予想します。
- [2023/02/15 09:58]
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ドル円CPI発表を前に上昇
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆アジア市場でのドル高の流れを引き継ぎ、ドル円は
132円91銭と約1カ月ぶりの高値を示現。今夜発表の
米CPIが予想ほど鈍化していないとの観測が材料に。
◆ユーロドルは反発したものの、1.07を挟む展開。
◆株式市場は3指数が揃って大幅に上昇。NY連銀の
家計収入の伸びに関する調査を受け、CPIへの懸念が後退。
◆債券は反発。長期金利は3.70%台に低下。
◆金は3日続落。原油は続伸し引けでは約4週間ぶりに80
ドル台を回復。
本日の注目イベント
◆豪 豪2月ウエストパック消費者信頼感指数
◆豪 豪1月NAB企業景況感指数
◆日 10-12月GDP(速報値)
◆日 12月鉱工業生産(確定値)
◆欧 ユーロ圏10-12月期GDP(改定値)
◆英 英ILO月失業率(10-12月)
◆米 1月消費者物価指数
◆米 ローガン・ダラス連銀総裁、討論会に参加
◆米 ウィリアムズ・NY連銀総裁講演
◆米 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁講演
◆米 バーキン・リッチモンド連銀総裁、ブルームバーグTVがインタビュー
ドル円は昨日の東京時間昼過ぎには132円台に乗せ、132円17銭前後まで
上昇し、NYではその流れを引き継ぎ、132円91銭まで続伸しました。今夜
発表される米1月の消費者物価指数(CPI)が前月から鈍化を示すものの、減
少スピードが鈍るとの観測からドル買いが旺盛となりました。一方日銀総裁人事
については,植田氏の手腕については様々な見方があるものの、直に現行の金融
政策を変更させることはないといった見方に落ち着いたようです。ただ、今後円
金利の上昇は避けられないとの見方は大方の一致するところです。
ドル高円安は進んだものの冷静に見れば、先週、雇用統計サプライズの結果を受
け、さらに日銀新総裁に雨宮氏との報道を受けた際にドル円は上昇したものの、
132円90銭を天井に押し戻された状況はまだ変わっていません。昨日のNY
ではわずか1銭上回ったものの、これはほとんど誤差の範囲であって、結局13
3円には届かず132円台前半まで押し戻されています。
従って、目先はドル高傾向が強まってはいますが、このまま135円に向うかは
不明で、今夜のCPIがどのような数字を示すのかに依ります。
NY連銀が発表した消費者調査の結果が、株高、債券高につながり、米金利の低
下にともなってドル売りが優勢となったことのようです。
NY連銀の1月の調査では、家計収入の伸び率予想は中央値で1.3ポイント低
下して3.3%と、月間ベースの下げとしては、ほぼ10年前のデータ開始以降
で最大でした。米消費者は収入の伸びが鈍化する一方で、インフレは高止まりす
ると見込んでいることが明らかになった形です。
今後賃金の伸びが鈍化すると予想されている部分が株式、債券市場には好材料だ
ったようです。
ボウマンFRB理事はフロリダ州オ-ランドで開かれたイベントで講演し、「物
価安定の達成からはなお程遠い。インフレを当局の目標に向けて鈍化させるため
、金融政策を一段と引き締める必要があると見込んでいる」と述べ、その上で、
「そうした引き締め措置は、経済活動の拡大抑制と労働市場環境の幾分かの軟化
をもたらす可能性が高い」と指摘しています。(ブルームバーグ)
引き続きほぼ全てのFOMCメンバーはタカ派寄りの発言を行っており、そのト
ーンは雇用統計後、さらに強さを増した印象があります。
北米に飛行物体が相次ぎ、米軍が撃墜する事態が続いています。今月4日に撃墜
された気球は中国の偵察用気球であることが確認されていますが、それ以外では
国籍や飛行目的などは分かっていません。一方中国側も、米気球が2022年の
1年間で10回余り中国の領空に侵入したと発表しています。
このような状況の中、ブリンケン国務長官は、今週ドイツで開かれる「ミュンヘ
ン安全保障会議」の場で、中国外交のトップである王毅氏と会談することが検討
されています。
会談が実現すれば、偵察用の疑いが持たれている中国の気球を巡り、両国間の緊
張が高まって以来の会談になります。ブリンケン国務長官は先週、気球問題を受
けて予定していた訪中を延期した経緯があります。
本日は22時30分に米1月CPIが発表されます。市場が懸念しているように
、インフレ率は低下するものの、鈍化傾向を示すのか、注目です。
本日のドル円は131円~133円50銭程度を予想します。
- [2023/02/14 09:29]
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日銀新総裁に植田氏で固まる
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆ドル円は次期日銀総裁に植田氏で調整との報道により、
先週末の東京時間夕方には129銭80銭近辺まで下落。
NYでは、同氏が当面現行の政策を維持するとの見方から
ドル円は一転して上昇。131円60銭までドル高が進む。
◆ユーロドルも欧州時間には1.07台半ばまで買われたが
NYではドル高が進んだことから1.0666まで売られる。
◆株式市場は金利上昇からナスダックは下落したが、ダウと
S&P500は上昇して引ける。
◆債券は売られ、長期金利は3.73%台に上昇。
◆金は続落し、原油は反発。
本日の注目イベント
◆欧 ユーロ圏財務相会合
◆米 日米韓外務次官協議(ワシントン)
市場は再び「日銀サプライズ」に翻弄されています。先週日経新聞が
電子版で「次期日銀総裁に雨宮氏を打診」との報道で、ドル円は買わ
れ、131円台までドル高が進みました。
現職の副総裁が昇格するということで、「当面現行のYCCが維持さ
れる」といった観測からドル高に振れたものです。大規模金融緩和政
策が続くことで日本の低金利が維持され、「日米金利差の縮小要因に
はならない」といった見立てです。
ところが先週金曜日の夕方には「次期総裁は経済学者の植田氏で固ま
る」との報道で、今度はドル売りで反応し、ドル円はその日の夕方に
は129円80銭前後まで売られました。今回の混乱はこれでは終わ
らず、NYでは一転してドルが買われ、ドル円は131円60銭を付
けています。
植田氏が「現状では金融緩和が必要だ」とのコメントを述べたことが
伝わり、直ぐに現行の政策変更はないといった見方がドルを押し上げ
たようです。今回の人事で筆者は、「雨宮副総裁が、何故総裁就任を
固辞したのか」その真意の方により興味があるという思いです。黒田
総裁とともに異次元の金融緩和策を推進してきた、いわば「中心人物
の一人」で、仮に自身が総裁に就任し政策変更を行ったら、「自己否
定」につながるおそれもあると考えたのではないかと推測したら、う
がち過ぎでしょうか?
サマーズ元財務長官はブルームバーグ・テレビジョンの番組で、植田
氏について、「バーナンキ元FRB議長とほぼ同じ時期にMITで学
び、論文の指導者も同じだった」と指摘し、「金融経済の同じような
分野を専門とし、穏やかな学問的話し合いをするが、決断力もある」
と評価しています。
バーナンキ氏、サマーズ氏、さらにECBのドラギ前総裁もMITで
フィッシャー教授の教え子で、その人脈はオーストラリア準備銀銀行
(RBA)のロウ総裁やイングランド銀行(BOE)のキング元総裁
にもつながっているとブルームバーグは伝えています。主要国中銀総
裁やその経験者と強いネットワークを持っているようで、このまま就
任が決まるとしたら、今後の手腕に期待したいと思います。
今朝の報道で、米軍は中西部ミシガン州のヒューロン湖上空で未確認
物体を撃墜したと発表したとあります。
11日には、カナダ上空でも米軍の戦闘機が未確認物体を撃墜してお
り、これでここ8日間で4つ目になります。カナダのアナンド国防相
は、飛行物体を飛ばした国について憶測を避け、断定は時期尚早だと
しながらも、「中国をしっかりと注視する必要がある」と述べていま
す。
明日14日には米1月の消費者物価指数(CPI)が発表されます。
バークレーズ証券は「All eyes on US CPI」と報じ、非常に注目され
ていると伝えています。
現時点では1月の総合CPIは、前月よりもさらに鈍化しているとみ
られていますが、ブルームバーグは「実際の伸びは市場予想よりも大
きくなる可能性に投資家は身構えている」と伝え、結果の上振れに対
する警戒が必要かもしれないとしています。
日足チャートを見ても分かるように、ドル円はここ1カ月以上、底堅
い動きを見せる一方、131円台半ばで上値が抑えられている状況が
続いています。
言い換えれば、何かのきっかけでこの水準を抜ければ、ドルのもう一
段の上昇も見込めるかもしれません。
明日のCPIがそのきっかけになるかもしれません。
2月3日の「雇用統計サプライズ」に次ぐ「CPIサプライズ」にな
る可能性もありそうです。
本日のドル円は130円50銭~132円50銭程度を予想します。
- [2023/02/13 09:35]
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金融当局者のタカ派発言相次ぐ
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆130円台半ばまで下げたドル円は上昇し131円台
半ばに。相次ぐFOMCメンバーによるタカ派的な発言に
金利先高観測が高まりドルが買われた。
◆前日1.06台まで売られたユーロドルは反発したが、
終始1.07台で推移。
◆株式市場は続落。金融当局者のタカ派発言に、ハイテク株を
中心に売りが広がる。S&P500は46ポイント下げ、
ナスダックも203ポイントの大幅下落。
◆債券は反発。長期金利は3.61%台に低下。
◆金と原油は3日続伸。
本日の注目イベント
◆英 ベイリー・BOE総裁講演
◆米 新規失業保険申請件数
FOMCメンバーの相次ぐ「タカ派寄り」の発言から、あと1回か2回程度
とみられている利上げがさらに継続されるとの観測が強まり、ドル円は再び
131円台半ばまでドルが買われています。
このレポートでも何度か述べたように、先週末の雇用統計の「ビッグサプラ
イズ」を受けた、タカ派的な金融当局者の発言がドルを押し上げています。
昨日の夕方には130円台半ばまで売られたドル円は、ちょうど1円程上昇
したことになります。
NY連銀のウイリアムズ総裁はウォールストリート・ジャーナル(WSJ)
のイベントで、「今年の金利動向を見通す上で昨年12月のFOMC予測は
依然良好な指針だ」と述べながらも、「インフレを鈍化させるため、数年間
は金利を景気抑制的な水準に維持する必要があるかもしれない」と語ってい
ます。
また、FRBのクック理事もワシントンで行われたイベントで、「インフレ
を当局目標に戻すことを決意している」と述べ、「従って、利上げはまだ終
わっておらず、金利を十分に景気抑制的な水準に維持する必要があると考え
る」と話し、「今は比較的小幅なステップで行動している。これにより、わ
れわれは景気に対して速いペースで行った行動の効果を見極める時間が得ら
れる」と発言しています。
さらに、FRBのウォラー理事はアーカンソー州立大学の講演で、「努力が
実を結び始めている様子が見て取れるが、行き先はまだ長い」と述べ、「金
利が一部で現在想定されているより高い水準でより長く維持され、長い闘い
になる可能性がある」と指摘しています。(ブルームバーグ)
前日行ったミネアポリス連銀のカシュカリ総裁も含め、多くの金融当局者が
タカ派的な発言に終始したことは、先週末に発表された雇用統計の上振れの
影響を受けていることは明らかです。
今朝のブルームバーグは「第六感」というタイトルで、「米政策金利に対す
るセンチンメントの変化が、金利オプションの取引きで表面化しつつある。
今週に入り複数の大口ポジションがFF金利6%到達に賭けており、現在の
市場コンセンサスより1ポイント近い高い水準を予想していることがうかが
われる」と伝えています。政策金利のターミナルレートは5.0%~5.2
5%と予想されていますが、万が一この先インフレが再燃し、金利が上昇し
た際の「ヘッジ」であるとみられます。通貨オプション取引で、「140円
のコール」を買うのと同様なポジションです。
イギリス空軍機でロンドンを訪れたウクライナのゼレンスキー大統領はウエ
ストミンスター寺院で演説を行い、「ロンドンは戦争初日からキーウに味方
し続けている。ロシアは敗北する」と述べ、スナク首相との会談では長距離
ミサイルの供与を要請しました。
ゼレンスキー氏はこの後パリに移動し、マクロン大統領とも会談する予定で
す。
予想されるロシアの大規模な攻撃の前に、欧州各国にさらなる強力な武器の
提供を要請しています。
バイデン大統領は7日、一般教書演説を行い、中国の脅威から「米国を守る
」と強調しました。
大統領は、「米国の利益を増進し、世界に恩恵を与えることができる分野で
中国と協力する決意だ」とする一方、「だが勘違いしてはいけない。先週は
っきりさせたように、中国がわれわれの主権を脅かすなら、わが国を守る行
動に出る。そしてわれわれはそうした」と述べ、自身の命令で、中国の偵察
気球を撃墜したことにも触れました。
さらに、専制政治は世界中で弱体化していると述べるとともに、事前に準備
した演説テキストから離れ、「誰もが中国主導者の仕事を望んでいない」と
発言。
習近平国家主席と立場を交換したい指導者が世界にいるなら「名前を挙げて
ほしい」と強い口調で述べていました。
本日のドル円は130円50銭~132円程度を予想します。
**********************************
明日の「アナリストレポート」は都合によりお休みとさせていただきます。
読者の皆様にはご不便をお掛けいたしますが、ご理解の程宜しくお願い致
します。
- [2023/02/09 09:30]
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ドル円は反落し、130円台に
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
- ドル円は132円台から下落。パウエル議長の発言内容が予想よりもタカ派的ではなかったことから131円47銭前後まで売られる。
- 欧州市場から売られていたユーロドルは、パウエル議長の発言で上昇したが、1.0767止まりと、上値を重くする。
- 株式市場は3指数が3日ぶりに上昇。パウエル議長の発言でマイナス圏に沈む場面もあったが、ダウは265ドルの上昇。
- 債券は売られ3日続落。長期金利は3.67%台に上昇。
- 金と原油は続伸。
本日の注目イベント
- 日 12月国際収支
- 日 1月景気ウオッチャー調査
- 米 ウィリアムズ・NY連銀総裁、インタビュー
市場の最大の関心事は、米インフレの今後の動向とそれに伴って金融政策がどのように推移していくのかに集まっていることが、改めて確認された形です。
パウエル議長は7日。エコノミック・クラブ・オブ・ワシントンで行われたデービッド・ルーベンスタイン氏とのインタビューで、「さらなる利上げが必要になると考えている」と発言しました。先週末に発表された1月雇用統計で、市場予想を大きく上回った労働市場について「並み外れて強い」と指摘し、労働市場の非常に強い状況が続いた場合、「さらなる措置を講じる必要が生じる可能性は十分ある」と語っています。「1月の雇用統計データを事前に入手していたら、正式に決定された0.25ポイントではなく、0.5ポイントの利上げを選んだか」との質問に対しては、明確な回答を避けつつ、「残念ながら、そうした形で政策を決めることはない」と述べていました。その上で議長は、「インフレ退治に向けては先行きまだ多くのハードルある」とし、「多少のリプライスを目にすることになるだろう」と語っています。(ブルームバーグ)筆者も含め、市場はタカ派のコメントを想定していましたが、3月会合での大幅利上げに言及するなどといった発言はありませんでした。
一方、FOMCメンバーの中ではタカ派寄りとみられている、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は7日、CNBCとのインタビューでインフレ抑制に必要な金利のピークについて、「個人的には引き続き5.4%前後だと予想している」と述べ、「現時点で数字を挙げなければならないとしたら、昨年12月に示した予想を維持する」と語っています。市場予想の中間である5.1%よりも高い水準を想定しているカシュカリ総裁は、今年のFOMCでの投票権を有しています。
まもなくロシアがウクライナに侵攻を開始してから1年になります。戦況は激しさを増す一方で停戦への道筋は全く見えてきません。ウクライナ軍の幹部は、今月下旬にはロシアが攻撃を一段と激しくし、一気に戦況を好転させる計画だと述べています。ドイツ、デンマーク、オランダはウクライナに旧式の「レオパルト1」戦車を最大178台提供することを発表しています。これに先立ち、カナダは「レオパルト2」4台のウクライナへの提供を決め、すでに空輸も行われています。ウクライナの首都キーウを電撃訪問したドイツの国防相は欧州の夏までに「約20台、25台」が届き、「来年初めまでに100台以上が供給される」と述べていますが、発言からも、長引く戦闘を想定していることがうかがえます。
NYでは株式市場が上下しながらもプラスで終わり、債券は売られ金利が上昇しましたが、ドル円は下げています。ドル円は132円台前半から下げ、130円47銭前後まで売られ、この日の安値近辺で取引を終えています。今週は日銀総裁人事を巡る報道で、132円90銭までドルが反発しましたが、再び下落してきました。年初からこのような、値幅を伴った値動きを見せながらも、明確な方向感にはやや欠ける展開が続いています。
本日のドル円は130円~132円程度を予想します。
- [2023/02/08 10:17]
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ドル円続伸し133円に迫る
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆次期日銀総裁人事に関する報道で132円台半ばまで買われた
ドル円は、アジア時間では上値が重く、131円台に押し戻されたが、
NYでは一段と上昇。米長期金利が上昇したことで132円90銭まで
ドル高が進む。
◆ユーロドルは続落。ドルが買われたことでユーロ売りが加速し、
1.0709前後まで下落。
◆株式市場は先週末の雇用統計の大幅な上振れの影響が残り、
3指数が続落。
◆債券も続落し、長期金利は3.64%台まで急伸。
◆金と原油は小幅に反発。
本日の注目イベント
◆豪 豪12月貿易収支
◆豪 RBA、キャッシュターゲット
◆日 12月景気先行指数(CI)(速報値)
◆日 為替介入実績(日次ベース、10-12月)
◆中 中国 1月外貨準備高
◆独 独12月鉱工業生産
◆米 12月貿易収支
◆米 12月消費者信用残高
◆米 米大統領、一般教書演説
◆米 パウエル・FRB議長講演
◆加 カナダ12月貿易収支
次期日銀総裁に現職の雨宮副総裁が就任する可能性が報じられ、異次元緩和の修正
が遅れるとの見方からドル円は132円台半ばまで買われましたが、昨日の東京時
間では、先週末には128円台半ばで推移していたこともあり、上値が重い展開で
した。NYでは果たしてこのニュースにどのような反応を見せるのか注目していま
したが、ドル円はさらに上値を追い、132円90銭までドル高が進みました。
もっとも、ドル高が進んだ要因は、日銀人事というよりも、先週末のサプライズだ
った雇用統計の余韻が残り、債券が売られ、金利が大きく上昇したことが大きかっ
たと思われます。
128円台から雇用統計を受けて131円台までドル高が進み、さらに日銀人事に
関わる報道で132円台まで押し上げられたドル円は「1日天下」では終わらなか
ったという
ことです。日足チャートではローソク足が急伸していることが見て取れ、雲の下限
が迫っています。現時点での雲の下限は133円68銭近辺にあり、仮にこのまま
ドル円がもう一段上昇しても、この水準では一旦は上昇が抑えられるでしょう。
昨日のコメントで、今後FOMCメンバーである地区連銀総裁の講演などでは、タ
カ派寄りの発言が多くなり、インフレの鈍化にはより慎重な姿勢が見られるのでは
ないかと書きましたが、さっそくその動きが出ています。
アトランタ連銀のポスティック総裁はブルームバーグとの電話インタビューで、経
済予想よりより強い状況が続けば、「われわれにはもう少しやるべき行動があるこ
とを意味するだろう」と述べ、「それは私の今の予想よりも大きく利上げすること
につながると予想する」と語っています。
大きく上振れした1月の雇用統計を受け、金融当局が政策金利のピークを従来予測
よりも高めに引き上げる可能性が強まったとの認識を示しています。
今回の雇用統計について、イエレン財務長官もコメントしています。イエレン氏は
、景気モメンタムの証左として力強い雇用統計を挙げ、「50万人の雇用があり、
失業率が50年ぶり低水準となっているときに、リセッションは起こらない」と述
べ、「米経済は力強く、底堅い」との認識を示しました。鈍化傾向にあるインフレ
率については、「依然として高すぎる。これを引き下げることがバイデン大統領の
最優先事項だ」と話しています。
本日はパウエル議長の講演が予定されています。1月の雇用統計を受け、どのよう
な発言を行うのか、すでに市場の関心を集めています。
インフレ率の鈍化傾向については、より慎重な姿勢を示すと予想しますが、3月会
合でも
大幅利上げの可能性があるといったような内容になると、ドル円はさらに上昇する
ことになるかもしれません。
基本は今後のデータ次第だといった認識を示しながらも、タカ派寄りの内容になる
のではないかと思っています。
本日はバイデン大統領の一般教書演説があります。
ホワイトハウスは、この中で企業の自社株買いへの課税を4倍にする案や、超富裕
層にミニマム課税を課する、いわゆる「ビリオネア税」法案の成立を呼び掛けると
発表しています。下院では、中国の偵察気球を撃墜したことに関して、共和党はバ
イデン大統領の行動を「遅きに失した」と非難している様です。撃墜された気球の
一部がすでに米軍により回収されており、中国側が主張している「民間の気象研究
用だった」のかどうかが、まもなく判明してくるとみられます。
本日のドル円は131円~133円50銭程度を予想します。
- [2023/02/07 09:40]
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米1月雇用統計はビッグサプライズ
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆1月の雇用統計が予想を大きく上回ったことでドル円は
大幅に上昇。131円台までドル高が進み、131円20銭を
記録。1月12日以来、約3週間ぶりのドル高に。
◆ドルが買われたことでユーロも売られ、1.0793前後まで
下落。
◆株式市場は3指数が揃って反落。FRBによる利上げ停止観測が
後退。ナスダックは193ポイント下げ、S&P500も43ポイントの下落。
◆債券は大きく売られ、長期金利は3.52%台に上昇。
◆金と原油は大幅に続落。
◆1月失業率 → 3.4%
◆1月非農業部門雇用者数 → 51.7万人
◆1月平均時給 (前月比) → 0.3%
◆1月平均時給 (前年比) → 4.4%
◆1月労働参加率 → 62.4%
◆1月ISM非製造業景況指数 → 55.2
◆1月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値) → 46.8
◆1月S&PグローバルコンポジットPMI(改定値) → 46.8
本日の注目イベント
◆独 独12月製造業新規受注
◆欧 ユーロ圏12月小売売上高
◆英 ベイリー・BOE総裁講演
景気抑制的な政策を続け、2%の物価目標達成に向かって賢明な努力を行って
いるFRBにとって、今後も「労働市場」が大きな[壁]として立ち塞がって
くる可能性がありそうです。
1月の雇用統計は「ビッグサプライズ」でした。
失業率は何と53年ぶりとなる「3.4%」と、市場予想の「3.6%」から
大きく改善していました。非農業部門雇用者数は「51.7万人」と、こちら
は市場予想の「18.8万人」に比べ、33万人ほど上回る大幅増加でした。
さらに12月分も、速報値の「22.3万人」から「26万人」に上方修正さ
れています。
FRBは先週のFOMCでは0.25ポイントの利上げを行いましたが、12
月会合の0.5ポイントの利上げ幅から順次縮小し、足元では3月会合では0
.25ポイントの利上げを最後に、それ以降は累積利上げ幅の効果を見極める
ため、「利上げを停止」するのではないかといった観測も浮上してきた状況で
した。
今回の雇用統計の発表がこの観測に冷水を浴びせた格好となり、市場の「楽観
的な見方」は一気に吹き飛んだ動きを見せました。
各市場は大きく動いています。
雇用統計発表前には128円台半ばで推移していたドル円は一気に131円台
まで買われ、131円20銭を記録しています。
米長期金利が急上昇したことでドル全面高の様相でした。
株価が下げ、債券が売られただけではなく、金利の付かない金は2.8%も売
られ、1876ドル台まで下落しています。
WTI原油価格も2ドル49セント売られ73ドル台と、1カ月ぶりの安値に
沈みました。
今後もFRBによる景気抑制策が継続されるといった見立てのようです。
パウエル議長は先週のFOMC会合後の記者会見で「われわれは大きく進展し
たと考えている。それでも、さらなる仕事が残されている」と述べ、これまで
のインフレの減速に一定の評価を与えながらも、なお慎重な姿勢を維持してい
ました。
また、「物価安定の回復には、抑制的なスタンスをしばらく維持することが必
要となる可能性が高い」と指摘し、物価圧力に関する最新の指標は心強い内容
だとしながらも、「勝利宣言するのは極めて時期尚早だ」と述べています。
今後について議長は「データ次第だ」と述べたことを考えると、3月会合では
再び0.5ポイントの利上げ、あるいは0.75ポイントの可能性も浮上して
くるかもしれません。
パウエル議長の「勝利宣言するのは極めて時期尚早だ」と述べた言葉がマトを
得ていたのかもしれません。
ドル円は今朝6時過ぎのオセアニア市場でさらにドル高が進み、このレポート
を書いている時点でも132円50銭近辺で推移しています。
日経電子版が「政府、次期日銀総裁に雨宮副総裁を打診」と報じたことが材料
視され、早朝のオセアニア市場で窓を開けて上昇したものです。
ドル円は132円56銭前後まで買われましたが、当社を含むFX会社は、通
常月曜日は朝7時からしか取り引が出来きません。多くの個人投資家が7時の
取り引開始時間早々からドルを売ったとみられ、ドル円は7時過ぎには131
円80銭辺りまで下げました。
ドル安傾向が予想される中、久しぶりの132円台ということで、手持ちのド
ルを売ったと思われます。
筆者はまだ、この先ドル円は下げると予想していますが、その根拠は米インフ
レ率が徐々に低下し、それに伴ってFRBによる利上げ圧力が低下することを
大きな理由と考えています。1月の雇用統計がその根底を揺るがす結果であっ
たことは、今後も十分考慮するとともに、注意する必要があります。
現時点ではまだトレンドを変える必要はないと考えますが、チャートでは「8
時間足」よりも短い足では全て「上昇トレンド」を示し始めています。
今後CPIなど、再びインフレの上昇を示すようなデータが出るようなら、相
場観の修正もあり得るかもしれません。
ここは決め打ちするのではなく、柔軟な姿勢が求められます。
本日のドル円は130円80銭~133円程度を予想します。
- [2023/02/06 09:56]
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ECB、BOEともに0.5ポイントの利上げを決定
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆前日のFOMCで今後の利上げ停止観測の浮上もあり、ドル円は
上値の重い展開に。NYでは128円08銭まで売られたが、
その後は株価の上昇などもあり128円台半ばまで反発。
◆ユーロドルは小幅に反落。ECBが0.5ポイントの利上げを
決めたものの、今後様子見の可能性も言及されていたことで
売りが優勢に。
◆株式市場は前日同様まちまち。ダウは39ドル下げたものの、
ナスダックとS&P500は大幅高。とりわけナスダックは
メタが大幅に上昇し、指数をけん引。
◆債券も続伸。長期金利は3.39%台に低下。
◆金と原油は続落。
◆新規失業保険申請件数 → 18.3万件
◆12月製造業受注 → 1.8%
本日の注目イベント
◆中 1月財新サービスPMI
◆中 1月財新コンポジットPMI
◆トルコ トルコ1月消費者物価指数
◆欧 ユーロ圏12月卸売物価指数
◆欧 ユーロ圏1月サービス業PMI(改定値)
◆欧 ユーロ圏1月総合PMI(改定値)
◆米 1月雇用統計
◆米 1月ISM非製造業景況指数
◆米 1月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値)
◆米 1月S&PグローバルコンポジットPMI(改定値)
◆米 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、フォックス・ビジネスとインタビュー
市場予想通り、ECBとBOEは揃って政策金利を0.5ポイント引き上
げました。ECBは声明で、「次回3月の政策決定会合でも0.5ポイン
トの引き上げを実施する意向だ。それから、その後の金融政策の道筋につ
いて検証する」としています。
ラガルド総裁は会見で、「非常に極端な展開以外で、3月の0.5ポイン
ト利上げが起こらないシナリオというのは考えられない」と指摘し、「中
期で2%というインフレ目標達成への中銀の決意を疑うべきではない。金
利が景気抑制的な領域に達した後、十分に長くその水準にとどまるだろう
という事実にも疑問の余地はない」と説明しています。
ブルームバーグの記事には、この会見の様子も添付されており、見ること
ができますが、ラガルド総裁は身振り手振りを交えて、全身でその説明を
行っていました。
単に、手許の「カンペ」を読むのではなく、まるで少人数の座談会で自分
の意見を述べているように、フレンドリーで、極めて平素な言葉で説明し
ていました。ビデオを見て、中銀の政策意図を丁寧に説明し、出来るだけ
市場と対話をしようとする、その姿勢には好感が持てます。
3月の会合でも追加利上げを行う可能性が高いとしながらも、その後停止
することも十分あり得るとのメッセージが、欧州市場の株価を大きく上昇
させ、これがNY株式市場にも好影響を与えています。
BOEも政策金利を0.5ポイント引き上げ、これで2021年12月の
引き締め開始以来10回連続で利上げを行っています。その結果政策金利
は4%に達し、2008年以来の高水準になっています。
ベイリー総裁は会見で、「インフレは山を越えたが、低下はまだ始まった
ばかりで、リスクは極めて高い。中銀は政策姿勢を変更する前に、絶対的
な確信を持つ必要がある」と語っています。FRBに続き、ECB、BO
Eが追加利上げを実施したことで、日銀の緩和政策の継続がいやが上にも
目立ちます。いずれ日銀も政策変更を余儀なくされるとの根強い観測から、
投機筋らは日本国債の「空売り」を継続しています。
日銀は、これに立ち向かう姿勢を示し、国債の価格が下がらない(金利が
上昇)よう買い支えています。今週1日には、1日当たりの買い入れ額と
しては過去最大となる23兆6902億円の国債を買い入れています。
これだけの額を買い入れたということは、それだけ売り物があったという
こととなり、市場の金利上昇圧力の強さを物語っています。
本日3日には、EUとウクライナのサミットが開催されます。
ウクライナの集合住宅に対するロシアの攻撃は止まず、多くの民間人が犠
牲になっている中、侵攻開始1年を前に攻撃は激しさを増しています。
欧米がウクライナへ数多くの戦車の供与を決めているため、ロシアはその
前に一気に攻撃を強めるとの観測もあるようです。
プーチン氏は2日、「戦場で負けるわけにはいかない」と述べており、ゼ
レンスキー大統領は戦車以外にも、米国のF16戦闘機などの供与も要請
しています。ウクライナでは、来週からドイツ製戦車「レオパルト2」の
訓練が開始されるとのことです。
今夜10時半には米1月の雇用統計が発表されます。
非農業部門雇用者数は「18万9000人」と予想されており、12月の
「22万3000人」からは減少すると見られていますが、仮にこの程度
の数字であったら、労働市場では依然として景気抑制策の効果は出ていな
いと考えられそうです。
週間失業保険申請件数は低水準が続いており、FRBが目指す物価目標に
とっての「障害」をなかなか取り除くには至らない状況が続いています。
本日のドル円は127円50銭~130円程度を予想します。
- [2023/02/03 09:42]
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FOMCの結果を受けドル円128円台半ばまで下落
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆FOMCの結果発表前には129円台前半で推移していたドル円は
128円55銭近辺まで売られる。長期金利が3.5%を大きく
割り込んだことでドル売りが加速。
◆ユーロドルは続伸し、一時は昨年4月以来となる1.1002まで
ユーロ高に。
◆株式市場は3指数とも上昇。ナスダックは231ポイント買われた
もののダウは6ドル高とまちまち。
◆債券は買われ、長期金利は一時3.38%台まで低下し、3.41%台で
引ける。
◆金と原油は揃って反落。
◆1月S&Pグローバル製造業PMI(改定値) → 46.9
◆1月ADP雇用者数 → 10.6万人
◆1月ISM製造業景況指数 → 47.4
◆1月自動車販売台数 → 1574万台(年換算)
本日の注目イベント
◆欧 ECB政策金利発表
◆欧 ラガルド・ECB総裁記者会見
◆英 BOE金融政策発表
◆英 BOE金融政策委員会(MPC)議事録
◆米 新規失業保険申請件数
◆米 12月製造業受注
◆米 企業決算 → アップル、アマゾン、スターバックス、アルファベット、
クアルコム
◆加 カナダ12月住宅着工件数
今年最初のFOMCが開催され、今朝方その結果が発表されました。
政策金利は予想通り0.25ポイントの引き上げを決め、これでフェデラルフ
ァンド(FF)金利誘導目標のレンジは4.5~4.75%になりました。
FOMC前には129円台前半で推移していたドル円は直後に129円台後半
まで買われましたが、その後パウエル議長の会見に沿う形で売られ、一時は1
28円55銭までドル安が進みました。ユーロドルでもドル安が進み、ユーロ
は一時1.1002まで上昇し、2022年4月4日以来の高水準を記録して
います。ユーロ圏の1月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比で「8.5
%」と、市場予想の「8.9%」から大幅に減速したものの、ドル安の流れか
らユーロを買う動きが勝った格好です。
声明文では、「最近の指標は支出と生産の緩慢な伸びを示している。雇用はこ
の数カ月、堅調に伸びており、失業率は低いままだ。インフレは幾分和らいだ
が、依然として高水準にある」とし、「委員会は目標達成を妨げる可能性のあ
るリスクが出現した場合、必要に応じて金融政策スタンスを調整する用意があ
る。委員会は労働市場の状況、インフレ圧力やインフレ期待を示す各指標のほ
か、金融・国際情勢など幅広く考慮して判断する」と記されています。
政策金利については、「今後どの程度引き上げるかを決定する上では、金融政
策の累積的な引き締めを含む複数の要素に左右される」とあります。従来は、
「そうした要素は今後の引き上げペースを決定する上で考慮する」としていま
した。(ブルームバーグ)
パウエル議長はFOMC後の記者会見で、「われわれは大きく進展したと考え
ている」としながらも、「それでも、さらなる仕事が残されている」と述べ、
これまでのインフレの減速に一定の評価を与えながら、なお慎重な姿勢を維持
しています。
また、「物価安定の回復には、抑制的なスタンスをしばらく維持することが必
要となる
可能性が高い」と指摘し、物価圧力に関する最新の指標は心強い内容だとしな
がらも、「勝利宣言するのは極めて時期尚早だ」と述べています。
今回のFOMCとパウエル議長の会見からは明確なヒントは得られなかったと
思われます。
追加利上げの可能性を残す一方で、声明文では引き締めサイクルの終わりが近
く、経済データが政策に追いつくのを静観する用意があることも示しています
。個人的には、パウエル議長はもっとタカ派的な姿勢を見せると予想していま
したが、市場はひとまず今後の利上げペースの鈍化を好感し、株式と債券を買
い、ドル売りで反応しています。
今後は、3月会合で利上げが停止されるのか、仮に再び0.25ポイントの利
上げがあった場合、それではいつ利上げが停止されるのかに焦点が移ります。
FOMCの陰に隠れ、余り注目されませんでしたが、1月のADP雇用者数は
、市場予想を大きく下回る結果でした。予想の「18万人」に対して結果は、
「10万6000人」でした。
12月は「25万3000人」だったことから、半減したことになりますが、
ADPのエコノミストは、「1月は統計の対象週で天候に関連する雇用の乱れ
の影響があった」と説明しています。事実、地域別では厳しい寒波に見舞われ
た中西部の減少が目立っています。
ドル円はここ1週間の短期レンジでは下限を試す動きになっています。目先は
128円割れがあるのかどうかと、1月に記録した127円22銭が意識され
る展開になるのかが注目されます。全体的にみて、依然としてドルの上値の方
が重い展開が継続していると考えています。
本日のドル円は127円50銭~129円50銭程度を予想します。
- [2023/02/02 09:41]
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米10-12月期雇用コスト指数低下
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆ドル円は雇用コスト指数の発表後に129円75銭まで売られたが
その後反発。FOMCの結果を待つ雰囲気となり130円台前半で
取引を終える。
◆ユーロドルは1.08台半ばを中心にもみ合う。
◆株式市場は3指数が大幅に反発。経済指標がFRBの大幅利上げの
終焉を想起させる結果だったことが材料に。ダウは368ドル上げ、
S&P500も58ポイントの上昇。
◆債券も買われ、長期金利は3.50%台に低下。
◆金と原油は揃って反発。
◆10-12月雇用コスト指数 → 1.0%
◆11月ケース・シラ-住宅価格指数 → 6.77%
◆1月シカゴ購買部協会景気指数 → 44.3
◆11月FHFA住宅価格指数 → -0.1%
◆1月コンファレンスボード消費者信頼感指数 → 107.1
本日の注目イベント
◆中 1月財新製造業PMI
◆欧 ユーロ圏1月消費者物価指数(速報値)
◆欧 ユーロ圏1月失業率
◆欧 ユーロ圏1月製造業PMI(改定値)
◆米 1月S&Pグローバル製造業PMI(改定値)
◆米 1月消費者物価指数
◆米 1月ADP雇用者数
◆米 1月ISM製造業景況指数
◆米 1月自動車販売台数
◆米 FOMC 政策金利発表
◆米 パウエル議長記者会見
◆米 米下院議長、債務上限問題でバイデン大統領と会談
米第4四半期の雇用コスト指数が前期比「1.0%」と、市場予想の「1.1%」を
下回ったことで、新たなインフレ鈍化の兆候が示されたとの観測が広がり、株式と債
券が買われ、ドル円は129円75銭まで売られましたが、明日朝方のFOMCを控
え、動きはそれほど活発なものではありませんでした。
雇用コスト指数の鈍化は確かにFRBにとっては「朗報」でありますが、ただそれで
も、インフレ圧力が完全に鎮静化したとFRBが確信するにはまだ不十分で、今後も
同様なデータが望まれます。ブルームバーグのエコノミストは、「第4四半期の雇用
コスト指数の伸びの鈍化は、コアサービス分野でのディスインフレ進行を示唆する。
賃金の伸び減速により、金融当局は利上げペースを落とすべきとの確信を強めそうだ
。だが、最低5%を引き上げることは止めないだろう」と、今後もターミナルレート
を5%以上に引き上げるとの見方を維持しています。
一方で人手不足が続く米国の多くの経営者が、高賃金を提示しなければ労働力が確保
できず、その部分のコストを価格に転嫁するといった「悪循環」を断ち切る過程にい
るのか、今後のデータを注意深く見る必要があります。
この日発表された経済指標はいずれも景気抑制策の効果が出ている印象です。
1月の消費者マインドは「107.1」と、依然として分かれ目の「100」を超え
てはいますが、市場予想の「109」を下回っていました。また、今後6カ月の見通
しを反映する「期待指数」も前月の「83.4」から低下し、「77.8」でした。
政策金利の大幅引き上げの影響をいち早く受けた住宅市場でも、この日発表された1
1月のケース・シラー住宅価格指数は、全米ベースで「0.3%」低下し、主要20
都市では「0.5%」の低下でした。(いずれも前月比)
米国の住宅価格は2022年には大幅に上昇しており、今回発表された指数でも1年
前と比較すれば依然として高水準にありますが、上昇の勢いは確実に鈍化しています
。前月比ベースでは5カ月連続の低下で、昨年6月に付けたピークからは「2.5%
」低下したと報告されています。
昨日のコメントでも触れましたが、「ブラックスワン・ファンド」を運営するヘッジ
ファンド、ユニバース・インベストメンツに所属するタレブ氏は引き続き市場の楽観
に警告を
発し、「ディズニーランドは終わり、子供は学校に戻る」と発言しています。
同氏は、「超低金利時代が巨額な資産バブルをつくり出し、金融当局が以前のような
水準に金利を引き上げる一方で、投資家は高金利の世界に戻る用意がほとんど整って
いない。仮想通貨は低金利時代が続いた市場の甘さを表している。この数年、資産は
恐ろしく膨張した。腫瘍のようにだ。この表現が最も適していると思う」と述べてい
ました。
相場が下落すれば大きな利益を生むファンドを運営しているため、「ポジショントー
ク」とも取れないことはありませんが、今後も順調にインフレ率が低下して行くのか
どうかについては、ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏も、「市場が
先走り過ぎているのではないかとやや不安になる。市場はインフレが終わったかのよ
うな価格設定になっているが、これは自ら実現を阻む予言かもしれない」とブルーム
バーグの番組で指摘しています。
複数の経済データの下振れを受け、市場は早くもハト派観測に傾いています。
今夜のFOMCでの0.25ポイント引き上げは相当だとしても、3月の会合では最
後の利上げを行い、その後は見送るとの見方も浮上しています。
個人的には5月会合ではその可能性があるかもしれないものの、その後の会合でも
政策金利の維持が続くとは予想しません。IMFが昨日発表した「世界経済見通し」
では、今年度の成長率を上方修正しました。その根拠として、「戦争の激化や中国の
需要回復でインフレ圧力が再燃するリスク」を挙げています。筆者も米国のインフレ
がこのまま順調に低下し続けるとは予想していません。
明日の朝方4時にはFOMCの結果発表があり、30分後にパウエル議長の記者会見
があります。繰り返しになりますが、ここで今後の金融政策に関するどのようなヒン
トを与えてくれるのかがカギになります。
本日のドル円は128円50銭~131円50銭程度を予想します。
- [2023/02/01 09:54]
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