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ドル円は介入警戒感から141円手前より急落 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆東京時間に141円目前まで買われたドル円は、午後3時半頃
急落。財務省など金融当局が3者会合を行うとの情報に140円
前半まで下げる。NYでは上値が重く、米金利が大きく低下したことで
139円57銭までドル売りが進む。
◆ユ-ロドルは1.07台前半から半ばで小動き。
◆債務上限問題の法案採決への準備が行われたが、共和党保守強硬派
から批判が続出。ダウは50ドル下げ、ナスダックはテスラ株などの
上昇もありプラスで引ける。
◆債券は急騰。長期金利は大幅に低下し3.68%台に。
◆金は反発。原油は大きく下げ70ドルを割り込む。

◆1-3月期四半期住宅価格指数      →  0.5%
◆3月ケース・シラ-住宅価格指数     →  -1.15%
◆3月FHFA住宅価格指数        →  0.6%
◆6月コンファレンスボード消費者信頼感指数→  102.3

本日の注目イベント

◆豪   豪4月消費者物価指数
◆日   4月鉱工業生産
◆日  4月小売売上高
◆中   5月中国製造業PMI
◆中   5月中国サービス業PMI
◆独   独5月雇用統計
◆独   独5月消費者物価指数(速報値)
◆欧   ECB金融安定報告
◆英   英4月消費者信用残高
◆米   5月シカゴ購買部協会景気指数
◆米   4月雇用動態調査(JOLTS)求人件数
◆米   ベージュブック(地区連銀経済報告)
◆米   コリンズ・ボストン連銀総裁とボウマンFRB理事、イベント開会の挨拶
◆米   ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁講演
◆米   ジェファーソン・FRB理事講演
◆加   カナダ1-3月期GDP


債務上限問題の基本合意が発表され、NYとLDNが休場だったにもかかわらず、
ドル円は荒っぽい動きを見せ、乱高下しています。昨日の朝方は140円台で始ま
りましたが、140円台は維持し、その後植田日銀総裁が参議院財政金融委員会で
、「賃金が継続的に上昇していく中での持続的・安定的な2%の物価上昇の達成に
はまだ時間があると考えているので、粘り強く金融緩和をというスタンスだ」と述
べたことが材料となり円が売られました。この発言を好感した株式市場でもマイナ
ス圏で推移していた日経平均株価が、一時120円を超える上昇を見せたこともあ
り、ドル円は午後3時過ぎには140円92銭前後まで買われています。

ただその後ドル円は急落しています。財務省、金融庁、日銀が3者会合を開くとい
った報道が引き金でした。会合後財務省の神田財務官は、「為替相場はファンダメ
ンタルズを反映して安定的に推移することが重要だ。過度の変動は好ましくない」
と、先週から続く足元の円安をけん制する発言を行いました。神田氏はその上で、
「為替市場の動向をしっかり注視し、必要があれば適切に対応していく考えに変わ
りはない」と語っていました。
日銀総裁による金融緩和政策継続発言で円安が進み、あわてて「過度の変動には対
応する」とコメントする財務省。この構図は昨年からずーと続いています。
植田総裁からは、市場が想定していた以上のハト派寄りの発言が相次ぎ、これが円
安と株高を加速させている面があることは、市場の一致した見方かと思われます。

筆者は、先週末とさらに今週に入っても、債務上限問題の基本的合意が株高、債券
高、金利低下に伴いドル円が売られるリスクに言及してきました。
連休明けのNY市場ではナスダック指数は上昇しましたが、ダウは下落し、債券は
大きく買われたことから金利が大幅に低下し、利益確定のドル売りを誘発した格好
です。ある程度想定通りの動きだったと言えます。
NY株が思ったほど買われなかった理由は、債務上限問題を巡る議会での法案採決
に不透明感が出て来たからです。
共和党強硬派議員らは、デフォルト回避を目指したホワイトハウスとマッカーシー
下院議長の合意に対し、「報復」すると息まいています。
テキサス州選出のロイ下院議員は、「たとえ何が起きようとも、報いを受けること
になるだろう」と過激な言葉を用いて批判しています。
同議員の他、共和党保守強硬派の下院議員連盟「フリーダム・コーカス」のメンバ
ーらもマッカーシー議長を非難しています。(ブルームバーグ)
今回の基本的合意は「妥協の産物」との批判はあるものの、合意に至らず、万が一
米国がデフォルトに陥った場合の世界的な影響は、計り知れないものがあります。
主義主張がどうであれ、現時点での選択肢は「合意」以外にはありません。
もし、この先議会が法案を否決するようなら、彼らの名前は歴史に「汚名」として
残ることになるでしょう。

リッチモンド連銀のバーキン総裁はオンラインイベントで、「需要を低下させるこ
とでインフレ率を押し下げる必要があると考える」と述べ、その上で、「どのよう
な見方をしても、インフレ率は高すぎるようにしか見えない」と発言しています。
来週から「ブラックアウト」に入るため、今週はFOMCメンバーによる発言機会
が多くあり、今日も多くの発言が聞かれそうです。
6月会合では0.25ポイントの利上げ確率が高まっていますが、今週末の雇用統
計と
会合期間中に発表される5月のCPIの結果次第ではどうなるか分かりません。
多くのメンバーが「タカ派寄り」の発言を行うとみられますが、メンバーの中でも
意見が分かれているのも事実です。注目したいと思います。

本日のドル円は139円~140円80銭程度を予想します。


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ドル円140円台で推移 

ひと目で分かる昨晩の動き 

欧州市場

◆ドル円は東京時間に140円92銭近辺まで上昇したが、
その後じり安の展開となり、欧州時間には140円12銭まで下げる。
◆ユーロドルはやや買い戻しが優勢となり、1.0729前後
まで上昇。LDN、NY市場が休みのため、小動きのなか薄商い。

本日の注目イベント

◆豪   豪4月住宅建設許可件数
◆日   4月失業率
◆欧   ユーロ圏5月消費者信頼感指数(確定値)
◆欧   ユーロ圏5月景況感指数
◆米   1-3月期四半期住宅価格指数
◆米   3月ケース・シラ-住宅価格指数
◆米   3月FHFA住宅価格指数
◆米   5月コンファレンスボード消費者信頼感指数
◆米   バーキン・リッチモンド連銀総裁、インタビュー

ドル円は昨日の朝方、ドル高の流れが続き140円92銭前後まで買われる
場面がありました。米債務上限問題が基本合意したことで、朝方には日経平
均株価が600円を超える上昇を見せたことで、「リスクオン」が強まり、
低金利の円が売られた格好でした。
ただ、その後ドル円はじり安の流れとなり、欧州時間では140円12銭ま
で下げています。基調としては依然ドル高の流れは変わっていないと見られ
ますが、今夜の米債券市場が債務上限問題の合意を受けどのように反応する
のかが重要なポイントになろうかと考えます。NY株式市場は、合意を見越
して先週金曜日に大幅高を見せましたが、この流れが続き、先物市場でも若
干上昇しているようです。
株安、債券安が、ドル円を押し上げて来たことを考えると、株高、債券高は
ドル円を押し下げるのか、見極めたいところです。

ブルームバーグによると、米連邦議会の下院規制委員会は米東部時間30日
午後3時(日本時間31日午前4時)から会合を開き、債務上限の関連法に
ついて協議を行う模様です。
バイデン政権の閣僚やホワイトハウスの上級スタッフは既に29日早朝まで
に、民主党の下院議員少なくとも60人に電話などで個別に接触し、法案に
賛成票を投じるよう求めています。バイデン大統領は、「この合意は想定し
得る最悪の危機を防ぐ」と述べ、「この法案を通過させるよう上下両院に強
く求める」と語っています。また、共和党のマコネル上院院内総務も、法案
に賛成するよう上院共和党議員に呼び掛けています。
法案は承認される見込みで、法案では法定債務上限の効力を2025年1月
まで停止することになっています。これはバイデン大統領の残りの任期と期
間を合わせており、これでバイデン大統領は任期中には同問題で頭を悩ます
ことはなくなりますが、2024年の大統領選にも出馬する意向を示してい
ることから、その先は分かりません。

28日に行われたトルコ大統領選の決選投票で、エルドアン氏が再選されま
した。
ロシアのプーチン大統領はエルドアン氏に対して「親愛なる友人よ」と祝辞
を送っています。勝利したエルドアン氏は支援者を前に、「金利を引き下げ
ることで、インフレも下がる」と述べ、相変らず「経済原則」とは真逆の政
策を採る意向を示していました。
エルドアン氏が勝利したことを受け、再び「ドル買いリラ売り」が加速し、
一時は0.7%安の「20.1リラ」を付け、過去最安値近辺まで売られま
した。
リラは対円でも先週末には6円近辺まで売られ、最安値圏までリラ安が進ん
でいました。トルコでは一時の猛烈なインフレは収まってきたものの、直近
4月の消費者物価指数は年率で「43.68%」と依然として高水準です。
2月に起きた大地震の影響もあり失業率は「10%」です。また財政も、貿
易収支も赤字が続き、トルコ経済は浮上のきっかけさえつかめない状態が続
いています。エルドアン氏のこれからの経済立て直しも、これまで通り困難
が待ち受けています。

本日のドル円は139円50銭~141円程度を予想します。


米債務上限問題基本合意に達する 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は続伸。発表されたPCEデータが市場予想を超え米金利も
上昇したことから、ドルは朝方から買われ、140円73銭まで上昇。
◆ユーロドルでもドル高が進み、1.0702まで売られたが、
1.07台はキープ。
◆株式市場は大幅反発。債務上限問題で合意の観測が強まり、リスク
資産が買われた。ダウは328ドル上げ、S&P500も54ポイント
買われ、4200の大台を回復。
◆債券は朝方には続落して始まったがその後買われる。
長期金利は3.79%台に低下。
◆金はほぼ横ばい。原油も小幅ながら反発。

◆4月個人所得                 →  0.4%
◆4月個人支出                 →  0.8%
◆4月PCEデフレータ(前月比)        →  0.4%
◆4月PCEデフレータ(前年比)        →  4.4%  
◆4月PCEコアデフレータ(前月比)      →  0.4%   
◆4月PCEコアデフレータ(前年比)      →  4.7%
◆4月耐久財受注                →  1.1%
◆5月ミシガン大学消費者マインド(確定値)   →  59.2

本日の注目イベント

◆日  3月景気一致指数
◆日  3月景気先行指数(CI)(改定値)
◆英   休場(バンクホリデー)
◆米   休場(メモリアルデー)


米債務上限問題を巡っては、先週末金曜日のコメントで、「交渉が今週末に合意し、
来週にも議会の承認を経てぎりぎり6月1日にはバイデン大統領が署名を行い、な
んとか最悪の事態を回避するのではないかと、個人的には予想していますが、どう
でしょう」と書きましたが、ほぼ予想通りの展開でした。
マッカーシー下院議長はメディアに向けて、「 After few weeks negotiation ,we
have come to the agreement in principal」(基本合意に達した)と述べ、31
日には議会で採決され、その後バイデン大統領の署名が行われる見通しです。

ただ、合意は「妥協の産物」で、両者とも晴れ晴れとした姿勢を見せてはいません
。結局、「デフォルトを避ける」ことを最優先した格好で、バイデン大統領も、(
合意したが)「誰もが望むわけではないことを意味する」と、奥歯に物の挟まった
言い方で、「妥協」であったことを認めた格好です。
低所得層向けの支援策では、支給要件を厳しくする共和党の要求に、民主党から反
発があったとブルームバーグは報じています。
マッカーシー下院議長も28日、FOXテレビの番組で、「皆が全てにおいて満足
しているわけではないだろうが、正しい方向への一歩だ」と発言し、民主党議員の
一部に加えて、「共和党議員の過半数がこの法案に賛成票を投じると思う」と話し
ています。
基本合意に達する前には、早ければ6月1日とされていた「Xデー」は、資金繰り
の観点から6月5日まで延期されたようですが、これでようやく「米債務上限問題
」は落ち着きます。
現行の債務上限額を超えても、2025年までの2年間は、時限措置として法案に
盛り込まれるようです。従って、来年はこの「年中行事」も見られないかもしれま
せん。

ドル円は、それでも先週の流れを引き継ぎ、週明け早朝には140円86銭前後ま
で買われ、ドル高の流れが続いています。
先週は、債務上限問題の不透明さから株式と債券が売られ、金利上昇に伴ってドル
円はほぼ一貫して買われました。
「基本合意」したということで、今週はその逆の動きが想定されますが、今のとこ
ろその気配は感じられません。
今日は米国が「メモリアルデー」のため、NY市場は休場ですが、焦点は米債券市
場が明日、どのような反応を見せるのかという点です。教科書的に考えれば株と債
券が買われ、金利低下に伴ってドルが売られ易いとみます。。今日の日経平均株価
も大幅高になると予想していますが、一方で、株高は「リスクオン」につながり、
低金利の円が売られ易い面も意識しないといけないのかもしれません。

底堅い動きを見せているドル円の、この上方のターゲットは、昨年11月に付けた
141円台半ばから142円台前半ということになります。
円はドル以外の主要通貨に対しても売られており、円全面安の展開がさらに続くよ
うだと、貿易収支の赤字幅拡大につながり、それがドル需要を増加させ、さらに円
安が進むといった、昨年と同様な「悪循環」に陥る可能性もなくはありません。
いずれにしても明日の米債券市場を見極めたいと思います。

本日のドル円は139円80銭~141円50銭程度を予想します。


ドル円140円台を回復 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は続伸し、およそ半年ぶりに140円台に乗せる。
GDP改定値が上振れるなど、インフレ鎮静化に歯止めがかからない指標
が出たことや、米金利がさらに上昇したことを受け、140円23銭まで
「ドル高円安」が進む。
◆ユーロドルでもドルが買われ、一時1.0708まで売られ、
およそ2カ月ぶりの安値に。
◆株式市場はエヌビディアが急伸し、ハイテク株をけん引。ナスダックは
213ポイント上昇。一方ダウは小幅ながら5日続落とまちまち。
◆債券は続落し、長期金利は3.81%台に上昇。
◆金はドル高を受け4日続落。原油も「OPECプラス」が追加減産には
否定的との報道から大きく下げ71ドル台に。
*******************(何もない時は空欄のままにします)

◆新規失業保険申請件数      →  22.9万件
◆7-9月GDP(改定値)    →  1.3%
◆4月中古住宅販売成約件数    →  0.0%


本日の注目イベント

◆豪   豪4月小売売上高
◆日  5月東京都区部消費者物価指数
◆英   英4月小売売上高
◆米   4月個人所得
◆米   4月個人支出
◆米 4月PCEデフレータ(前月比)
◆米 4月PCEデフレータ(前年比)    
◆米 4月PCEコアデフレータ(前月比)
◆米 4月PCEコアデフレータ(前年比)
◆米   4月耐久財受注
◆米   5月ミシガン大学消費者マインド(確定値)

ドル円は先週から「一歩後退、二歩前進」の動きを見せ、昨日のNYでは
およそ半年ぶりとなる140円台に乗せ、一時は140円23銭までドル
高が進みました。ドル高が進む一方、まだしばらく金融緩和が継続される
とみられる円は、ドル以外の主要通貨に対しても売られ「最弱通貨」の位
置に追い込まれています。

米1-3月期のGDP改定値が速報値の「1.1%」から「1.3%」に
上方修正され、リセッション入りと見られている米景気が底堅い動きを見
せていることで、インフレの鈍化には逆風となっており、6月会合では0
.25ポイントの利上げを徐々に織り込む形となり、ドルを押し上げる格
好になっています。
ただ、国内総所得(GDI)は「2.3%」減少し、2四半期連続でマイ
ナスを記録しています。
ボストン連銀のコリンズ総裁は、「インフレ率はまだ高過ぎるが、緩和を
示す有望な兆候もいくつかある」と講演で述べ、「われわれは利上げを一
時停止できる地点、あるいはその近くにいるのではないかと考える」とハ
ト派寄りの発言を行いましたが、ドル高傾向が支配的な市場にはほとんど
影響はなかったようです。

債務上限問題は残された時間が刻々失われていく中、依然として合意には
至っていません。
与野党の相違点も明らかになり、合意に近づいているのは確かかと思われ
ますが、マッカーシー下院議長は、「ある程度は進展があったと思うが、
未解決の問題がある。この問題を解決するため、われわれのチームには2
4時間体制で働くよう指示した」と述べ、その上で、「最終的に全員がハ
ッピーになるとは思わない。それが現在、このシステムの仕組みだ」と述
べています。一方バイデン大統領は、共和党に対して歳出額の2年凍結案
を提示したとし、「連邦債務上限と歳出を巡り生産的な協議が行われてお
り、交渉は妥結するだろう」と、引き続き楽観的な見方を示しています。
(ブルームバーグ)
共和党の有力議員は、交渉は26日にも合意に達する可能性があると話し
ています。交渉が今週末に合意し、来週にも議会の承認を経てぎりぎり6
月1日にはバイデン大統領が署名を行い、なんとか最悪の事態を回避する
のではないかと、個人的には予想していますが、どうでしょう。

ドル円は約半年ぶりに140円台を回復しました。
昨年10月21日の151円94銭から、今年1月16日の127円22
銭まで下げた下落分(24円72銭)の「半値戻し」を達成したことにな
ります。
米利上げ観測がなかなか消えないことに加え、新たに就任した植田日銀総
裁のYCCの修正局面も、思った以上に後ずれするとの見方からドルが買
われ、圧倒的低金利の円が売られていると考えます。
植田氏は就任前から長期間にわたる大規模緩和継続による「副作用も出て
いる」ことに言及しており、早期に「YCCを含む何らかの修正」に踏み
切るとの観測がありましたが、国会等での発言を聞くと、ややトーンが変
化してきたような印象も受けます。

日経新聞は植田氏とのインタビューの内容を今朝の紙面で明らかにしてい
ます。
総裁は、物価上昇が続き、「国民全員にかなり大きな負担になっている」
との認識を示し、「サービス部門での価格上昇も進んでいる。原料価格が
低下しても、需要面の高まりから物価高が継続する可能性が高い」と述べ
ています。
日本の直近の消費者物価指数(CPI)は総合で「3.5%」、コアコア
では「4.1%」といずれも前月よりも上昇し、再び騰勢傾向を強めてい
ます。
総裁は、それでも現行の大規模緩和政策を止めない理由を「基調適な物価
上昇率はすこしずつ上がってきているのは事実だが、持続的・安定的(な
達成)には届いていない」と語っていました。日銀は、物価上昇率は20
23年後半には2%を下回ると予想しています。
また拙速な金融政策の変更は避けたいとしながらも、「政策の継続、修正
については効果と副作用をみて判断する。(効果と副作用の)バランスに
変化があれば修正はあり得る」とも話しています。
筆者の記憶が正しけば、黒田前総裁は昨年の決定会合後の会見では、「物
価上昇は2023年第2四半期辺りには1.5%程度まで下がる」と述べ
ていたようでしたが、実質金利が大きくマイナスとなっている中、「国民
全員」ではなく、大幅な賃上げも出来ない中小企業で働いている人にとっ
ては、毎月の生活を維持するのは大変なことなのでしょう。

140円台を示現して、やや達成感が出ることで一旦上昇が止まるのか、
あるいは引き続き上値を試す動きになるのか、やはり債務上限問題が気に
なります。

本日のドル円は139円~140円80銭程度を予想します。


ドル円は半年ぶりに139円台半ばへ 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は大幅に続伸し、昨年11月30日以来となる139円48銭まで
ドル高が進む。138円台半ばで取引が始まったが、ウォラー理事のタカ派
発言や米金利の上昇にドル買いが加速。
◆ドル円ではドル高が進んだものの、ユーロドルでは1.07台半ばまで
ドルが買われたが前日とほぼ変わらず。
◆株式市場では3指数が続落。債務上限問題やさらなる利上げ観測が
重荷となり、金融や不動産株が大きく売られる。
◆債券は反落。長期金利は3.74%台まで上昇。
◆金は続落し、原油は続伸し74ドル台に乗せる。


本日の注目イベント

◆トルコ トルコ中銀政策金利発表
◆独   独1-3月期GDP(改定値)
◆独   独6月GFK消費者信頼調査
◆米   新規失業保険申請件数
◆米   7-9月GDP(改定値)
◆米   4月中古住宅販売成約件数
◆米   バーキン・リッチモンド連銀総裁講演
◆米   コリンズ・ボストン連銀総裁講演


債務上限問題を巡り、バイデン政権と下院共和党の担当者による協議が24日
午後、4時間にわたり行われましたが、合意への道筋は描けない状況が続いて
います。マッカーシー下院議長は協議終了後、「合意に達して、それを成し遂
げる時間はあると引き続き考える」と語り、依然として楽観的な見方を示して
います。
またバイデン大統領も、再会談の日程は設定されていないとした上で、「適切
なタイミングで再び会うことになるだろう」と、やや他人事のような発言をし
ています。
ブルームバーグは、「下院議員は5月29日のメモリアルデーを挟んだ休会入
りを前に、25日ワシントンを離れる見通しだが、共和党下院指導部は議員ら
に対して、採決が必要になれば戻ってくることができるよう求めた。また、下
院共和党の保守派はマッカーシー議長に対して、交渉で譲歩しないよう圧力を
強めた」と報じています。
イエレン財務長官も再度警告を発し、「連邦政府の資金が枯渇しつつあり、市
場では現在ストレスの兆候が表れ始めている。バイデン政権が重点を置いてい
るのもデフォルトに陥った場合の対応計画を練ることではなく、債務上限を巡
る交渉で合意をまとめることだ」と述べています。

市場は困惑しており、この日はNY株式市場では3指数が揃って大きく売られ
、債券も売られたことで金利が上昇。ドル円は昨年11月30日以来となる1
39円48銭まで円安が進んでいます。
ドル高が進んだこともありますが、円の弱さが際立っており、背景には植田日
銀総裁が現状の金融政策の維持を、市場関係者が考える以上に「固執」してい
るようにも思えることがあります。YCCの修正時期観測も、そのために後ず
れしており、緩和政策はまだ続くといった見方が優勢となっている状況です。
ドル高に振れた要因はこの日講演で述べたウォラーFRB理事のタカ派発言に
もあったと思われます。
ウォラー理事はカリフォルニア大学サンタバーバラ校のイベントで、「インフ
レが2%目標に向って低下しつつある明確な兆候が得られるまで、利上げを停
止することは支持しない」と発言し、「6月会合で利上げを実施するべきか見
送るべきか向こう3週間に発表されるデータ次第になる」と述べています。
「向こう3週間」には、「5月の雇用統計」と「5月の消費者物価指数」が発
表され、それらの結果次第という意味合いです。

5月2、3日に行われたFOMC議事録が公開され、銀行セクターでのストレ
スが経済に与える影響について高い不確実性がある中、インフレ抑制に向けた
追加利上げの必要性を巡り、メンバーの見解が分かれたことが明らかになりま
した。
同会合では0.25ポイントの利上げを「全会一致」で決めており、これで1
0会合連続での利上げを決めた会合でした。
議事要旨では、「もし経済が現在の当局者見通しに沿って展開するなら、今会
合後のさらなる政策引き締めは必要ないかもしれないと幾人かの参加者は指摘
した」と記されている一方、「一部の参加者は、インフレ率を2%に戻すため
の進展が受け入れがたいほど遅い状態が続く可能性があるとの見通しに基づき
、将来の会合での追加の政策引き締めが正当化される可能性が高いと発言した
」ともありました。
ただ、このことはすでに今月に入って相次いだFOMCメンバーの発言でも明
らかであって、目新しいことではありません。(参照:What’s going on )
アトランタ連銀のポスティック総裁とセントルイス連銀のブラード総裁が、そ
の代表格と言えます。
ただ個人的には、債務上限問題や金融不安が残る中、利上げが正当化されるか
どうかは大きな問題かと思います。前者の問題はそれまでには片付くと思います
が、米地銀の経営不安は、利上げを行い金利上昇が続けば続くほど厳しいものに
なるとみられています。

ドル円はいよいよ140円を視野に入れた展開になってきました。
米金利の想定以上の上昇と、上で述べたように日銀の緩和姿勢が思った以上に
強固なことが挙げられます。
日本の債券市場では長期金利が0.414%前後で推移し、植田氏が総裁にな
る前にあった金利上昇圧力も、もはや見られません。再び日米金利差が拡大し
ている状況です。

本日のドル円は138円~140円程度を予想します。


米債務上限問題、膠着感を増す 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は取り引き開始直後に138円91銭まで買われたが、
その後はじり安の展開。債務上限問題が膠着感を強め、米金利も
低下したことで138円29銭まで下げる。
◆ユーロドルはやや下値を切り下げ、1.0761近辺まで売られる。
◆株式市場は3指数が揃って下落。債務上限問題が依然として不透明である
ことに加え、経済指標が上振れしたことで利上げ継続との観測が重荷に。
◆債券は小幅に反発。長期金利は3.7%を割り込む水準に低下。
◆金は続落し、原油は続伸。

◆4月新築住宅販売件数                  → 68.3万件
◆5月S&Pグローバル製造業PMI(速報値)       →  48.5
◆5月S&Pグローバルサービス業PMI(速報値)     →  55.1
◆5月S&PグローバルコンポジットPMI(速報値)    →  54.5
◆5月リッチモンド連銀製造業景況指数           →  -15

本日の注目イベント

◆独   独5月ifo景況感指数
◆英   英4月消費者物価指数
◆英   ベイリー・BOE総裁講演
◆米   FOMC議事録(5月2-3日分)

バイデン大統領とマッカーシー下院議長との会談は今回も不調に終わり、
合意には至りませんでした。大統領は会談後に、「債務不履行の選択肢が
ないことを下院議長と再確認した。前進するための話し合いを続けていく
」とのコメントを残し、下院議長も、「建設的な話し合いを行った。合意
するまで協議を続ける」と語るなどこれまでと同様、両氏は楽観的な言葉
を発するものの、協議では着地点を見いだせない状況が続いています。会
合に参加したノーマン議員によると、「交渉では双方が合意にはほど遠い
とマッカーシー氏が語った」と話しています。
双方の相違点は、歳出削減を巡り、その規模と内容にあるようです。
大統領は「税制上の抜け穴に対処して、富裕層に応分の負担を求める必要
性がある」とし、この点では議会共和党との間で「意見に相違がある」と
語っています。

市場もこの状況を受け、「万が一にもデフォルトはない」としながらも「
残された時間が少なくなり、リスクを意識しないわけにはいかない」とい
った状況になっており、ストレスも日増しに溜まり、相場の重しになって
います。
イエレン財務長官が警告したように早ければ「Xデー」が6月1日にもあ
るとすれば、
あと8日に迫っています。税収の額や歳出の額によって、「Xデー」がど
こまで延びるか分かりませんが、ぎりぎりまで合意に至らない可能性もあ
ります。
合意したとしても、議会で承認を得たり、大統領の署名を得るまでに数日
はかかると見られており、早期の合意が求められます。
共和党側の交渉担当者であるマクヘンリー下院金融委員長は、「デフォル
ト回避に向けた 
期限は分かっている。双方は誠意をもって取り組んでいるが、難しい問題
を抱えている」と語っています。(ブルームバーグ)

ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁はCNNのインタビューで、「インフ
レが高水準にとどまり、われわれの認識より定着するようになった場合、
政策金利をより長期にわたって高い水準に維持する必要が出て来る。そう
なれば、銀行セクターへの圧力は強まる」と述べています。同総裁は先週
19日には、「ここからはもう少し速度を落としてもいいだろうという考
えを排除しない」と述べていましたが、次回会合で利上げを見合わせたと
しても、入手するデータの強さによっては、その後の会合で一段の利上げ
が必要になる可能性があるとしたようです。
昨日発表された米国5月のPMIは製造業では予想を下回る結果でしたが
、サービス業と総合ではいずれも予想を大きく上回っていました。
また新築住宅販売も事前予想を超えており、景気の底堅さを示唆していま
す。

ドル円は先週18日に記録した138円75銭をわずかですが上回る水準
を付けており、底堅い動きを見せています。
債務上限問題が膠着感を見せる中でも、底堅さを維持していますが、万が
一の際には米国の株と債券が売られるのは確実だと思われ、米金利が上昇
します。
金利高に引き寄せられる形でドル高と見ることもできますが、一方で「リ
スク回避の円買い」の可能性も考えられます。
「米国売り」が意識され、株や債券だけではなく「ドル」も売られるとい
った見立てです。果たしてどうでしょう。
もっとも、筆者は依然として「米国のデフォルトはない」ことを信じ、そ
の見方を維持していますが。

本日のドル円は137円50銭~139円30銭程度を予想します。


バイデン大統領、マッカーシー下院議長と再度会談 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は再び138円台半ばまで反発。債務上限問題が依然
不透明で、米長期金利が上昇したことや、FOMCメンバーの
タカ派発言で138円67銭までドルが買い戻される。
◆ユーロドルは1.08台で推移。その後1.08台を割り込んだ
ものの下げは限定的。
◆株式市場はまちまち。ダウは140ドル下げたものの、ナスダックは
62ポイントの上昇。
◆債券は続落。債務上限問題が大詰めにきているものの、
不透明感から債券価格は下落。長期金利は3.71%台に上昇。
◆金は反落し、原油は小幅に上昇。

本日の注目イベント

◆独   独5月サービス業PMI(速報値)
◆独   独5月総合PMI(速報値)
◆欧   ユーロ圏5月製造業PMI(速報値)
◆欧   ユーロ圏5月サービス業PMI(速報値)
◆欧   ユーロ圏5月総合PMI(速報値)
◆欧   ユーロ圏3月経常収支
◆英   英5月製造業PMI(速報値)
◆英   英5月サービス業PMI(速報値)
◆米   バイデン大統領とマッカーシー下院議長が会談(日本時間23日午前6時半)
◆米   4月新築住宅販売件数
◆米   5月S&Pグローバル製造業PMI(速報値)
◆米   5月S&Pグローバルサービス業PMI(速報値)
◆米   5月S&PグローバルコンポジットPMI(速報値)
◆米   5月リッチモンド連銀製造業景況指数
◆米   ローガン・ダラス連銀総裁、会合で挨拶


当初日本時間昨日の早朝に予定されていたバイデン大統領とマッカーシー
下院議長との会談は、ちょうど本稿執筆時(6時40分)に行われていま
す。依然として協議が行われ、合意するかどうかは不透明ですが、両氏の
会談に先立って、バイデン政権と共和党の交渉担当者が約2時間半にわた
って協議を行っています。マッカーシー議長は、「担当者同士の協議は生
産的だった」と語り、「われわれは引き続き取り組んでいく。合意は今夜
にも、明日にも成立可能だ」と楽観的な見方を示しつつ、「双方はまだ何
も合意していない」と記者団に話しています。(ブルームバーグ)
協議は、残された時間も少ないことから大詰めにきていると思われます。
イエレン財務長官は22日、「財務省が6月初旬に十分な現金を使い切る
公算が大きい。
そのタイミングが早ければ6月1日に到来する可能性がある」とあらため
て警告しています。

FOMCメンバーの発言が花盛りです。今後の金融政策に関して5人のメ
ンバーが発言していますが、意見は分かれていました。
アトランタ連銀総裁のポスティック総裁は、「大きな変化がない限り、現
時点では事態がどう進展するか様子を見ることに違和感はない」と、次回
会合での据え置きを示唆しています。サンフランシスコ連銀のデーリー総
裁は、「与信環境の引き締まりが、2回の利上げに相当し得る」との認識
を示し、利上げは急がないとの立場と思える発言を行っています。
一方ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、「今の段階では、6月会合で
の利上げもしくは利上げ見送りのどちらも判断が際どく、五分五分だ。重
要なのは、われわれの作業は終了したと示唆しないことだと考える」と発
言しています。また、リッチモンド連銀総裁のバーキン総裁は、「政策の
選択肢については予断を持っていない」と語っています。

そして、やはりタカ派の代表格であるセントルイス連銀のブラード総裁は
さすがでした。ブラード氏は、「インフレに十分な下押し圧力を与え、物
価上昇率をタイムリーに目標水準に押し戻すためには、政策金利を引き上
げざるを得なくなるだろうと」と述べ、その上で、「今年はあと2回の行
動を考えている。具体的にいつになるかは分からないが、遅いより早い方
がよいとこれまでにたびたび提唱してきた」と、具体的に2回の利上げ(
Two more move)と発言し、さらに「労働市場が非常に好ましい状況にある
のは、インフレと闘い、目標物価に戻すには非常に都合が良い」と指摘し
ています。
ただこれらメンバーの発言も今後のデータ次第では大きく変化する可能性
はありそうです。
会合は6月13-14日に開かれますが、それまでに6月2日(金)に
は「5月の雇用統計」発表があり、「5月の消費者物価指数(CPI)」
は、ちょうど会合の最中(さなか)の13日(火)に発表されるといった
微妙なタイミングです。会合の結果は14日に公表されることから、5月
のCPIの結果も議論に取り込まれることになります。

137円台まで売られたドル円は、わずか1日で再び元の水準を回復して
います。
タカ派的な発言が効いたとはいえ、米債券が連日売られ長期金利が上昇し
ていることも大きな要因とみられます。債券はこれで今月15日から7営
業日連続で売られ、この間長期金利は3.38%台から3.71%台まで
上昇しドル円を支える構図になっています。ひょっとしたら、債券市場は
いち早く米債務上限問題が合意に至らないことを織り込んでいるといった
、極端な見方もできなくはありませんが、正直ここでは、その様には考え
たくありません。まずは今日の会談の結果を待ちたいと思います。

本日のドル円は137円~139円50銭といったところでしょうか。
会談の結果によっては、大きく動く可能性はありそうです。


米債務上限問題が再び不透明に 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円はNYの朝方には138円76銭まで買われたが、債務上限問題で
再び不透明感が出たことでドルが急落。137円74銭まで売られ、137円台
後半で越週。
◆ユーロドルも朝方は1.0783近辺まで下げたが、その後反発。
1.0828まで買われたが動きは限定的。
◆株式市場は債務上限問題懸念から3指数が揃って反落。
ダウは109ドル下げ、ナスダックは30ポイントの下落。
◆債券は6日続落。長期金利は3.67%台に上昇。
◆金は反発し、原油は続落。

本日の注目イベント

◆欧   ユーロ圏5月消費者信頼感指数
◆米   ブラード・セントルイス連銀総裁講演
◆米   バイデン大統領とマッカーシー下院議長が債務上限問題で会談
◆米   バーキン・リッチモンド連銀総裁とボスティック・アトランタ連銀総裁
     会合で討論会

この週末は「G7広島サミット」一色でした。
ウクライナのゼレンスキー大統領の特別参加もあり、大いに盛り上がった印象
でした。インフレ抑制と世界経済、あるいはグローバル・サウスといた諸問題
もありましたが、結局は「G7がウクライナ支援で結束できるのか」が最大の
テーマだったようです。
ゼレンスキー氏は、近いうちにロシアへの攻勢を仕掛ける計画があるのか、各
国により強力な支援を求める姿勢を強めていました。ゼレンスキー氏が欧州を
歴訪し、さらに中東に飛び、極めてタイトな日程の中、インド、韓国などG7
以外の国々も一堂に会する「HIROSHIMA」まで飛んできたかいがあっ
たのか、支援を取り付けることに成功しています。米国は欧州同盟国による主
力戦闘機「F16」の供与を認め、ウクライナ軍のパイロットの訓練を支援す
ることも発表しました。さらに大砲や弾薬など3億7500万ドル(約520
億円)相当の追加軍事支援を行うことも決めました。ゼレンスキー氏にとって
、サウジアラビアから9000キロも離れている「HIROSHIMA」まで
飛んできた意義は十分あったかと思われます。

今回のG7では各国首脳が若いという印象もありました。フランス、カナダ、
イギリス、イタリアの4カ国首脳は40歳代かと思われます。
いやでもバイデン大統領の「歳」が目立ちましたが、そのバイデン氏にとって
は、サミットも重要でしたが、それ以上に気になっていたのが自国の「債務上
限問題」だったことでしょう。広島での最後の会見も終始その問題に触れてお
り、日本から大統領専用機で帰国する途中にもマッカーシー下院議長と話し合
った模様です。
両氏とも「合意」には引き続き楽観的な見方を示していますが、21日午後6
時(日本時間22日午前7時)には再度協議を行うと発表されています。
イエレン財務長官はNBCの番組で、「税収と歳出については常に不透明性が
伴うものだ。この件で絶対に確実だと言うのは難しいが、私の判断では全ての
支払い能力を維持しながら6月15日を迎える確率は極めて低い」と述べてい
ます。
6月中旬には税収が見込まれることから、「6月15日に入る税収は有意な規
模になる。しかし、同月上旬、私の解釈ではそれより前の日を迎えるのは非常
に厳しいだろう」との見方を示しました。(ブルームバーグ)

先週末、パウエル議長はバーナンキ元議長との討論会に臨み、10会合連続で
引き上げた政策金利に関して、「追加引き締めが適切か、何の決定も下してい
ない」と述べています。
また、「結果的に政策金利をそれほど上げる必要はないかもしれない」と述べ
ながらも「インフレ抑制に失敗すれば(人々の感じる)痛みが長引くだけでな
く、最終的に物価の安定を取り戻すための社会コストがより増えることになる
」とも話しています。
そして、「これまでのところ、インフレ抑制に時間がかかるというFOMCの
見方を支持していると」と結んでいました。(日経新聞)
19日にはFOMCメンバーであるミネアポリス連銀のカシュカリ総裁も発言
を行っており、同総裁は、過去の利上げによる影響とインフレ見通しを見極め
る時間の余裕が生じているとして「ここからはもう少し速度を落としてもいい
だろうという考えを排除しない」と述べ、6月会合では政策金利の据え置きを
支持する可能性を示唆していました。

6月のFOMC会合は13-14日に開催されます。
上述のように、イエレン財務長官は「6月15日の前には」と述べているよう
に、ちょうど会合開催日と重なるタイミングになります。
それまでに「合意」がなされなければ、利上げが見送られる可能性がかなり高
くなると予想しますが、今後のデータにもよると思いますが、筆者は政策金利
据え置きに傾いています。


ドル円年初来高値となる138円台後半に 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は一段と上昇し年初来高値を更新、138円75銭まで
ドル高が進む。債務上限引き上げに採決のメドが見え、リスクオン
から米金利が上昇しドル買いが加速。
◆ユーロドルも続落。1.08台を割り込み、1.0763まで
ユーロ安に。
◆株式市場では3指数が続伸。デフォルトが回避されるとの見方
からナスダックは188ポイント上昇し、昨年4月以来の
高値を記録。
◆債券は5日続落。長期金利は3.64%台に上昇。
◆ドル高が進んだことで金は3日続落。原油も反落。

◆5月フィラデルフィア連銀景況指数      →  -10.4
◆ 新規失業保険申請件数            →  24.2万件
◆4月中古住宅販売件数            →  428万件
◆4月景気先行指標総合指数          →  -0.6%

本日の注目イベント

◆日  4月消費者物価指数
◆日   植田日銀総裁講演(都内)
◆日   G7広島サミット(21日まで)
◆独   独4月生産者物価指数
◆米   パウエル・FRB議長とバーナンキ元FRB議長、ワシントンの会合で討論会に参加
◆米   ウィリアムズ・NY連銀総裁ワシントンの会合で基調講演
◆伯   ECBのラガルド総裁とデコス氏、ブラジル中銀の会議に参加
◆加   カナダ3月小売売上高

ドル円は一段と上昇し、昨日のコメントでも触れた直近3度もテストして抜け
なかった137円70銭~138円の「壁」を上抜けし、138円75銭まで
ドル高が進行しました。やはり「壁」を抜けると勢いが付き、思った以上の上
昇でした。市場では「リスクオン」がさらに強まり、株高、債券安、金利上昇
にサヤ寄せされる格好でドル高が進みました。
ドル高が進んだことで、先週は2055ドル辺りまで買われていた金も195
9ドル台まで下げて取引を終えています。

「リスクオン」がさらに強まった背景は、やはり債務上限問題の好転でした。
マッカーシー下院議長は18日、連邦債務上限を巡る交渉が今週末にも原則合
意に達する可能性があるとした上で、「下院が来週に合意を審議・採決するこ
とを見込んでいる」と述べています。マッカーシー氏は記者団に、「合意の落
としどころが視野に入った」と発言し、「前代未聞の米国デフォルトを回避す
るため、交渉担当者が作成した妥協案について下院で来週採決を行う必要があ
る」との見解を示しました。
またシューマー上院院内総務も、下院通過後に上院が同案を審議する考えを示
しています。
これで予想通り債務上限問題は来週にも「合意」する見込みになりましたが、
米財務省の発表によると、支払いに備えて保有する現金残高は17日時点で6
83億ドル(約9兆4700億円)となり、2021年6月以来となる低水準
にまで減少しています。(ブルームバーグ)

債務上限引き上げの見通しがついたとの見方が債券売りにつながり、ドル円を
押し上げる状況が続いてきましたが、長期金利はこの間、3.38%台から3
.64%台まで上昇し、低金利の円が全面安の展開です。いつの間にか、「米
金融引き締めは終わりに近い」という見方が吹き飛んでしまった格好です。

ダラス連銀のローガン総裁は18日の講演で、「過去10回のFOMC会合全
てでFF金利誘導目標レンジを引き上げてきたことで、われわれは一定の進展
を遂げた。今後数週間に入手するデータで利上げ停止が適切になることが示さ
れる可能性もある。だがきょう現在においては、まだその状況に達していない
」と述べています。またジェファーソンFRB理事は、「金融政策の作用には
長期的かつ変動的な遅れがあり、金利上昇の影響を需要が最大限に受けるのに
1年は十分な期間でないことは歴史が示している」と指摘し、「この先の金融
政策における適切なスタンスを考える上で、今後数週間はあらゆる要素を考慮
するつもりだ」と述べ、両FOMCメンバーはともに、6月会合で利上げを見
送るかどうかは依然不明だとの認識を示しています。
両氏とも会合では投票権を持っています。

ドル円は138円台後半まで買われ、140円をも試しそうな勢いです。
やはり4月28日に「三角保ち合い」(さんかくもちあい)を上抜けしたこと
が、テクニカル的は一つのきっかけであったように思います。
これで債務上限問題は「ある程度消化した」と思われますが、この先も「リス
クオン」が続くのかどうかが焦点です。

本日のドル円は137円50銭~139円30銭程度を予想します。


米、デフォルト回避の可能性高まる 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は続伸。米国がデフォルトに陥る可能性が後退
したとの見方からリスクオンが強まり、ドル円は137円72銭まで
上昇。5月2日に付けた直近高値に迫る。
◆ユーロドルでもドル高が進み、ユーロはおよそ1カ月半ぶりに
1.0811まで売られる。
◆株式市場は3指数が揃って大幅に上昇。債務上限問題で与野党が
合意に達するとの見方が強まったことで、ダウは408ドル、S&P
500は48ポイントの上昇。
◆債券は続落。長期金利は3.56%台に上昇。
◆金は続落し、原油は大きく反発。

◆4月住宅着工件数    →  140.1万件
◆4月建設許可件数    →  141.6万件

本日の注目イベント

◆豪   豪4月雇用統計
◆日   4月貿易統計
◆欧   ECB経済報告
◆英   英正副総裁、量的引き締めを巡り証言
◆米   5月フィラデルフィア連銀景況指数
◆米   新規失業保険申請件数
◆米   4月中古住宅販売件数
◆米   4月景気先行指標総合指数
◆米   ジェファーソン・FRB理事講演
◆米   バー・FRB副議長、上院で証言
◆米   ローガン・ダラス連銀総裁講演



債務上限問題を巡り、バイデン大統領が「デフォルトの回避に確信がある」と
語り、マッカーシー下院議長も「今週中の解決は実行可能」と発言したことを
受け、株式市場では株価が大きく上昇。ただ予想と異なったのが、リスクオン
が強まり、債券が売られたことで金利が上昇し、ドル円は137円台を大きく
超えてきたことでした。5月2日に記録した直近高値を試す展開になっていま
す。
債務上限問題では上限引き上げで「合意」するとは予想していましたが、両氏
の発言でリスクオンが一気に進み、低金利の円が売られた格好です。予想とは
異なり、失礼しました。

バイデン大統領は日本に向け出発する前にホワイトハウスで記者団に、「予算
を巡って合意に達し、米国はデフォルトを回避すると私は確信している」と述
べています。
また。マッカーシー下院議長も17日CNBCのインタビューで、「最終的に
米国がデフォルトに陥ることはない」と語り、「債務上限問題を巡る交渉担当
者の数を絞ったことは有益だった」とした上で、「この問題で合意をまとめら
れると確信している」と述べています。
まだ正式な合意には至っていませんが、両者の歩み寄りが見られたことで、市
場には楽観的な見方が広がっています。
また、この日は米地銀のウエスタン・アライアンス・バンコープの預金が前四
半期末から20億ドル(約2740億円)余り増えたことが好感され銀行の信
用不安が後退し、リスクオンがさらに強まったようです。
NY株式市場では銀行株が大幅に上昇しています。
ただブルームバーグは、「米政府が支払いに備え保有する現金残高は、15日
に過去1カ月余りで最も少なくなったが、16日は若干回復した。連邦債務上
限の引き上げか適用停止で合意が成立しなければ、6月初めまで支払義務履行
の資金が尽きる危険は消えていない」と報じています。

先週末には133円台後半まで売られたドル円ですが、底堅い動きを見せ、こ
れで三度137円台後半を試す展開になってきました。3月8日の137円9
2銭、5月2日の137円78銭、そして今回の137円72銭です。
137円70銭~138円が壁になっていると見ることもできますが、一方で
この水準を上抜けすることができれば、昨年12月の138円台前半が次のタ
ーゲットになり、一歩140円に近づくことにもなります。
日米株価の上昇はリスクオンにつながり、低金利の円が売られ易い傾向があり
ます。その意味では昨日、日経平均が1年8カ月ぶりに3万円の大台を回復し
、今日もNY株の大幅高を受け、日経先物は大きく買われています。日経平均
株価は大幅高を演じそうです。

本日のドル円は137円~139円程度を予想します。


米債務上限問題進展なし 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は小売売上高発表直後に135円68銭まで売られたが
その後は反発。米長期金利が上昇したことを受け136円69銭まで
ドルが買い戻される。
◆ユーロドルは小動きの中、1.08台半ばから後半で推移。
◆株式市場は再び3指数が売られる。債務上限問題に進展が見られない
ことや、小売売上高が予想を下回ったことで売りが優勢に。
特にダウの下げがきつく、336ドルの下落。
◆債券は3日続落。長期金利は3.53%台に上昇。
◆金は大幅に下げ2000ドルを割り込む。原油も小幅に反落。

◆4月小売売上高          →  0.4%
◆4月鉱工業生産          →  0.5%
◆4月設備稼働率          →  79.7%
◆5月NAHB住宅市場指数     →  50

本日の注目イベント

◆日   1-3月GDP(速報値)
◆日   3月鉱工業生産(確定値)
◆欧   ユーロ圏4月消費者物価指数(改定値)
◆米   4月住宅着工件数
◆米   4月建設許可件数

米債務上限問題を巡り、バイデン大統領はマッカーシー下院議長ら議会指導者
と今月2回目となる会談を行いましたが、依然として「合意」には至っていま
せん。
会談後マッカーシー下院議長は、「やるべきことは多い。今週末までに合意に
至ることは可能だ。合意に至るのはそれほど難しいことではない」と話す一方
で、「合意にはほど遠い」と語ったとも報じられています。
バイデン大統領は「わが国は過去デフォルトを経験したことはなく、今後も決
してない」と、会談後に話しています。
協議は今後も続けられる見通しですが、バイデン大統領は17日に日本に向け
出発するものの、「G7広島サミット」閉幕後の21日には、出席を予定して
いたオーストラリアとパプアニューギニア訪問を取りやめ米国に戻り、債務上
限問題を巡る協議に臨むとブルームバーグは伝えています。筆者も含めて多く
の市場関係者は、債務上限問題では「最後には合意する」と、楽観的な見方を
維持していますが、時間が限られている中、最悪の事態も頭をよぎります。
イエレン財務長官は16日、上限引き上げで妥協できず経済的大惨事に見舞わ
れる事態を回避するための「時間は失われつつある」と再度警告を発していま
す。

FOMCメンバーの発言が昨日も相次いでいます。
タカ派寄りで知られているクリーブランド連銀のメスター総裁はダブリンで行
われた講演で、「金融政策は経済の長期的な成長率に影響を与えることはでき
ないが、経済を物価安定の状態に戻すことで役割を果たすことは可能であり、
それは労働市場や金融システム、経済全体のより長期的な健全性のために必要
だ」と述べ、タカ派色は見せていませんでした。
リッチモンド連銀のバーキン総裁はややタカ派寄りの発言で、「インフレ鎮静
化に成功したとの証はまだ得ていない」とし、「さらなる利上げが必要であれ
ば、そうすることに異論はない」と述べています。ともに米債務上限問題には
触れていません。

ホワイトハウスでの協議はこのまま「合意」に至らないことはないと思います
が、6月1日が「Xデー」とすれば残された時間はあと2週間です。
このまま「Xデー」に近づくようだと、株と債券が売られ、金が買われると予
想されます。その際、「リスク回避の円買い」が進むかどうかは微妙です。債
券が売られることによって米金利が上昇し、そちらの方に引っ張られる可能性
があるからです。昨日までの動きは、そちらの方向で動いており、債務上限問
題が進展しない中、「リスク回避の円買い」はなりを潜める形でドル高が進ん
でいます。
ということは、もし「合意」に達することになれば、株と債券が買われ、金利
低下に伴いドルが売られる事態も想定されます。少なくとも、頭の片隅にはそ
ういった事態もインプットしておく構えは必要かと思います。

ドル円は136円69銭まで買われましたが、この所の傾向はNYでは米金利
の上昇に一段高となりますが、東京時間では小動きの中でも上値が重い展開が
続いています。
日経平均株価が予想外の上昇を見せており、「やや米国離れ」をして「独り立
ち」の気配があります。今日にも3万円の大台を達成する可能性がありそうで
すが、その割には「リスクオンの円売り」が顕著に見られる状況にはなってい
ません。
「米国では急激な利上げがある一方、日本は金融緩和継続」、当然と言えば当
然の動きと捉えています。

本日のドル円は135円30銭~137円程度を予想します。


トルコ大統領選、決選投票不可避か 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は続伸し、136円台前半まで上昇。債務上限問題に
楽観的な見方が出た上、米長期金利が上昇したことで、
136円23銭までドル高が進む。ロンドン市場では136円
33銭まで上昇する場面も。
◆ユーロドルは小幅に反発したが、1.09台には届かず。
◆株式市場は小幅ながら3指数が揃って上昇。ダウは6日ぶりに
反発し47ドル高。
◆債券は続落。長期金利は3.50%台に上昇。
◆金と原油はともに反発。

◆5月NY連銀製造業景況指数    →  -31.8

本日の注目イベント

◆豪   豪5月ウエストパック消費者信頼感指数
◆豪   RBA議事録
◆中   中国4月小売売上高
◆中   中国4月鉱工業生産
◆独   独5月ZEW景気期待指数
◆欧   ユーロ圏1-3月期GDP(改定値)
◆欧   ユーロ圏3月貿易収支
◆英   英ILO失業率(1-3月)
◆英   メスター・クリーブランド連銀総裁、ダブリンで講演
◆英   英4月失業率
◆米   4月小売売上高
◆米   4月鉱工業生産
◆米   4月設備稼働率
◆米   5月NAHB住宅市場指数
◆米   ボスティック・アトランタ連銀総裁、グールズビー・シカゴ連銀総、会合で公開討論
◆米   ウィリアムズ・NY連銀総裁、イベントで公開討論

14日開票の「トルコ大統領選」では開票率99%の段階で、再選を目指すエルドアン大
統領の得票率が49.4%と、50%には届いていません。過半数の票を獲得する候補者
がいなければ、今月28日に上位2人による決選投票が行われることになります。
国営アナドル通信によると、主要野党統一候補のクルチダルオール候補の得票率は45.
6%と接戦となっていましたが、いずれの候補も過半数には届いていないようです
エルドアン氏はアンカラで演説し、自分がクルチダルオール氏を大差でリードしていると
主張し、決選投票になるかどうかは不透明だと述べています。
大統領として20年トルコに君臨してきたエルドアン氏ですが、長期政権に対する批判の
声も多く、高インフレが続く中、利上げを行ってきたことで通貨リラは下落の一途。通貨
安が再びインフレにつながるという「悪循環」が続いていることも国民の信頼を失ってい
ます。また度々、自分の意に沿わない中銀総裁を更迭するなど、その強権ぶりも世界から
批判の声が出ています。さらに今年2月の大地震への対応が不十分だったことも人気凋落
に拍車をかけており、支持率が伸びない理由になっているようです。
エルドアン氏の勝利が決まらず、決選投票になるとの観測から、トルコリラは荒っぽい動
きとなり、一時は6円台前半まで下げる場面もありました。

NY株式市場では、久しぶりに主要3指数が揃って上昇しました。
債務上限問題を巡る観測がやや好転していることが背景ですが、「合意」できるとするバ
イデン大統領に対してマッカーシー下院議長は「われわれは結論到達に程遠い」と語り、
スタッフレベルの協議は「全く生産的にはなく、まだ何事についても合意に達していない
」と述べるなど、バイデン氏とは認識を異にしています。
バイデン氏は明日17日には「G7広島サミット」に向け出発する予定になっています。
2週間前にも警告を発しているイエレン財務長官は15日にも議会指導者に書簡を宛てて
おり、その中で、「議会が6月初めまでに債務上限を引き上げるか適用を停止する措置を
講じなければ、財務省が政府の支払い義務全てを履行することができなくなる公算が大き
いと、引き続き予側される。早ければ6月1日の可能性もある」と伝えています。(ブル
ームバーグ)
政治的なかけひきもある中、本日バイデン氏とマッカーシー氏が再度会談する予定です。
果たして「合意」に達すのかどうか注目されます。

米インフレに対するFOMCメンバーの発言が相次いでいますが、今後の利上げに対する
認識に違いがあることも明らかになっています。
アトランタ連銀のポスティック総裁はCNBCのインタビューで、「2024年に入って
しばらくするまでわれわれが実際に利下げを検討することはない、というのが私の基本シ
ナリオだ」とし、「インフレ指標の大半は、依然とし当局目標の2倍だ。つまり、残され
た道のりはまだ長いということだ」と述べています。また、ミネアポリス連銀のカシュカ
リ総裁もイベントで、「労働市場は依然として過熱状態にあり、あまり軟化していない。
つまり、インフレ鈍化にはまだ長い道のりが残されているということだ。インフレ鈍化の
ため、われわれ金融当局としてなすべき仕事が恐らくさらにあるだろう」と、ポスティッ
ク総裁と同じような見解を示しています。
一方、シカゴ連銀のグールズビー総裁はややハト派的な発言を行い「これまでの急速利上
げによる影響の多くが、いまだ経済に浸透しつつあるところだ」と述べ、「FOMCは次
の一手を判断する上で注意が必要になる」との見解を示しています。「6月13-14日
に開かれるFOMCで当局者がどうすべきか述べるのは時期尚早だ」としつつ、5月会合
で利上げを支持した自身の判断は、「銀行セクターで起きている混乱を考え、五分五分だ
った」とも述べています。(ブルームバーグ)

本日もFOMCメンバーによる発言の機会が幾つかあります。
政策当局者の発言と債務上限問題に進展があるかどうか、さらには個人消費の動向を見る
上で「小売売上高」にも注目です。

本日のドル円は135-137円程度のレンジを予想します。


ミシガン大学消費者マインドは悪化し、インフレ期待は上昇 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆前日133円台後半まで売られたドル円は急反発。
ミシガン大学消費者マインドで長期期待インフレ率が
12年ぶりの高さだったことがドル買いにつながる。
ドル円は135円76銭まで上昇。
◆ユーロドルでもドル高の流れが続く。ユーロは一時
1.0848まで売られ、約1カ月ぶりの安値に。
◆株式市場は3指数が揃って続落。債務上限問題に進展が
見られず、米景気はすでにリセッション入りしているとの
観測も重荷に。
◆債券は反落。長期金利は3.46%台に上昇。
◆金と原油はともに3日続落。

◆4月輸入物価指数              →  0.4%
◆4月輸出物価指数              →  0.2%
◆5月ミシガン大学消費者マインド(速報値)  →  57.

本日の注目イベント

◆欧   ユーロ圏3月鉱工業生産
◆欧   欧州委員会春季経済予測
◆米   5月NY連銀製造業景況指数
◆米   ボスティック・アトランタ連銀総裁、金融市場関連会合の冒頭で挨拶
◆米   カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁講演
◆加   カナダ4月住宅着工件数



ドル円は11日の133円台後半を底値に急反発。東京時間からジリ高が続き、
NYでは5月のミシガン大学消費者マインド速報値で、5-10年先のインフレ
期待が「3.2%」と、12年ぶりの高水準だったことで、ドル買いが加速しま
した。
景気が後退する中、インフレが加速することで「スタグフレーション」に陥るリ
スクも意識されドルが買われた一方、株と債券は売られています。

米債務上限問題を巡っては目立った進展は見られないものの、バイデン大統領は
「まだヤマ場には差しかかっていないが、われわれ全員がなし得る幾つかの変更
について真の議論が行われている。しかし、まだそこまでは到達していない」と
述べています。前FRB副議長で、米国家経済会議(NEC)のブレイナード委
員長も14日、デフォルトを回避するためバイデン政権のスタッフとマッカーシ
ー下院議長の側近らとの話し合いは継続的に行われているとした上で、「その関
与は真剣で建設的なものと位置付けている。(デフォルトになれば)自動車や住
宅ローン、中小企業やさらには連邦政府の借り入れコストの上昇につながるため
、最も重要なことは議会がデフォルト回避の基本的な責任を果たすことだ」と、
CBSの番組で語っています。
イエレン財務長官は新潟市の会見で、「連邦政府の債務に関してデフォルトにど
の程度近づいているのか、2週間以内に米議会に最新情報を提供する」と話して
いましたが、米財務省は12日に、連邦政府債務上限到達後も支払い履行など、
資金をやりくりしてきた「特別措置」について、今月10日時点であと880億
ドル(約11兆9400億円)しか残されていないことを明らかにしています。
(ブルームバーグ)
同資金は1週間前の1100億ドルから減少しており、6月1日には「Xデー」
が到来するとも言われています。今週19日から開催される「G7広島サミット
」への参加が懸念されていたバイデン大統領は、「17日に米国を出発しサミッ
トに参加する」と、ホワイトハウスは発表しています。
明日にはマッカーシー下院議長との会談を行い、ある程度の妥協をする中で「合
意」を取り付ける目算があるのかもしれません。

ジェファーソンFRB理事は講演で、「3月に予想に反して下落した中古車価格
を除いては、コア物価のディスインフレは想定よりも緩やかなペースで起きてい
る。金融政策は経済とインフレに長期かつ様々な時間差を伴って影響を与えるも
ので、われわれの急速な引き締めの十分な効果は依然としてこれから表れる公算
が大きい」と語っています。
ジェファーソン理事はこの講演で数時間前に、バイデン大統からFRB副議長に
指名されています。また、同理事の後任には経済学者のアドリアナ・クーグラー
氏が理事に指名され、議会の承認を得れば、FRB109年の歴史の中で初のラ
テン系政策担当者になると紹介されています。
クーグラー氏はUCバークリーで経済学の学位を取得し、ジョージタウン大学な
どで教鞭をとった53歳の経済学者です。
これで、FRB7人の執行部のうちボウマン理事、クック理事に次ぎ3人目の女
性幹部ということになります。

米経済のリセッション入りが意識されています。
1-3月期決算が終盤を迎える中、ブルームバーグによると、S&P500を構
成する企業の利益は平均で前年同期比3.7%減少したとされています。
78%の企業が市場予想を上回ったものの、決算発表前にアナリストが予想を下
方修正していたことを踏まえると、実際にはそれほど良好な決算ではないとし、
さらに2四半期連続で米企業の業績が悪化したことが、極めて重要な点だと指摘
しています。
その上で、「米経済がリセッションの瀬戸際になる中、ウォール街がすでに、過
去7年間で最も長期化する恐れのある企業収益の悪化に直面している」と報じて
います。

ドル円は依然として133-137円のレンジ相場が続いています。
135円台後半まで上昇したことから再びチャート上では買い方有利の形状に戻
っています。16日はバイデン大統領とマッカーシー下院議長との会談が再び行
われるようです。筆者は、債務上限引き上げで「合意」する可能性が高いとみて
いますが、そうなると株と債券が買われ、金利低下にともなってドル円は下落す
る公算が高いようにも思えます。

本日のドル円は135円~137円程度を予想します。


米4月のPPIは2.3%に低下 

ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場


  • ドル円は続落し、一時133円74銭を付ける。米4月のPPIが予想を下回ったことで米金利が低下し、ドル売りが強まった。

  • ユーロドルも下落し、約1カ月ぶりに1.09前後まで売られる。ユーロ円も146円台前半まで下げる。

  • BOEは政策金利を0.25ポイント引き上げ、4.50%にすることを決定。ポンド円は169円台半ばから材料出尽くしから1円以上の下落。

  • 株式市場では景気減速懸念からダウが4日続落。一方ナスダックは金利低下を好感し続伸。

  • 債券は続伸し、長期金利は3.38%台に低下し。約2カ月ぶりの低水準を記録。

  • 金と原油は揃って続落。

本日の注目イベント

  • 英 1-3月期GDP
  • 英 3月鉱工業生産
  • 米 4月輸入物価指数
  • 米 4月輸出物価指数
  • 米 5月ミシガン大学消費者マインド(速報値)
  • 米 ジェファーソン・FRB理事とセントルイス連銀総裁、パネル討論会に参加
  • 米 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁講演

米4月の生産者物価指数(PPI)は、CPIと同様に市場予想を下回っていました。総合PPIは前年同月比で「2.3%」と、2021年初旬以来の低い伸びとなり、市場予想の「2.5%」を下回る結果でした。またコアPPIも「3.2%」と、市場予想を下回っています。この発表を受け、債券が買われ長期金利は3月7日以来となる3.38%台に低下し、ドル円は金利低下に反応し133円74銭まで売られました。GW直前には137円78銭までドル高円安が進み、140円も試すのではないかとの見方も出ていましたが、結局そこを頂点に下落が続き、「元の鞘」に戻った格好です。テクニカル的にも「三角保ち合い」(さんかくもちあい)を上抜けしたことで、損切りのドル買いも巻き込み急騰した面もあったと思われますが、昨日の動きは「円全面高」の様相となり、GW前とは状況が一変しています。PPIの低下を受け、NY株式市場では景気減速念からダウが大きく売られましたが、金利低下を好感したナスダック指数は上昇しています。WTI原油価格も景気減速懸念を手掛かりに70ドル台まで下げてきました。

新規失業保険申請件数が先週から2万2000件増え、2021年10月以来となる26.4万件に増加しています。また失業保険の「継続受給者数」も、181万3000人と、1万2000人増えており、好調な労働市場にも減速の兆しがうかがえる結果が示されています。ここ数ケ月の失業保険申請件数は増加傾向にあり、ハイテクや銀行などホワイトカラーの職種で始まったレイオフは、経済全体で企業に影響を与え始めているようです。「1年余りに及ぶ利上げと信用状況のタイト化が経済を圧迫し続けており、今後も人員削減は続く可能性がある」(ブルームバーグ)ようです。同指数は今後の雇用統計を予測する上でも重要です。

来日中のイエレン財務長官は11日新潟市で記者会見を行い、米債務上限問題に関して、「政府がデフォルトを回避できない場合には、世界的な景気下降を招くだけではなく、米国のグローバル経済のリーダーシップを損ない、国家安全保障の利益を守る政府の能力にも懸念が生じかねない」と警告していました。またロシアに対する制裁にも言及し、「一連の制裁には効果があるため、ロシアはそれを回避しようとしている。今年は制裁逃れを目指すロシアの企てを阻止する追加的な行動こそ、われわれの戦略の主要な柱になる」と訴えていました。財務長官としては、結構アグレッシブな発言だったと受け止めています。イエレン氏については、氏がまだサンフランシスコ連銀総裁であった頃からその言動には注目してきましたが、FRB議長、そして財務長官とキャリアを重ねてきましたが、長官に就任して以降の発言は金融にとどまらず、積極的な発言が目立つようになったと感じています。昨日のロシアに関する発言は、バイデン大統領の言葉やブリンケン国務長官の言葉かと思えるほどの発言でした。既に経済学者の域を超えているものと思われ、個人的には同氏のさらなる飛躍を願っています。バイデン大統領とマッカーシー下院議長との債務上限問題を巡る会談は本日12日にも予定されていましたが、延期されたようです。ただスタッフによる交渉は続いており、合意に向けてはより生産的と見られています。民主党のシューマー上院院内総務も交渉は「進展している」との認識を示しています。バイデン氏とマッカーシー氏との会談は来週早々にも再開される見通しですが、合意に時間がかかるようだと、バイデン氏は19日から始まる「G7広島サミット」を欠席することになりますが、その場合でもリモートでの参加があり得るようです。

サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は10日、11日の2日間にわたりオーストリアのウイーンで、中国外交のトップである王毅氏と会談したと報じられています。両氏の会談は事前に公表されてはいませんでしたが、ホワイトハウスは「意義深く建設的だった」と評価し、中国国営新華社通信も「開かれた意思伝達チャネルを維持し、責任ある形で競争を管理する継続的取り組みの一環」と報道し、「率直で踏み込んだ、意義深く建設的だった」と論じています。今回の会談が、バイデン大統領と習近平主席の首脳会談につながる期待もあるようです。

ドル円はジリジリと下値を切り下げてきましたが、重要なレベルは昨日も触れたように、132円台半ばとみています。米経済のリセッション入りの可能性、あるいは米地銀パックウエスト・バンココープなど新たな金融不安、またこの局面ではないとは思いますが、日銀によるYCC修正への行動といったように、外部環境的には円高材料が多く残っています。今すぐにドルが大きく売られることはないとしても、上記いずれかのきっかけで円買いが加速する可能性は残っていると思われることから、まだドル円が下がるリスクがあるとの見方は維持しています。

本日のドル円は133円50銭~135円30銭程度を予想します。
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米金融当局の引き締め政策が終盤を迎えているとの観測がにわかに盛り上がってはいますが、仮に利上げが打ち止めになったとしても、米経済がソフトランディングできるかどうかは依然不透明です。
米経済がハードランディングするとの根拠に、「債務上限問題」や「金融不安」がありますが、これに加えて最近は「気象条件」をその根拠とする見方も出てきました。
米海洋大気局(NOAA)は5-7月に異常気象が生じる確率を62%とし、秋までには80%に上昇すると推計しています。そのようなシナリオでは、カリフォルニア州と南部は暴風雨と洪水に見舞われ、食料とエネルギー生産に甚大な影響が出ます。
世界的にはアジアの一部で干ばつ、南米とアフリカで豪雨が発生し、作物の収穫に大打撃が起きるという見方です。
穀物とエネルギー価格が上昇し、インフレが再燃するといった見立てのようです。
今年は、自然現象までもが、パウエル議長の前に立ち塞がるかもしれません。
議長にとって、今年の残り半年が正念場となります。

良い週末を・・・・・。

米4月のCPIは4.9%に低下 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆東京時間夕方には135円47銭まで買われたドル円は
米CPIを受け急落。総合CPIが予想を下回ったことで
134円12銭前後までドル安に。
◆ユーロドルは1.10台を回復。米金利の低下もあり、ドル売り
が優勢な中、1.1007までユーロ高が進む。
◆株式市場はCPIの発表後上昇したが、米債務上限問題が足かせ
となり、ダウは続落。ナスダックとS&P500は反発。
◆債券価格はCPIの低下を好感し上昇。長期金利は3.44%台へと低下。
◆金は3日ぶりに反落。原油も4日ぶりに下げる。


◆4月消費者物価指数     →  4.9%(前年同月比)
◆4月財政収支        →  176.2b

本日の注目イベント

◆日   3月国際収支・貿易収支
◆日  4月景気ウオッチャー調査
◆日   日銀金融政策決定会合における主な意見(4月27、28日分)
◆日   G7財務相・中央銀行総裁会議(13日まで、新潟市)
◆日   イエレン財務長官、記者会見
◆中   中国4月消費者物価指数
◆中   中国4月生産者物価指数
◆中東  OPEC月報
◆英   英1-3月期GDP(速報値)
◆英   英3月鉱工業生産
◆英   英3月貿易収支
◆英   BOE金融政策発表
◆英   BOE金融政策委員会(MPC)議事録
◆米   新規失業保険申請件数
◆米   4月生産者物価指数
◆米   ウォラー・FRB理事講演



今後のFRBの政策スタンスを予想する上で極めて重要な指標である「米4月
のCPI」は、前月比では総合CPIが「-0.4%」と市場予想と一致しま
したが、前年同月比では「4.9%」と、市場予想の「5.0%」を下回る結
果でした。わずか「0.1ポイントの差」でしたが、発表直後ドル円は大きく
売られ、市場は債券高、株高で反応しました。
総合CPIは約2年ぶりに「5%」を切り、コア指数も若干ですが、鈍化して
います。
米金融当局が注視する狭義のサービス価格は、前月比での上昇率がもっと顕
著に減速し、2022年半ば以来の低い伸びでした。

予想を下回るCPIの結果を受け、6月会合での政策金利据え置きの可能性は
高まったと思われます。この先、「PCEデータ」や「5月の雇用統計」など
、政策決定に影響を与える指標発表もありますが、昨日のコメントでも述べた
ように、金融市場を取り巻く外部環境が極めて悪いことを考慮すれば、「利上
げ見送り」の可能性は一段と高まったと予想しています。パウエル議長にとっ
ては、「ホット」一息つけた1日であったことでしょう。
インフレ退治に全力を傾注し続けてきたパウエル議長にとって、シリコンバレ
ー銀行など、米地銀3行の破綻は想定外のことでした。しかし、信用収縮など
の影響はありましたが大事には至らず、これまで乗り越えてきました。「一難
去ってまた一難」・・・。今度は「債務上限問題」が浮上してきました。

バイデン大統領はホワイトハウスでマッカーシー下院議長と会談し、着地点を
模索しましたが、結局進展はなく物別れに終わっています。
マッカーシー下院議長は、債務上限を引き上げると同時に財政改善に向けた歳出
削減を求めているようですが、バイデン政権はその主張を受け入れないようで
す。
ただ、早ければ6月1日にも政府資金が底をつく可能性もあり、残された時間
が限られていることから、バイデン大統領が19日から開催される「G7広島
サミット」への参加を取りやめる可能性も浮上しています。
両者は今後も協議を続ける意向であることから、米債務上限問題は最後の最後
には上限引き上げが行われるとは思いますが、ヘッジファンドPGIMワドワ
ニの創業者であるワドワニ氏は、「米議員らに行動を促すには2011年と同
等またはそれよりもひどい市場の衝撃が必要だ」と述べ、米議会が合意するた
めには、相当の市場混乱が必要だとの認識をブルームバーグ・テレビジョンの
番組で述べています。
G7財務相・中央銀行総裁会議に出席するために来日しているイエレン財務長
官は、本日会見が予定されており、会見では債務上限問への言及があると思わ
れます。

ドル円は、結局先週2日に記録した137円78銭を上回ることなく下落して
きました。日足チャートでは3月8日に付けた137円92銭とともに、「ダ
ブルトップ」の形状を見せています。ひとまず、米インフレ懸念は後退しつつ
ある中、債務上限問題や米景気のリセッション懸念を材料に株式市場が大きく
下げるようだと、「リスクオフ」の流れが強まり円を買う動きにつながること
も想定されます。その際、下値のメドとなるのは132円台半ば辺りと見てい
ます。

本日のドル円は133円50銭~135円程度を予想します。


米債務上限問題は膠着 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は前日に続き小動き。今夜のCPIを見極める姿勢が
強まる中、金利の上昇が支えとなり135円35銭まで上昇。
◆ユーロドルは小幅に下落。市場全体でドルがやや上昇したことで、
1.0941まで売られる。
◆株式市場は小幅ながら3指数が下落。債務上限問題や景気の
先行きに対する懸念が重しに。
◆債券は小幅に続落。長期金利は3.51%台に上昇。
◆金と原油は揃って続伸。

本日の注目イベント

◆日  3月景気先行指数(CI)(速報値)
◆独   独4月消費者物価指数(改定値)
◆米   4月消費者物価指数
◆米 4月財政収支
◆米   バイデン大統領、債務上限について講演


前日に続き為替市場は小動きで、ドル円は135円を挟み一進一退の動きと
なっています。今夜発表される「米4月のCPI」の結果が重要で、結果い
かんでは6月のFOMC会合でも追加利上げの可能性も残しており、FRB
の金融引き締め政策も終盤に差しかかっていると見られる中、予断を許さな
い状況となっています。
金融を取り巻く環境では、金融不安が完全には払拭されてはおらず、加えて
「債務上限問題」が新たな懸念材料として先行きの見通しを不確実にしてい
ます。

債務上限問題についてバイデン大統領は日本時間今朝5時からホワイトハウ
スで、マッカーシー下院議長と会談を行っています。現時点での詳細は分か
っていませんが、ロイター通信は、「マッカーシー下院議長は9月末までの
債務上限引き上げに反対」と速報を流しています。議長は短期的な債務上限
延長には反対していると事前に伝えられており、バイデン大統領との会談で
も直ぐに「上限引き上げ」で合意する可能性は低いとみられています。ホワ
イトハウスの報道官も「短期的な債務上限延長はバイデン政権の計画ではな
い」と表明し、その上で、「連邦政府のデフォルトはあり得ない」ことを強
調しています。

今朝の日経新聞1面では「米景気に3つの壁」との大見出しで、「政府債務
で駆け引き」、「細る家計の余剰貯蓄」と、そして3つ目に「銀行は融資を
厳格化」を挙げています。ブルームバーグも前日同じように3つの根拠を挙
げていましたが、その1つに「エルニーニョ現象に気象面の不確実性」を挙
げていました。他の2つは同じように今後の米景気の懸念材料として注視し
ています。
その理由の1つである銀行の融資姿勢についてFRBのジェファーソン理事
は9日のフォーラムで、「銀行が融資基準を引き上げ始め、それが与信枠を
縮小させていることを示すデータを得ている」と発言しています。ジェファ
ーソン氏はその上で、「インフレは鈍化し始め、経済は拡大継続の機会を得
るというのが私の見解だ」と述べています。
また、6月会合では「利上げ見送り」の可能性もあり、一部には信用不安払
拭を理由に、「年内に利下げ」を見込む向きもありますが、NY連銀のウイ
リアムズ総裁は9日、否定的な見方を示しています。総裁は、「信用状況の
推移とそれが成長や雇用、インフレの見通しに与える影響見極めに特に重点
を置いていく」と述べ、FOMCは来月利上げを停止するのかとの繰り返し
の質問に対して、「政策は会合ごとに定められ、入手するデータによって決
まる」と明言を避けています。さらに、利下げに関する質問には、「私の基
本的な予想では、年内に利下げする理由はどこにも見当たらない」と答え、
「かなり長期間、景気抑制的な政策スタンスを維持する必要があるというの
が私の予想だ」と述べています。(ブルームバーグ)
また、当局が目標とする「2%に戻すには時間がかかり、2%の目標は2年
かけて到達する」とも発言しています。
先走る市場をけん制する意味もあるとは思いますが、利下げの実施まで2年
もかかるようだと、この先ドルが大きくは下げないことにもつながります。
一方で、「直近の過去4回のパターンを振り返ると、最後の利上げから最初
の利下げまでの間隔は、平均8カ月半。今回も23年5月の利上げ終了を受
けて24年1~3月期の金利引き下げ開始もあり得る」(みずほ証券)とい
った見方もあります。
先週決定した0.25ポイントの利上げが「最後」になるのかという点と、
今回のインフレはこれまでとは異なるものであるという点で違和感は残りま
すが、いずれにしても今夜発表の「4月のCPI」の結果が、その答えを教
えてくれる可能性があります。

今夜9時半に発表されるCPIは、前月比で「0.4%」と、前月の「0.
1%」から加速していると予想されています。
またコアCPIについては「0.4%」と、こちらは前月と変わらずと見込
まれています。

本日のドル円は134円~136円50銭程度を予想します。


市場は明日の米CPI待ち 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は小動き。2大重要イベントが終わり、
市場は10日発表のCPIを待つ構えとなり、
値幅は60銭程に収まる
◆ユーロドルは1.10台で推移したものの小動き。
◆株式市場はまちまち。ダウは55ドル下げたが、他の2指数は
小幅に続伸。
◆債券は続落。長期金利は3.5%台に乗せる。
◆金は反発し、原油は続伸。

本日の注目イベント

◆豪   豪5月ウエストパック消費者信頼感指数
◆中   中国 4月貿易収支
◆米   ウィリアムズ・NY連銀総裁講演

FOMC会合と4月の雇用統計を終えたこともあり、昨日の相場は東京時間
からNYにかけて概ね小動きの展開でした。明日発表される「4月のCPI
」の結果次第では、6月会合での追加利上げの可能性があるものの、どちら
かと言えば、足元の市場環境からして、「見送り」の可能性の方が高いと予
想していますが、どうでしょう。ドル円は134円台半ばまで下押しされた
ものの、米金利上昇が支えとなり135円台に乗せる場面もありましたが、
方向感のない一日でした。ユーロドルもNYでは終始1.10台で推移し底
堅い動きになっています。ユーロに関しては、次回理事会でも利上げが見込
まれていることがユーロ買いにつながっているとみられます。

6月の会合で利上げを「見送る」とする根拠に、金融不安が挙げられますが
、加えて「米債務上限問題」が市場の不安心理を掻き立てています。
これは例年のことで、最後の最後には議会が上限引き上げを承認してきた経
緯もあり、「年中行事化」しているようにも思えますが、タイミングが最悪
のようにも思えます。
イエレン財務長官は7日のABCの番組で、「膠着状態に陥っている債務上
限問題を解決する上では、議会が上限を引き上げる以外に良い選択肢はない
」と述べ、「この件で米憲法修正第14条を発動すれば憲法上の危機を招く
」と警告していました。

米連邦政府が発行できる国債などの総額は法律で決められており、上限を引
き上げるには議会の承認が必要となっています。政府の債務はコロナ対策の
財政支出もあり、現行の債務上限額である31兆3814億ドル(約423
0兆円)に迫っており、最速では6月1日にも「Xデー」が来るとの見方も
あります。
シカゴ連銀のグールズビー総裁は8日、「債務上限に関するこの論争は最悪
のタイミングで起こっている。これにより、経済成長や雇用市場の状況を見
通すのが極めて難しくなっている」と話しています。
バイデン大統領は今日にも共和党のマッカーシー下院議長と会談する予定に
なっていますが、政治的なかけ引きに使われているとの意見もあります。8
日にインタビューに応じた共和党トップのマコネル院内総務は、「解決策を
探すのはバイデン氏とマッカーシー議長の責務だ」とし、「バイデン氏を助
けるつもりはない」と述べています。
これまで通り、最終的にはデフォルトは避けられると思われますが、米大統
領経済諮問委員会(CEA)試算では、仮にデフォルトに陥った場合、7-
9月期に830万人の雇用が失われ、失業率は5ポイント上昇し、実質経済
成長率は年率で6.1ポイント下押しされる(日経新聞)とされており、か
なり大きな影響が及びます。
これまで米国がデフォルトに陥ったことはありませんが、2011年には政
府資金が底をつき、行政サービス等に大混乱が起きた経緯もあります。

米地銀3行が破綻し、その後ファースト・リパブリック・バンク(FRC)
も破綻しましたが、JPモルガンがすかさず「買収」の手を指しのべたこと
で大事には至っていません。
多くの専門家は、これで信用不安が終わったとは思えないと話しています。
今回の混乱を受け銀行の融資担当者の目は厳しくなり、融資基準を引き上げ
ているとの報道もあります。
上記4行はいずれも連邦政府の監督下にはなく、地区連銀が管理監督を行っ
ています。
カリフォルニア州は9日、資産500億ドル超の銀行の精査を強化すると発
表しています。
債務上限問題への懸念、銀行の融資基準の引き上げ、いずれもインフレ抑制
には追い風になります。
これらが、筆者が6月会合で追加利上げが「見送られる」のではないかとの
根拠にもなっていますが、それでも明日発表されるCPIの結果次第では利
上げも否定できません。
上記混乱は、「いずれ解決する」と考えられますが、「インフレ」が鎮静化
するメドはまだ立っていません。
明日のCPIの結果がますます重要となり、注目度も増しています。

本日のドル円は134円50銭~135円80銭程度を予想します。


米4月のNFPは25.3万人と予想を上回る 

ひと目で分かる昨晩の動き 

NY市場

◆ドル円は反発し135円台に。大きく下げていた株価が
大幅に上昇し、米金利も上昇したことで135円12銭まで
ドルが買い戻される。
◆ユーロドルは依然として1.10を挟みもみ合い。
◆株式市場は3指数が揃って大きく反発。値ごろ感の買いや、
米景気に対する悲観論も後退。ダウは546ドル上げ、S&P500
も75ポイント上昇。
◆債券は反落。長期金利は3.43%台に上昇。
◆金は大きく売られ、原油は大幅高。

◆4月失業率          →  3.4%
◆4月非農業部門雇用者数   →  25.3万人
◆4月平均時給 (前月比)   →  0.5%
◆4月平均時給 (前年比)   →  4.4%
◆4月労働参加率        →  62.6%

本日の注目イベント

◆豪   豪4月NAB企業景況感指数
◆豪   豪3月住宅建設許可件数
◆独   独3月鉱工業生産

日本ではゴールデン・ウイーク中でしたが、米国では「FOMC会合」と、
「4月の雇用統計」という、いわば「2大イベント」がありました。ドル円
はFOMC会合前の2日には137円78銭近辺までドルが買われる場面も
あり、3月8日以来となるドル高水準を記録していました。
GW前の4月27日のコメントで、「3月8日の137円92銭を起点とし
たレジスタンスラインと、3月24日の129円64銭を起点としたサポー
トラインを2辺にすると、本日はレジスタンスが134円60銭前後となり
、サポートは132円57銭前後になります。『三角保ち合い』(さんかく
もちあい)は右端にある頂点に向って値幅を収斂させていき、どちらかに抜
けたら、抜けた方向に大きく動くとされています」と書きましたが、ドル円
は三角保ち合いを上抜けすると予想通り大きく上昇し、上記水準までドル高
が進みました。

ただドル円はその後米国株が大きく下げ、リスクオンが進んだこともあり、
FOMCを経て133円台後半まで下げるなど、相変わらず荒っぽい動きに
なっています。
FOMCでは予想通り「0.25ポイントの利上げ」を決めました。
発表された声明文では、前回使われていた「追加の政策措置が適切」といっ
た文言が外され、新たに、「追加策がどの程度必要か決定する際には、これ
までの金融引き締めの累積的な効果や経済や物価に時間差で与える影響を考
慮する」と記され、明らかにシリコンバレー銀行(SVB)など、米地銀破
綻の影響を配慮した文言になっています。

市場の関心はすでに「6月会合」で、利上げが見送られるのかどうかに移っ
ていますが、その意味からも会合後のパウエル議長の発言が重要であると考
えていました。異例だったのは議長が冒頭で、「会合結果の前にまず銀行セ
クターの最近の動向について話したい」と切り出したことでした。SVBな
ど地銀3行の破綻を受け、金融不安が収まらないことに触れ議長は、「状況
はおおむね改善し、米国の銀行システムは健全で強靭だ」と述べ、「深刻な
ストレスがかかる時間に区切りをつけるための重要な一歩だ」と続けました。
また、銀行破綻については、「われわれが間違いを犯したことは十分に認識
している」と述べたことも異例でした。
ここで言う「間違い」が、銀行に対する検査体制なのか、あるいは今回の急
激なインフレに対するFRBの初動の遅れを指すのか、あるいはまた、連続
で大幅な利上げに踏み切ったことを指すのかは定かではありませんが、議長
が「間違いを犯した」と言い切ったことには、驚きであったとともに、「誠
実さ」も感じた次第です。
議長はさらに足元のインフレについて、「幾分緩やかになっているが、依然
として強い」と述べ、金融政策が十分引き締め的な水準かと問われて、「見
極めているところだ」と答えるにとどめています。結局6月会合での明確な
方向性を示すことはありませんでしたが、FRBとしてもインフレと、金融
不安という金融政策的には合い反する事態に挟まれ、非常に難しい判断を迫
られている状況は続いています。
インフレを優先するのか、あるいは金融不安の払拭を優先するのか、10日
(水)に発表される「4月のCPI」が大きなカギを握っています。

FOMCメンバーによる発言でも、そのあたりの苦悩が伺えます。
シカゴ連銀のグールズビー総裁は5日のインタビューで、金融セクターの混
乱について、「それによって少し立ち止まらなければならないだろう。そう
した展開は景気を減速させる可能性が高く、そのことを考慮する必要がある
のは確かだ」と語り、「われわれはデータを注視する必要がある」と述べて
います。
また、セントルイス連銀のブラード総裁も5日、「この15カ月における積
極的な政策がインフレ率の上昇を抑制してきたが、2%目標への軌道に乗っ
ているかどうかはあまりはっきりしていない」と述べ、「これから出て来る
経済データを精査したいと考えているが、利上げがもう必要ではないと確信
するには『インフレ率の有意な低下』を確認しなければならないだろう」と
語っています。(ブルームバーグ)

現時点での、6月会合での追加利上げの確率は五分五分かと思われますが、
個人的には信用不安の収縮を優先するのではないかと考え、据え置きを予想
しています。
ただ、それでも上述のように、4月のCPIが再び加速しているようだと、
追加利上げの可能性もあろうかと思います。

本日のドル円は134円~136円程度を予想します。


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