ドル円145円に迫る
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆144円台前半で推移していたドル円は朝方8時半頃から
急伸。1-3月期GDPが上方修正され、失業保険申請件数も減少
していたことで、年内2回の利上げ観測が高まる。
◆ユーロドルは反落。ドルが買われ、ユーロは1.09台を
割り込む。
◆株式市場はナスダックがほぼ横ばいだったが、ダウと
S&P500は上昇。
◆債券は大幅に続落。長期金利は3.83%台と大幅上昇。
◆金は小幅ながら3日続落。ドルが買われたことで上値が
重い展開。原油は続伸。
◆新規失業保険申請件数 → 23.9万件
◆1-3月GDP(確定値) → 2.0%
◆5月中古住宅販売成約件数 → -2.7%
本日の注目イベント
◆日 5月失業率
◆日 6月東京都区部消費者物価指数
◆日 5月鉱工業生産
◆中 6月中国製造業PMI
◆中 6月中国サービス業PMI
◆独 独6月雇用統計
◆欧 ユーロ圏5月失業率
◆欧 ユーロ圏6月消費者物価指数
◆英 英1-3月期GDP(改定値)
◆米 5月個人所得
◆米 5月個人支出
◆米 5月PCEデフレータ(前月比)
◆米 5月PCEデフレータ(前年比)
◆米 5月PCEコアデフレータ(前月比)
◆米 5月PCEコアデフレータ(前年比)
◆米 6月シカゴ購買部協会景気指数
◆米 6月ミシガン大学消費者マインド(確定値)
ドル円の「一歩後退・二歩前進」の動きは続き、昨日のNYでは145円
に迫る水準まで円が売られました。もっとも、昨日は円全面安の展開では
なくドルそのものが買われる動きでした。米金利が大幅に上昇し、ドルは
主要通貨に対して「強含む」展開でした。
1-3月期のGDP確定値が「2.0%」と、改定値の「1.3%」から
再び上方修正され、さらに週間失業保険申請件数も低下していたことで、
FRBは7月の会合に加えさらに利上げを行うといった観測が高まったこ
とが、ドル買いにつながっています。
昨日の「アナリストレポート」がお休みだったので、あえて触れておきた
いと思いますが、ポルトガルで開かれていたECBフォーラムでは、日本
を含めた4中銀総裁がパネルディスカッションでそれぞれ自国の物価情勢
を説明し、それに伴う金融政策の方向性について意見を述べました。
パウエル議長は、「政策は景気抑制的だが、十分に抑制的でない可能性が
ある。抑制的な政策はまだ十分に長い期間行われていない」とし、「コア
インフレについては2025年まで当局の目標の2%まで戻ることはない
」との見方も示しました。
ECBのラガルド総裁は、利上げ停止についての質問に、「それは現在考
えていない。われわれはまだやらねばならないことがある」と答えていま
す。BOEのベイリー総裁も、「最近のデータにはインフレが持続する兆
候が見られる。英国のコアインフレは他国・地域に比べて相当根強い」と
の認識を示しています。これに対して植田日銀総裁は、「足元ではインフ
レ目標の2%を大きく上回っているが、基調的なインフレ率は依然として
2%をやや下回っているとわれわれは考えている」と説明し、「そのため
、現時点では政策を変更していない」と、これまでの日銀の行った説明を
繰り返しています。
ただ今回の発言の中には、「来年インフレが上向くと確信が持てれば、金
融政策の正常化に着手することはあり得る」と、これまでより一歩踏み込
んだ発言を行っていることに注目しています。
ただ今回のパネル討論会でもあらためて日銀の政策が、他の3中銀の方向
性と真逆であることが浮き彫りになっているといった印象でした。
パネル討論会でのパウエル議長は「タカ派寄り」でしたが、米国家経済会
議(NEC)のブレイナード委員長は29日、「消費者物価の数字は今年
後半に、持続的に改善することが想定され得る」と発言し、「選挙前に2
%前後あるいは2%を若干上回るレンジになるのは可能だと考える十分な
根拠がある」と述べています。
ブレイナード氏は、今年2月までFRB副議長を歴任し、一時は次期FR
B議長候補としても名前が挙げられていました。またこの日ダブリンで行
った講演でアトランタ連銀のポスティック総裁は、「政策が効果を表すの
を待つべき時がある。私は追加利上げについてパウエル議長を含めた他の
メンバーほど緊急性を感じない」と、金利据え置きを支持する考えをあら
ためて示しています。
ただ昨日のスワップ金利市場では、年内あと1度ではなく2回目の追加利
上げが行われる確率を約50%織り込んでいます。
ドル円はいよいよ最も介入を警戒しなければならない145円台に迫る水
準まで来ました。すでに鈴木財務大臣や財務省の神田財務官がけん制する
発言を行っていますが、これは想定通りほとんど効きません。
当局としても円安が緩やかに進行しているため「過度の変動」とは認定し
づらく、介入する「大義名分」がみつかりにくい状況です。
米バンク・オブ・アメリカはレポートで、「FOMCでの追加利上げが年
内続くようであれば、ドル円は160円もある」といった見通しを発表し
ていました。
本日はPCEデータなど、インフレや米景気に関わる経済指標の発表があ
ります。週末ということもあり、注意は必要です。
本日のドル円は143円80銭~145円80銭程度を予想します。
- [2023/06/30 09:42]
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ドル円NYでは144円台に
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆欧州市場ではドルが売られ、NYでは143円台前半で取引が
始まったドル円は144円台まで続伸。消費者マインドなどの
経済指標が上振れ、株価も上昇したことでリスクオンとなり144円
18銭まで円安が進行。
◆ユーロドルは続伸し、1.0977まで買われる。ラガルドECB総裁が
7月会合での利上げに言及したことがユーロ買いを支援。ユーロは対円でも
157円94銭前後まで上昇。
◆株式市場は3指数が久しぶりに揃って上昇。米景気は想定よりも
堅調だとの見方が支えに。
◆債券は反落。長期金利は3.76%台に上昇。
◆金と原油は揃って反落。
◆米 5月耐久財受注 → 1.7%
◆米 4月ケース・シラ-住宅価格指数 → -1.70%
◆米 4月FHFA住宅価格指数 → 0.7%
◆米 5月新築住宅販売件数 → 76.3万戸
◆米 6月コンファレンスボード消費者信頼感指数 → 109.7
◆米 6月リッチモンド連銀製造業景況指数 → -7
本日の注目イベント
◆豪 豪5月消費者物価指数
◆独 独7月GFK消費者信頼調査
◆欧 ECBフォーラム最終日、日銀総裁、FRB議長、ECB総裁、BOE総裁が
パネル討論会に参加
ドル円はジリジリと上昇し、「口先介入」をあざ笑うかのように円安が進んでいます。
昨日は欧州市場ではドル売りが勝り、143円台前半まで下げましたが、NYでは一転
切り返してドル買いが旺盛となり、144円18銭前後までドルが買われました。
コンファレンスボードが発表した6月の消費者マインドが大きく改善するなど、この日
発表された経済指標が概ね米景気の底堅さを示しており、7月会合での利上げ観測の高
まりがドルを押し上げる結果となっています。
この状況は、本来なら株価が売られる材料でしたが、先週から株価は大きく売られてい
たことや、「米景気は思ったほど悪くない」といった見方から、NY株式市場では3指
数が揃って上昇しました。「あばたもえくぼ」といったところでしょうか。
さらにこの日はラガルドECB総裁の発言も円売りに作用したと思われます。
ラガルド氏は27日、ポルトガルのシントラで開催中のECB年次フォーラムの基調講
演で、「ECBが近い将来に完全な自信を持ってピーク金利に達したと宣言できる可能
性は低い」とし「見通しの大きな変化がない限り、7月も利上げを続ける」と発言して
います。ラガルド氏は、これまでも7月利上げの可能性は示唆していましたが、今回は
明確に「7月も利上げを続ける」と言い切っています。
ただECB内部では意見の対立もみられます。リトアニアのシムカス総裁も「9月も利
上げを続けたとしても驚かない」と述べています。
一方ベルギー中銀のウンシュ総裁は、「現時点から9月会合までに発表される3回のイ
ンフレ統計で、コアインフレが毎回低下した場合のみECBは9月に利上げを停止すべ
きだ」と、中間的な意見を述べています。昨日には発言はありませんでしたが、ドイツ
、オランダ、オーストリアなどの中銀総裁はかなり「タカ派色」の強い発言を繰り返し
ています。
ECB年次フォーラムは今日最終日で、ここではECB以外の3主要中銀も参加してパ
ネル討論が予定されています。日銀以外の中銀は言うまでもなく、インフレを阻止する
ため今後も利上げが必要との立場を維持していますが、わが日銀は全く逆のスタンスで
す。ここであらためて4中銀の金融政策スタンスの違いが意識されるようだと、円がさ
らに売られる可能性があります。もっとも、ここで植田総裁が「サプライズ発言」を行
えば、話は別ですが。
連日ニュースで取り上げられている、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」のブリゴジン
氏はベラルーシに到着したことが確認されているようですが、プーチン氏は昨日、大統
領府のあるクレムリンで2500人の軍人を集めて演説を行いました。プーチン氏はこ
れまでブリゴジン氏を「裏切り者」と呼んでいましたが、この演説では同氏に対する言
及を避け、内戦を防いだロシア軍を称賛し、「反乱は西側諸国の陰謀だ」と結論づけて
います。ベラルーシに身を寄せたブリゴジン氏が今後どのような扱いを受けるのかは不
明ですが、多くの専門家は一様に、「今回の反乱はプーチン氏にとってかなりのダメー
ジだった」と論じています。
バークレーズ証券は27日「トリレンマの円」と題したレポートを出しています。
レポートでは、「国際金融のトリレンマは2022年度初と同様、今回の円安局面
においても有効だ。日銀が賃金・インフレ動態が改善するなかでも、硬直的なYCCに
固執する限り、過度な変動を伴う円安圧力は解消しない」としながらも、今回公表され
た6月の金融政策決定会合の「主な意見」では、一部審議委員が、『企業の価格転嫁の
動きは一段と強まっているほか、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の回復もあ
り当面物価上昇圧力に強い状況が続く』、『基調的なインフレ率を示す各種指標も、軒
並み2%を超えてきている』といった意見があったことを紹介し、「潮目の変化がみら
れ始めている」としています。
筆者も26日の「今週のレンジ予想」では、26日に公表された「日銀金融政策決定会
合における主な意見(6月15、16分)」の内容に触れています。(参照:6月26
日付け同コメント)
本日のドル円は142円80銭~144円80銭程度を予想します。
明日の「アナリストレポート」は都合によりお休みとさせて頂きます。
ご不便をお掛けいたしますが、ご理解のほど宜しくお願い申し上げます。
- [2023/06/28 10:10]
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ドル円143円を割り込むも底堅い
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆ドル円は上値を重くし、ドル売りが優勢となったものの、
下値も限られた。東京時間夕方には143円を割り込んだ
がNYでは再び買われ143円70銭まで上昇。
◆ユーロドルは小動きで、1.09台前半で推移。
◆株式市場は小幅ながら3指数が続落。ナスダックは下げ幅が
大きく、ハイテク株の利益確定の売りに押され156ポイント下落。
◆債券は続伸。長期金利は3.72%台に低下。
◆金と原油は揃って上昇。
本日の注目イベント
◆日 4月景気先行指数(CI)(改定値)
◆欧 ラガルド・ECB総裁講演
◆米 5月耐久財受注
◆米 4月ケース・シラ-住宅価格指数
◆米 4月FHFA住宅価格指数
◆米 5月新築住宅販売件数
◆米 6月コンファレンスボード消費者信頼感指数
◆米 6月リッチモンド連銀製造業景況指数
ドル円は、当局の「口先介入」に対する警戒感もあり上値をやや重くし、利益確定の
ドル売に押され143円台を割り込む場面もありましたが、下値は限定的でした。昨
日の東京時間午前中には、財務省の神田財務官が「行き過ぎた動きは適切に対応して
いく」と述べ、「口先介入」を行い、ドル円は下げる場面もありましたが、先日指摘
した通り、今回の「効果」は限定的でした。
ドル円はNYでは、NY連銀のウイリアムズ総裁の発言を受け再び上昇し、143円
70銭まで買われています。
ウイリアムズ総裁はBISのイベントで「世界的な高インフレ環境において、世界中
の中央銀行が物価安定を回復するために強力かつ断固とした行動をとっている」と述
べた上で、「物価安定の回復が最も重要だ。持続的な経済および金融の安定を支える
基盤だからだ」と強調しています。
この発言に、「FRBは物価が安定するまでは利上の継続は辞さない」との連想が働
き、市場はドル買い、株売りで反応しています。ウイリアムズ総裁はFOMCでは議
長を務めていることもあり考え方もFRBに近く、執行部の一員と見られており、パ
ウエル議長と同様「タカ派寄り」の発言を行ったものと理解しています。
ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の反乱があったことで、今朝のブルームバーグで
も同組織と創設者ブリゴジン氏のニュースに多くの時間をかけています。
ブリゴジン氏はプーチン氏に反旗を翻し、モスクワまで数百キロ圏内の地点まで進軍
した後、武装蜂起を中止しました。その後の同氏の存在と、プーチン氏の発言もない
状況が続いていましたが、今朝の最新の報道では同氏は26日、通信アプリ「テレグ
ラム」に11分間の音声メッセージを投稿し、「ワグネルがモスクワまでに200キ
ロ以内に迫った24日の進軍は、ワグネルの破壊を防ぐことに加え、ウクライナ侵攻
の『甚大な誤り』の「責任を負う者らを追及することを目的とした抗議だった」と語
っています。
ただ、「既存の体制や合法的に選ばれた政府を打倒するという目的はなかった」と述
べていますが、プーチン氏への忠義を公言するには至らなかったとしています。
この音声メッセージに対してロシア大統領府の反応は今のところないようですが、プ
ーチン氏は今回の武装蜂起を「裏切り」だと非難しており、今後のブリゴジン氏への
対応が注目されます。
ロシア大統領府の説明によると、事態収拾に向けた取引の一環として、当局が刑事訴
訟に向けた手続きを取り下げる代わり、ブリゴジン氏はベラルーシに出国することに
合意したとしています。ただロシアの複数のメディアは26日、同氏に対する検察当
局の捜査は継続しており、訴追手続きは取り下げられていないと報じています。
筆者も「ワグネル」には相当数の戦闘員がいることは耳にしていますが、ピーク時に
は約5万人もいたと報道されています。同組織は2014年にブリゴジン氏によって
設立され、雇い兵のほとんどは「元囚人」のようです。米国は今年初め、「ワグネル
」を国際犯罪組織に指定しており、オーストラリアとカナダ、日本、英国、EUが同
組織を制裁対象にしています。「ワグネル」の法的地位は不透明で、ロシアでは雇い
兵は厳密には違法とのことです。「ワグネル」はロシアの正規軍とは独立して活動し
ており、最近は軍との正式な契約を結ばせるロシア当局の要求をはねつけているよう
です。
また今朝のブルームバーグはブリゴジン氏とプーチン氏との関係にも触れています。
ブリゴジン氏は62歳でロシアの実業家でありますが、前科があるとしています。ブ
リゴジン氏が経営するケータリング会社とロシア大統領府との契約や、大統領との長
年の関係から「プーチン氏のシェフ」と呼ばれており、プーチン氏の右腕の一人とみ
なされています。
プーチン氏は「ワグネル」による支援を高く評価しており、1年4カ月にも及ぶ戦争
でロシア側の正確な犠牲者数は不明ですが、多数の兵士を失っており、その多くがほ
とんど訓練を受けていません。「ワグネル」部隊はロシアの地上攻勢に重要な役割を
担い、220日余りにわたる戦闘の末、5月にウクライナ東部の都市バフムトを制圧
しています。
今のところ、ブリゴジン氏とプーチン氏との関係がどうなるのかは不明ですが、この
確執がプーチン政権にとって政治的に非常に大きなダメージになっていると結んでい
ました。
本日のドル円は142円50銭~144円程度を予想します。
- [2023/06/27 09:52]
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円続伸し143円台後半まで上昇
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆ドル円は緩やかに上昇し、NYでは143円87銭まで続伸。
パウエル議長の「年内2回利上げの可能性」に言及した発言を意識
したドル買い円売りが続く。
◆ユーロドルは小幅に反落。ドルが買われたことで1.0877
まで下落。
◆株式市場は3指数が揃って下落。ダウは219ドル下げ、4日
続落。PMIが予想を下回ったことが重荷に。
◆債券は続伸。長期金利は3.73%台に低下。
◆金は4日ぶりに上昇。原油は小幅に続落。
◆6月S&Pグローバル製造業PMI(速報値) → 46.3
◆6月S&Pグローバルサービス業PMI(速報値) → 54.1
◆6月S&PグローバルコンポジットPMI(速報値) → 53.0
本日の注目イベント
◆日 日銀金融政策決定会合における主な意見(6月15、16)
◆独 独6月ifo景況感指数
◆米 メスター・クリーブランド連銀総裁、イベント閉会の挨拶
ドル円は当局の介入を避けるかのようにジリジリと、緩やかに上昇し、NYでは
143円87銭まで買われています。パウエル議長が議会証言で「年内に再び、
恐らく2回の利上げを行うことが適切になると感じている」と発言したことがド
ル買いにつながっている一方、水準的にはいつ「口先介入」があってもおかしく
はない水準だけに、ドル買いを進める方も慎重にならざるを得ない状況でもあり
ます。
ただ、パウエル議長が年内2回の利上げの可能性に言及する一方、利上げ据え置
きを支持する考えを示すメンバーもいました。
アトランタ連銀のポスティック総裁は23日ジョージア大学での講演で、「政策
金利は5-5.25%だ。適度に景気抑制的な水準であり、現在の状況から見て
、インフレ率を2%目標へと戻すのに十分な可能性がある」と語っています。
また、「現在得られている情報には満足しており、今の水準を年内、そして来年
に入っても長く据え置くことに違和感はない」と、パウエル議長と真逆の認識を
示しました。
ドル円はこの発言で、ドル売りが優勢になる場面もありましたが、長くは続かな
かったようです。ポスティック総裁の発言は現時点では少数派だと受け止められ
ています。
ウクライナ情勢に関するニュースに、先週土曜日は驚きました。
ロシアの民間軍事会社ワグネルがロシア国内で武装蜂起を宣言し、首都モスクワ
を目指して進軍しているとの報道がありました。この報道を耳にした瞬間、「こ
れがウクライナ戦争終結のきっかけになるかもしれない」との思いが浮かびまし
たが、結局この混乱は1日で収束してしまいました。だだ、この影響は決して小
さくはないと思われます。ロシア国内では支持率も高く、全ての軍事的権力を掌
握しているプーチン氏にとって、身内から反乱者が出た事実は、今後戦争終結へ
の可能性も暗示しているのではないかと思われます。
ブリンケン国務長官は「ワグネルの反乱はプーチン氏の権威に対する直接的な挑
戦だ。この反乱は数々の深刻な問題を提起している」と述べており、ウクライナ
のゼレンスキー大統領は、「ロシアの全面的な弱さの表れだ。ウクライナはロシ
アの悪と大混乱の広がりから欧州を守ることができる」と語っています。
また、中国外務省も今回の事態を「ロシアの内政問題だ」と短くコメントしてい
ます。ただ今回武装決起を起したワグネルのブリゴジン氏を「裏切り物」と批判
したプーチン氏は、その後目立った行動を見せていません。ブリゴジン氏も同様
にその後の行動が確認されていないことから、今回の混乱が和平につながるのか
、あるいはプーチン氏の一段の権力掌握になるのか、未知数だとする見方が多い
ようです。
それでも、ゼレンスキー大統領の顧問を務めるポドリャク氏は「ウクライナにと
って間違いなく吉報だ。戦争終結を早めるのは確実だろう」とブルームバーグの
インタビューに答えていました。
先週末、日本の5月の消費者物価指数(CPI)が総務省から発表されました。
コアCPIは「3.2%」と前月の「3.4%」から縮小していましたが、市場
予想の「3.1%」は上回っていました。
総務省の説明によると、電気・ガス価格の激変緩和措置と全国旅行支援といった
政策効果がなかった場合、5月の総合CPIは「4.3%」上昇、コアCPIは
「4.2%」の上昇になるとしており、522品目中、438品目で値上がりし
たと説明しています。
本日のドル円は142円50銭~144円30銭程度を予想します。
- [2023/06/26 09:31]
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ドル円続落し143円台に
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
- ドル円は大幅に続落しNYでは143円台まで上昇。東京時間では141円台で推移していたが、前日に続くパウエル議長のタカ派発言などで143円23銭と、およそ7カ月ぶりの円安に。
- ユーロドルではドル安が続き、ユーロは約1カ月半ぶりに1.01台に。対円でも157円に迫る。
- 株式市場はまちまちの展開。ダウはほぼ横ばいながらナスダックとS&P500は上昇。
- 債券は続落し、長期金利は3.79%台に上昇。
- 金は3日続落し1923ドル台まで売られる。原油も中国の景気減速などを背景に大幅安。
本日の注目イベント
- 日 5月消費者物価指数
- 中 5月消費者物価指数
- 中 5月生産者物価指数
- 中 5月貿易収支
- 独 6月サービス業PMI(速報値)
- 独 6月総合PMI(速報値)
- 欧 ユーロ圏6月製造業PMI(速報値)
- 欧 ユーロ圏6月サービス業PMI(速報値)
- 欧 ユーロ圏6月総合PMI(速報値)
- 英 5月小売売上高
- 英 ブラード・セントルイス連銀総裁講演(ダブリン)
- 英 6月製造業PMI(速報値)
- 英 6月サービス業PMI(速報値)
- 米 6月S&Pグローバル製造業PMI(速報値)
- 米 6月S&Pグローバルサービス業PMI(速報値)
- 米 6月S&PグローバルコンポジットPMI(速報値)
- 米 メスター・クリーブランド連銀総裁、イベント閉会の挨拶
ドル円が一段と上昇し、NYでは昨年11月以来となる143円23銭まで「円安」が進みました。きっかけは再びパウエル議長の上院での議会証言でしたが、この日は「中銀の利上げラッシュ」もあり、日銀の緩和スタンスがいやがうえにも目立ち、主要通貨に対して円が「独歩安、かつ全面安」の展開でした。筆者が現役のトレーダーであれば、やはりこの局面では円売りは避けられないところです。
通常、FRB議長の議会証言では、最初に行われる下院での証言内容が注目され、翌日の上院での証言内容は「前日の繰り返し」となることが多いため、市場への影響度は大きく低下します。しかしこの日は違ったようです。パウエル議長は、政策金利が適切に景気抑制的な水準に既に引き上げられていたとしても、経済がほぼ予想通り推移するならば、政策当局は「年内に再び、恐らく2回の利上げを行うことが適切になると感じている」と述べました。議長はこの日も、インフレを当局目標である2%に戻すことに全力を注いでいるとの考えを改めて示しましたが、前日の証言では利上げについては、「年末までに幾分(somewhat)」といった表現でしたが、この日は「Perhaps twice」(おそらく2回)といった言葉を使い、より具体的に言い表しています。また、「政策金利が適切に景気抑制的な水準に既に引き上げられていたとしても」という言い方もしており、FRBのインフレ抑制に対する強い意志も伝わってきました。明らかに前日の証言に比べ「よりタカ派的」であったと思います。
この日はボウマンFRB理事の発言もありました。ボウマン氏は、「私はFF金利の誘導目標レンジを据え置き、保有証券の縮小を続けるという先週のFOMC決定を支持した」と述べた上で、「インフレ率を時間とともに当局目標に引き下げるため、追加利上げが必要になると私は考えている」と発言し、利上げ再開が望ましいとの考えを示しています。円が主要通貨に対して大きく売られたのは、このような発言の影響だけではなかったようです。イングランド銀行は市場予想に反して0.5ポイントの大幅利上げを行い、政策金利を5%に引き上げました。前日5月の消費者物価指数(CPI)が「8.7%」と高水準だったことを受けての決定かと思います。スイス中銀も0.25ポイントの引き上げを決め、その影響でスイス円は159円98銭と、160円に迫る水準まで上昇しました。日本が「変動相場制」に移行した1973年以降の最安値を更新するものでした。さらにこの日はノルウェー中銀も利上げを決めています。
極め付きは、トルコ中銀の利上げです。昨日筆者はラジオ番組で、「トルコ中銀が利上げを行うのは確実とみられますが、焦点は利上げ幅です」とコメントしましたが、一気に6.5ポイントの利上げ決め、政策金利を15%に引き上げました。6.5ポイントの利上げは通常考えられないほどの利上げ幅ですが、市場予想は12ポイント程の利上げを予想していたこともあり、利上げ決定後トルコリラは対ドルで最安値を更新し、対円でも6円前後から5円70銭近辺まで急落しています。わずか30銭のことですが、5%の大幅下落です。トルコでは先の大統領選でエルドアン氏の再選が決まりましたが、新内閣では財務大臣にシムシェキ氏が就任したことで、新しい中銀総裁になったエルカン総裁も利上げが実施しやすいと見られていました。シムシェキ財務大臣は「トルコ経済を立て直すには利上げを行うしかない」と語っていました。今回の利上げ幅は市場予想を大きく下回るものでしたが、これもひょっとしたらエルドアン氏の圧力があったのではないかと疑いたくなります。エルドアン氏は「インフレを収め、景気を良くするには金利を下げればよい」との考えを持っており、2年ほど前から行ってきた相次ぐ利下げで通貨安が拡大し、これがインフレを高めるといった「悪循環」が続いていました。その意味でも、今回の新財務大臣と新中銀総裁に期待していましたが、トルコ金融当局のジレンマはまだ続きそうです。
このように、昨日は多くの中銀が追加利上げに踏み切ったこともあり、日銀のみが「蚊帳の外」状態で、ひときわ目立ったと言えます。昨日の午後日銀の野口審議委員が沖縄で行った会見でもその状況がはっきりと確認されています。野口氏はイールドカーブ・コントロール(YCC)政策について「当面、調整が必要だとは考えていない」と述べその理由に、消費者物価の先行きについては、「長い目で見た物価は下振れリスクの方が大きいという見立てだ」と説明しており、さらに「金融政策は為替を動かすことを目的にはしていない」と語っています。植田総裁を始め、多くの審議委員がこの考えを共有しているようで、金融政策決定会合のメンバーが政策運営について一言口にするたびに、円が売られる状況になっています。
本日のドル円は142円~144円程度を予想します。徐々に口先介入を誘発しそうな水準に近づいているようですが、本日は週末でもあり注意が必要です。
----------------
高校を卒業してから何十年も経つと、同窓会が楽しみになります。
旧友の顔を見た瞬間に10代だった自分が蘇り、当時のあだ名で呼び合います。
セピア色とは言えないまでも、青春時代にタイムスリップ。
考えてみれば、クラス会では、会うたびに交わす言葉は同じような気も・・・・。
この歳になると話題はほぼ2つに絞られます。
「健康のことと、孫のこと」です。
学生の頃勉強もせず、どちらかと言えば悪ガキグループに属していたあいつが
今や、某大手会社の会長だとか・・・人生、何が起こるか分からないところが
面白いかも。
同窓会の法則を一つ・・・。
同窓会は歳を重ねれば重ねるほど、女性の出席率が高くなります。
男性よりも女性の方が長生きということもありますが、同窓会に出れば、自分の家にいるよりも「若干若い男性に会える」という点にあるとか。
確かに、家では概ね夫は自分よりも年上です。
自分と同い年の男性でも、「ダンナよりは、はるかに若く見える」という声も聞かれます。
フムフム、歳を重ねると言葉にも「遠慮」がなくなります。
良い週末を・・・・・。
- [2023/06/23 10:37]
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ドル円NYで年初来高値をわずかに更新
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
- 東京時間では142円台が重く見えたドル円だったが、NYではパウエル議長の議会証言を境にドル高が進む。前日記録した142円25銭を若干上回る142円37銭まで上昇。
- ユーロドルも堅調に推移。ユーロ円を買う動きも継続されユーロドルは1.0991まで上昇。対円でも155円82銭近辺までユーロ高が進む。
- 株式市場はパウエル議長の証言を受け3指数が3日続落。
- 債券はほぼ横ばい。長期金利は3.72%前後で推移。
- 金は続落し、原油は反発。
本日の注目イベント
- トルコ トルコ中銀政策金利発表
- 欧 ユーロ圏6月消費者信頼感指数
- 英 BOE金融政策発表
- 英 BOE金融政策委員会(MPC)議事録
- 英 ウォラー・FRB理事講演(ダブリン)
- 米 新規失業保険申請件数
- 米 経常収支(1-3月)
- 米 5月中古住宅販売件数
- 米 5月景気先行指標総合指数
- 米 パウエル・FRB議長、上院銀行委で証言
- 米 メスター・クリーブランド連銀総裁講演
- 米 バーキン・リッチモンド連銀総裁講演
- 米 ボウマン・FRB理事、イベント開会挨拶
パウエル議長は下院で議会証言を行い、予想通り「タカ派寄り」の発言を行いました。この発言を受けドル円は142円37銭まで買われ、前日付けた年初来高値をわずかですが上回っています。ドル円が買われた背景は、米インフレ退治の工程はまだ終わっていないということもありましたが、昨日の日本の債券市場では長期金利が低下し、0.37%と、1カ月ぶりの低水準を付けたことも挙げられます。日銀の金融政策修正観測が後退したことで債券が買われ、円の金利が低下したものです。日米金融政策の方向性の違いに伴う、日米金利差の拡大が円売りドル買いを促しています。一方、財務省などによる介入警戒感もくすぶり続けており、一気に円売りが加速する状況ではなく、じりじりと円が売られ、ドル円は「一歩後退、二歩前進」といった動きになっています。当局としても、投機的な動きではなく、このように円のジリ安の動きに対しては介入しづらい面もあろうかと思います。
パウエル議長は証言で、「同僚と私は高インフレがもたらしている困難を理解しており、インフレ率を目標の2%へと戻すことに引き続きコミットしている」と説明しています。その上で、「FOMC参加者ほぼ全員が、年末までに幾分かの追加利上げが適切になると予想している」と、今後も利上げの可能性があることを示唆しました。ただ、その時期などについては、「われわれは、入手するデータとそれらが経済活動とインフレの見通しに対して持つ意味合いの全体像、さらにリスクのバランスに基づき、今後も会合ごとに判断を行っていく」と説明しています。この発言内容は、先週14日のFOMC会合後に述べた、「インフレを鈍化させるためには2023年中に幾分かの追加利上げが適切になると、ほぼ全ての政策当局者が予想している」と、内容は整合しており目新しいものではありません。また、過去1年余りの利上げペースについて触れ、「プロセスのより早い段階では、スピードは非常に重要だった」とした上で、「今はあまり重要ではない」と述べています。議長は、自動車走行における速度減速に例え、「幹線道路を時速75マイル(約120キロ)で走行していたとして、その後に地域の主要道に入った時点で速度を50マイルに落とす」とし、「さらに目的地に近づき、その目的地を探そうとする中で、スピードをさらに落とす」と説明しています。市場では、今後も幾分かの追利上げの可能性に反応し、株が売られドル円が買われています。
ただ一方で、これまでの大幅利上げを踏まえ今後の利上げについては慎重な見方を示すメンバーもいました。アトランタ連銀のポスティック総裁は、「金融政策が真に景気抑制的になった1年弱であり、金融政策の変更が意味ある形で経済活動に影響するには時間を要するため、しばらく景気抑制的な金融政策を浸透させることは賢明だ。今後数カ月で引き締めが一段と効果を発揮する」との認識を示した上で、「私の基本線では、われわれは今年いっぱいこの水準でとどまるべきだ」と述べ、年内の政策金利据え置きを支持する姿勢を示しています。(ブルームバーグ)またシカゴ連銀のグールズビー総裁はフォーラムで、先週のFOMC会合での金利据え置き決定について、「個人的には今でも際どい判断だった」と述べていました。これらの発言を踏まえると、FRBの金融引き締めも今後大幅利上げの効果も見込めることから、「ほぼ終盤に近い」と判断できそうです。7月に利上げがあるかどうかは今後のデータ次第ですが、あと1回の追加利上げが基本かと思います。
上でも触れたように、ドル円はすでに介入警戒水域に入っていると思いますが、かりに介入があったとしてもここでは「口先介入」といった「けん制」にとどまると予想しています。「実弾介入」はやはり、145円を上回り、さらにそのスピードも速いことが必要でしょう。ただ、仮に実弾があったとしても、昨年秋に見られたほどの効果については、個人的には疑問です。市場では恐る恐る介入を警戒しながらの小幅な上昇が続いています。
本日のドル円は140円80銭~142円50銭といったところでしょうか。
- [2023/06/22 10:19]
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パウエル議長の議会証言待ち
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆底堅く推移するドル円は、昨日の東京時間朝方には142円25銭まで
買われたがその後じり安の展開。NYでは米長期金利の低下もあり、
141円台前半まで売られる。
◆ユーロドルはやや水準を切り下げ1.08台後半まで下げる。
◆株式市場は3指数が揃って続落。ナスダックはハイテク株の下げが
限定的だったことから小幅安だったものの、ダウは245ドル下落。
◆債券は反発。長期金利は3.72%台に低下。
◆金と原油は揃って売られる。
◆5月住宅着工件数 → 163.1万件
◆5月建設許可件数 → 149.1万件
本日の注目イベント
◆日 日銀金融政策決定会合、議事要旨(4月27日、28日分)
◆英 英5月消費者物価指数
◆米 パウエル・FRB議長、下院金融委員会で証言
◆米 グールズビー・シカゴ連銀総裁講演
◆加 カナダ4月小売売上高
141円台に入っても底堅い動きを見せていたドル円は、昨日の東京時間朝方には
142円25銭まで「ドル高円安」が進みました。ただその直後には141円台半
ばまで売られ、それでもその後戻す場面もありましたが、結局NYでもジリ安の展
開に終始しています。
この欄でも触れたように、この水準は昨年11月21日に記録した水準で、直近の
ドルの高値でした。レートも全く同じ142円25銭で、やはりこの水準が意識さ
れたものと
見られます。もっとも、この水準をしっかり抜ければ、昨年の最高値151円93
銭までの間には抵抗らしい抵抗は見られず、ドルが一段と上昇する可能性もありま
す。直近の高値であったことと、すでに介入警戒水域に入っていることが、ちょっ
としたきっかけでドル売りをあぶり出す雰囲気もあります。
今夜からパウエル議長の半期に一度の議会証言が始まります。
先ずは下院の金融委員会で、議員の質問に答えることになります。
「今年3月以降、シリコンバレー銀行(SVB)など一連の銀行破綻が相次ぎ、米
金融当局はきびしい批判にさらされた。その後、最も深刻な金融面の緊張は和らい
だものの、与信の引き締まりが米経済にどの程度の影響を及ぼし、それが金融政策
運営にどのような意味を持つのか、民主・共和両党の議員を安心させることが課題
となる」とブルームバーグは論じています。
また、FOMCメンバーの金利予測分布図(ドット・プロット)では、政策金利の
中央値が年末までに5.6%まで上昇するとの予想が示され、前回予測よりも0.
5ポイント上昇したにもかかわらず、6月会合では利上げが見送られた経緯などに
も質問が及びそうです。22日には上院銀行委員会での証言が続きます。
パウエル議長は証言の中で、おそらくこれまでの累積である5%という「大幅利上
げの効果を見極める段階だ」と説明するのではないかとみています。また、その効
果の遅行性や時差についても言及があるかもしれません。
5月の住宅着工件数が予想を大きく上回る「163.1万件」(年換算)でした。
これは2016年10月以来となる高水準です。
米住宅市場は、昨年3月の利上げ開始以降減速傾向を示し、住宅ローン金利の上昇
にほぼ連動する形で鈍化傾向を見せていました。
今回の上振れが単月に終わるのかどうかを見極める必要がありますが、住宅着工の
先行指標となる「建設許可件数」も前月比で5.2%の増加を示し、住宅建設が経
済成長押上に寄与する可能性も指摘されています。
また前日発表された全米ホームビルダー協会(NAHB)の6月の住宅市場指数も
「55」と、11カ月ぶりの高水準でした。
ここでは、中古住宅の在庫不足により、新築物件に対する買い意欲が高まっている
と分析されています。住宅市場の今後の動向が、米景気のリセッション入りの可能
性を占う上でも一つのカギとなりそうです。
ドル円は昨日の高値から1円程下げてきました。
達成感や警戒感からドル売りが持ち込まれた結果かと思いますが、市場は7月会合
での利上げの有無を探っている段階です。
多くの経済指標の中でも、再び雇用統計と消費者物価指数のデータが大きな比重を
占めることになりますが、上でも述べたように、パウエル議長の今後の政策スタン
スも重要になります。
本日のドル円は140円50銭~142円程度を予想します。
- [2023/06/21 09:23]
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ドル円、薄商いの中142円に
ひと目で分かる昨晩の動き
欧州市場
◆東京時間には、株価の大幅下落にもかかわらずドル円は底堅く
推移。欧州時間朝方には142円に載せる場面もあり、堅調に
推移。
◆ユーロドルはやや水準を切り下げるも1.09台は維持。
ECBの利上げも終盤に入ったとの声も。
◆6月NAHB住宅市場指数 → 55
本日の注目イベント
◆豪 RBA議事録
◆日 4月鉱工業生産(確定値)
◆独 独5月生産者物価指数
◆欧 ユーロ圏4月経常収支
◆米 5月住宅着工件数
◆米 5月建設許可件数
◆米 ブラード・セントルイス連銀総裁講演
◆米 ウィリアムズ・NY連銀総裁講演
NY市場が休場のため大きな値動きは見られませんでしたが、ドル円は欧州時間
の朝方には142円台に載せる場面がありました。特段材料もない中、中銀によ
る金融政策の方向性の違いが重しとなり円売りの流れが続いています。
ただ、今朝の欧州からの報道の中には、ECBの一連の利上げもFRB同様、終
盤に入ったとの声も出てきました。ECBの政策委員会のメンバーでもあるギリ
シャ中銀のストゥルナラス総裁は19日、「われわれは金利上昇サイクルの終わ
りに近づいているが、まだそこには至っていない」としながらも、「金融の安定
を確保し、経済をリセッションに追いやることを避けながら、インフレを抑制す
る必要がある」と述べていました。
現時点での市場のコンセンサスは、FRBはあと1回の利上げで、ECBはあと
2回必要との見方が有力となっているようです。
中国を訪問中のブリンケン国務長官は、秦剛同国外相との会談を終えてから立て
続けに同国要人との会談を行いました。中国外交トップの王毅氏との会談の後、
習近平主席とも会談を行っています。
昨日の夜のニュースでもその様子が放映されており、目立った成果はありません
でしたが、それでも中国高官の早期のワシントン訪問と、それに次ぐ米中首脳会
談の可能性は残されたようで、米中関係に「前向きな一歩」があったとの印象で
す。ブリンケン氏は、「両国の今後のより良いコミュニケーションと関与が可能
になることが私の望みであり期待だ」と述べています。習氏も「幾つかの点で進
展し合意に達した」と述べているようです。
ただ一方でブリンケン氏は、「この関係の難しさについて幻想を抱いてはいけな
い」とし、「双方の考えが深く異なり強く相反する問題も多い」と語っています。
また中国側も国営テレビが同国外務省の楊濤氏の発言を伝えています。それによ
ると、楊氏は「中国と米国の関係は両国の外交関係が築かれて以来最悪のレベル
だ」とし、「現在の問題は米国側の中国に対する誤った理解と、誤った対中政策
が原因だ」と批判し、ブリンケン氏に対しても「中国が脅威だとの主張を米国は
やめるべきだ」としたほか、「対中制裁は違法であり、終わらせるべきだ」と指
摘。また、「中国の技術発展の抑制や中国の内政への干渉をやめるよう伝えた」
としています。
最後に、「習近平主席がブリンケン氏と面会したのは『儀礼』にのっとったもの
だ」とも発言しています。(ブルームバーグ)
今朝のブルームバーグは、今回の一連の会談を「矛盾」といった大きな見出しを
付して伝えていました。
今回の会談では、米国が先に動いた印象です。「対話か対決か」の選択を迫られ
ている状況の中、このままでは不測の事態も想定される現状を、米国としても修
正の糸口を探るため国務長官訪中という「ボール」を中国側に投げ、中国側がそ
のボールをどのように投げ返してくるのかを探ったのだと思われます。台湾問題
を中心に、中国は決して妥協することはないと思われ、米中トップ会談の実現は
そう簡単ではないのかもしれません。
米財務省は半期ごとに公表している「外国為替報告書」を16日に発表し、日本
が2016年以降で初めて「監視対象国指定リスト」から除外されたことが判明
しました。
米国財務省が公表している「為替操作国」として判断する基準は3つあります。
1.対米経常黒字額が国内総生産(GDP)比2%以上
2.対米経常黒字額が年間200億ドル(約2兆8400億円)以上
3.為替市場介入の総額がGDP比2%以上
となっています。財務省の神田財務官は昨日、監視対象から外れたことに対して
、「歓迎する。当局同士で緊密な意思疎通を図ってきたことが評価されたところ
もあると思う」と述べています。
昨年、円が大幅安に振れた段階では145円と151円台などで3回も市場介入
を行っており、今回の決定を見ると、それらの介入には米国側の理解が示された
とも受け止められます。ただ介入を頻繁に行うようだと、再び「為替操作国」に
逆戻りするリスクはあります。足下では142円台まで円安が進んできており、
財務省・日銀にとっても今回の決定が今後さらに円安が進んだ場合の介入姿勢に
若干追い風になるかもしれません。
もし昨年に続いて介入があるとすれば、その水準は145円前後かと考えていま
す。
本日のドル円は141円~142円80銭程度を予想します。
- [2023/06/20 10:32]
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ドル円は日銀会合をきっかけに大幅上昇
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆140円台半ばで推移していたドル円は、午後3時半から始まった
植田総裁の会見をきっかけに141円台まで上昇。NYではFRB高官発言や
中銀の金融政策の差に注目した円売りが加速し141円91銭まで上昇。
◆ユーロドルではドル安の流れが続き、1.0970までユーロが買われる。
◆株式市場は3指数が7日ぶりに反落。3連休を控えていることや、
連日の上昇もあり、利益確定の売りが優勢に。
◆債券は反落し、長期金利は3.76%台に上昇。
◆金は横ばい。原油は続伸し71ドル台に。
◆6月ミシガン大学消費者マインド(速報値) → 63.9
本日の注目イベント
◆中 中国首相、ドイツとフランスを訪問(18-23日)
◆米 6月NAHB住宅市場指数
◆米 NY休場(奴隷解放記念日)
前日141円台半ばまで上昇したものの、NYでは139円台後半まで押し戻されたド
ル円でしたが、先週末には再び141円台まで買われ、NYでは141円91銭と、昨
年11月下旬の水準までドル高が進みました。再び年初来のドル高水準を更新していま
す。きっかけは相変わらず日銀の金融政策決定会合と、その後行われた日銀総裁の発言
でした。
これまでの黒田総裁のケースと全く変わらず、発言するたびに、面白いように円が売ら
れていく様子が見られました。
日銀は市場予想通り大規模緩和策の維持を決定し、午後3時半から始まった植田総裁の
発言でも、むしろ円売りを加速させるような効果しかありませんでした。
植田総裁は、「企業が積極的になり始めた値上げや賃上げを見極めるのになお時間がか
かる」とした上で、「速やかに正常化した場合、目標に達する前にインフレ率は下がる
リスクがある」と説明し、イールドカーブ・コントロール(YCC)を含めて、現状維
持を決定した理由を述べています。
また従来通り、「拙速な緩和修正が、ようやく出て来た物価と賃金上昇の好循環の芽を
つぶしかねない」との慎重な姿勢を維持した上で、YCC修正は、「ある程度のサプラ
イズはやむを得ない」との認識を示しました。
この発言は、今後物価見通しが大きく変われば、政策変更を行うことがあることを意味
していると思われますが、その際事前にフォワードガイダンス等の「予告」もなしに行
う可能性があることを示唆したものと受け止めています。
海外に目を向ければ、インフレが依然根強いとして予想外の追加利上げに踏み切ったカ
ナダ中銀やオーストラリア準備銀行。さらにECBは今回の会合で0.25ポイントの
利上げを決めた上で、「7月も利上げの可能性が非常に高い」とラガルド総裁自身が述
べるなど、日銀との金融政策の方向性は歴然としています。
先週末のNY市場でも、ドル円では円が大きく売られ「ドル高」が進んだ一方、ユーロ
ドルではユーロが買われ「ドル安」が進むなど、基軸通貨ドルに対する動きが正反対で
した。
このため、ユーロ円は2008年9月以来となる155円30銭前後まで上昇していま
す。
円は他の通貨に対しても全面安の展開で、今後原油など、多くの輸入品の値段に跳ね返
って来るものと思われます。
焦点は、それでも日銀が想定するように、秋口には日本のインフレ率が2%を下回るの
かという点です。
ウォラーFRB理事は16日オスロでの講演で、「はっきり言うが、FRBの仕事は金
融政策を使って二つの責務を達成することであり、それは現時点ではインフレ退治のた
めの利上げを意味する」とし、さらに、「一部の銀行の経営不振を心配して金融政策の
運営姿勢を変更することは支持できない」と述べています。
もともとタカ派のイメージが強いウォラー理事でしたが、今回の発言もかなりのもので
す。
また、リッチモンド連銀総裁のバーキン総裁もメリーランド州での講演で、「インフレ
率2%が当局の目標だとあらためて言っておきたい。需要減速によってインフレが比較
的早くその目標に戻るという妥当性の高いシナリオに確信を得たいと、私は依然考えて
いる」と語っています。
先週のFOMCでは11会合ぶりに政策金利の据え置きを決めましたが、パウエル議長
を始め、多くのメンバーがこのような「タカ派寄り」発言を行うということは、想定内
のことです。今後もこのような発言が相次ぐ可能性があり、市場はそれでもその発言の
影響を受ける可能性もあり、注意は必要です。
ブリンケン国務長官は18日中国を訪れ同国の秦剛外相と会い、当初の予定時間を大幅
に上回る7時間半にわたって会談を行いました。
共同声明のようなものはないかもしれませんが、米国側は、「率直で実質的、建設的だ
った」と評価し、中国国営テレビ局も、「率直で深く、建設的だった」と同様の表現で
総括しています。またブリンケン長官は、「お互い適切な時期にワシントンを訪問する
ことを秦外相に求め、同氏がこれを受け入れた。今回の会談が関係緊密化につながり得
ると両国がみていることを示唆する」と述べています。(ブルームバーグ)
本日のドル円は141円~142円80銭程度を予想します。
- [2023/06/19 09:40]
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ECB、0.25ポイントの利上げを決定
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆ドル円は東京時間夕方には141円50銭前後まで買われ、
直近高値を抜けたがNYでは反落。経済指標は強弱まちまち
だったが、米長期金利の低下やユーロ高の影響もあり140円
16銭まで下げる。
◆ユーロドルは利上げを材料に続伸。1.0952まで買われ、対円でも
153円65銭近辺まで上昇。
◆株式市場は3指数が続伸。AIを巡る高揚感が相場をけん引。
ダウは428ドル上昇。
◆債券価格は上昇。長期金利は3.71%台に低下。
◆金は小幅に続伸。原油価格は中国の景気刺激策を好感し大幅に反発。
◆米 新規失業保険申請件数 → 26.2万件
◆米 5月輸入物価指数 → -5.9%
◆米 5月輸出物価指数 → -1.9%
◆米 6月NY連銀製造業景況指数 → 6.6
◆米 5月小売売上高 → 0.3%
◆米 6月フィラデルフィア連銀景況指数 → -13.7
◆米 5月鉱工業生産 → -0.2%
本日の注目イベント
◆日 日銀金融政策決定会合
◆日 植田日銀総裁記者会見
◆欧 ユーロ圏5月消費者物価指数(改定値)
◆米 6月ミシガン大学消費者マインド(速報値)
◆米 ウォラー・FRB理事講演
◆米 ブラード・セントルイス連銀総裁講演
◆米 バーキン・リッチモンド連銀総裁講演
2大イベントを終え、相場は材料不足から値動きが限定的になると考えましたが、
予想は大きく外れ、失礼いたしました。昨日の東京時間には終始ドル買いが優勢と
なり、5月30日に記録したドルの直近高値140円93銭を抜けてからも上昇が
続き、夕方には141円50銭前後までドル高が進みました。
ECB、日銀の政策会合を控え、再び「金利差」や「金融政策の方向性の違い」が
意識されたようです。
その結果、円は対ドルだけではなく、他の主要通貨に対しても大きく売られ、まさ
に「円全面安」の展開でした。何やら昨年の秋を彷彿させるような動きでした。
豪ドル円は昨年9月15日以来となる96円72銭まで買われ、ユーロ円に至って
は、2008年9月、つまりリーマンショック当時の水準となる153円65銭近
辺まで値を飛ばしています。実際、ECBは予想通り0.25ポイントの利上げを
決めた一方、本日の日銀決定会合では「政策据え置き」が予想されており、植田総
裁も追い詰められそうな展開です。
この先、円がさらに売られようであれば、日本の物価上昇率は日銀が予測している
ように、秋までに2%を下回る可能性も低下しそうです。植田総裁にも圧力がかか
ることになるでしょう。
ECBは予想通り政策金利を4%、中銀預金金利を3.5%にすることを決めました。
ラガルド総裁は会見で相変わらず分かり易い言葉で、
しかも丁寧に、「Have we finished the Journey ?・・・・No!! 」「We are not
at Destination」(われわれはインフレ退治の旅を終えたと思うか? ノーだ。ま
だ目的地にはいない)と述べ、「7月の追加利上げの可能性は極めて高い」と発言
しています。また最終的な金利水準については、「ターミナルレートについてはコ
メントしたくない。そこに到達した時に分かるものだ」と答えるにとどめています
。ラガルド氏は、あらかじめ用意された原稿をただ単に読み上げる多くの中銀総裁
とは異なり、「自分の言葉で」丁寧に説明し、分からないものには率直に「勉強不
足です」と答えるなど、その真摯な姿勢に非常に好感を持てます。
中銀にとって大切な「市場との対話」という点では、ドラギ前総裁より一段と具現
化したと考えます。
7月の会合で実際に利上げを行うかどうかは分かりませんが、短期金融市場では1
0月までに中銀預金金利が4%まで達する確率を約80%まで織り込んでいます。
本日からブリンケン米国務長官が中国を訪問します。場合によっては習近平氏との
会談の可能性もあるかもしれません。
言うまでもなく、米中関係はここ10年間では最悪の状況になっています。
台湾を巡る緊張や、中国企業の米国内からの排除など、軍事的にも経済的にもこれ
までになかったほど緊張が高まっています。
そのような中、ブリンケン氏が訪中し、緩和の糸口を探るようですが、バイデン・
習トップ会談につながるのか注目されています。キッシンジャー元国務長官はブル
ームバーグとのインタビューで台湾問題に触れ、「現在の関係の軌道では、何らか
の軍事衝突はあり得ると思う」と述べ、「しかし、関係の現在の軌道は変更されね
ばならないと考えている」と付け加えています。
すでに100歳になるキッシンジャー氏ですが、まだその舌鋒は鋭いようです。
本日の日銀決定会合では、政策変更はないと予想していますが、上でも述べたよう
に、政策変更へのプレッシャーは相当あります。
日本の物価上昇が「持続的、安定的に2%の目標を維持できる」のかどうかが今後
のカギになりますが、日銀のハト派姿勢が続く限り円安は進み、輸入物価に上昇圧
力がかかるといったジレンマに陥ります。変更や修正はないとは思いますが、昨年
12月の「黒田ショック」の例もあります。注意するに越したことはありません。
長期金利の上限を0.25%から0.5%に突如引き上げたことで、その日だけで
約6円も円高に振れたことは記憶に新しいところです。
本日のドル円は139円50銭~141円50銭程度と予想します。
- [2023/06/16 09:50]
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FOMC、11会合ぶりに利上げ見送りを決定
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆ドル円はNYでは、米金利の低下を受け寄り付き直後から売られ
139円29銭まで下落。午後にはFOMCでの予想通りの結果を受け
ドルは買い戻され、140円17銭まで上昇。高値圏で引ける。
◆ユーロドルは買われ、およそ1カ月ぶりに1.0865まで上昇。
◆株式市場はまちまち。ダウは232ドル売られたが、ナスダックは
53ポイント上昇し、S&P500はほぼ横ばい。
◆債券は買われ、長期金利は3.78%台に低下。
◆金は反発し、原油は在庫が予想より増加していたことから反落。
◆5月生産者物価指数 → 1.1%(前年同月比)
本日の注目イベント
◆豪 豪5月雇用統計
◆日 5月貿易統計
◆中 中国5月小売売上高
◆中 中国5月鉱工業生産
◆欧 ECB政策金利発表
◆欧 ラガルド・ECB総裁記者会見
◆欧 ユーロ圏4月貿易収支
◆米 新規失業保険申請件数
◆米 5月輸入物価指数
◆米 5月輸出物価指数
◆米 6月NY連銀製造業景況指数
◆米 5月小売売上高
◆米 6月フィラデルフィア連銀景況指数
◆米 5月鉱工業生産
FRBは今朝の会合で昨年3月に利上げを決めて以来、11会合目にして、ようやく
利上げ見送りの決定を行いました。予想通りの結果です。ただインフレ鎮静化に向け
て引き締めを再開する可能性が高いとのシグナルも発しており、市場の見通しよりも
多い追加利上げが予想されます。
声明文では、「最近の複数の指標は、経済活動が緩慢なペースで拡大を続けているこ
とを示唆する。雇用の伸びはここ数カ月堅調で、失業率はまだ低い。インフレは依然
として高水準にある」とし、「委員会はより長期にわたって最大限の雇用と2%のイ
ンフレを達成することを目指す。これらの目標実現を支えるため、委員会はフェデラ
ル・ファンド(FF)金利誘導目標のレンジを5-5.25%に据え置くことを決め
た。委員会は金融政策の累積的な引き締めや、金融政策が経済活動とインフレに与え
る影響の遅行性、経済や金融の情勢を考慮する」と述べています。
パウエル議長は会見で、「インフレを鈍化させるためには2023年中に幾分かの追
加利上げが適切になると、ほぼ全ての政策当局者が予想している」と説明しています。
また議長は、「インフレ圧力は高い状態が続いており、インフレ率を2%に戻すプロ
セスにはまだ長い道のりが残されている」と語っています。この辺りのコメントがや
はり「タカ派寄り」と思われ、想定通りでした。議長はさらに、これまで連続で5%
もの大幅利上げを行ったことを踏まえて、「FOMCは今会合で金利を据え置くこと
が賢明と判断した」とし、「われわれの政策は広い領域をカバーしたが、引き締めの
十分な効果はまだ実感されていない」とも述べています。
7月会合では追加利上げがあり得るかどうかは明言を避けていますが、結局これまで
通り、これも今後のデータ次第ということです。
同時に発表されたFOMC参加者による最新の経済・金利予測では、中央値で政策金
利が年末までに「5.6%」に上昇すると予想されていることが示されています。
これは前回の予想「5.1%」から、0.5ポイント上昇したことになります。
現在の水準から0.25ポイントの利上げが2回実施されることが示唆されています
が、FOMC会合は次回7月会合を含め年内はあと4回予定されています。
どの会合で利上げが行われるのか、また都合0.5ポイントの利上げがあるのかどう
かも、やはり今後のデータ次第ということです。
NYでは朝方には139円台前半までドルが売られましたが、このドット・プロット
とパウエル議長の「タカ派寄り」の発言が効いたのか、その後140円台まで値を戻
しています。
ただ、今回は注目されていたほど、大きな値動きにはつながらなかった印象です。
国防情報の意図的な保持や不正な文書隠蔽、司法妨害の共謀、虚偽の説明など7つの
罪に問われ、37件の個別事案で起訴されたトランプ前大統領は、フロリダ州マイア
ミの連邦地裁に出廷し、全て無罪を主張しました。
トランプ氏はその後、ニュージャージー州にある自身のゴルフリゾートで演説を行い
、「今日は不名誉な日になるだろう」と語り、「私は法に従ってきた人物だ。バイデ
ン氏と同氏の腐敗した司法省は法を免れている」とバイデン政権を批判し、「私には
これら文書を保有するあらゆる権利があった。個人的な資料を大統領の記録と分ける
決定は、大統領がその任期中に大統領の単独の裁量で行うものだ」と主張し、「彼ら
はこの案件を直ちに取り消すべきだ」と論じていました。(ブルームバーグ)
裁判の結果が出るには時間がかかりますが、トランプ氏自身が言うように、今回の起
訴で同氏への支持率は上がっているようですが、それは共和党の支持者の話であって
、無党派層の支持率は下がっていると見られます。今後裁判の結果次第では、共和党
候補者への資格そのものが剥奪される可能性もあります。
2大イベントを終えて、ドル円はこれまでのレンジである139円―141円前後の
壁を破ることはありませんでした。これでやや材料不足になることも予想され、動き
も緩慢になるかもしれません。
本日のドル円は139円20銭~140円70銭程度を予想します。
- [2023/06/15 09:36]
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米1年先のインフレ期待低下
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆欧州市場では139円05銭付近まで下げたドル円はNYでは
反発。米金利が上昇したことで139円76銭まで買われたが、
その後再び反落。
◆ユーロドルも引き続き1.07台で推移し、値幅も限定的。
◆株式市場は3指数が揃って3日続伸。ナスダックとS&P500は
昨年4月以来となる高値を付ける。
◆債券はほぼ変わらず。長期金利は小幅に低下。
◆金は続落。原油価格は米景気の減速見通しやゴールドマンの
予測もあり、3ドルを超える大幅安。
◆5月財政収支 → -240.3b
本日の注目イベント
◆豪 豪6月ウエストパック消費者信頼感指数
◆豪 豪5月NAB企業景況感指数
◆独 独5月消費者物価指数(改定値)
◆独 独6月ZEW景況感指数
◆英 英ILO失業率(2-4月)
◆英 英5月失業率
◆英 ベイリー・BOE総裁、上院委員会で証言
◆米 5月消費者物価指数
◆米 イエレン財務長官、下院金融委員会で証言
今夜は注目の「米5月の消費者物価指数(CPI)」が発表されます。
発表を控え市場は動きにくい中、昨日は東京市場の後半から欧州市場にかけては
ドルが売られ、ドル円は139円05銭近辺まで下げましたが、NYでは一転して買われ、
139円76銭を付けています。もっとも、その後は再び下落基調となり、139円台前半
までドル安が進んでいます。
CPIの市場予想は昨日も述べましたが、総合で「4.1%」、コアで「5.2%」(いず
れも前年同月比)で、先月よりも伸びが鈍化していると見られています。そして、翌日に発
表されるFOMCの金融政策についても、ここに来てほぼ「利上げ見送り」で固まってきた
ようです。もちろん、CPIが大幅に上昇していれば、利上げ継続の可能性は残っています
が、そうなれば結構な「サプライズ」ということになります。予想通り利上げが見送られる
と、11会合ぶりの利上げ休止となり、市場はその先の7月会合の動向に目を向けることに
なります。昨日も述べたように、会見ではパウエル議長が「タカ派寄り」のメッセージを発
信し、市場の楽観論をけん制するのではないかと予想しています。インフレとの闘いは、鈍
化スピードは別として、これまではある程度順調に機能してきたと言えると思いますが、ま
だ道半ばです。
FRBは、目標である2%の物価上昇が持続的かつ安定的と判断できるまでは、決して手綱
を緩めることはないと思われます。
その闘いにも追い風が吹いています。
NY連銀が調査した米消費者のインフレ期待が低下しています。
NY連銀が12日発表した「消費者期待調査」によると、1年先のインフレ期待は「4.1
%」と、先月から0.3ポイント下げ、2021年5月以来の低水準となりました。ただ、
3年先のインフレ期待は「3%」、5年先は「2.7%」と、共に0.1ポイント上昇して
います。
NY株式市場では主要3指数が揃って3日続伸しました。ダウは5日続伸で3万4000ド
ルの大台を回復し、先行して上昇しているナスダックとS&P500は、昨年4月以来の高
値を付けています。
一方米長期金利は、先週は上昇基調を強めていたものの、昨年10月に記録した4.24%
からはかなり低い水準(価格は上昇)で推移しています。
つまり、株も債券も買われていることになります。
今朝のブルームバーグの記事に「どの市場が間違っているかが問題」といった見出しを冠し
た記事があります。
株は「リスク資産」、債券は「安全資産」の代表であり、それぞれ買われる時の市場環境が
基本的には存在します。
2019年から2020年にかけて株と債券が揃って買われた、いわゆる「ゴルディロック
ス相場」がありましたが、その後新型コロナウイルスのパンデミックで崩壊し、長くは続き
ませんでした。
ドル円は基本的には債券の利回りに引っ張られる傾向がありますが、それでも株価が大きく
下げれば、「リスク回避の円買い」といった言葉も飛び交います。
債券と株式の価格にこの先調整が起これば、ドル円にも影響があることから、注意が必要で
す。ブルームバーグは、「株式と債券の乖離が広がっている現在の状況に基づくと、インフ
レのボラティリティーに関する債券市場の価格設定が正しいとすれば、株式には20%の下
落余地があることが示唆される」というJPモルガンのモデルを紹介しています。
今後の見立てについては専門家の間でも意見が分かれているのが現実で、これが市場のボラ
ティリティーを高めることにもなっています。
本日のドル円は138円~140円50銭程度を予想します。
- [2023/06/13 09:28]
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今回は利上げ見送りか?
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆ドル円は139円台前半で始まったが、その後139円台半ば
まで上昇。FOMCとCPI発表を控え動きは緩慢。
◆ユーロドルは1.07台で推移し、前日とほぼ同様な動き。
◆株式市場は3指数が揃って続伸。ダウは4日続伸し、S&P500は
一時4300ポイントに載せる場面も
◆債券は売られ、長期金利は小幅に上昇。
◆金は小幅安。原油も売られ70ドル台前半まで下げる。
本日の注目イベント
◆米 5月財政収支
◆米 バイデン大統領、 NATO事務総長と会談(ホワイトハウス)
前日138円台後半まで売られたドル円は、東京から欧州市場にかけては
反発したものの、NYの朝方には139円台前半まで再び売られる場面も
ありました。ただその後は139円台半ばまで上昇していますが、いよい
よ今週発表される「5月の消費者物価指数(CPI)」と、FOMC会合
を控えて動きづらい展開です。
現時点での6月会合での予想は、どうやら「利上げ見送り」に落ち着きそ
うです。同会合についてブルームバーグは、「6月13―14日に開かれ
るFOMC会合で、当局者らは政策金利を5-5.25%のレンジに据え
置くと予想されている」と報じ、さらに「過去1年余りにわたって利上げ
を実施してきた米金融当局が、一休みする準備を整えている。ただし、必
要に応じて利上げを続ける用意があると強く示唆する可能性が高い」と分
析しており、これが現時点でのコンセンサスに近いものと思われます。
5月のCPIは総合で前年比4.1%(4月は4.9%)と予想され、コ
アCPIでは5.2%(4月は5.5%)とみられ、いずれも前月よりも
伸びが鈍化していると予想されています。ただそれでもFRBが目指す2
%からは倍以上のインフレ率であるため、かりに結果が予想通りであった
としても、パウエル議長は「タカ派姿勢」を見せるものと予想しています
。例えば、「われわれには、まだやらなければならない仕事が残っている
」といった様なタカ派発言が予想されます。
同時に、仮に利上げが見送られたとしても、「金融引き締めは終ったわけ
ではなく、今後も必要なら追加利上げを行う用意がある」といった文言も
想定されます。
これらは、CPIが想定よりも低く、改善されていたとしても発せられる
と考えます。
一方想定よりもインフレ率の鈍化が進んでいないようであれば、さらに強
いメッセージが発せられる可能性もあると考えます。その場合には、6月
会合で利上げが見送られても市場は7月会合での追加利上げ、あるいはそ
の先まで織り込む動きを見せるかもしれません。注意したいところです。
トランプ前大統領はフロリダ州マイアミの自宅で見つかった機密文書の返
還を拒んだ問題で起訴されています、起訴状によると、トランプ氏は国防
情報に意図的な保持や不正な文書隠蔽、司法妨害の共謀、虚偽の説明など
7つの罪に問われ、37件の個別案件で起訴されています。大統領経験者
が連邦犯罪で起訴されるのは初めてのこととなり、トランプ氏は「司法の
茶番だ」と反発しています。また、バイデン大統領はこの件については、
「ノーコメントだ」として、言及を控えています。
今回の起訴で、2024年の大統領選の共和党候補への出馬を決めている
トランプ氏にとっては、相当強い逆風になるとみられます。
先週同共和党候補への出馬を正式に宣言した前副大統領のペンス氏でさえ
、暗にトランプ氏の行為を批判していました。
「仮に有罪判決となった場合、罪状次第で収監もしくは公職に就く資格の
剥奪などにつながる可能性を意味する」(ブルームバーグ)とのことです。
ウクライナのゼレンスキー大統領は10日、ロシアに対する地上で反転攻
勢を開始したことを強く示唆していました。ゼレンスキー氏は訪問したカ
ナダのトルドー首相との共同記者会見で、「ウクライナで反転攻勢と防御
が行われている」と指摘し、「規模についてはコメントしない。司令官ら
とは連絡を取り合っている。みな前向きな雰囲気だ」と述べています。
一方ロシアのプーチン大統領は、「ウクライナによる全ての試みは、これ
までのところ失敗している」と主張しています。
またプーチン氏はベラルーシのルカシェンコ氏と会い、ロシアの戦術核兵
器のベラルーシへの配備について、「7月7日か8日に保管施設を完成さ
せたあとただちに核の配備を開始する」と、核施設の配備が順調に進んで
いることに言及しています。
本日のドル円は138円80銭~139円80銭程度を予想します。
- [2023/06/12 09:47]
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新規失業保険申請件数を受けドル円138円台に
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆昨日の朝方には140円に載せる場面もあったドル円はその後軟調な
展開となり、NYでは大きく下落。新規失業保険申請件数が大幅に
増加していたことでドル売りが強まり、138円82銭まで売られる。
◆ユーロドルは反発。1.07台を回復し、1.0787まで上昇。
◆株式市場は新規失業保険申請件数を受け3指数が揃って上昇。
S&P500は26ポイント上昇し、昨年10月の安値から20%戻し、
強気相場入りしたとの声も。
◆債券も反発。長期金利は3.71%台に低下。
◆金は大きく反発。原油は売られる。
◆新規失業保険申請件数 → 26.1万件
本日の注目イベント
◆中 中国5月消費者物価指数
◆中 中国5月生産者物価指数
◆加 カナダ5月就業者数
◆加 カナダ5月失業率
やはり米国にとって「悪材料は、好材料」の流れは続いているようです。
昨日発表された「新規失業保険申請件数」は、市場予想の「23.5万件
」に対して「26.1万件」と、先週から2万8000件も増えていまし
た。前の週からの増加幅としては、2021年7月以来の大きさでした。
ただ、これで好調な労働市場にも変化が出て来た「兆候」と判断するのは
早計です。申請件数のデータは特に祝日前後には変動が大きくなり易いと
されています。今回の対象となった先週は、29日(月)が「メモリアル
デー」で祝日でした。そのため、より変動の少ない申請件数として知られ
る「4週移動平均」で判断する方が、実態を反映しているとされています
。「4週移動平均」を見ると、今年2月からは明らかに増加傾向が続き、
3月第4週には「24万2000件」とピークを付け、その後低下傾向を
見せてはいましたが、今回の移動平均では「23万7250件」と再び上
昇に転じています。
今後同移動平均が上記3月のピークを抜くようだと、新たな「兆候」と判
断出来るかもしれませんが、まだ時間が必要です。
今回の統計は、増加している米企業のレイオフ発表が実際の雇用削減につ
ながり始めた可能性を示唆しているとも受け取れますが、「メモリアルデ
ーの祝日のため通常より営業日が短かったことを反映している。今回の急
増は何らかのシグナルというより、ノイズであったとの疑念を抱かせるは
ずだ。来週発表されるデータを見てから結論を導き出したいと強く思って
いる」といったエコノミストの意見をブルームバーグは紹介しています。
それにしても同指標は、通常それほど注目されている指標ではなく、発表
後にこれほど市場が反応したことにやや驚きがあります。
裏を返せばFOMCを前に、市場はそれほどセンシティブになっていると
いうことなのでしょう。ドル円は昨日の朝方には140円台に載せる場面
もありましたが、138円台後半までドル売りが進みました。ここ2週間
はほぼ139円前後から140円台でのレンジが続いています。
失業保険の申請件数増加は、離職者が増えていることにつながり、来週の
FOMCでの利上げ見送りを正当化することになり、ドル売りを加速させ
ました。その他にも株価と債券価格も上昇し、ドルが売られたことで金ま
でも買われています。来週13日発表の「5月の消費者物価指数」では、
これ以上の影響がマーケットにもたらされそうです。
ユーロ圏の1-3月期GDP改定値が前期比「マイナス0.1%」と、速
報値から下方修正されました。ロシアのウクライナ侵攻を受けたエネルギ
ー急騰が響いたようです。これで2四半期連続のマイナス成長となり、教
科書的に言えば「リセッション入り」したことになります。米国に先行し
てリセッション入りしたことになり、新型コロナウイルスのパンデミック
以降で初めてのリセッションが確認されたことになります。今四半期はプ
ラス成長を回復したとみられるため、域内各国政府は財政支援の縮小を続
ける見込みで、ECBも引き締め策を変更することはないと予想されてい
ます。
本日のドル円は138円~139円80銭程度を予想します。
- [2023/06/09 09:37]
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カナダ中銀利上げでドル円140円台に
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆カナダ中銀が予想外の利上げを決めたことで、ドル円は
139円前後から140円台に上昇。米金融当局による利上げが
続くとの見方から140円25銭までドル高に。
◆ユーロドルは引き続き方向感が見えず、1.07台前半で小動き
◆株式市場は米金利が大きく上昇したことを受けナスダックが
大幅な下げに。ダウは91ドル上昇するなど、まちまちの展開。
◆債券は大幅に下落。カナダ中銀の利上げが飛び火した格好で、
長金利は3.8%近辺まで上昇。
◆金は3日ぶりに反落し、原油は反発。
本日の注目イベント
◆豪 豪4月貿易収支
◆日 1-3月GDP(改定値)
◆日 4月貿易収支
◆日 4月国際収支・貿易収支
◆日 5月景気ウオッチャー調査
◆欧 ユーロ圏1-3月期GDP(確定値)
◆米 新規失業保険申請件数
「カナダからの手紙」ならぬ、「カナダからの利上げ」により、ドル円は139円
を割り込みそうな雰囲気の状況から一転して買われ、140円25銭まで反発しま
した。カナダ中銀(BOC)は7日、市場予想に反して政策金利である翌日物金利
を0.25ポイント引き上げ、「4.75%」にすることを発表しました。
市場では今回の会合では利上げはないと予想していたこともあり、発表後カナダド
ルが買われたのはもちろんですが、米国のインフレも終わらないとの見方が強まり
、金利上昇に弱いナスダックと米債券が大きく売られ、長期金利は3.8%に迫る
水準まで上昇。金利上昇に反応してドル円は発表後に1円以上も円安が進みました
。前日にはオーストラリア準備銀行(RBA)が予想外の利上げを決めたこともあ
り、主要国でのインフレの波はまだ引く気配がないというのが共通の認識になりつ
つあります。
BOCは声明で、「経済における需要過剰は総じて、想定より根強いように見受け
られる」と指摘し、「需給のバランスを取り戻し、インフレ率を持続的に2%の目
標へと回帰させられるほど、金融政策は十分ではなかった」と説明し、予想を上回
る1-3月期GDP成長率やインフレ率上昇、住宅市場での活動回復などを理由に
挙げています。
BOCは昨年インフレの波が世界中に伝播した際、他の中銀に先行する形で利上げ
に踏み切り、また大幅な利上げの効果を見極めるため、これも他の中銀に先駆けて
利上げを見送るなど、同中銀には機動性と先見性があるように、筆者は感じていま
す。
そのBOCが再び利上げに踏み切ったことで、FOMCにも何らかの影響を与える
可能性もあるかもしれません。
経済協力開発機構(OECD)は7日最新の経済見通しで、「持続的インフレと主
要国・地域の中央銀行による景気抑制的な金融政策が影響し、今年と来年の世界経
済の回復ペースが、新型コロナウイルスのパンデミック以前の勢いを取り戻せず、
ロシアのウクライナ侵攻に伴うショックからの回復も弱い」との予測を発表しまし
た。
今年の世界の経済成長率は「2.7%」で、来年は「2.9%」と、パンデミック
前7年間の平均である「3.4%」にはいずれも届かないとの予想でした。
国別では、日本は今年が「1.3%」、と3月の「1.4%」から引き下げ、来年
は「1.1%」に据え置いています。
また米国は今年「1.6%」、来年「1%」、ユーロ圏の今年は「0.9%」、来
年を「1.5%」とし、中国は今年「5.4%」、来年「5.1%」と予測し、相
対的に緩慢な回復を予想しています。(ブルームバーグ)
トルコリラが再び最安値を更新しています。
エルドアン大統領が新政権の財務相に起用した元メリルリンチ(現BofA)のス
トラテジストのシムシエキ元副首相が同国中央銀行に対して、国営銀行を通じた為
替市場への介入を緩和するよう要請したと、事情に詳しい関係者が7日ブルームバ
ーグに明らかにしたことがきっかけでした。
ブルームバーグは「複数のトレーダーによると、国営銀行がリラ防衛のためドル売
りを停止した。新政権がコスト負担の大きい為替介入を断念する兆候とみられてい
る」と報じています。リラはここ1年余りで最大の下落となり、対ドルでは一時2
3.17リラと、約7%安となり、対円でも5円台前半まで下げる場面があったよ
うです。
リラ円は昨年12月には6円台前半まで下げ最安値を記録しましたが、この時はド
ル円が大きく円高方向に振れたことが主因でした。
日銀決定会合で、10年債の誘導目標金利をそれまでの「0.25%」から「0.
5%」に突然拡大することを決めた、あの「黒田ショック」です。ドル円が137
円台前半からNYでは130円台半ばまで、急激に円高が進んだことでリラ円が急
落しました。昨日はその水準を大きく下回る場面がありました。
ドル円は139円から140円台で一進一退の展開です。
来週のFOMC会合では上記両国中銀の予想外の利上げもあり、再び0.25ポイ
ントの利上げを織り込む動きになるなど、先行きが見通せないだけに神経質な動き
になっています。
本日のドル円は139円~140円80銭程度を予想します。
- [2023/06/08 09:43]
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RBA2カ月連続の利上げを実施
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆様子見の雰囲気の中、ドル円は139円台半ばから140円の
狭いレンジ内で推移。来週のイベントを見極めたいとし、値幅は
46銭にとどまる。
◆ユーロドルも小動きにとどまり、1.06台で推移。
◆株式市場は小反発。ダウは横ばいながら、ナスダックは
46ポイントの上昇。
◆債券はやや買われ、長期金利は3.66%台に低下。
◆金は買われ、原油は下げる。
本日の注目イベント
◆豪 豪1-3月期GDP
◆日 4月景気先行指数(CI)(速報値)
◆日 4月景気一致指数(CI)(速報値)
◆中 中国5月貿易収支
◆中 中国5月外貨準備高
◆独 独4月鉱工業生産
◆英 英首相、訪米(8日まで)
来週のFOMC会合と消費者物価指数の発表を控え材料不足の中、多くのマーケット
では概ね小動きの1日でした。ドル円は通常NYでは1円程の値動きがありますが、
昨日はわずか46銭。米金利に大きな動きがなく、株式市場も小反発で取引を終えて
います。市場では6月会合での利上げ見送りを徐々に織り込んでいるようですが、7
月会合では0.25ポイントの利上げ見通しが優勢となっている状況です。今回の会
合で見送られるかどうかはまだ不明ですが、それでもFRBの利上げスタンスは続く
との見方が現時点ではコンセンサスのようです。
オーストラリア準備銀行(RBA)が予想外の利上げに踏み切りました。
RBAは昨日の政策会合で、政策金利であるキャッシュレートの誘導目標を「3.8
5%」から0.25ポイント引き上げ、「4.1%」にすることを決めました。
4月にはいったん利上げを停止しましたが、5月に続き0.25ポイントの利上げを
継続したRBAは、インフレの高止まりや、労働コストの上昇を背景に追加引き締め
もあり得ると示唆しています。
ロウ総裁は声明で、「インフレ率はピークを過ぎたが、なお高すぎる」と述べた上で
、「適切な時間枠でインフレ率を確実に目標に戻すには、金融政策の一定の追加引き
締めが必要かもしれない」との認識を示しています。
RBAの予想外の利上げを受け、豪ドルは対米ドルで0.6671近辺まで買われ、
対円でも昨年12月以来の高値となる93円25銭近辺まで買われるなど、急伸しま
した。
ロウ総裁は、さらに「特に経済の生産力が限られ、失業率がなお非常に低い状況を考
えれば、高インフレ持続の期待が物価と賃金の両方にとって、より大幅な押し上げ要
因になるリスクを政策委員会は引き続き警戒する」と語っています。(ブルームバー
グ)
これまで、92円台前半で何度も上昇を抑えられていた豪ドル円は、ドル円の水準に
もよりますが、上抜けしたことをチャートは示しています。
どうやら本各的な反転攻撃を開始したとみられるウクライナですが、ウクライナ当局
は6日、南部ヘルソン州のカホフカ水力発電所のダムをロシア軍が爆破したと発表し
ました。ドニプロ川西岸に位置する10の村落とヘルソン市の一部に洪水リスクがあ
るとして、ウクライナ内務省は住民に避難を呼び掛けています。
ゼレンスキー大統領は「欧州での人為的な環境破壊としてはこの数十年で最悪の事態
だ」と糾弾しましたが、いつものようにロシアのペスコフ報道官は、「ウクライナ側
による破壊行為だ」と述べています。この報道を受け、穀物市場では小麦価格が3%
上昇したとの報道もあります。
ウクライナはこの事態を重く受け止め、反転攻撃をさらに強める可能性もありそうで
す。
台湾を巡り米中関係がさらに厳しくなる中、ブリンケン国務長官は数週間以内に北京
を訪問し、政府高官らと協議をする予定があるとブルームバーグは伝えています。
ブリンケン国務長官は今年2月に北京訪問を計画していましたが、中国の偵察気球が
米領空を飛行したことを受け訪中を取り止めた経緯があります。
具体的な日程は明らかになっていませんが、習近平主席と会談する可能性もあるとし
ています。米中間の緊張は続いていますが、米国はハイレベルでの協議再開の機会を
模索している模様です。
- [2023/06/07 09:24]
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ドル円140円台は維持できず
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆昨日の夕方には140円45銭まで買われたドル円はNYでは反落。
ISM非製造業景況指数が予想を下回ったことをきっかけに、139円
25銭までドルが売られる。
◆ユーロドルは1.07を挟みもみ合い、方向感も出ない展開。
◆株式市場は3指数が反落。先週末の大幅高の流れは続かず、軟調な
サービス業の指標が重荷となる。
◆債券は小幅に反発。長期金利は3.68%台へとやや低下。
◆金は反発し、原油は続伸。
◆5月ISM非製造業景況指数 → 50.3
◆5月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値) → 54.9
◆5月S&Pグローバル総合PMI(改定値) → 54.3
◆4月製造業受注 → 0.4%
◆4月耐久財受注 → 1.1%
本日の注目イベント
◆豪 豪1-3月期経常収支
◆豪 RBA、キャッシュターゲット
◆独 独4月製造業新規受注
◆欧 ユーロ圏4月小売売上高
◆加 カナダ4月住宅建設許可件数
昨日は日経平均株価が予想通りというか、予想を超える大幅高を演じたことで
ドル円も底堅い動きでした。日経平均は700円近く上昇し、33年ぶりとな
る3万2000円の大台に乗せて引けています。
このところの日本株の上昇には、円安、日銀の緩和継続姿勢、あるいはPBR
の1倍超えを目指す企業の姿勢、といった幾つかの理由を専門家は挙げていま
すが、やはり最大の理由は海外勢の大幅な買い越しということでしょう。
先日、ウォーレン・バフェット氏が来日し、大手商社のトップと会談を行った
辺りから上昇の勢いが加速しています。世界的に見ても、出遅れ感の著しい日
本株にもようやく「春が訪れた」印象ですが、「失われた30年」をどこまで
取り戻せるのか、ここからが正念場と言えます。このような動きはこれまでに
何度も見られましたが、結局期待外れに終わっています。
「今回は本物か?」、見ていきたいと思います。
5月のISM非製造業景況指数は、総合で市場予想を下回る「50.3」でし
た。項目別では業況指数と新規受注が低下したほか、仕入れ価格指数は3年ぶ
りの低水準でした。また雇用指数も「49.2」と、昨年10月以来となる低
水準で、雇用の減速を示唆しており、先週末に発表された「5月の雇用統計」
とは異なる結果を示しています。ISMの担当者は、「現在、コメント欄にリ
セッションという文言は見かけない。不透明感やわずかな減速などは見かける
が、産業によって違いがあり、産業内でも企業ごとに状況は異なる」と話して
います。(ブルームバーグ)6月会合では利上げ見送りに傾いている市場の見
方が、今回の指標を受さらにその見方を強めたと思われますが、これ以降来週
の消費者物価指数(CPI)の発表まで、重要な発表はありません。失業保険
申請件数には多少注意が必要ですが、このままだと余程CPIが上振れしない
限り、「据え置き」という判断が下されることになりそうです。
そして、どちらかと言えば上に行きたがっているドル円の上値を抑えることに
もつながる可能性があります。
先週1日に発表されたユーロ圏の5月のCPIは「6.1%」でした。
4月の「7.0%」からは大幅に減速はしていましたが、ECBは15日に開
催される理事会では0.25ポイントの追加利上げを行う可能性が高まってい
ます。ECBの政策メンバーであるナーゲル・ドイツ連銀総裁は講演で、「金
融政策担当者はインフレとの闘いで手綱を緩めることは出来ず、そうするつも
りもない」と指摘し、「現在の状況を踏まえれば、複数回の利上げがまだ必要
だ」と述べています。
また、ラガルドECB総裁も5日の欧州議会で、「物価圧力は依然強い。中期
で2%のインフレ目標に速やかに戻すため、政策金利を十分に景気抑制的な水
準へと確実に導き、必要な限りその水準に据え置く」と、これまで通りインフ
レは高すぎるとの認識を示しました。
ユーロ圏ではウクライナ・ロシア戦争という地政学的なリスクも抱えており、
しかも米国と比べてもインフレ率の鈍化スピードの遅さは否めません。(米4
月のCPIは4.9%)政策金利据え置きについても、米国と比べると、まだ
周回遅れといった印象です。
ウクライナ高官が「すでに始まっている」と述べていた、ウクライナ軍による
大規模攻撃が5日、ウクライナ東部ドネツク州で確認されたとロシア国防省が
発表しています。
ただ発表では、「複数の戦車や機械化大隊を含む攻撃だったが、敵は目的を達
成することなく、不首尾に終わった」と声明文で説明しています。
一方ウクライナの国防次官は、「ロシア当局者がバフムト周辺での敗北から気
をそらせようとして偽情報を流している」と反論しています。
多くのメディアは、長く計画されていたウクライナの反転攻勢は開始された可
能性が高いと伝えています。
本日のドル円は138円50銭~140円30銭程度を予想します。
- [2023/06/06 09:34]
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米5月のNFPは33.9万人の増加
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆ドル円は138円台から大きく反発。5月の雇用統計で
NFPは大幅に増加したものの、賃金の伸びが鈍化。米金利の
上昇に140円09銭まで買われた。
◆ユーロドルは円ほど動かず。1.07台前半から後半で推移。
◆株式市場はデフォルトを回避できたことや、賃金が上昇していなかった
ことを好感し3指数が大幅高。特にダウは前日比700ドルを超える上昇
を見せ、今年最大の上げ幅を記録。
◆債券は反落し、長期金利は3.69%台に上昇。
◆金は大幅に売られ、原油は続伸。
◆5月失業率 → 3.7%
◆5月非農業部門雇用者数 → 33.9万人
◆5月平均時給 (前月比) → 0.3%
◆5月平均時給 (前年比) → 4.3%
◆5月労働参加率 → 62.6%
本日の注目イベント
◆中 5月財新サービス業PMI
◆中 5月財新コンポジットPMI
◆独 独4月貿易収支
◆独 独4経常収支
◆独 独5月サービス業PMI(改定値)
◆欧 ユーロ圏5月サービスPMI(改定値)
◆欧 ユーロ圏4月卸売物価指数
◆米 5月ISM非製造業景況指数
◆米 5月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値)
◆米 5月S&Pグローバル総合PMI(改定値)
◆米 4月製造業受注
◆米 4月耐久財受注
米債務上限問題は、バイデン大統領が3日に法案に署名し、「財政責任法」が成立しま
した。これで、2025年1月まで債務上限の適用を停止、デフォルトを回避できるこ
とになりました。当面は債務上限を巡る政治的なドタバタ劇を見ることはなくなります
が、バイデン政権は今後一層の歳出削減を行う必要があります。
前日138円台半ばまで売られたドル円は、わずか1日で元の鞘に戻ってきました。
5月の雇用統計で、米労働市場は「驚くほど好調」だったことが、あらためて確認され
ました。非農業部門雇用者数は市場予想の「19.5万人」を大きく上回る「33.9
万人」で、さらに4月分は「25.3万人」から「29.4万人」に、3月分も「16
.5万人」から「21.7万人」に、それぞれ「上方修正」されています。
この結果、直近3カ月の雇用数は平均で「28.3万人」と、10回合連続で都合5%
もの利上げが実施されましたが、雇用の減速感は全く感じられません。
先に発表された「ADP雇用者」も大きく上振れ、求人件数も1000万件に戻るなど
、相変らず「人手不足」が続いていることがうかがえます。
本来なら、雇用者数の大幅上振れは米景気の拡大→インフレの加速→FRBによる利上
げ継続、そして株安、債券安が進み、ドル円が買われる要因になりますが、この日は株
価が大きく上昇し、リスクオンから債券が売られた側面もあったようです。NYダウは
前日比701ドル買われ、今年最大の上げ幅でした。
雇用者数ではNFPが上振れしたものの、失業率は高まり、賃金が伸びていないなど「
強弱まちまち」の結果でしたが、市場のセンチメントは「6月会合では利上げ見送り」
に大きく傾いていることが背景です。
先週の金曜日のコメントでも書きましたが、金曜日の動きは市場のセンチメントが一夜
で変わるという良い例だったと言えます。経済指標の結果を受けたり、FOMCメンバ
ーの発言を受ける中で、利上げ見送りから、0.25ポイントの利上げをほぼ織り込み
、そして再び利上げ見送りへと市場の見方は変化してきました。
こう考えると、13日の「5月の消費者物価指数」発表でも、もう一波乱あるかもしれ
ません。
サマーズ元財務長官はブルームバーグの番組で、FOMCが6月会合で利上げ見送りを
選択した場合、7月会合では政策金利を「0.5ポイント」引き上げる可能性を残して
置くべきだと述べています。
タカ派のイメージが強いサマーズ氏は、「米金融当局が留意しなくてはならない主要な
リスクは、景気過熱リスクであるという状況に再び陥っている」と指摘し、雇用統計の
結果については、「労働市場が引き続きタイトかつホットだ」と述べていました。
本日は、再び日経平均が大幅高を見せそうです。
株価が大きく上昇すれば「リスクオン」が強まり、低金利の円が売られ易いことは何度
も指摘した通りです。
一方で、米債務上限問題が決着したことで、米財務省は減少していた手許現金を拡充す
るため、大量の債券を発行するとみられます。
大量の債券発行は市場から資金を吸い上げることになり、ある意味「金融引き締め」と
同様の効果が見られます。金融引き締めは、株価の下落要因となり債券高からドル円が
売られるリスクもないとは言えません。
大量の債券発行は市場の流動性を1兆1000億ドル(約154兆円)減少させるとの
試算もあります。一応、留意しておく必要がありそうです。
本日のドル円は139円30銭~141円程度を予想します。
- [2023/06/05 10:07]
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ドル円続落し138円台半ばへ
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆ドル円は続落。米債務上限法案が下院で可決されたことで、ほぼ成立
の可能性が高まる。6月会合での利上げ観測が急速に後退し、
ドル円は138円44銭まで売られる。
◆ユーロドルはやや値を戻し、1.07台半ばまで買い戻される。
◆米国がデフォルトを回避できるとの見方が強まり、3指数は揃って
上昇。ダウは153ドル上げ、S&P500は41ポイントの上昇。
◆債券は続落。長期金利は3.6%を割り込む。
◆金は続伸し、原油も反発。
◆5月S&Pグローバル製造業PMI(改定値) → 48.4
◆5月ADP雇用者数 → 27.8万人
◆ 新規失業保険申請件数 → 23.2万件
◆5月ISM製造業景況指数 → 46.9
◆5月自動車販売台数(年換算) → 1505万台
◆労働生産性(1-3月、確定値) → -2.1%
本日の注目イベント
◆米 5月雇用統計
最後まで共和党強硬派の抵抗が続いていた米債務上限問題は下院で可決しました。
法案の名称は「The Financial Responsibility Act」(財政責任法案)と名付けら
れ、2日にも上院で可決され、バイデン大統領の署名を持って発効します。
余談ですが、そのバイデン大統が昨日、米空軍士官学校の卒業式に列席し、演説を
行うため壇上に案内された際転倒しました。幸いケガはなかった模様ですが、何せ
80歳とご高齢です。2024年の大統領選に向けて、悪影響が出なければよいの
ですが。
下院を通過したことで、6月5日とされる「Xデー」にはぎりぎり間に合った格好
ですが、法案に「Responsibility」という文言が入ったことはやや驚きでした。今
後も財政再建は政権の「責任」において解決すべきとの想いも入っているのかもし
れません。
この欄でも何度も触れているように、筆者は6月会合では利上げが見送られるとの
見方に立っていますが、昨日から市場の風向きが変わり筆者には「追い風」になっ
て来ています。
先週までは6月会合で0.25ポイントの利上げを織り込む動きが強まり、金利先
物市場ではほぼこれを織り込んだことが、ドル円を141円手前まで押し上げる要
因の一つになっていました。昨日は1-3月期の単位労働コストとISMの5月の
仕入れ価格指数が予想を下回ったことで、株式と債券が買われ、金利が低下したこ
とに伴いドル円は1週間ぶりに138円台半ばまで押し戻されています。
さらに、ハト派寄りの発言を繰り返すフィラデルフィア連銀のハーカー総裁は昨日
も、全米企業エコノミスト協会(NABE)が主催したオンラインイベントで、「
政策金利を据え置き、インフレ率を適時に目標に戻すための仕事を金融政策に任せ
ることが可能な地点に近づいていると考える」と述べています。ハーカー総裁はこ
れまでも、後日のFOMC会合で利上げが必要になったとしても、6月会合での利
上げ見送りを支持する考えを示していました。
またジェファーソンFRB理事も前日、自身が金利据え置きに傾いていることを示
唆していました。
利上げ観測が後退した一連の流れから、金も買われ原油も上昇し、以前の状況に戻
った印象もあります。
ただ、市場の見方が変わり易いことは今に始まったことではありません。今夜発表
の雇用統計で非農業部門雇用者数(NFP)が大幅に予想を上回る結果が示されれ
ば、センチメントは再び一変します。
5月のNFPは19.5万人(4月は25.3万人)と予想され、先月よりも減少
していると見られています。また、失業率も「3.5%」と4月の「3.4%」か
ら若干上昇していると予想されています。昨日発表された民間の雇用統計である「
ADP雇用者数」が、本番の雇用統計と異なることは度々ありますが、5月分は2
7万8000人の増加と市場予想を上回り、4月分は若干下方修正されています。
同統計は2500万人余りの「給与明細」(Pay Roll)の数を基準に集計されてい
ると言われ、今回の結果から家計支出を下支え、景気を拡大させている労働市場は
なお力強いことを示していると考えられます。またこの先、大本命の指標である「
5月の消費者物価指数」も残っていることから、まだ利上げの可能性が消えたわけ
ではないとは思いますが、ドル円の140円台後半が徐々に遠のく可能性もありま
す。
本日のドル円は138円~140円程度を予想します。
- [2023/06/02 09:23]
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6月会合での利上げを巡り意見分かれる
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
◆ドル円は140円台を回復する場面があったものの、買いは続かず
上値の重い展開に。求人件数が上振れしたことで140円42銭まで
ドル高が進んだが、FRB高官のハト派発言に139円台前半まで反落。
◆ユーロドルは続落し、およそ2カ月ぶりに1.0635まで売られる。
中国のPMIが予想を下回ったことが影響。
◆株式市場では3指数とも売られる。ダウは3日続落となる134ドル安。
◆債券は続伸。長期金利は3.64%台に低下。
◆金は続伸。原油は続落し68ドル台に。こちらも中国の経済指標の
低下が影響。
◆5月シカゴ購買部協会景気指数 → 40.4
◆4月雇用動態調査(JOLTS)求人件数 → 1010.3万件
本日の注目イベント
◆中 5月財新製造業PMI
◆独 独5月製造業PMI(改定値)
◆欧 ユーロ圏5月製造業PMI(改定値)
◆欧 ユーロ圏4月失業率
◆欧 ECB議事要旨(5月会合分)
◆米 5月S&Pグローバル製造業PMI(改定値)
◆米 5月ADP雇用者数
◆米 新規失業保険申請件数
◆米 5月ISM製造業景況指数
◆米 5月自動車販売台数
◆米 労働生産性(1-3月、確定値)
◆米 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、ウェビナーで講演
米債務上限の合意案を巡っては、共和党強硬派らが強く反対していることで
採決に不透明感が漂うなか、共和党強硬派はマッカーシー下院議長の解任を
求めることも辞さない構えを見せています。しかし、議長は脅しをはねつけ
た上で、「議会が法案を可決し、米国がデフォルトを回避できると確信して
いる」と述べています。
同法案は、米東部時間31日夜には可決する見込みのようで、可決後は上院
に回され再び審議されることになりますが、「Xデー」が6月5日とみられ
ていることから、厳しい状況が続いていることに変わりはなく、残された時
間は限定的です。米財務省の発表によると、同省の現金残高は30日時点で
374億ドル(約5兆2100億円)まで減少し、2017年以来の低水準
を更新しています。
バイデン大統領はコロラド州への訪問を前に、「計画通りに進んでいるよう
だ」と話し、共和党のエマー下院院内幹事はこれより先、「賛成票は確保し
た」と確信を示し、「法案は成立する」と述べています。一方、民主党のク
ラーク下院院内幹事は、「共和党が賛成票を確保したかどうかまだ分からな
い」と話しているとブルームバーグは伝えています。
ドル円は先週と打って変わって上値を徐々に重くしてきました。米金利の上
昇がドルを支えて来ましたが、その金利が低下傾向を見せていることがドル
売りを誘引している形です。
昨日のNYでは4月の求人件数が予想外に増加しており、1010.3万件
と3カ月ぶりの高水準だったことで発表直後、ドル円は140円台前半まで
買われましたが、勢いはなく、その後はFOMCメンバーによるハト派寄り
の発言に139円24銭までドル売りが進みました。昨日のコメントでも「
ブラックアウト」前のFOMCメンバーの発言に注目したいと書きました
が、昨日の発言を経て、やはりメンバーの意見が分かれていることがあらた
めて確認されました。6月の会合では0.25ポイントの利上げが確実視さ
れてはいますが、今週末の雇用統計と5月のCPIの結果いかんでは、「分
からなくなる」可能性もありそうです。筆者は依然、利上げ見送りを予想し
ています。
ジェファーソンFRB理事は「次回会合で政策金利の据え置きを決定しても
、今サイクルのピーク金利に達したと解釈すべきではない」と指摘し、「実
際には、次回会合で利上げを見送ることは、追加引き締めの程度について決
定する前に委員会がより多くのデータを見ることを可能にするだろう」と述
べ、利上げ見送りを示唆しながらも、それが利上げの停止を意味するわけで
はないとしています。
またフィラデルフィア連銀のハーカー総裁も、「一度様子を見ていいだろう
と思う」と述べ、「6月会合では、私は利上げ見合わせを検討する陣営に確
実に入っている」と、かなりハト派的な発言を行っています。
一方、ボウマンFRB理事は、家賃の下落や不動産価格が横ばいで推移して
いることを例に挙げ、「これはインフレ率の低下を目指す当局の闘いに影響
を及ぼし得る」と発言。ボストン連銀のコリンズ総裁も、「米金融当局は実
に高すぎるインフレの抑制に努めている」と述べており、両総裁はニュート
ラルと見られます。
ただ、FOMCメンバーではありませんが、ブラックロックのフィンクCE
Oは会合で、「インフレは依然として高過ぎであり、あまりに根強い。米金
融当局の仕事はまだ終わっていない」と指摘しています。(ブルームバーグ)
パウエル議長も先のイべントでは据え置きを示唆していました。まだ利上げ
の確率の方が高いと思われますが、今回はまさに「データ・ディペンデント
」と言えるでしょう。
ドル円が円高方向に向きを変えてきたことで、クロス円も概ね下げてきまし
た。昨年からの傾向とも言えますが、ドル円のボラティリティーが急速にあ
がっていることから、投機筋やディーラーがドル円の取り引きを増やしてい
ると思われ、それがまたボラティリティー上昇につながっています。
ユーロ円などのクロス円は、ほぼドル円の方向と一致しており、ドル円の動
きをどのように読むのかにかかっています。
本日のドル円は138円50銭~140円30銭程度と予想します。
- [2023/06/01 09:43]
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